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第四十七話 旅路

日刊が4位と落ちてきました。まだブクマ、評価がまだの方、是非ぜひ応援を願いします。


皆さんの評価がモチベーション!

宜しくお願いします!

 レイたちのノンフォーク領への移動は、夏休みに入って二日目の出発だった。前の日はセリアリスは、王都にあるノンフォーク公爵邸に一泊滞在。レイとメルテは、学院の寮で待ち合わせ、王都の正門前でセリアリス達と合流する予定だった。


 そして今、その正門にメルテと向かう途中なのだが、メルテは至極御満悦のご様子だった。


「レイ、馬すごい。高くてパカパカ、カッコいい」


 レイは小柄なメルテを前に乗せ、自分はその後ろから手綱を引いている。確かに馬上は、目線が高く、乗り慣れない人間が乗ると興奮するのもわかる。だからレイも少し顔を綻ばせてメルテに優しく言う。


「馬は凄く臆病だから、あんまり興奮し過ぎるなよ。まあ、乗り慣れない人間からしたら、目新しいのはわかるけど」


 するとメルテは臆病という言葉に、ビクンッと小さく震え、恐る恐る馬の様子を伺う。


「レイ、嘘をついた。馬が驚いたら困ると思って見たけど、平気だった。ビックリして損をした」


「ハハッ、この馬は俺の友達だから、そう簡単には驚かないよ。でも馬が臆病なのは本当だから、程々に楽しんでくれ」


「ん、了解した。程々に楽しむ」


 メルテはそう言うと、程々と言いつつ先程迄の調子を取り戻す。レイは思わず苦笑しつつも、まあこのくらいなら良いかと諦める。



 そして正門に着き、セリアリス御一行と合流を果たす。此処からは2週間程度の移動で、基本宿場町を経由しながらの移動となる。勿論、護衛は騎馬であり、レイも含めて5名程のメンバーがいる。その他御者台に2名、セリアリスに侍女のレミア、客人扱いのメルテを含めて総勢10名の大所帯となる。


 勿論、メルテは客人なので、セリアリスと一緒に馬車での移動となるのだが、何故か一向に動こうとしない。


「おい、メルテ、君は馬車での移動だから馬から降りてくれ」


「ん、私はレイの馬で移動する。馬楽しい」


 そう言って降りる気配を見せないメルテ。レイはメルテに苦笑いを見せて、優しく諭す。


「メルテ、何時迄も2人で馬に乗ってたら、馬も疲れてしまうよ。まあ道のりはまだまだ長いし、また今度乗せて上げるから、セリアリスの馬車に行ってくれ」


「むう、馬が疲れるなら仕方がない。甘んじて受け入れる。ただしまた乗せて貰うのは約束」


「はいはい、約束な」


 するとそんな2人の会話を聞いていたセリアリスが、クスクスと楽しげな表情を見せる。


「メルテさん羨ましいわ、私もレイの馬に乗せて貰いたいわ」


 レイはセリアリスにジト目を送り、軽く諦めた表情を見せる。


「セリーはそれ、面白半分だよね?大体乗馬経験もあるよね?」


「あら、そうやって殿方に乗せて貰うのは、女子としては一つの憧れなのよ。それにずっと馬車の中に篭りきりってのも、詰まらないものだしね」


 そう言ってコロコロと笑顔を見せるセリアリスに、レイは渋い表情を見せる。そもそも他の護衛の手前もある為、余りそうセリアリスと仲良さ気な雰囲気を見せるのは宜しくない。そんな2人にメルテがお構いなしの発言をする。


「ならセリアリスは私の次。レイ約束ね」


 そう言い切られると、レイは渋々受けざるを得ない。そんなレイの姿を見て、またセリアリスがコロコロと笑うのだった。



 そうして始まったノンフォーク領への旅路。日中は日差しも強く、意外に大変な行軍となったが、日差しが傾くと涼しい風が流れるようになり、大分過ごしやすくなる。馬車の中は珍しくメルテが器用な魔法の使い方をして、涼しい冷気をおこして過ごし易くしているらしく、日中でも問題がないが、外の護衛はそうは行かず、レイがシルフィにお願いをして、時折風を起こして貰い、何とかやり過ごしていた。


『どっかに水場が有れば、休憩でもしたい所だけど』


 馬も日中の暑い日差しの中歩き続けるのは、しんどいだろう。するとディーネが話し掛けてくる。


『主様、それならこの先に綺麗な泉がありますわよ』


『えっ、それは助かる。ディーネ有難う!』


 レイは素直にディーネにお礼を言うと、ディーネからも柔らかい感情が伝わってくる。レイは顔を綻ばせ、急ぎ護衛隊のリーダーに声を掛けて休憩を入れる了承を取ると、そのあと馬車の窓をノックしてセリアリス達にも声をかける。


「セリー、この先にある泉で少し休憩を入れる事になったから」


「あら泉があるなんて、よく知ってたわね」


「この前通った時に目を付けてたからね。セリーは馬車の中だから、そうそう外の風景ばかりを見ていられるわけじゃないだろうけど、僕らはずっと外だからね」


 レイはそう言って、しれっと嘘をつく。まあこの位の嘘はご愛敬だろう。セリアリスはさして疑うところがないのか、素直に受け入れる。


「なら私達も馬車を降りて、少し散歩でもしようかしら。レイ、お供宜しくね」


「仰せのままに、お嬢様」


 レイはあえてわざとらしく紳士然とした振る舞いを見せる。セリアリスも少し驚いた表情を見せたが、直ぐに笑顔に変わりレイに言う。


「宜しくね、私の騎士様」


 レイは騎士ではなく、領主なんだがと内心ボヤきつつ、セリアリスに付き合って騎士の礼を取るのであった。



 その後の行程は順調に進む中、レイはセリアリスの呪の浄化をどのタイミングで行うかを探っていた。とは言え旅の途中、そうそう2人きりになる機会など訪れる事もなく、時間だけが過ぎていく。


