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2-4

 突然現れた巨大な雀は、不機嫌そうな顔のまま、わたしをじっと見詰めている。わたしはさっと床に下りると、雀の前でひざまずいた。

 ふくふくした羽毛とか、真っ黒でまんまるな瞳とか、ジタバタしたくなるくらい可愛いくても、これはただの雀じゃない。いや、もちろん大きさ的にもただの雀じゃないんだけど、それ以前に、この雀は神霊さんの分体なんだから、礼を尽くすのは当たり前なんだ。


 でも、わたしが学校で習ったご挨拶の〈祝詞のりと〉を口にする前に、雀は強いイメージを送ってきた。ずっと呼び出されるのを待ってたのに、声をかけるのが遅いって。せっかく時が至るより前に、□□□□□□□が道を開いてくれたんだから、さっさと呼べって。

 イメージそのものははっきりしているのに、□□□□□□□が何のことかは、まったくわからなかった。あの紅い鳥、炎の神霊さんのお名前じゃないかと思うんだけど、あまりにも(おそ)れ多くて、怖くって、読み解くことを心が拒否するみたいな感じなんだ。


 わたしが戸惑っているのがわかったのか、雀はふんって鼻を鳴らしてから、違うイメージを送ってくれた。別に怒っているわけじゃないから、気にしなくていいって。ただし、今度からは〈紅いの〉と同じくらい、自分も呼び出すようにって。

  

「はい! そうさせていただきます! とっても嬉しいです!」


 わたしが大きな声で返事をすると、雀はふすーって鼻息を漏らし、羽毛を膨らませた。これは、あれだ。喜んでくれているんだ。

 可愛すぎる神霊さんの反応に、すっかり緊張の解れたわたしは、改めてご挨拶をすることにした。分体との遭遇も二回目だから、ちょっと慣れてきたのもあると思うし、いつもお世話になっているから、お礼をいいたかったんだ。


「雀を司る神霊さん。いつも助けていただいて、ありがとうございます。あ、その前に、印を下さってありがとうございます。ご存知だとは思いますが、わたしはチェルニ・カペラ、十四歳です。今後とも、よろしくお願いします。あれ? そういえば、神霊さんって、わたしたちの名前とかご存知なんでしょうか?」


 白い巨大雀は、わたしの挨拶を聞いて、丸い瞳をもっと丸くした。びっくりしたみたいなんだけど、どうしてだろう。紅い鳥といい、白い雀といい、鳥系の姿をとる神霊さんって、ちょっと変わった感性の持ち主なのかな。


 わたしが首を傾げていると、気を取り直したらしい雀が、三回目のイメージを送ってくれた。わたしと神霊さんとの回路を、もう少し広げてみるから、心を平静に保って受け入れるようにって。嫌だったら、そういってもいいよって。

 迷う間もなく、わたしは神霊さんの言葉を受け入れた。ほんの少しだけ、畏れのようなものを感じたけど、お断りするっていう選択肢はなかった。

 雀を司る神霊さんは、絶対にわたしの味方だって知っていたし、わたしはもっと神霊術を磨きたい。大好きなお父さんやお母さん、アリアナお姉ちゃんを護りたいし、いろんな人の役に立ちたい。それに、きっとネイラ様が見ているはずの世界を、少しだけでも見てみたかったんだ。


「大丈夫です! お願いします!」


 元気よく答えた途端、わたしは不思議な空間に浮かんでいた。上も下も、右も左もなくて、狭いのか広いのかもわからない。ただ、ほんのりと暗いだけの何もない空間。そこへ、真っ白な光が射しこんで、わたしの身体を包み込んだんだ。

 その瞬間、わたしは号泣した。悲しいような、嬉しいような、苦しいような、切ないような、何ともいえない感情が爆発して、泣き叫ばずにはいられなかった。白い光は、そんなわたしを包み込んだまま、ゆらゆらゆらゆら、ゆらゆらゆらゆら、優しく身体を揺すってくれる。まるで、生まれる前の赤ちゃんに戻ったみたい。これが〈救済〉なんだって、よくわからないまま、わたしは思った。


