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最終決戦・カリーナ~後編~

「さぁ、勇者。お前の力を見せてみろ」

「言われなくたって、やってやるさ!!」


 カリーナが剣を構えると、後ろで展開し続けている『勇者の宝物庫(ザ・ヒーロー)』も神に剣先が向かった。

 誰かの生唾を飲み込む音がその空間に小さく響いた時、カリーナが走り出した。

 その速さに、一瞬だけ神も驚き固まった。その一瞬でカリーナの攻撃を防ぐための動作が間に合わなくなる。

 カリーナが剣を突き刺すように動かすと、回避行動が遅れた神の来ている服を切り裂いた。


 それを見た神は舌打ちをして後ろに跳んだ。

 切り裂かれた服は一瞬にして元に戻っていた。


「お前、速いな」

「まだまだ行くよ」


 その後も、カリーナの連撃は止まらない。

 神は防戦一方となり徐々に傷が多くなっていく。

 そこに『勇者の宝物庫』も加わった。フェイント加え、同時攻撃を加え、あらゆる方向からの攻撃に神は対処しなくてはいけなくなっている。


「面倒だな。全部吹き飛ばすか?」


 神がそう思考した瞬間、その思考を神は悔いることとなった。

 その思考をした瞬間、背筋に悪寒が走った。

 その方向を見ると、カリーナが獣のような姿勢で神を見据えていた。そして、カリーナは消えた。

 消えたカリーナが次、現れたのは神が刺されたと知覚した瞬間だった。


「ッオゴ!?!?」


 刺された神は勢いを止めるために壁を背後に乱立させた。その勢いが止まったのは壁を5個ほど破壊してからだった。

 カリーナはそれだけでは止まらない。追い打ちを掛けるように『勇者の宝物庫』で神を串刺しにした。


 カリーナは深呼吸をしながら一歩二歩と後ろに下がった。


「倒したの?」


 神が倒れている場所は建造物が立ったことによる煙が出来ていた。

 その所為で、神の姿が見えなかった。


「カリーナ!!!! 後ろ!!!!!!!」

「!?!!?!?!」


 ノルメの叫びにより、カリーナはしゃがんで神の攻撃を回避した。

 そこにいたのは、串刺しになっている筈の神だった。


「解析、完了。適応、完了。『勇者の宝物庫』」


 その言葉をいち早く理解したのは、レイだった。


「それって、カリーナのオリジナルが効かなくなったってことか……?」

「え!? それじゃ、カリーナお姉ちゃんはもう……」

「俺たちの……」


 エクレンが言葉を続けようとしたとき、ノルメが遮った。


「止めてよ!! カリーナは負けない!! 私たちが弱気になってどうするの!! 私たちじゃ、神に一撃も届かないからノルメに託してるんだよ!! だったら、私たちは声援の一言でも送るべきでしょ!!」


 ノルメの言葉に、三人は自分の弱さを痛感した。だが、それと同時に心だけでも負けてはいけないという事を理解した。


「カリーナ!! そんな奴に負けるな!!」

「お姉ちゃん、勝って」

「カリーナちゃん! 勝ってフォレスちゃんと結ばれるんでしょ! それまで、絶対に負けないで!」

「カリーナ! 現世に戻ったら、二人で世界を旅しようよ。目的のない旅って今までの旅と同じぐらい楽しいと思うんだ」


「みんな。うん、ありがとう……でも……」


 カリーナはみんなの言葉を胸に秘めて、神に向き直った。


「仲間からの激励は届いた。そんな目だな……面白くなってきた!!」


 今ままで受け身だった神が動いた。

 神が体の正面で手を叩くと、背後に無数の魔法弾が現れた。その数は十、百とどんどん増えて行く。


「防いで見せろ! 勇者!!!!」


 神が合掌のように合わせている手を開いた瞬間、魔法弾が続々とカリーナに向けて放たれた。

 魔法弾の直径は3cm、スピードは時速1km、カリーナはそんな魔法弾を次々と勇者の剣で斬り落としていく。


「もっと、もっと、速く!! もっと深く集中しろ!! もっと、もっと……もっと!!!! はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 その直後、カリーナの右肩にナイフが突き刺さった。

 そして、斬り落とせなかった魔法弾がカリーナの体を滅多打ちにする。

 数千個の魔法弾がカリーナを直撃し、カリーナは防御なんて出来ずにただ、撃たれ続けた。


 その攻撃に、カリーナの持続回復も、ノルメの回復魔法もあってないようなものだった。


「……っぷ、はは、あはは! ハハハハハハハハハハ、ハーハッハッハッハ!!!!! これが勇者か!!!!! ナイフ一つに戦況を変えられてしまうなんてな!!!! 弱すぎるわ!!!!!!!」


 その神は本性を現した。

 ボロボロのカリーナを下品な声で笑った。

 床で倒れているカリーナの髪を掴んで顔の前まで持ってきた。


「良かったな。お前の恋人も、俺が殺してやるよ。手足を拘束して、指の爪を一枚一枚丁寧にゆっくり、恋人の精神が崩壊する寸前で全部の指を回復させて、何度も、何度も……あぁ、もちろん安心してくれ。自害できないように体の自由も俺たちが奪ってやるからな」


 神はそう言って、大声で笑った。

 それと同時に、神の服をカリーナが掴んだ。

 神が浮かべていた笑みが消え、真顔に戻った。


「まだ、動けるんですか」

「……お、まえ、なんか……に、フォレ……ス……けな、い……はぁ、はぁ、この……世で、い、ち、ば……は、フォ、レス……だ…………! だけ、ど……おまえ、だけは……ここ……で……ころ、す……!」


 直後、カリーナの体が、眩いほどに輝いた。


「何を言って……!? お前!! その光!!!!! どれほどの、命令式を自分に与えた?!?!?!?!?!?!?」

「……さぁ、かじ……ばの、ばか、ぢから……だよ……」


 その光が強くなると同時に、カリーナが光に埋もれて見えなくなっていく。けれど、その時、カリーナが見せて笑顔と声はその場にいたノルメたちに届いていた。


「みんな、ごめん。大好きだよ。フォレス、愛してるよ」


 そして、カリーナを中心に巨大な爆発が起きた。


「カリーナ?」


 フォレスは、その時何かを感じたのか、空を見上げた。


 爆発が治まると、ノルメたちは涙を流して声を出して泣いていた。

 十分経っても泣いているが、少し落ち着いた。

 レイさんがノルメを抱えて、その部屋から出ようとした。


 その時だった。その場にいた全員に悪寒が走った。


「いや~、危なかった。死ぬかと思った」

「……んで、なんで、生きているの?」

「惜しかったよな。自分の命を犠牲にあの威力。良いものを見た」

「そんなこと聞いてない!!!!!!」

「おぉ、こわ。まぁ、しょうがないよな。あの勇者は無駄死にだったんだもんな」


 そして、神は飛んで何処かに移動しようとした。


「どこ行くのよ! 私たちと戦いなさい!」

「なんで、雑魚と戦わないといけない? 最後に行ってたよな。イレギュラーがこの世で一番強いって、だったら、早く俺があいつと同じ場所に送ってやらないとな」


 そう言って、神は気味の悪い笑みを浮かべてどこかに飛んで行ってしまった。

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