17
「い、いやだ・・・いやだぁぁぁぁぁ!!」
卓也は叫んだ。
さっき飲んだのが毒薬?
信じたくない・・・!!!
「おれ・・・死んじまうのかよ・・・。」
昌介のふるえている声が聞こえてくる。
卓也は扉をたたいた。
「あけてくれ!!頼む!頼むよ!!」
しかし扉はびくともしない。
「なぜなんだ?おれたち殺して何がおもしろいんだ!?」
沙織が倒れた。
それに気が付き、卓也が駆けつけた。
「沙織!!」
沙織は動かない。
唯一呼吸はしていた。
卓也は思いっきり沙織を揺さぶった。
「お願いだ!死ぬな!!」
それを言ったのと同時だった。
沙織は突然目を大きくあけ、ビクンと動いた。
口から赤い液体が噴き出す。
「さおりぃーーーーーーー!!!!」
赤い液体は卓也の肩に降りかかる。
沙織は今度は完全に動かなくなった。
「・・・。さお・・り・・・。」
一滴のしずくが卓也の目から落ちた。
「い、いや・・・。」
美佐も口を押さえて涙を流す。
昌介はこらえている。
しかしやはり震えている。
「なにが目的なんだぁ!あぁ?いってみろよぉ!!!!!!!」
卓也は上を向き大声で叫んだ。
それはもうほぼ、悲鳴に近い声だった。
卓也のこんな声を聞いたのは初めてだ。
少なくとも美佐は聞いたことがない。
よほど沙織が死んだことがショックなのだろう。
「うわぁああああ!!!!!」
卓也は上を向いて叫んでいる。
昌介を見るとうつろな目で卓也を見つめていた。
「ああぁあああぁぁぁあっごほっごほ!!!」
突然卓也が口を押さえた。
「だ、大丈夫?」
近寄った美佐は思わずきゃっ、と叫んで後ろへ下がってしまった。
卓也の手には真っ赤な血が付いていたのである。
彼の歯にも付いている。
「た、卓也!!」
豊も駆け寄る。
卓也はそのまま倒れこんだ。
「おい!おい!おおおおおおおおおい!!!!!」
豊は思いっきり卓也を揺さぶる。
卓也は反応しない。
もう卓也までもが倒れてしまった。
これでこの不気味な塔に入って2人も死んだ。
さっき、豊が言ったとおり戻ったほうがよかったというのか。
「さよならだ。」
不意に昌介の声が聞こえてきた。
美佐は勢いよく振り返る。
昌介は笑っていた。
「だめえええええええ!!!」
しかしそう言った途端に昌介から笑みが消えた。
ドサリッ
・・・・・・。
もう美佐は涙が止まらなかった。
そしてひざまずいた。
「もうやめて・・・。」
豊は震えてまっすぐ前を向いている。
豊が向いている方向にはさっきなかったはずの扉があった。
赤い扉だった。