 そのうち、白い光は、わたしの魂に二つの言葉を刻み始めた。一つは□□□□□□□□で、イメージとしてはわかっているんだけど、言葉としては認識できないし、口に出すこともできないもの。もう一つは、〈スイシャク〉っていうものだった。

 白い光に命じられるまま、スイシャクって口にすると同時に、光は何万倍にも強くなって、空間いっぱいにほとばしったんだ。

 

 すごく長い時間、そうしていたみたいな気もするけど、ほんの一瞬だったのかもしれない。その空間には、時間っていうものもなかったから。気がついたときには、わたしは家の応接間でひざまずいたまま、白い巨大な雀を腕に抱いて、ぐずぐずと泣いていた。


 しばらくして正気に戻ったわたしは、途端に泣き止んだけど、同時に真っ青になった。だって、畏れ多くも神霊さんの分体を抱きしめちゃってるよ、わたし。

 人間が神霊さんの分体に気安く触れるとか、(ゆる)されるはずがない。しかも、ぐずぐず泣いてたから、純白の羽毛に鼻水とかつけちゃったかもしれないし。どうしたらいいの、これ?

 

 わたしがおろおろしていると、腕の中の雀は、ふすーって鼻息を漏らしてから、なだめるみたいなイメージを送ってくれた。

 印を与えるのは簡単だけど、御名(おんな)を赦されるのは大変なことだから、わたしの魂が耐えやすいように、神霊さんが自分で抱っこされてくれたんだって。□□□□□□□□の名は、わたしの魂ではまだ受け止められないから、刻んだだけで伏せてあるって。

 そして、〈スイシャク〉っていうのは、神霊さんの世界でのあだ名っぽいものだから、そちらで呼べばいいって。


 本当にいいのかなって、ちょっとだけ不安になったけど、神霊さんがそういってくれるんだから、赦されるんだろう。多分。わたしはそっと、雀を司る神霊さんのあだ名っぽい名前を呼んだ。


「スイシャク様」


 ふすーっ、ふすーっ。雀は上機嫌で鼻息も荒く、さっきよりももっと羽毛を膨らませた。尊い存在なのはわかってるけど、わかってるけど、可愛いな、雀。


「スイシャク様」


 ふすーっ、ふすーっ。 


「スイシャク様」


 ふすーっ、ふすーっ。


 おお、ふっくふくになってるよ、巨大雀。別にお願い事のないときでも、うちにいてくれないかな。可愛いから。お父さんに聞いてみようかな。


 そう思って、わたしがお父さんの方を見ると、何だかすごい顔をして、わたしと雀を凝視していた。

 不思議に思って、お母さんやアリアナお姉ちゃんを見ると、二人はお揃いのエメラルドみたいな瞳を見開いて、青ざめていた。

 そして、フェルトさんや総隊長さん、フェルトさんのお母さんを見ると、三人は蒼白になって、椅子の上で硬直していたんだ。


 あれ? さっきから、誰もなんにもいわないと思ってたんだけど、皆んなそうして固まってたの? 何だかわたしの方がびっくりして、慌ててお父さんに聞いてみた。


「お父さん、どうしちゃったの? お母さんも皆んなも、カチコチになってるよ?」

「……あのな、チェルニ。そのでかい雀は、御神霊の分体なのか? ネイラ様の手紙を運んでくださった、炎の御神霊の分体と同じか?」

「そうだよ。スイシャク様っておっしゃるんだって。さっき、わたしと神霊さんをつなぐ回路を広げてもらったから、今度からはいつでも分体が現れてくださるみたい。でね、お父さん。スイシャク様に家にいてもらったらだめかな? もちろん、スイシャク様がいいよっていってくれたらなんだけど」


 わたしがそういうと、腕の中のスイシャク様はふすーって上機嫌に膨らんでくれたんだけど、お父さんは両手で頭をかきむしって、何だかうめいているみたい。

 お父さんの具合が悪くなっちゃったのかと思って、わたしの心臓がぎゅっと痛くなった。すかさず、スイシャク様が優しいイメージを送ってくれる。お父さんも皆んなも、分体の〈神威(しんい)〉に打たれているだけだから、心配しなくていいって。


