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エピローグ

 魔界の空は重い。


 それは五十年前にこの地に下りてきた時から何ひとつ変わることなく、常に赤黒い空はときたま陽の光を通すものの、やはりそれも清廉というよりはどこか不気味な光となって大地を照らす。

 ただ、今日の空は幾分か明るいかもしれない。珍しく青の光を含み、普段赤いその空は綺麗な薄紫へと色を変えていた。

 こういう日のティータイムはきっと中庭で静かに過ごすのがあの方の好みだ。

 特にこの時期はあの花がとてもよく香る。それに、ちょうどこの時間帯には微弱ながらも光が差し込むから、きっと満足して頂けるだろう。

 中庭にあるテーブルにクロスを敷き、セットを整える。精霊界から仕入れたお気に入りの紅茶と、修道院の特製レシピのエッグタルト。中庭の中央にある大切な石碑を磨き、その上に咲き誇る薄紫の花のバランスを整える。準備は万端だ。

 ペットの白い虎と黒い獅子を適当にあしらいながら、執務室へと向かう。

陛下(・・)、お茶の準備ができましたよ!」

「あぁ、分かった。すぐに向かおう」

「レオ様も呼ばれますか?」

「そうだな……いや、今日は中庭なのだろう? ならば二人――いや、三人で過ごそう」

「分かりました!」

 五十年経っても、僕たちの見た目はほとんど全く変わっていない。それは、僕と陛下の欲望がそういう類のものだからだ、と陛下は言っていた。どちらかが飽きるまではずっとこのままだろう、とも。


「フェイト、そなたは食べないのか?」

「頂きます!」

 これは一種の様式美だ。別に最初からご一緒させて頂いたって陛下は何も言わないだろうけれど、それは僕が嫌だった。

 華やかな紅茶の香りと甘いお菓子の匂いが鼻腔をつく。風が吹く度、紫の花は周囲に優しい香りを撒き、やや湿った生温い風ですら爽やかなものへと変えてくれる。

 この一瞬、一瞬の全てに幸せが詰まっている。ずっとこの時間が続いて欲しい、と切に願う。

 この場所が、この時間が、永遠にここに在り続ければ良いのに――そう、ここは僕がずっと求め続けた幸福の境地。


 ここは、楽園だ。

 この作品は私が別サイトで別途連載している「Siniglesia*Yomuerte」シリーズ、通称「しによめシリーズ」の外伝作品として執筆し、2018年8月のCOMITIA125にて頒布したものです。

 別途連載していると言ったものの、当時は本編は構想のみで冒頭部分しか着手しておらず、どうしても筆が進まなかったために、一つの物語として既にプロットが(脳内に)できていたこちらを先に完成させることになりました。


 そういった経緯がございまして、この作品を単体として見た場合、伏線の回収が甘かったり、謎が残ったままだったり、キャラクターの描写が少なかったりと不完全燃焼な部分も多々あるかと思います(何より文庫本250頁に収める必要があったので……)。

 けれど、この話はあくまでも「フェイト」という名前を与えられた少年と、「ルイン」という魔族の青年の二人の出会いと契約の物語として作ったものですので、このお話はこれで完結となります。


 この作品をここまで読んでくださる方がどれほどいらっしゃるのか疑問に思うところではございますが、もし万が一、ここまでお付き合い下さった方がいらっしゃるのならこれほど嬉しいことはございません。本当に、本当に有難うございます。


 また、この世界を舞台にしたしによめシリーズ本編は、折を見てこちら、「小説家になろう」でも発表したいと思っております。もしも今回の物語を通してこの世界に興味を持って下さいました場合、是非ともそちらの方もお付き合い頂けますと幸いです。

 なお、本編シリーズの主人公はレイなので、レイと琅果ロウカを気に入って頂けた方にはより楽しめるかなぁ?と、思います。


 ともあれ、この「絶対服従幸福論」はこれにて閉幕です。本編、ならびにこのようなところまで目を通して下さった方に心より感謝致します。本当に有難うございます!

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