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4-5

みなさま


いつも『神霊術少女チェルニ〈連載版〉』等をお読みいただき、ありがとうございます。


今年の投稿は、今回が最後となります。ちょうど12月31日、大晦日の更新となりました。


本年もたくさんの方にお読みいただき、お言葉をいただき、その結果、『神霊術少女チェルニ(1)神去り子爵家と微睡の雛』を刊行することができました。みなさまに改めて、心より御礼申し上げます。本当に、ありがとうございました。


来年もまた、チェルニに、チェルニの生きる世界に、自分なりに真剣に向き合っていくつもりです。そして、もうひとつの拙作『フェオファーン聖譚曲』シリーズも、がんばりたいと思っています。


みなさま、2022年も引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。


冷え込みが続いており、年始に掛けて大がかりな降雪が予測される地域もあるようです。くれぐれもご自愛いただき、穏やかに新年をお迎えいただけたら、と願っています。

〈いとも目出度(めでた)き結縁(けちえん)は、神すら知らぬ分水嶺(ぶんすいれい)。今、このときに開(ひら)けたる、新道(しんみち)にこそ弥栄(いやさかえ)〉


 身体をぴかぴか光らせながら、わたしの口から出た声は、決してわたしのものじゃなかった。正確にいうと、わたしの声でありながら、わたしに出せる声じゃなかったんだ。ちょっと甲(かん)高い少女の声のはずなのに、無条件に人を跪(ひざまず)かせてしまうような威厳と、思わず震えてしまうほどの輝かしさと、気がつけば涙が流れているような慈愛がこもっていたんだから。

 遥かな高みから降り注ぎ、わたしたちの魂に響き渡る、いとも神々(こうごう)しい声こそは、何度も経験しちゃってる、〈言霊(ことだま)〉に違いなかった。


 でもね、最初に神霊さんから〈言霊〉を授かったときには、スイシャク様やアマツ様に助けてもらって、必死に天に向けて祈祷(きとう)したんだよ? 空から降った雨が大地を潤(うるお)し、川になり湖になり、やがては水蒸気となって大気に溶(と)け、天に還(かえ)っていくように。必死にイメージを思い浮かべて、わたしの祈りを捧げたんだ。

 わたしの祈祷は、きゅるきゅると音を立てて、神霊さんの住まわれる神世(かみのよ)へとつながる回路を広げながら、天へ天へと昇っていった。その結果、天から降り注ぐ神威の巨大さに、魂ごと震えちゃったわたしは、〈畏(おそ)れ多い〉っていう言葉の意味を、初めて本当に理解したんだ。改めて実感したんだと思う。

 

 王立学院の入試で、〈霊降(たまおろし)〉をしようとして、〈神降(かみおろし)〉になっちゃったときは、もっと大変だった。降臨なさった神霊さんが多かったから、スイシャク様の純白の光の帯と、アマツ様の真紅の光の帯に、ぐるぐる巻きにしてもらったおかげで、何とか神霊さんたちの存在を受け入れられたんだ。

 スイシャク様とアマツ様のお導きがなかったら、七柱(ななはしら)も神霊さんたちが、揃って顕現(けんげん)することなんてできなくて、きっと普通の〈霊降〉になっていたんじゃないのかな?

 

 それに比べると、今、わたしが直面している〈神降〉は、比較にならないくらいあっさりと起こっちゃった。何だったら、簡単だっていっても良いくらい。わたしと神世を繋(つな)いでいた、細くて微(かす)かな回路だったものが、知らない間に広がっているような気がするんだよ。

 今回は、存在感を消したまま、ふわりと舞い上がっていた、スイシャク様とアマツ様が、交互に楽しそうなイメージを送ってくれた。〈彼(か)の御方(おんかた)との結縁(けちえん)は、何にも勝る練磨(れんま)にして〉〈我らと其(そ)との縁(えにし)さえ、密(みつ)に強固に練(ね)られたる〉〈刻(とき)到れば、自在に我らの依代(よりしろ)と成らん〉〈目出たきこと也〉って。


 〈神威(しんい)の覡(げき)〉であるレフ様は、神霊さんの〈魂の欠片(かけら)〉が人として生まれた、神霊さんの化身だから、そのレフ様と、こっ、婚約しようとしているわたしは、自然に魂の修練を積んだことになるらしい。

 自分で努力をして、魂の器を広げたわけでも、神世との回路を広げたわけでもないから、ずるいなとは思うんだけど、スイシャク様とアマツ様が喜んでいるということは、きっと人の役に立つ機会も増えるんじゃないのかな?


