最終決戦開始
転移陣に入った僕たちを待ち受けていたのは、何処までも白が続く世界。そして、その白を埋め尽くすほどの天使だった。
天使は初めて人と会ったら挨拶をするのが決まりなのか、全員が一斉に喋り始めた。
もうね、五月蠅い。本当にうるさい。まじで、勘弁してほしい。
という事で、こちらも大きな声で対抗した。
『初めまして、量産型戦闘用天使……』
『うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』
それに、何故か天使たちはムッとなり、天使も大きな? 音を出した。
『キィィィィィィィィ!!』
『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
それが、何度か続き、神が出て来た。
『うるさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!!!!!』
『だから、天使に意志を持たせるのやめようって言ったのに……』
『天使。仕事はやれよ』
『は、はい!!』
そこから、天使の雰囲気ががらった変わった。
「それじゃ、リュクス、リゼさん、お願い」
『あぁ!』
『お前たち! 後は頼んだ!!』
二人は示し合わせなどしていない。けれど、示し合わせたかのようなその言葉に、魔王軍もエルフ軍も背筋に何かが走り、やる気に満ち溢れた。
『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!』
その声は、今までの天使との大声合戦を軽く凌駕するほどの大きな声だった。
「それじゃ、フォレス。私たちも行こう」
「あぁ、そうだな。行くぞ!!」
そして、僕、リュクス、カリーナとノルメ、レイさん、エクレン、ツバキはそれぞれ走り出した。
少し走ると、目の前に三つの扉が現れた。
「一人ひとり相手してやるってことか……望むところだ」
「フォレス、気を付けろよ」
「分かってるよ。リュクスもね」
「あぁ」
「ちょっと、私を除け者にしないでよ! 私も幼馴染の一人だよ」
ほんの少し、除け者にしてしまい、ノルメはぷんぷんと怒ってしまった。
リュクスを見ると、ニヤニヤしながら顎でいけいけと言われてしまい、ノルメたちを見ても殆ど同じ行動で返されてしまった。
僕は意を決して、カリーナを抱きしめた。
「カリーナ、生きろよ」
そう言って、僕は扉の中に入って行った。
カリーナは、急に抱きしめられたため、思考が止まってしまったようで、その場から一歩も動けない様子だった。
「そんじゃ、俺も先行くぜ」
そう言って、リュクスも扉に入って行った。
その場に残された。ノルメたちはカリーナの意識を取り戻すのに一所懸命だった。
結局は、五分ぐらい経ってようやく戻ってきた。
「カリーナ、早く行くよ」
「……う、うん」
未だに惚けているカリーナの背中を押しながらノルメたちは扉に入った。
扉の先で待っていたのは、一対一の神との対決だった。まぁ、勇者意外だけど・・・
カリーナ視点
「待っていたぞ。わが勇者よ」
カリーナたちが入った扉の先には、男が二人待っていた。
「貴方……何処かで……」
その中で唯一、ノルメだけが怪訝な表情を見せた。
「やはりか……逃げた時から確信はしていた。久しぶりだね、《センリ・ノウェール》」
「!? やっぱり、お前が私のことを・・・」
「ノルメ、あの人は誰?」
隣にいたカリーナがノルメに聞くと、ノルメは苦虫を嚙み締めたような表情で語った。
「あの人は、勇者協会の教皇だよ。私を奴隷に落とした張本人でもある」
「聖女、あなたを捕まえたのは他でもない、神からのお告げあったのだよ。《ドラゴレイン》王国と《ノウェール》王国を戦争にすれば聖女が手に入るとな。だから、あれは、仕方のないことなのですよ」
勇者協会の教皇は悪びれる様子もなく、逆に嬉しそうに語っている。
それが、気持ち悪くてしょうがなかった。
そこでエクレンが二人の代わりに気持ちを代弁してくれた。
「もういいよ!! あんた、もう喋らないで。気持ち悪い。それに、私たちの目的は、そっちの神だよ」
教皇の少し後ろで仁王立ちしている男は、そのまま、動かずにカリーナたちを見ていた。
その男は、知性的な印象を持つ男性だった。白衣が物凄く似合いそうだった。
「だめだめ、あのお方と戦いたかったら私と戦ってください。私に従わない勇者などいりません。私自らで殺して差し上げます」
そして、カリーナたちの戦いが始まった。
リュクス視点
扉の先にいたのは、一人の眠そうな少年だった。
「よお、久しぶりだな」
「あれ? ほんとだ、久しぶりだね、兄さん」
「あぁ、それで、さようならだな」
「うん、さようなら。愛してるよ、兄さん」
これ以上は何も言うことは無いと、二人は視線を交わして戦いが始まった。
フォレス視点
扉を潜ったフォレスが見た光景は、暑苦しいほどの筋肉を持った全裸の男だった。
「待っていたぞ!!! イレギュラー!!!! お前は、この私が相手してあげよう!!!!!」
うん、本当に嫌なタイプの相手をしなければいけないらしい。
「はっはっはっは!!!! さぁ!!! どこからでもかかって来なさい!! 一瞬で、葬り去ってあげますよ」
最後の一言に僕はゾッとした。全ての神経を後ろに跳ぶことに集中させた。
その瞬間、僕の鼻を掠るように何かが目の前で大きくなっていた。
一体、この神は何をしたのか、僕は冷や汗を流してしまった。