第五十五話 地震
日間がと言うかポイントの上がり幅が減って来ている……
と言う事で、モチベーションアップの為にも是非、ブクマ、評価をポチッっとお願いします!
感想、レビューも見てますよ!
宜しくお願いします!
メルテとセリアリス、レイ達が、そんなやり取りをして楽しい時を過ごしている時に、突然、地鳴りが起き、地面が揺れる。森の木々からは鳥たちが飛び立ち、森の奥からは魔獣と思しき咆哮が響き渡る。レイはこんなところで地震なんかあるんだなと呑気に考えていたが、ここは大陸の中央部。地震なんてまず起きない。セリアリスは初めて体験する大地の揺れに、顔を青ざめさせ思わずレイの袖を握りしめる。
「レ、レイ、これって何かしら?」
「ん?只の地震でしょ?暫くしたら止むからそう心配しないでいいよ」
レイはそう言ってセリアリスを安心させるように、優しく微笑む。セリアリスもまた平常運転のレイの姿を見て少しだけ気持ちを持ちなおすが、初めての体験だけに揺れている内は安心しきれない。なのでそのままレイに寄り添いながら、地震が収まるのを待つ。すると程なくしてレイの言う通り地震も収まり、セリアリスはそこで漸くホッとするとレイに言う。
「これが地震って言うのね。地面がグラグラして正直怖かったわ。でもレイはなんだか慣れてるみたい?全然、驚いていなかったわよね?」
「ああ、俺は経験があるからね。火山がある島を所領で持っていて、その近隣の島にいたりすると偶に地震が起きるんだよ。だからまあ慣れているのは事実だね。ってこの辺で地震とかはないの?」
するとその質問の答えには、何やら厳しい顔をしたスザリンが答える。
「この辺に地震などない。大体こんな大陸のど真ん中で地震なんて起きるわけがないだろう。ちっ、誰かが遺跡に張った結界を壊しやがったっ。あー何処の馬鹿だ、全くっ」
「遺跡……?結界……?……っおお、スザリンが1ヶ月位頑張って作ってた奴。髭のないおじさんに頼まれてた。ん、壊れたの?スザリンしょぼいっ」
弟子の思いがけない罵倒に思わず顔をイラつかせるスザリン。
「うるさい、このちんちくりんっ、ったく、私が1ヶ月もかけて頑張って作った結界だって言うのに、一体全体なんて事をしてくれたんだ。大体あそこの遺跡はヤバイのがあるから立ち入り禁止にしてるっつーのにっ」
事の経緯を見守っていたレイとセリアリスは、漸く話の全容を理解する。どうやらスザリンのビジネスパートナーであるノンフォーク公爵は、常闇の森の中にある遺跡の封印をスザリンに依頼して、結界を張らせた事があるらしい。ただその遺跡の所在がばれて誰かしらが結界が破壊したと。そして先ほどの地鳴りと地震。レイはそこで気になって、スザリンに聞いてみる。
「あのさっきの地震は結界が壊された時に発生するようにしてたという事ですか?」
「おう、結界が破られた時の保険でね。あそこはちょっとヤバイものが眠っているからセリーの父ちゃんが封印してくれって頼んできたんだ。なんでも王家絡みの代物らしいぞ」
すると普段余り面倒事には関心を示さないレイが、少しだけ興味を持つ。
「それって古代遺跡産の魔導具って事ですか?」
「いや、なんでも呪われた武器らしいぞ。詳しくは知らんがなんかが封じられているらしい」
「封じられてるですか……」
レイはそう零すと、腕を組み考え始める。セリアリスはそんなレイを不思議に思い聞いてみる。
「レイ、何か気になる事があるのかしら?珍しく面倒事そうなのに気にしてるようだけど?」
「ああ、ほら家の所領の諸島にも遺跡があって、前にそこの遺跡で見つかった魔導具の杖に火の精霊サラマンダーが封じられてたんだ。で、そのサラマンダーを杖から解放するのに破壊したんだけど、破壊するまでが結構苦労してね。その時は火と相性のいい僕がいたから大事にはならなかったけど、その手のものだったら、大変だろうなと思ってね」
精霊は当然ながら自由を好む。それが何かしらの魔法で強引に物に憑依させられるのだ。それが自我の薄いサラマンダーだから単純に道具として利用する事も出来るが、やはり怒りは内包されており、暴走の危険は必ず付き纏う。ましてそれが自我を持つ精霊だったとしたら、呪詛を掛けられてもしょうがないし、人が扱うなど以ての外だろう。精霊以外でも悪魔や神霊といったスピリチュアルなものが封じられている可能性もあるが、どっちにしろロクなものでは無い。
「って、そんなに呑気に構えていてて、良いのかしら?少なくてもその結界を壊した人達は遺跡に入りこんでいるのでしょう?助ける助けないは別にしても、様子は見に行くべきじゃないかしら?」