 わたしが、そんなことをぐるぐると考えている間、うちの家の応接間は、時間が止まったみたいに固まっていた。さっきまで普通に話していたわたしが、いきなり発光する少女になって、神霊さんの〈言霊〉を告げたんだから、シルベル子爵閣下やハウゼン子爵閣下は、そりゃあ驚いただろう。

 でも、わたしの家族は、神霊さんのもたらす不思議には慣れちゃってるし、ヴェル様やマルティノ様は、不思議の中の不思議ともいうべきレフ様と、いつも一緒にいるんだからね。衝撃から立ち直るのは、さすがに早かった。

 

 最初に動いたのは、神霊庁の神使(しんし)猊下(げいか)でもあるヴェル様だった。ヴェル様は、優雅な所作(しょさ)で立ち上がると、流れるように自然に跪(ひざまず)いたんだ。ぴかぴか発光する少女であり、今は神霊さんたちの〈器(うつわ)〉になっている、わたしの前に。

 続いて、お母さんとアリアナお姉ちゃん、お使者の三人が、わたしに向かって座礼を取った。うちの家は、綺麗好きのお母さんのおかげで、塵(ちり)一つなく磨かれているから、良いといえば良いんだけどね。

 

 皆んなと違う動きをしたのは、お父さんだった。お父さんは、わたしのすぐ後ろに回ると、片膝をついて身構えた。もし、わたしが失神したりしたら、抱き止めてくれるつもりなんだろう。神霊さんへの崇敬(すうけい)の念はあるけど、同時に、娘を守るのは自分なんだって、思い定めているんじゃないのかな。本当に、お父さん、大好き。


 座礼を取ったまま両手をついて、深々と頭を下げたヴェル様は、ぴかぴか光るわたしに向かって、恭(うやうや)しく話しかけた。祝詞(のりと)といえば祝詞であり、そうじゃないといえばそうじゃない、神霊庁の神使(しんし)様だからこそ可能な、神霊さんへの敬虔(けいけん)な問いかけだった。


「斯(か)くも尊き御社(おんやしろ)、御神霊の御鍾愛(ごしょうあい)厚(あつ)き〈神託(しんたく)の巫(ふ)〉が、御座(ござ)遊ばす后宮(こうぐう)へ、御降臨(ごこうりん)賜(たまわ)りましたる僥倖(ぎょうこう)に、畏(かしこ)みて御礼仕(つかまつ)ります。浅学非才(せんがくひさい)の我らへと、御教示賜りましたる御神託は、尊き結縁(けちえん)への御福音(ごふくいん)と、伏(ふ)して感謝を奉(たてまつ)ります。希(こいねが)わくは、〈神すら知らぬ《分水嶺(ぶんすいれい)》〉の流れ流れし行方(ゆきかた)を、一端なりと御示しあれかし」


 ヴェル様の言葉は、すごくむずかしかったけど、何とか意味は理解できた。神職さんたちが使う古語(こご)や、それっぽいいい回しは、神霊術の授業でも習うから、それなりに得意なのだ、わたし。

 ヴェル様の意図は、わりと明確だったと思う。わたしを通して、神霊さんが〈神降〉で言霊を伝えてくれたことに感謝して、わたしとレフ様との、こっ、婚約への祝福にもお礼をいって……それから、一番気になる言霊について質問しているんだよ。わたしたちの婚約が、〈神をも知らぬ《分水嶺》〉になるって、どういう意味ですかって。


 ヴェル様の質問は、わたしの疑問でもあった。神霊さんたちが、わたしとレフ様のご縁を喜んでくれているのは、よくわかっていたけど、それが〈神をも知らぬ《分水嶺》〉になるって、どういうこと? 分水嶺って、分かれ道っていう意味だよね? 何が、どうわかれるの? 神をも知らぬって、そんなことがあるんだろうか?


