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第五十七話 迷宮攻略②

もう2、3話は迷宮予定。

 もう一方のパーティ側では、近衛騎士が前衛で安定した戦いぶりを見せており、エリク、エリカ、アーネストの3名は時折魔法で援護を入れる程度で、比較的のんびりと攻略を進めていた。


「アーネスト先生は古代遺跡の探索のご経験は豊富なのですか?」


 エリカは場の雰囲気を考えて、積極的に担任であるアーネストへ話かけている。そもそもエリクとは普段から良く会話をしているので、ここで特段話さなければいけない事はない。となるともう一人のメンバーに必然的に話かける事になるのだが、正直エリカはアーネストを学校の担任という範囲でしか知らないので、ついつい質問もあたりさわりのないものになってしまう。


「そうですね、豊富かどうかは何とも言えませんが、経験はありますよ。これでも魔法を極める事を目指すものですから、古代遺跡の探索はそれとは切っても切れないですからね」


「そうなんですね。では何か古代の遺物なども見つけられたのですか?」


 エリカはそう興味深そうな表情でアーネストに質問する。これは古代遺跡探索の話題としては、切っても切れない話であり、自然の流れで聞ける事だった。


「いやいや、そうそう魔導具なんかは見つからないものですよ。そんなに簡単に見つかるのなら、世の冒険者は軒並み大富豪ですから。あくまでそれらが見つかるのは運で、私は中々そのような運を持ち合わせていません」


「フフフッ、興味深いお話ですね。なら私も早々いい運など持ち合わせていませんので、ここはやはりお兄様に期待するしかありませんわね」


 そう言ってエリカは茶目っ気を見せてエリクに笑顔を見せる。エリクはそんな義妹の表情を見て渋い顔をする。


「いや、強運というならアレックスに期待した方がいいだろう。なんてったって王家で第一王子だからな。生まれ持っている運が、我々とは違うんだよ。ああ、そういう意味ではユーリ嬢もそうだろう」


「確かに、アレックス様とユーリ様ならそうなのかも知れませんね。ならあちらのメンバーに期待といった所でしょうか?」


 この二人の会話。本心ではこちらにも同等にチャンスがあると思っている。何せエリカは加護持ちであり、今じゃユーリと同等の運を持っている。ただまだ公表されていない段階なので、お互いしらじらしい会話をしているのだ。ただそんな事を知らないアーネストは、2人の会話に同調する。


「そうですね。2人ならば何かをやってくれそうな気配がありますよね。ならば、やはりあちらのパーティーに期待しましょうか」


 そんな会話をしている時に、ふとアーネストが思い出したかのように言ってくる。


「ああ、しまった。私は学院側へ定期連絡を入れる必要があるんです。一度表に出て学院に使い魔を飛ばさなければなりません。申し訳ないのですが、一旦このまま近衛の皆さんと奥へ進んで言って貰えませんか?私は学院側に連絡をつけた後、最後の階層主の所で合流しますので」


 するとエリクがそれに笑顔で応える。


「承知しました。ここの階層もこれまで近衛騎士達だけで十分事足りてますから、階層主の部屋にさえ入らなければ、問題は無いでしょう」


「ええ、そう言っていただけると助かりますよ、エリク君。私も同じような見立てですが、無茶だけはしないように」


 アーネストはそう言ってきた道を戻っていく。エリク達はアーネストの珍しいミスに少し違和感を覚えるが、そう難しく考える事も無く引き続き探索を続けるのであった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 アーネストは一人になった後、程なくして周囲を見渡す。エリク達の隊は既に先に行っている。そしてアレックス達の隊も近くにいる気配はない。ついでに魔物の気配も探知するが、それも感じられなかった。


「ようやく単独行動に移れましたか。さてさて、お目当てのものはと……」


 そう言ってアーネストはこの階層の地図を取り出す。この地図は、古い文献の情報を纏めつつ、この探索で書き足し精度を上げたものである。地図を見てお目当てのものがある可能性のある場所は、3ヶ所。一つはアレックス達の隊が向かった先であり、一旦単独での探索候補から除外。もう一つはいまエリク達が向かった先にある。ただしこの迷宮は左右対称に区画が作られているようで、アレックス側の部屋とエリク側の部屋は一対で、ここにはアーネストが求めるものはないだろうと考えている。なぜならアーネストの求めるものは、ユニークの魔導具であり、対の片方の部屋に置いてあるとは思えないのだった。


「となると、本命はここですか」


 そういってアーネストは目の前にある壁に探知の魔法を唱える。すると隠し扉の所在を示す反応があり、アーネストはニヤリとする。そして該当箇所に手をかざし魔力を込めると、壁が淡く青白く光りはじめる。


