環境に驚いて
知らない天井だ。
何だよ私、死んだんじゃ無かったのかよ。がっつり殺されるか、放置されて餓死する流れだったじゃん。てゆーかどこここ。
「ぁ…」
声も出せないし、体も動かない。このまま布団に包まれっぱなしかな?…布団?え、こんなにふわふわしてたっけ。前世ではもっと薄い布だったのに。異世界ってすげー。今生は布団なる物は見てないから判断基準がわからないけれど。
それに今首が動かせる事に気が付いたけれど、周りが凄い。窓大っきいし、なんて言うんだろう、レース?のカーテンが掛かってる。床にはカーペットなんて敷いてあるよ。相当なお金持ちなのかな、この家の持ち主。
「目が覚めたのですか」
あれ、いつの間にかメイドさん?がいる。全然関係無いけど凄い美人。ザ・お姉さんみたいな感じ。
「あ、たは…」
「無理に喋らずとも結構です。私の事がわかりますか」
コクリと頷く。伝わってるかはわからないけれど、優しく微笑んでくれた。
「どこか痛いところはありますか。気分が悪いなどはありませんか」
首を振る。まぁどこも痛くないのに動けないっていうのも不思議だけど。正直痛覚が正常に働いているかも分からないし。…まさか全身麻痺の要介護者?不味い。前はともかくこの世界でそんな事になったら殺処分もあり得る。
「分かりました。ではお湯を持って来ますね」
出て行っちゃった。血飛沫を拭うためにお湯が居るのかな。と言うか今生でお湯っていう単語を聞くのは初めてかも知れない。汚れたら川に突っ込まれてたからね。冬なんか寒くて川に入った途端漏らしてたりもしてた。
おしっこすると一時暖かくなるけど、すぐに冷えちゃうんだよね。洞窟暮らしに冬は辛い。
「只今戻りました。体を起こしますね、力を抜いて…」
この流れ完全に介護でしょ。服を脱がせてタオルを濡らして、
「ん…ふ」
あぁ。お湯ってこんなに良いものだったんだ。じんわりとした温かさが体中に広がっていく。気持ちいい…
「温度は…ちょうど良さそうですね。では下も拭きますよ」
下?下半身?ちょっと待って、それだけは
「っあ!うふぅ…」
「どうしたんですか!?」
メイドさんがびっくりしてるみたいだけど、私は体の疼きを抑えるので精いっぱい。色々あったせいで敏感になってしまった体は反応したまま落ち着きそうにない。
「…失礼します」
と、メイドさんがするりと服を着させたかと思ったら、暖かいものに包まれた。抱き締められた、と分かった時には背中を撫でられていた。
「大丈夫、ここには貴女を害する者はいません。安心して下さい」
とんとんと背中を叩かれ、瞼が落ちかける。優しく歌ってくれた、子守唄を聞きながら、私は夢の世界へ旅立った。