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011話 探窟都市その1

 ───《冥窟(ダンジョン)》。


 危険と栄光を秘めた淵獄。


 地の底に一攫千金を夢見る命知らずたちが日々もぐり、多くの命が散る、魔術的地下構造。彼らの命を奪う理由の一つに、罠がある。解除すれども解除すれどもいつの間にか再び仕掛けられている罠は、《冥窟》が生きている(・・・・・)ことの証だ。───そう、《冥窟》は魔術的に生きている。最奥に存在する核を破壊しない限り、罠や仕掛け、そして物理的に不可能な構造は常に維持され更新されるのだ。核が破壊された《冥窟》は機能を停止し、ゆっくりと崩壊してゆく。


 《人界》において、《冥窟》には二系統がある。


 区別するには壁を見ればよい。


 壁が浸蝕洞窟のようであるなら、自然発生のもの。有機系の魔獣が生態系を構築しており、金銀宝石の類を多く収めている。


 壁が石積みや煉瓦であれば、人工的に作り出されたもの。守護者の多くは無機系の魔術生物であり、宝もまた魔術によって作り出された《遺物》であることが多い。こちらはその由来を魔術師に帰している。彼らが研究課程で造りだした成果たる《遺物》が収められている。《遺物》に目がくらみ引き寄せられた愚者は、魔術研究の糧とされるのだ。自然発生の《冥窟》を参考とした、いわば補食孔なのである。


 では。


 では《人界》に現れる《冥窟》。そのうち、自然発生するもの。その由来とは───




◇◇◇




 探窟都市ディゴール。


 聖都からの伝令も四日かかる遠方にある。だが治安が劣悪なのは信庁本殿からの距離によるものではない。


 探窟都市と呼ばれるだけあり、この街には《冥窟》がある。歩いて行ける距離に存在するその《冥窟》は、神歴830年にはその存在が確認された、《人界》で確認されるなかでは最古の生きた(・・・)自然《冥窟》だ。


 自然、集まるのは荒くれた冒険者たちが大半を占める。


 腕自慢の若いの、罪を犯して逃げてきた輩、胡散臭い魔術媒体が必要な魔術師、稼げれば何でも食いものにする商人、信庁で認定されていない信教の徒、


 ……そして、時には信庁に属さない《信業遣い》やなんかも。


「───ここに、《冥窟》が」


 ディゴールを囲う城壁。いくつかあるうち、オルジェンス大街道に接続する門は、名前をシンプルに外壁正門という。それを見上げようとして、邪魔な帽子のつばを持ち上げる青年がいた。


 彼の青藍の瞳がきらりと輝く。


 その傍ら、顔半分を覆うけったいな仮面の少女が、見えているのかいないのか分からないくせに青年を真似して門を見上げる。


「本当にこんなところにあるのかね? ボクの失われた過去への手がかりってヤツは」


 異端認定から半年を経て。


 ユヴォーシュ・ウクルメンシルとバスティは、探窟都市ディゴールへとやってきた。

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