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第八十三話 図書室の密談

今回ちょっと展開に迷いましたが、まずまずの着地になりました。

 結局その日は時間も遅いということもあり、後日改めてその秘密の入り口を見てみようということになる。流石にレイもユーリもそこで世紀の大発見に巻き込まれるのは良しとしない。まあまだシルフィが見つけたと言っただけなので、未踏破の古代遺跡の入り口と決まった訳でもない。2人はそんな言い訳をしながら、その日その場は別れる事となる。


 そして学院生活が再び始まるとレイとユーリはすれ違いが続き中々2人だけの時間を作る事ができない。セリアリスを交えた時間というのは時折作れるのだが、事が神殿の古代遺跡にまつわる事の為気軽にその事を明かす訳にはいかない。勿論、その周囲には生徒会メンバーがいる事も多く、益々そう言った時間を作る事が難しかった。ただ幸いにして2人の認識ではそこまで急いで解明しなければいけないものでは無いという事もあり、そう言う面での焦りは無かった。


 だからその日偶々空いた時間にユーリと出会えたのは本当に偶然だった。


 放課後の図書室。その日セリアリスはノンフォーク公の王都邸宅に呼び出されており、迎えの馬車に乗って学院を離れていた。レイは護衛として本来つくべきだったのだが、まだ平日でノンフォーク公爵側からの護衛もいたことからセリアリスが気を利かせてその日は非番とさせて貰った。なのでレイは折角空いた時間を有意義に過ごそうと思い、先日の神殿下にある古代遺跡に関して図書室に調べに来たのだ。


 ここ学院の図書室はその蔵書数も含めてかなりの広さを誇る。古代の伝承から最新の魔法研究資料までそのジャンルは幅広く、学院の生徒だけでなく教師や学院外の研究者なども足を運んだりする。レイは自身の選択する科目の研究資料などを読みに時折図書室にやってくるが、いつ見てもその蔵書数に圧倒されてしまう。


『さて王都の大神殿に関する資料はどの辺だ?』


 勿論図書室の中は余り大きな物音を立てるのはマナー違反の為、レイは静かに本棚に目を凝らす。本棚は一応大まかなジャンルで纏められている。なのでまずそのジャンルを見極めて欲しい資料がありそうな書棚に足を運ぶ。レイが選んだジャンルは王国史の書棚である。王国史を紐解きこの王都ができた当時の事を調べられれば、大神殿の事を触れるものもあるのではと思ったのだ。そこでその書棚から王国建国当時の事が判る資料を2、3見繕い書籍閲覧用のテーブルに持っていき資料を眺める。


 ここ王都は建国王である初代キースクリフ・フォン・エゼルバイトが建国宣言をした都市である。元々この地域の豪族出身だったキースクリフは次第にその勢力を広げ、王都ワシントスにて建国宣言をしエゼルバイト王国の歴史が始まる。ちなみに王都は元々古代遺跡の跡地で王都となる以前から都市があり、どうやら大神殿もその都市の頃から既にあるらしい。他の書物を見てもやはり大神殿の歴史はそれ以前からあるようで、その古代遺跡にまつわる説明はのっていない。


『うーん、この資料は空振りかな』


 どうやら大神殿の歴史はエゼルバイト王国以前の歴史から始まっているようだ。そうすると王国史以前の書物や研究資料をあたるべきだろう。レイはそう思うと、借りてきた書物はそのまま元の棚へと戻し、王国史以前の資料がある棚へと移動する。


 王国史以前となるとそれは神代まで遡る最古の書物から王国以前の群雄割拠の豪族が血で血を洗う戦乱の時代までとなる。今でこそ国として4つの国家が存在しているが、それ以前は都市ごとに有力者がいてその勢力を伸ばそうと戦乱に明け暮れていた時代である。エゼルバイトはその4つの中で2番目に古い国であり、一番古いのは神聖オロネス公国、次いでセルブルグ連邦、エリアーゼ皇国の順で建国されている。ただ小国家群であるセルブルグ連邦の1国家単位でいえば、神聖オロネス公国より古い国もあるらしいので、その辺の線引きは曖昧だ。


 レイは神代の資料からパラパラと立ち読みをしながら、該当しそうな書物がないかを探していく。そしてその資料探しに没頭していると、ドンッと肩が何かにぶつかる。


「あっ、すみません」


 レイは他の人にぶつかったのだと思い、慌ててぶつかった方に顔を向けると、やはり驚いて謝ろうとしていたユーリと目が合う。


「えっ、レイ?」


「えっ、ユーリってごめん、ぶつかっちゃったね」


「ううん、それは大丈夫。資料を探すのに集中して気が付かなかったから私の不注意だわ」


「ああいや、俺の方こそ全然周りを見ていなかったって、なんかお互い様って事かな」


「フフフッそうね、お互い様ね。ってレイったらこんな所で何をしてるの?」


 レイとユーリはお互い顔を見合わせながら、自然と笑い合う。


「ああ、多分ユーリと理由は一緒じゃないかな。ほら例の件でちょっと調べものでもしておこうかと思ってね」


「成る程ね。私も同じ理由。今日は生徒会もないから空いた時間を使ってね。レイはセリーの護衛は無いの?」


「うん、俺も同じく今日は非番になったんだ。こんな機会が無いと中々調べものとかする時間が取れないから。だから折角の機会だからと思って来てみたんだ」


 そう言ってレイは肩を竦める。ここ最近は中々自分の為に使える時間を確保できていなかった。休日もニーナの様子を見に行ったりと色々やる事があり忙しい。だからこそこういう時間は貴重なのである。