『上手くいけば、そう言う機会が有るかと思ったけど、中々どうして上手くいかないなぁ』


 これはノンフォーク領迄行かないと駄目かもしれないと思った矢先、その機会が訪れる。


 その日の日中、レイ達一行は、魔獣の群れに襲われる。魔獣は魔狼の群れであり、1個体自体の強さは然程でも無かったが、数が多かった。護衛騎士の4名は馬車を囲むように応戦をし、レイは一人遊撃をし各個撃破していく。暫くして15体は倒したところで、魔狼の群れはその場から逃げ去り事なきを得たが、行軍に対してかなり時間を取られてしまった。


「今日は宿場町までは難しそうですね」


レイが護衛のリーダーにそう話しかけると、そのリーダーも頷き、周りに指示を出し始める。


「まあ今日は野営にせざるを得ないな。おい、暫く行ったところで、平原に出る。今日はそこで野営とするから、予め薪になりそうなものを拾っておいてくれ」


 するとそんなやり取りをしていた2人に対して、セリアリスがそばへとやって来る。


「今日は宿場町までは間に合わないのかしら?」


「はっ、今からだと夜半過ぎの到着となります。夜の移動は危険となりますので、途中で野営の準備をさせて頂きます。お嬢様には、今日は馬車の中で一夜を過ごして貰う事になります」


主人であるセリアリスに対し、リーダーが恭しく説明をする。するとセリアリスがレイに言う。


「レイはどこで寝るの?馬車で一緒に寝る?」


「いや、それわざと冗談で言ってるよね?勿論、俺は外で寝るよ。夏だしそう寒くなる事も無いからね」


「別にレイなら馬車で寝ても良いのよ。メルテさんは勿論、レミアだって文句は言わないと思うし」


レイは羨ましそうな視線を送るリーダーに気を遣いつつ、苦笑いを浮かべる。


「勿論、遠慮させて貰うよ。こう見えて野宿は慣れているからね。馬車で寝るより、よっぽど過ごしやすい。まあそれに夜は見張りも必要だから、外の方が都合が良いんだよ」


「そう、なら良いわ」


 セリアリスはそう言うと馬車へとスタスタ戻ってしまう。レイもまたリーダーの視線から逃げるように、出立の準備を始めた。



 レイの夜番は気を遣って貰い、1番最後の時間だった。夜番は途中で起こされる方が辛い。それなら早い朝より、気持ち早く起きるだけの方が楽なのだ。レイは火の番をしながら、空の星々をのんびり眺め軽く深呼吸をする。まだ日が昇る迄は少し時間がある。平原の先にある山々の間から昇る日の出を内心少し楽しみにしつつ、眠気覚ましに淹れたコーヒーを啜る。


『冒険者にでもなれば、こういう日々も楽しめるのかな』


 レイの先祖は、元々冒険者だ。父もそうだが、レイ自身もそういう生活が嫌いではない。最近諸島で見つかった古代遺跡も時間を見つけては、父もレイも遊びに行っており、その度母に叱られるのだ。決して公務をほっぽり出しているわけでは無いのだが、領主が冒険してどうすると怒られる。その度に、父もレイもこれは血の為せる宿命なのだと言い訳をするのだが、中々母にはわかって貰えない。


『でも領主で無ければ、冒険者ってのも有りだよな』


 実際に冒険者稼業というので、儲かるのは一握りだ。少なくてもBランク以上にでもならない限り、そこまで自由な生活は送れない。所詮は先立つものが必要なのだ。ただ先立つものが有れば、それこそその身一つ自由気ままだ。クロイツェルで高ランクの冒険者とも知り合いだが、やはり彼らはその性格も含めて、魅力があった。


 そんな冒険者に想いを馳せている時に、カサカサとレイに近づいてくる人影を感じる。その人影の方に目をやると、セリアリスがそこにいた。


「セリー?」


「ああ良かった。やっぱりレイの夜番の番だったわね」


 どうやらセリアリスはレイの夜番に合わせて出てきたらしい。レイは火の側にセリアリスを座らせると、どうした事かと声を掛ける。


「セリー、こんな早くにどうしたんだ?まだ寝てても良い時間だけど?」


「ううん、ちょっと寝付きが悪くて。ほらここ最近、体調が悪いでしょ?レイの側は少し気持ちが落ち着くから、思い切って来てみたの。邪魔だった?」


 セリアリスはそう言って、のんびりした表情を見せる。顔色は少し青白くやや弱々しい。レイはそんなセリアリスを心配するが、むしろこれはチャンスではとニヤリとする。


「いや、そう言う事なら丁度いいかも知れない」


 レイがそう言うとセリアリスはただ不思議そうな顔をして、レイを眺めるのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] バカ王子の内心を見る度に凄いイライラする 自分が将来の国王って自覚があるんだろうか、私が国民だったら絶対に国王になってほしくないなぁw いつか本人が成長するかぶっ潰されてスッキリするイベン…
[一言] やっと解呪か・・・。 長かった、 ってか王様は良いのだろうか。
[一言] 呪いめっちゃほっといてたけどやっと解くのか
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