18
豊はその赤い扉に向かって歩き出した。
「ゆたかああああああ!!だめ!いっちゃだめ!!」
しかしそれに振り向かずに歩いていく。
「ゆたかあああああ!!!!!!」
「俺たちにはもうこれしかない。いくぞ。」
・・・。
豊の様子がおかしい。
「ゆたか?」
「はやくいくぞ!」
さっきよりも口調が強くなった。
どうしちゃったの?まるで別人みたい・・・。
美佐は震えながらもついていく。
赤い扉を豊があけるとまた階段が続いていた。
「また・・・。」
「いくぞ。」
本当に豊はどうしたのだろうか。
「まって。」
その声にも反応せずに黙々と豊は歩いていく。
美佐もこれ以上言っても無駄だと思い、豊とはなさないことにした。
階段に足を乗せる。
そして次の階段にも足を乗せる。
豊の方を見てみる。
豊はさっきと同じ様子だ。
きっと3人も死んでしまってかなりショックを受けているのだろう。
それで別人みたいに性格が変わってしまったのだ。
美佐はきっとそうだと自分に言い聞かせた。
そしてまた階段に足を乗せた。
「はぁはぁ・・・。」
さっきから20分ぐらいたっている。
しかし、扉は見えてこない。
足が痛い。感覚がなくなってきている。
「ゆたか・・・。はぁはぁ。まって。休憩しよ。はぁはぁ・・・。」
しかし豊は振り返らない。
反応すら示してくれない。
「ゆたか!」
思いっきり叫んでみた。
「うっせえんだよ!!!てめぇはだまってついてきりゃいいんだよ!!」
「え・・・。」
豊は完全におかしくなっている。
「ねえ。どうしたの・・・はぁはぁ・・・ゆたか?」
「どうもしてねぇっつてんだろ!あぁ?聞こえねえーのか!!このくそ!!!」
・・・。
今の言葉に美佐はカチンときた。
「くそはあんたのほうよ。」
「んだとお?」
豊はいきなり立ち止まった。
「てめぇだろ!!!くそ。」
「あんたは豊じゃない!豊はそんなやつじゃない!!」
「おれぁ、豊だっていってんだろおがあ!!」
完全に狂っている。
いままでこんなやつといたなんて信じられない。
「ころすぞおお!!!!」
そう言って不意に豊は突然振り返り、こぶしを美佐めがけて飛ばしてきた。
バコン!!
「きゃ!」
美佐は悲鳴をあげる。
涙目になった。
しねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしねしね・・・
もう美佐の心の中にはしねの二文字しかなかった。
しかしいまここでは豊を殺せそうにない。
ここはもう少し機会をまたないと・・・。
豊は黙って、振り返り再び歩いていく。
美佐も何も言わずについていく。
その美佐の眼には殺意があふれ出していた。
そして、美佐も狂いはじめた。