 大気中に解(ほど)けて漂(ただよ)っていたわたしは、どんな答えが返されるのか気になって、思わず自分自身に目を向けた。わたしの本体……っていうのか、チェルニ・カペラの身体は、相変わらずぴかぴかと光っている。その表情は、わたしとはほど遠い、神聖なものだった。顔の造作(ぞうさく)が変わるはずはなくて、わりと整った目鼻立ちも、ちょっとふっくらした頬も、何一つ変わっていないのに、纏(まと)う雰囲気が違っているんだよ。

 強いていうなら、ご神鏡(しんきょう)を通して見たときのレフ様に似ている。瞳を銀色に輝かせた、神霊さんそのもののようなレフ様を、もうちょっと〈人の子〉らしくしたみたい……。身に纏(まと)う神々しさは、比べものにもならなかったけどね。


 自分の身体なのに、まったく別の存在に見えることに驚いて、ちょっと呆然としているうちに、少し色を失ったわたしの唇が、ゆっくりと開かれて、ヴェル様に話しかけた。


〈現世(うつしよ)の行方(ゆくえ)定むる道標(どうひょう)は、《神威の覡》の御心(みこころ)一つ。《神威の覡》の御心を、揺り動かしたる呼び水は、《神託の巫》のみと覚えたる。《神託の巫》が身に降り掛かる、吉凶(きっきょう)遍(あまね)く覧(らん)じられ、《神威の覡》の道選ぶらん〉


「……。畏(かしこ)み畏(かしこ)み承(うけたまわ)りて、固く心に刻みまする。〈神威の覡〉たる御方様(おんかたさま)が、今世(こんせ)に御選び遊ばさる、〈道〉は数多(あまた)ございましょうか」


〈改朝換代(かいちょうかんだい)と相なるか、混沌(こんとん)の果てに消えたるか、新たなる国産(くにう)みの秋(とき)至れるか。我らも知らぬ行方に、森羅万象(しんらばんしょう)、八百万(やおよろず)、神が耳目(じもく)を集めたる〉

〈吉日、使者となりにける、四宝(しほう)にのみは伝えけれ。四宝とは、彼(か)の御方の身許(みもと)に侍(はべ)りし、一(いち)に貴顕(きけん)、二に神使(しんし)、三に佩刀(はいとう)、四に懐剣(かいけん)。皆々、〈神威の覡〉の使いにて、〈神託の巫〉の護(まも)りと成る也〉


「いとも有難き御言葉(みことば)に、拝跪(はいき)の感謝を奉る。我、四宝の二たる神使にて、必ず皆に伝えまする。畏み畏み、畏み畏み」


 厳(おごそ)かな声でいう、発光するわたしに向かって、ヴェル様が両手をついて頭を下げた。それこそ、ヴェル様の秀でた額が、床に着くくらいに深々と。他の人たちも、すぐにヴェル様にならって、深々と平伏した。神霊さんからもたらされた〈言霊〉は、思わずそうしてしまうくらい、重い威厳に満ちたものだったんだ。

 そして、只一人、お父さんだけは、わたしの身体を支えようと、膝を浮かして身構えていた。わたしの身体は、ゆるやかに明滅(めいめつ)しながら、ぐらぐらと揺れ始めていたんだよ。わたしの大好きなお父さんが、今日も守ってくれているんだって、そう気がついた途端、不思議なことが起こった。大気に漂っていたチェルニ・カペラの意識が、するすると身体に吸い込まれていったんだよ……。


     ◆


 今まで、〈神降〉の器になったときは、その衝撃に魂が圧迫されて、わたしの意識が消えそうになる瞬間があった。大気に漂う意識が、自分の身体に戻るにも、スイシャク様やアマツ様の助けが必要だったんだよ。