 スイシャク様は、わたしの腕の中からふわって飛び出すと、もう一度テーブルの上に行った。次の瞬間には、乳白色の優しい光が応接間を満たし、すぐに消える。それだけで、皆んなの顔色が良くなったから、きっと神威を抑えてくれたんだろう。


 最初に動いたのは、お父さんだった。お父さんは、わたしがしたみたいに、床に下りてスイシャク様の前にひざまずいた。他の皆んなも、同じようにひざまずく。お父さんは、それを待ってから、深みのある声で祝詞(のりと)をあげた。


「掛けまくも畏き御神鳥 いとも気高き御方に 畏み畏み物申す 計らずも拝謁の栄に浴し 我ら恐懼の極みにて 身の置き所もなかりければ 只我が娘への御恩寵に 拝跪の感謝を奉らん」

(かけまくもかしこきおんかみどり、いともけだかきおんかたに、かしこみかしこみまもおす。はからずもはいえつのえいによくし、われらきょうくのきわみにて、みのおきどころもなかりければ、ただわがむすめへのごおんちょうに、はいきのかんしゃをたてまつらん)


 お父さんに続いて、全員が同じ祝詞を繰り返す。わたしが〈娘〉になるのは、お父さんとお母さんだけなんだけど、〈娘〉には女の子っていう意味もあるから、それほどはおかしくないんだ。

 わたしたちのルーラ王国では、年の初めとか結婚式とか、何なら入学式や卒業式にも祝詞を上げるから、それなりに聞き慣れているし、簡単なものなら自分でもあげられる。そうなるように、学校で教えられるからね。


 お父さん達は、祝詞をあげ終わると、深々とぬかずいた。皆んなの姿からは、本当に神霊さんへの感謝と敬意がみなぎっていて、とっても立派だ。神霊さんの分体を抱っこして、鼻水までつけちゃったかもしれないわたしは、自分の無作法が恥ずかしくて、顔が真っ赤になってる気がする。

 スイシャク様も、ふすーっとかいわないで、きりっとした澄まし顔で、真っ白な羽を広げた。可愛い薄茶の羽先からは、きらきらした光の粒みたいなものが生み出されて、お父さん達に柔らかく降り注ぐ。これは、あれだ。畏れ多くも、神霊さんの言祝(ことほ)ぎを(たまわ)ったんだ。


 スイシャク様は、またふわって飛んできて、わたしの腕の中に収まった。わたし、自分の無作法を反省しているところなんだけど、気にしなくていいって。お父さん達のことは、なかなか立派で気に入ったけど、わたしは御名を赦されたんだから、同じようにしなくていいんだって。

 うん。反省は後でするとして、今はスイシャク様の御好意に甘えさせてもらおう。すっかり忘れかけてたけど、クローゼ子爵家の調査をしなくちゃいけないんだから。スイシャク様も、いろいろとイメージを送ってくれてるしね。


「お父さんも皆んなも、席に座りなさいって、スイシャク様がいってくれてるよ。わたしたちの話を聞いて、問題がなければ助けてもらえるみたい。あ、それから、スイシャク様に言祝ぎを賜ったお礼は、お母さんの蜂蜜クッキーと、お父さんの焼き立てパンのお供えでいいって」


 わたしが元気よくいうと、お父さんはまた変な顔をして、恐る恐るっていう感じで、わたしに聞いた。


「なあ、チェルニ。おまえ、さっきから何といってるんだ。おまえの言葉の中に、おかしな発音が混じってるんだがな」

「ん? 何のこと? わたしは普通に話してるよ?」

「ああ。おまえはそうだと思うんだが、俺たちには聞き取れない言葉があるんだ。その、何だ。変なふうに聞こえるんだ」


 お父さんってば、どうして口ごもってるんだろう。わたしが首を傾げていると、大好きなアリアナお姉ちゃんが、ちょっとだけ眉毛を下げた可愛い顔で、横からいった。


「あのね、チェルニ。一つの単語だと思うんだけど、わたしたちには、そこだけ違って聞こえるの。チェルニはずっと、チュンチュンっていってるのよ」

「チュンチュン?」

「そう。チュンチュン」

「まじで? スイシャク様って聞こえない?」

「ああ、その言葉よ。やっぱりチュンチュンいってる。すごく可愛いわ、チェルニ」


 そういって、お姉ちゃんはふんわりと笑ったけど、それどころじゃないよ、お姉ちゃん。


 チュンチュンって何さ?