「そう言う意味では私もかな。最近生徒会絡みで拘束される事が多いから、中々自分の為に使える時間が少なくてね」


「ハハハッ、確かにユーリとこうして2人で話すのもこの間大神殿以来だもんね。お蔭で中々探索の日取りを決める事も出来ないし。ああそうそう、ちなみに例の件で何か良い資料は見つかったかい?」


 レイの方は余り芳しくないが、ユーリの方で何か進展があったのではないかと期待をし、レイはユーリにそう質問する。ただユーリの表情を見て、レイは同じような状況なのだと察する。


「ううん、残念だけど進展はないかしら。この王都が古代遺跡の跡地の上につくられた都市だっていうのは分かったんだけど、それ以前の資料って余り多くないのよね。神代まで遡るとそれこそ信憑性がなくなるし」


「うーんやっぱりそうか。その辺は俺の方も一緒かな。やっぱここの資料を探すよりかは、神殿内の伝承や資料を探す方が現実的かもね。とは言えそれは一般人の俺では閲覧できないだろうから、ユーリにお願いするしかないけどね」


 大神殿は非常に大きな建物であり、神殿にまつわる書庫もあるという。勿論一般人が見に行けるようなものでは無いのだが、手掛かりという部分ではここよりは可能性が高いだろう。


「でも神殿内の書庫も閲覧権限があるものと無いものがあるから、私でも全部の書物を確認する事は出来ないわよ。御養父様なら全ての資料を確認できるのだろうけど」


「アナスタシア卿は神官位では大司祭だもんね。そうなるとやっぱアナスタシア卿には報告をしないと駄目だろうね。勿論、入り口を確認して古代遺跡の入り口だと確定してからになるけど」


「そうね、今の段階だとヘンに心配を掛けちゃうだけだもの。じゃあ神殿に捜索に行く日だけどレイはいつなら大丈夫?」


 レイはそこで自分の都合を考える。平日は今はまず無理だろう。休日はセリアリス次第だが、予定を空ける事は比較的できる。とは言え、休日は神殿も多くの人が参拝に訪れるので人目を忍ぶとなると不都合がある様な気がする。


「うーん、休日は比較的都合をつけやすいけど、人目が気にならない?」


「そっちは私の方で何とかするわ。場合によっては御養父様に細かい事情を話さないで協力してもらう事もお願いはできるし。ただ日中よりは人気の少なくなる夕方以降の方がいいけどね」


「うんなら今度休日に予定が空きそうな時に連絡するよ。時間は夕方でも俺は構わないし。あ、あとできれば何かしら情報を得られれば嬉しいけどね」


 レイはそう言って、てきぱきと予定を決める。方向性さえ決まれば後は決断のみである。それにレイとしてはやはり誰も踏み入れたことの無い遺跡の話というのはワクワクする。だから自然と笑みが零れる。


「まあ神殿の書庫の方は少し探してみるわ。それと噂話の方も他の人に聞いてみる。フフフッなんだか私も不安より期待の方が大きくなってきちゃったわ。とは言っても古代遺跡の探検まではできないだろうけどね」


「ははっまあそれは仕方がないよ。どんな遺跡なのかもわからないんだから。それこそ何か邪悪なものを封印している神殿とかお伽噺である様な遺跡かも知れないんだし」


 レイの言っている事はあながち無い話ではない。実際に過去邪龍が封印された遺跡を解放したため、都市国家が一つ滅亡したなんて歴史がある位だ。まあ流石に大神殿が建って1000年単位の年月が経っているのは間違いないので、今更その手の封印が掛かっているなど無いとは思う。


「フフフッそうね。でも金銀財宝なんてお伽噺もあるからちょっと惜しい気もするけど。でもどうせ神殿の下にある遺跡なら神殿に寄付しなきゃいけないだろうし、そこは期待しないでおきましょう」


 ユーリも夢物語としては魅力を感じるが現実問題としては、神殿のものとなる可能性が高いのでそこは諦めている。


 するとそんなレイ達の元に人影が一つ近付いてくる。レイは新入生歓迎パーティーの際に一度話をしたきり、ユーリにいたっては挨拶程度しか交わした事のない人物である。


「あらこんな所で冒険の話?もし良かったら私にも聞かせて欲しいわ」


 彼女の名はオシアナ・シャルツベル。ここワシントス王立学院の学院長であり若き英才と謳われた人物である。レイとユーリは突然の意外な来訪者の登場に思わず目を見開き、そんな2人の様子を見て、オシアナはその妖艶な笑みを2人に向けるのだった。


面白い、これからに期待、頑張ってと言っていただける方は、是非ブックマーク並びに評価のほど、お願いします。それが作者のモチベーション!


よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 予想外のお邪魔虫がわいた
[一言] 聞かせて欲しいわ。 ご遠慮します。(二人の内心)
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