 今回は、意識も失わず、二柱(ふたはしら)のお導きもないのに、自分がチェルニ・カペラだって思い出せた。戻ろうとしても戻れなかった身体にも、自然に溶(と)け合うことができた。そして、何よりも、わたしがキュレルの街の十四歳の少女、〈野ばら亭〉の看板娘の妹の方であるがまま、神霊さんたちの意識と融合しちゃってる気がするんだよ。


 身体に戻ったわたしには、ヴェル様と神霊さんとの会話の意味が、はっきりと理解できた。ヴェル様は、わたしとレフ様の、こっ、婚約が、現世の運命を分けるんだっていう神託を受けて、できるだけたくさんの情報を引き出そうとしていたらしい。

 聡明なヴェル様は、〈どうなるのですか?〉なんて、聞いたりはしなかった。最初の神託で、〈神さえ知らぬ〉って断言されているから、答は得られないって判断したんだろう。

ヴェル様が尋ねたのは、どんな選択肢があるのかっていう、可能性の問題だった。


 わたしの身体と融合している神霊さんは、隠す気持ちなんて全然ないみたいで、いくつもの可能性を教えてくれた。〈改朝換代〉っていうのは、王朝や王様が変わっちゃうこと。〈混沌の果てに消え〉るっていうのは、言葉の通り、国が消えてなくなること。〈新たなる国産み〉っていうのは、新しい国土や国家が生まれること……。

 優しくて親切なレフ様が、そう簡単に王家や国を潰(つぶ)そうとするとは思えないけど、反面、レフ様は〈神威の覡〉なんだ。神霊さんの基準で、許すべきではないって判断したら、断罪の炎で現世を焼き尽くすことだって、絶対にないとはいえないだろう。


 神託を聞いたヴェル様たちは、真っ青な顔になっていたような気がしたけど、そりゃあそうだろう。王朝が変わるとか、国が消滅するとか、新しい国になるとか、どれをどうとっても、物騒(ぶっそう)過ぎるからね。神霊さんたちの予言が、ルーラ王国のことでないと良いなって、願うしかない。本当に、心から。


 もう一つ、神霊さんが口にした四宝っていうのは、文字通り〈四つの宝〉のことらしい。貴顕は、尊い身分の人を指すから、レフ様とお父さんやお母さん、王国の宰相であるロドニカ公爵閣下や、それぞれの部下の人たちを指すんだろう。

 神使は、ヴェル様たち、神霊庁の神使様たちで、当代の神霊庁には、七人の神使様がいるんだって。神使様は、全員が〈神器(じんぎ)〉の印を授かっていて、神霊術を超えた力を使えるんだって、ヴェル様が教えてくれた。神霊庁を訪ねて以降、アリアナお姉ちゃんについてきちゃった〈御神鋏(ごしんきょう)〉で、号を〈紫光(しこう)〉っていう鋏(はさみ)は、神器だと思うんだけど、神使じゃないお姉ちゃんが持っていても、良いものなんだろうか? 改めて考えると、不思議というか不気味というか……何となく面倒そうな予感がするけど、今は無視することにしよう。

 佩刀は、腰に差している刀っていう意味だから、王国騎士団を指すんだよね? マルティノ様は、温厚な人格者だと思っていたら、ものすごく厄介(やっかい)な、レフ様の崇拝者だったわけだけど、あんな〈佩刀〉が何千っていう単位で存在していたらって、考えるだけで頭が痛いよ。

 最後の〈懐刀〉は、佩刀に似ていて、佩刀とは意味が違う。目に見えるように付き従って、正面から敵を切るのが佩刀なら、懐に隠し持っていて、ひっそりと討ち取るのが懐刀なんだ。いうまでもなく、王家の特殊部隊だっていわれている、〈黒夜(こくや)〉がそうなんだろう。王家の戦力なのに、レフ様に従って良いのかなんて、もう考えないようにしよう。賢明な少女なのだ、わたしは。