      ◆


 それからしばらくして、わたしが衝撃から立ち直った頃に、もう一度話し合いが始まった。スイシャク様がいいっていってくれたので、皆んなはそれぞれの席に戻ったし、わたしも自分の椅子に座った。

 で、スイシャク様はというと、わたしのひざの上にいるんだよ。こっちに可愛いお尻を向け、背中をわたしのお腹に預けて、お父さん達を見渡してる。神霊さんの分体は霊的な存在だから、体温なんかはないはずなんだけど、ほんのり暖かいのはどうしてなんだろう? 

 もう、あれだ。自分のことは、御神体を(まつ)る台座だと思うことにしよう。台座なんだから、分体を抱っこしても不敬じゃないはずだ。わたしは台座、わたしは台座……。


 わたしが神妙な顔で自分にいい聞かせていると、お父さんが皆んなを代表して、質問をしてきた。スイシャク様がそういってくれたから、祝詞みたいな言葉じゃない、普通の丁寧語で。


「雀を司る御神霊の御分体については、聞きたいことは山ほどあるが、今はアリアナとフェルトの将来が優先だ。おまえがいうように、御分体に情報収集をお願いできるものなのか、お(たず)ねしてみてくれ、チェルニ」


 お父さんがいうと、スイシャク様はちょっと胸を張ってから、優しくて頼もしいイメージを送ってくれた。


「大丈夫だって、お父さん。事情は知ってるし、お父さん達のことも気に入ったから、神霊さんの〈(ことわり)〉の範囲内だったら、いくらでも協力してあげるって」


 そういいながら、わたしはちょっと驚いていた。何だろう、これ。スイシャク様の御名を赦されてから、イメージはますます鮮明で、言葉で伝えられるのと同じくらいはっきりと、スイシャク様のいいたいことがわかるんだ。

 ちなみに、学校の授業で聞いたところによると、神霊さんが人間の言葉を話すことはないんだって。神霊さんのお言葉には、どうしても〈言霊(ことだま)〉が宿るから、人の身には受け止められないらしい。言葉と同じくらいっていうのと、言霊そのものは、やっぱり全然違うんだろう。


「誠に畏れ多いことだが、正直なところ助かる。御分体によくよく感謝を申し上げてくれ、チェルニ」

「了解です! あとね、王都の雀を通して見ると、ちょうど今、クローゼ子爵家の人たちが集まって、何だか揉めてるんだって。スイシャク様が、会話をそのまま伝えられるようにしてあげようかって、いってくれてるよ」


 お父さんは、困った顔で(うな)った。わたしのお父さんは、本当に正しい人だから、いくら事情があっても、そこまではっきりと他のお家を覗き見するなんて、抵抗があるんだろう。

 お母さんは、そんなお父さんの顔を見て、優しく微笑んだ。よくお母さんがいってる言葉を再現すると、〈わたしの大事なダーリン、愛しいわ〉っていうやつだ。ダーリンって。今どき、小説の中でもいわないよ、お母さん。


 言語感覚は変だけど、豪腕のお母さんは、早速お父さんを説得にかかった。こういうときは、黙ってお母さんに任せておけば間違いないんだ。


「ねえ、あなた。情報収集と会話を盗み聞きすることに、そこまで大きな違いがあるのかしら。他のお家を覗き見するのは、確かに問題のある行為だけど、今回は仕方ないわよ。ことは〈神去(かんさ)り〉にかかわるんですもの。アリアナとフェルトさんを守り切るには、手段を選んでいられないでしょう。第一、それが理に外れることなら、御分体がご提案くださるはずがないと思うの」