まあ正直、遺跡の探索で当人達がどうなろうとレイ達には預かり知らない事だ。大体、結界まで張ってある遺跡なのだ。大抵の人間であれば、その危険性には目を向けるだろうが、それを破壊してまでというと最早、そこで何があろうと知った事ではないとレイは思っている。
「あーそう言う意味じゃ、私はこれから見に行くつもりだ。それも契約内容だからな。あーたく面倒くせーっ、お前らはどうする?まあレイは役に立ちそうだから付いて来て貰いたいが、メルテとセリーはどっちでもいいぞ?」
「行くっ!面白そう」
「私も気になるので、付いてきます」
と簡単に決断する二人に対し、レイは少しその回答を渋る。
「いや、2人とも結構ヤバイ話だよ?もう少し慎重になろうよ?できれば俺は遠慮……」
「ああ、レイ、すまんがお前は既に行くことが決定している。折角リオの子孫と冒険できるんだ。逃す訳ないだろ。大体私もそこの2人も後衛だ。前衛は必須だろう」
「それ微塵もすまないと思ってないですよね?……はい、お供させて頂きます……」
レイが何とか逃れようと言葉を紡ごうとした矢先に、メルテとセリアリス、スザリンまでもが、レイにジト目を送る。そうなってはレイに勝ち目は無く、顔を引き攣らせて素直に降参を認めるのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
グゴゴゴゴゴ……ッ
鈍い地鳴りと共に激しい揺れに襲われて、何かしらの結界を解除してしまったユーリは悲鳴と共に大きく動揺する。
『ええーっ、な、何?この揺れ、あれ?私なんかやっちゃった!?』
ただユーリは遺跡に入る為の大きな扉の前に張ってあった結界を、聖魔法で解除しただけだ。ちなみにユーリ以外の人間では解除できそうな感じがなかったので、解除できそうだと思ったユーリが手を上げたのだ。ただ実際に解除してみると、そこから大きな地震が発生。そしてその揺れに思わず足を取られ倒れそうになるところを、慌ててアレスがその体を支えて守ってくれる。
「だ、大丈夫か?ユーリ嬢?」
「あっ、はい、有難うございます。アレス様っ」
ユーリは支えてくれたアレスに感謝をしつつも、内心はいまだ動揺が治まらない。
『あれ、本当に解除しちゃって良かったの?なんかアレックス様が困っている感じだから、思わず解除しちゃったけど、えーっ、なんか不味いものでも出てきちゃうんじゃないの?』
そうこの手の遺跡では、有用な魔導具も多く輩出されるのだが、その反面、旧世界の呪具の類も良く出る。場合によっては、邪神の眷属や悪魔の類が封印されている事も多く、過去の文献や伝説などでも、その解き放たれたものにより、都市一つが滅んだといった話もある位だ。遺跡正面がわざわざ封印されているだけあって、これは非常に危険なのではと、ユーリは思わず勘ぐってしまう。
一方のこの遺跡に関して、前世の記憶を持つ2人はそれぞれ異なる感想を抱いていた。1人はアレックス。彼はこの遺跡がストーリーの分岐に関わる様な重要な遺跡ではない事を知っている。ここはあくまでサブイベントで、レアアイテムがゲットできるだけの遺跡であるとの認識なので、結界こそ驚いたが、遺跡攻略自体は、自分達のレベルならば安全マージンもキープされていて、なんら問題ないと考えている。
『へー、この遺跡って入るのにこんな結界を解くシーンがあるなんて、ゲームよりもやっぱリアルの方が凝っているなぁ。さて、ここではアレスのパワーアップ用の剣をゲットしなきゃならないし、俺自身の戦闘慣れもしたいし、頑張らないとな』
もう一方のエリカはというと、アレックスとは違い、この相違を訝しく思う。彼女は彼女自身が、ゲーム設定にはないイレギュラーな存在だ。聖女といえば、ユーリのみのはずなのだが、彼女自身も同等の力を得てしまった。先ほどの結界は彼女にも解除できそうだと思っていたし、実際にできたのだろう。だからこそ、この世界がゲームにない設定を含んでいることを薄々感じていた。
『えっ、こんな所で結界なんてゲームに無かったじゃない!?あれ、ここでもやっぱり何か違う事が起きるんじゃないかしら?ええーっ、嫌よ変な魔物とか出てくるの。大体アレックスも他のメンバーもまだまだ弱っちいのに大丈夫なのかしら?ユーリもまだ聖剣付与できないみたいだし。ここは慎重に、いざとなったら、お兄様と一緒に逃げられるようにしないと』
そんな事をそれぞれが考えつつ、アレックス一行及び近衛騎士隊はその大きく重厚な扉をくぐり抜け、いざ遺跡の内部へと侵入した。