 神霊さんは、その〈四宝〉には、今回の神託の内容を伝えても良いよって、はっきりと許可してくれた。ヴェル様たちには、予想できることもあったみたい。ヴェル様の薄めの唇が弧を描き、〈ルーラは小さ過ぎるだろう。ヨアニヤか、アイギスか。あるいは現世そのものか〉って、音もなくつぶやいていたのは、わたしの気のせいに違いない。違いないったら、違いない。


 怖いなって、無意識のうちに身体を震わせちゃったら、お父さんが、後ろからわたしを支えてくれた。力強い腕で、わたしを抱っこして、一緒に椅子に座ってくれる。お父さんの膝の上に乗って、胸に身体を預けて、少し早くなった胸の鼓動を聞いて……。

 わたしの身体は、まだ微かに光っていたけど、意識はチェルニ・カペラに近くなっていた。世界で一番暖かい場所で、身体の力を抜いたわたしを見て、シルベル子爵閣下やハウゼン子爵閣下が、意味ありげに微笑んだ顔なんて、見ていないからね、わたしは。


 ヴェル様は、両手を床につけたまま、上目遣いにわたしに微笑んで、優しく尋ねてくれた。わたしの中に降臨した神霊さんじゃなく、チェルニ・カペラへの問いかけだった。


「今、カペラ殿のお膝に御坐(おわしま)すのは、尊き御神霊で在らせられましょうか? チェルニちゃんなのでしょうか?」

〈神の名残は色濃けれど、雛が魂魄(こんぱく)の戻りたる〉

〈完全じゃないけど、けっこうわたしです、ヴェル様。神霊さんからの《言霊》は、まだ薄っすらと続いています〉


 わたしの口からは、同時に二つの声が出ているみたい。神聖な響きを持った声と、いつものわたし自身の声。一つの声が二つの響きを持つなんて、絶対に不可能なはずだから、ものすごくめずらしい体験をしているんだろう。ヴェル様は、微かに目を見開いてから、楽しそうに質問を続けた。


「これはまた。いともめずらしき景色にございますな。尊き御神霊は、間もなくお帰りでございましょうか。数ならぬ我らに、お伝えくださることはございましょうか」

〈神威に満ちたる御方と、可愛ゆき雛との結縁なれば、先触れの使者にも祝福あれかし。神世に待ちたる神々が、間もなく渡り来るらん〉

〈神霊さんたちは、わたしとレフ様とのご縁を、すごく喜んでくれているみたいです。天上で順番待ちをしてくれている神霊さんたちがいて、お祝いに来てくれるそうです〉

「何という僥倖(ぎょうこう)でございましょう。我ら、先触れの使者四名、本日〈懐刀〉はおりませんけれど、慎みて承(うけたまわ)ります。四宝の栄誉をお与えいただきました皆々も、拝跪の感謝を奉ります」

〈是。能(よ)く護り、能く仕えよ〉

〈ありがとうございます、ヴェル様。皆様によろしくお伝えください〉

「御意にございます。必ずや」

〈今宵、この社に顕現せしは四柱。神饌(しんせん)に相伴(しょうばん)致す〉

〈スイシャク様とアマツ様の他に、四柱の神霊さんが、今からいらっしゃいます。お父さんのご飯を、一緒に食べてくれるんだって〉


 最後の言葉のあたりは、ほとんどわたし自身だったと思う。ずっとぴかぴかしていた身体も、ようやく光らなくなったみたいだしね。何とか意識を保ったままのわたしから、圧倒的な神々しさを纏った力が、すうっと抜けていったのは、〈神降〉の終わりを意味していたんだろう。


 神霊さんの濃密な気配が去ってから、しばらくは誰も口を開かなかった。わたしは、やっぱり疲れちゃったから、お父さんの広い胸にもたれたまま、ゆっくりと息を整えた。お父さんは、そんなわたしを抱っこしたまま、優しい顔でわたしの目をのぞき込んだ。