 お父さんは、大きなため息を吐いてからお母さんを見て、アリアナお姉ちゃんを見て、フェルトさんを見た。うん。フェルトさんのお母さんをいじめた人たちのプライバシーより、お姉ちゃんたちの方が大切だよね、お父さん。


「わかった。今は非常事態だから、御分体のご好意に甘えさせていただこう。おまえも協力してくれるか、チェルニ?」

「もちろんだよ、お父さん。任せて!」

「ありがとうな、チェルニ。御分体、衷心(ちゅうしん)より感謝を(たてまつ)る」


 そういって、お父さんは深々と頭を下げたし、皆んなも同じ。スイシャク様は、満足げにふすーって鼻息を出してから、柔らかな乳白色の光を顕現させたんだ。

 

 スイシャク様からあふれ出た光は、そのままわたしの身体を包み込む。何だろう、この感じ。スイシャク様とのつながりが強くなって、逆に自分の身体とのつながりが希薄になっていく気がする。乳白色の光が支えてくれるから、怖くはないんだけど。


 しばらくすると、わたしの視界が変わった。いつも依代(よりしろ)である雀が送ってくれるようなイメージじゃなく、まるでわたし自身の目で見ているみたいな確かさ。スイシャク様が、直接、雀の視界につないでくれたんだ。


 わたしの目は、遠くにお城を捉えていた。何回か王都に遊びに連れて行ってもらったことがあるから、ひと目でわかった。あれは王城だ。真っ白な塔が連なっていて、すごく大きくて、お伽話に出てくるお城みたいにきれいだった。


 雀はどんどん飛んでいって、立派なお屋敷が建ち並ぶ通りに出た。そして、そのうちのひとつ、焦げ茶色のれんがを積み上げて建てられた。大きなお屋敷に入っていったんだ。

 多分、この焦げ茶のお屋敷が、クローゼ子爵のお家なんだろう。スイシャク様のお力を貸してもらっているから、お屋敷全体に(よど)んだ空気が漂っていて、まったく神霊さんの気配がしていないって、すぐに気づいた。


 そして、アーチ型の門をくぐって、正面の入り口に着いたところで、わたしははっきりと見てしまった。大きくて重そうな入り口と扉には、びっしりと白い紙が貼られていたんだよ。


 百枚近くありそうな紙は、本当は人の目には見えないもので、神霊さんの分体と霊的につながっている今だから、わたしにも見えるんだって、スイシャク様が教えてくれた。

 気配りのできる雀は、白い紙のそばまで近寄ってくれる。書かれていることも、只の人であるわたしに判読できるはずがないんだけど、今だけは読める。それぞれの紙には、こんな言葉が並んでいたんだ。


〈印剥奪 遺棄 □□□□□□□□〉

〈印剥奪 義絶 □□□□□□〉

〈印剥奪 久離 □□□□□□□□□□□□□〉

〈印剥奪 必罰 □□□□□〉


 怖い、怖い、怖い。わたしはものすごく怖くなって、必死でスイシャク様にすがりついた。スイシャク様が、乳白色の光をもっと強くして、わたしをぐるぐる巻きに包んでくれたから、すぐに落ち着いたけど。

 

 これって、神霊さんからの〈縁切り状〉みたいなものだよね? 一族分まとめて、本家の入り口に貼り出してあるんだよね?


 うん。このお屋敷が、クローゼ子爵家で間違いないよ……。


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― 新着の感想 ―
[一言] おもろ
[一言] スイシャク様、荒れ放題のお社がピッカピカの新築なったぐらい張り切ってそうでよき おれはやるぜおれはやるぜ() 本人じゃないとあだ名すら分からんようになってるんですね! 名は力になるからで…
[良い点] おかわり許可でましたー! これでモフモフタグが火を吹くことができるッ! ふくふくもふもふを抱えた可愛い寄り美人の賢い少女。しかも御名前が認識出来ないで他人にはチュンチュンいう美少女にみえる…
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