「ふむふむ、どうやらあたりっぽいですね」


 そしてそのままアーネストが魔力を込め続けると、ズズズッと鈍い音と共にその扉が横にずれ始める。そして空いた扉からアーネストが部屋の中に入ると、お目当てのそれが、目の前の台座に置かれていた。


「クククッ、やはり伝承通り。ここまで簡単にお目にかかれるとは思っても見ませんでした。正にアレックス殿下様々ですね~」


 アーネストの前には黒い瘴気を滲ませる黄金の錫杖。ちなみにこの古代遺跡内でこの錫杖が入手出来る事をアレックスも、エリカも実は知っている。ただし、この錫杖は闇属性の武具という事もあり、アレックスのパーティーメンバーに適性者はおらず、エリカにしても自身に使えるものでは無く、バッドステータスが付与される武具でもある為、完全に見落としている。ただし人によってはこれは魅力的な魔導具であり、その一人にアーネストがいた。


 そしてこの錫杖は透明のケースの中に置かれており、そのケースには魔術的な封印が施されている。今この場でこれを解除し、その錫杖を取り出す事は簡単には出来ない。ただここまではアーネストにとっても想定範囲内であり、彼はその右手にある腕輪をかざし、そのケース毎それを収納する。そうこの時の為に彼は予め異次元収納ができる腕輪を持ってきていた。そしてそれを持ち帰り、学院に戻ったのち、その封印が成されたケースの解除を行う予定だった。


「ふう、これで今回のお仕事は終了ですかね。ああ、学生達の引率が本分でした。いけない、いけない、引き続きいい先生を演じに行きますかね」


 アーネストは再びその部屋の扉を封じ、そして何食わぬ顔で、階層主の部屋の前へと移動していった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 一方のレイ達はというと、漸く遺跡入口まで到着していた。地震の影響で森の魔獣たちが興奮しており、時折彼らと交戦をしたため、時間がかかってしまったのだ。ちなみにメンバーは、レイ、メルテ、スザリン、セリアリスの4名で、前衛をレイが1人で支え、残りはただひたすら魔法による集中砲火だったのだが、実質スザリンの独壇場で、レイも取りこぼしを時折倒す位で、大魔導どのの実力をまざまざと見せつけられていた。


「メルテのあの魔法のスタイルは、スザリンさんの直伝なんですね」


 レイは乾いた笑みと共に、ため息をつきながら感想を述べる。するとスザリンはさも自慢げに胸を張る。


「当然だろう、メルテはなんてったって私の唯一の弟子なんだからな」


「であればもう少しスザリンさんの様に、緻密さも教えてあげるといいと思いますが……」


 これはレイの素直な感想だ。スザリンは圧倒的な火力を誇りつつも、繊細な魔法操作もできる。だからこそ魔物側も損傷が少なく、良い状態のままそれを保存できるのだ。対してメルテはというと、とにかく大は小を兼ねるを地でいき、正直、やりっぱなしの感がある。だからこそ、そのあたりを身に付ければ、もっと良くなるのになぁと思わずにはいられないのだ。


「ハハッ、まあこれまでは精霊の気配を感知してなかったから、その制御を気にする事も無かったんだろうがな。ただ精霊の気配を感じれるようになった事で、自然と魔力操作も今後向上するだろう。まあその辺は今後に期待してやってくれ」


「ああ、確かに上手く使わないとあっという間に魔力切れになりますもんね」


 そう加護持ちにしろ、契約者にしろ、その魔力は人間持ちなのだ。キチンと魔力操作をしないと、莫大な魔力を持っていかれ、正直直ぐに魔力切れになってしまう。メルテの場合加護持ちではあるのだが、その魔法自体が現時点では使えない為、その魔力消費は他の人間と変わらない。ただし土魔法を覚え、加護の恩恵を受けた時は、その効果によってかなりの魔力を持っていかれる為、気を付ける必要があるのだ。


「大丈夫、私の魔力も結構莫大だからそうそう魔力は無くならない」


「はは、でもちゃんと魔力操作も覚えような。でないと手数でセリーに負けちゃうよ」


「むっ、セリーも中々やるけど、私は負けない。セリー、今度勝負する」


「ええっ、あっでもメルテさん、その前にレイと勝負するのでしょう?なら私はレイとメルテさんの勝者と戦いたいですわ」


 へんなところで流れ弾に当たったセリアリスは、慌ててレイへと軌道修正する。するとそんな呑気な会話をしていたレイ達に、スザリンが渋い顔を見せる。


「ほらアンタら、そろそろ本番の遺跡探索だよ、取りあえず中に入ったアホどもをとっ捕まえる事を目的の最優先とするから、しっかりおし」


「はあ、ならさっさと終わらせましょうか。索敵はシルフィがやってくれるから安心して、さあ、行きましょう」


 そしてレイ達もまた遅ればせながら、遺跡の内部へと侵入した。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 最後スザリンのセリフの所で、取っ捕まえるがとっつ構えるになってますよー
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