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天からの刺客

 《神殺し》それが、何を意図しているのか、深く考えなくとも言葉を聞けば誰しもが理解できる言葉。

 そして、誰しもが恐れる言葉。


「え、お兄ちゃん? それ、本当?」

「もちろんだよ」

「神様を倒すのか……ちょっと、気が引けるな」

「神様か……リュクスはとっくに気が付いてたみたいだね」

「そっか、今の神様は悪い神様なんだもんね。倒さなきゃだよね」


 みんな、驚いてはいたけど、理解し納得してくれたようだ。


「おいおいおい、お前たち何言ってるんだよ!! 神様を殺す!?!? 何馬鹿なこと言ってるんだよ!! そんなことしたら、この世界が崩壊しちまうじゃねぇかよ!! 考え直せ! 唯の、人間が神様を殺せるはずねぇだろ!!!!」


 その場にいた、僕たちの関係者じゃないノアさんがそう叫んだ。


「ううん、僕たちは本気だよ。偽物の神を殺す。そして、神の箱庭である今のこの世界をぶっ壊す」

「え、ハハ、お前たち、何言ってるんだよ……意味わからねぇよ、頭おかしいんじゃねぇの? お、おれは、もう付き合ってられねぇ! 先に帰らせてもらう!!!」

「ちょ、ちょっと、ノアさん!!」


 ノアさんは僕の静止を無視して先に地上に戻ってしまった。


「はぁ、しょうがない。自力で帰るしかなさそうですね」


 いつも通り、この壁画を模写してこの真っ白な空間を出ようとした。

 その時だった。

 僕たちが降りてきた滑り台から一人の真っ白い服装をした女性が落ちてきた。


 僕たちは直ぐに臨戦態勢を整えた。

 何故なら、その女性はケモミミを生やさず、汚れ一つない服装だったからだ。

 このことから、最低限、獣人族の案内なしで、魔物に襲われても対処する能力を持っているという事だ。


「いやー、なんで、こんなところにいるんですか。ここに来るのに1分も使ったじゃないですか」


 そう言って、その女性は何処からともなく大きなハンマーを取り出した。


「量産型戦闘用天使アルファー1487番、敵を殲滅いたします」


 そう言って、アルファーはウインクをして僕たちに攻撃を開始した。


 アルファーの攻撃は単純で恐ろしいものだった。

 動きは単純、簡単に予測して避けることは出来る。だが、その攻撃速度がハンマーのそれじゃない。避けようとしても、あと少し反応速度が遅れたら体の半分は消し飛びそうな勢いを持っていた。

 ハンマー自体強打を撃てる武器なのに、それに、勢いまでも付いてしまっては、アルファーの攻撃が当たった床や地面に半径数メートルのクレーターが出来るのも頷ける。


「全員! 命懸けで避けろ!! そして、逃げろ!!!」

「ふふふ、この私が貴方がたを一人でも逃がすとお思いで?」


 僕の声を聞いて退路に移動しよとしていたノルメを一瞬で追い越し、扉の上の部分を破壊した。

 破壊された瓦礫で退路は塞がれ、僕たちは逃げることが出来なくなってしまった。


「私はご主人様からあなた達の始末を命令されいます。命乞いしながら地面にひれ伏しなさい。そうしたら、苦しませずに殺してあげるよ」


 こうなったら、やるしかない。

 カリーナたちに目配せで戦う意思表示をして、魔力を解放した。


「おお、凄い凄い! まさか、こんなに楽しそうな相手を殺す任務だなんて、なんて、なんて、最高!!!!」


 アルファーは恍惚な表情を浮かべて天を見上げた。

 その一瞬の隙を逃すまいと、ノルメの『7つの光』でバフとデバフを一瞬で行った。

 これで、相手の動きは遅く、自分たちの動きは速くなり、対等かそれ以上に戦える筈だった。


「う~ん、全然ダメ。たったのこれっぽっちしか身体能力下げられないの? よっわ、ザコじゃん」


 そう言って、アルファーは先ほどと同じ速度で僕たちに攻撃を仕掛けてきた。


「う、噓でしょ。アルファーは全く本気出してなかったって言うの?」

「アハハ!! その、絶望の表情……私、大好き!!!」


 そして、アルファーは先ほど以上の速度でノルメの前に移動した。


「まずは、貴女から」


 そう言って、ハンマーを振り上げた瞬間。アルファーは地面に膝を付いた。


「全員、僕が護る!!!」

「へー、重力魔法。面白いものを使えるんだね」


 僕が下げられる限界まで重力を強化している。

 もし、ピーカックがこれを受けたら、一瞬で潰れてしまうほどの威力を持っている、筈なのに、アルファーはその攻撃を物ともしなかった。

 アルファーは、何か少し考えて、立ち上がった。


「これだったら、全く脅威にならないね。うん、別に、殺すほどでもないか。飽きて来たし、帰ろう」


 そう言って、アルファーは一瞬にして姿を消した。

 その場には、恐怖で震えるノルメ、弓矢を構えたまま、アルファーの移動が速すぎて一本も放つことの出来なかったレイさん、ただ、一歩も動くことの出来なかったカリーナ、アルファーが去ったことに誰よりも安堵してしまっている僕が残されていた。

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