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魔王は魔王城にあり

 精霊王との契約を解除してから二日が経過した。

 その間、精霊王はカリーナの目の前に現れていない。

 その代わり、リュクスが出発直前に現れた。


「いやー、お待たせ。フォレス」

「リュクス、やっと来た、待ちくたびれたよ。それで、その子が、例のあの子?」


 リュクスの隣には、白と黒のメイド服を来た綺麗な女性が立っていた。

 その女性は、僕の顔を見ると憎しみの眼を向けて来た。

 それはそうだ、僕はこの人が仕えていた人を殺したんだから。憎まれてもしょうがない。


「リュクス、その子はどうするの?」

「ん、俺の世話をさせる」

「え、世話!?」

「初めまして、カリーナ様、ノルメ様、レイ様、……フォレス様。シュルイと言います。これからは、リュクス様の身の回りのお世話をさせていただきます。以後お見知りおきを」


 シュルイは洗礼された身のこなしで頭を下げた。


「と、言う訳で、これからこの旅にシュルイも同行させるから、よろしくな」

「いやいや、待て待て待て。何勝手に決めてるの? この人は、エルフの森を燃やした張本人の元部下だよ、本当に一緒に連れて行くの? 僕は反対だね」

「連れて行くに決まってるだろう。その為に、色々と調教を施したんだから。安心しろって、お前も、カリーナたちに襲うことは無いから」

「う~ん、私も嫌ですね。森を燃やされた恨みは消えることは無いですから。それに、同胞をあんな目に合わせておいて、よく、のこのこと私たちの前に現れることが出来ましたね」


 レイさんのその言葉に、シュルイは何かを思い出したかのように、顔を青ざめて地面に膝から崩れ落ちた。顔を両手で覆い、体全体をガタガタと震わせている。「あ、あ……」と小さな声を出しながら、記憶を遡っていた。


「ち、違うんです! あ、あれは……」

「違う? 何が違うんですか? 可笑しいと思ったんです。エルフの結界が破られたわけではない。普通に入ってきた。そのことに疑問を持ったリゼが結界の外を探索して見つけましたよ。手を握り合った同胞の死体をね」


 そして、全部を思い出したかのように発狂して気絶してしまった。


「あーあ、上手く調整したつもりだったんだけで、ダメだったか」

「リュクス、どういうこと?」

「こいつの記憶を改竄したんだよ。元から俺に仕えてて、この間、久しぶりに再会したって記憶にな。だがまぁ、今みたいにこいつの奥深くに根付いている記憶は上手く改竄できなかったみたいだな」


 自分が何を行ったのか、リュクスは本当に分かっているのだろうか?

 僕は、改めて、リュクスが本当に魔王なんだと再認識した。


「リュクス、今すぐに記憶の改竄を止めろ」

「は、嫌だね。こいつには、才能がある。俺は、それを活用するんだよ」


 リュクスはそのまま、記憶の改竄をするための作業に入った。

 僕はその行為に行うリュクスに嫌悪感を抱いた。


「リュクス、いい加減してよ。怒るよ」

「勝手に怒ってろよ。人も殺せない、能無しが」


 その言葉に僕は限界が来た。

 リュクスのことを殴ろうとしたとき、横から猛スピードで何かが通り過ぎて、リュクスのことを殴り飛ばしていた。


「今の言葉、取り消しなさい。リュクス」


 リュクスは、折れた歯を血と一緒に吐き出して立ち上がった。


「取り消すわけねーだろ。自分のオリジナルにも目覚めていない雑魚勇者が。それに、唯一覚醒したスキルを使っても、今は何も召喚できないんだろう? 本当に、雑魚じゃねぇか」


 カリーナは何も言い返せずに俯いてしまった。

 リュクスはシュルイを担ぎ上げて、僕たちに背を向けた。


「リュクス、どこ行くんだよ」

「何処って、帰るんだよ」

「帰る?」

「あぁ、魔王城に俺は帰る。次会うときは、敵同士だ。じゃあな」

「ちょっと、待ってよ。急にどうしたの!?」

「急じゃねぇ。俺は、ずっと場違いだったんだよ。心優しいフォレス、カリーナ、院長。その中に、悪の根源、魔族の王である俺がいるのが、いつも、疑問だった。だが、それも、これまでだ。俺はやっぱり魔王みたいだ。だから、フォレス、頼む。俺は、お前にだったら殺されても良い。だから、魔王城で待ってる」


 そう言って、リュクスは何処かに、いや、何処かじゃない。魔王城に帰って行った。


「おーい、お主ら。そろそろ行く……何があった?」


 そこに、出発の準備を終えたリルーゼさんが現れた。


「そうか、やはり、魔王という宿命には何人たりとも逆らえないか。……ほれ! 我らを守ってくれる人たちがそんなに落ち込んでいてどうする。そろそろ、出発するんだから、顔を上げろ。我らは前を向いて歩くことしか出来なんだ、下ばかり向いていると木々にぶつかってしまうぞ」


 そして、次のエルフの目的地まで淡々とエルフを護衛し、次の町に僕たちは向かった。

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