「戻ってきたのか、チェルニ? 今回は、あんまり顔色が悪くなっていないぞ。ここにいるのは、おれの可愛い娘のチェルニだろう?」

「うん。わたしだよ、お父さん。心配しなくても、大丈夫だよ。レフ様と、こっ、婚約することになったから、わたしの魂も強くなったんだって。これって、補正っていうものかな? ちょっとずるい気もするけど、仕方ないよね」

「……そうか。尊き御神霊も、そこまで後押しをしておられるのか……。オルソン猊下、パロマ子爵閣下、シルベル子爵閣下、ハウゼン子爵閣下。御神霊は天上にお戻りになられたそうですので、どうかお直りくださいませ」

「ありがとうございます、カペラ殿。そうさせていただきましょう。誠にお疲れ様でした、チェルニちゃん。重大な御神託を賜り、感謝申し上げます」

「何だか、ものすごく不穏な神託だったような気がするんですけど、大丈夫なんでしょうか、ヴェル様」

「左様(さよう)でございますね。レフ様とチェルニちゃん、カペラ家の皆様や我ら一同、罪なき民には、支障はございませんでしょうね。後は、さて、どうなりますことか」

「お顔が悪い感じになってますよ、ヴェル様……」

「ほほほ。いかがでございました、セルジュ殿、ファニオ殿? マルティノ大隊長は、チェルニちゃんの起こす奇跡を目にするのは、初めてではございませんでしたな?」

「お話は伺っておりましたけれど、想像を遥かに超える御業でございました。誠にもって、レフヴォレフ様に相応しき、唯一無二のお嬢様でございます」

「左様、左様。わたくしの寿命すら、延びる心地でございます。言葉には尽くせぬほどに、ありがたきことにございます」

「団長閣下のご判断には、万に一つの間違いもございませんが、お嬢様の素晴らしさは、愚鈍(ぐどん)なる我が目にも明らかでございます。団長閣下に弥栄」


 約一名、レフ様の強烈な信者の人が、何とも返事のしようのない感想を口にしているみたいだけど、まあ、いいか。この後は、四柱の神霊さんをお迎えして、お父さんのお料理を囲むんだから。

 わたしの大好きなお母さんは、エメラルドみたいな瞳をきらきらと輝かせて、こういった。さあ、皆んなでご飯を食べましょう!

※前書きと同内容です


みなさま


いつも『神霊術少女チェルニ〈連載版〉』等をお読みいただき、ありがとうございます。


今年の投稿は、今回が最後となります。ちょうど12月31日、大晦日の更新となりました。


本年もたくさんの方にお読みいただき、お言葉をいただき、その結果、『神霊術少女チェルニ(1)神去り子爵家と微睡の雛』を刊行することができました。みなさまに改めて、心より御礼申し上げます。本当に、ありがとうございました。


来年もまた、チェルニに、チェルニの生きる世界に、自分なりに真剣に向き合っていくつもりです。そして、もうひとつの拙作『フェオファーン聖譚曲』シリーズも、がんばりたいと思っています。


みなさま、2022年も引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。


冷え込みが続いており、年始に掛けて大がかりな降雪が予測される地域もあるようです。くれぐれもご自愛いただき、穏やかに新年をお迎えいただけたら、と願っています。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 新年早々、メシテロ回予告……! 降臨する四柱はどのご神霊なんでしょうか。 クニツ様やムスヒ様はともかく、お塩や鈴や錠前の神霊様がどうやってご飯食べるのか気になって気になって夜しか眠れな…
[一言] 年内最後の更新ありがとうございます! めちゃくちゃ仕事するじゃんチェルニちゃん…お父さんさすがですいいクッションです 楽しいお話をありがとうございました 来年も更新楽しみにしています! 書…
[一言] 年末ぎりぎりまで更新ありがとうございます。 なんだか今回「神託」の「巫」の面目躍如って感じですね。魂が磨かれ、そうしてどんどんスイスイ神託が下せるようになる、と。今までの神託の巫は、神威の…
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