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第三十三話 ホスト役

引き続きジャンル別日刊第2位です。

総合評価も5000越え頂きました!


誤字脱字のご報告も感謝です。日々書き上げてると見直しし切れず、助かっております。


引き続き応援の程、宜しくお願いします!

 セリアリスがメルテと会話を始め、楽しそうに談笑を始める傍ら、ユーリはアレックス達の集団に捕まっていた。会話の主はアレックスとユーリだが、その合間にエリカやエリク、場合によってはアレスまでが会話に加わり、ユーリに話しかけてきて、ユーリはその場から動けないでいた。


『ちょっとセリー、助けてー』


 ユーリは内心で助けを呼ぶが、セリアリスはこの場にはいない。ホストである生徒会メンバーが固まっているので、仕方がなくホスト役をセリアリスが率先して行っているのだろう。


 見れば、セリアリスやメルテを中心に此処とは違う人の輪が出来上がっている。本来であれば、他のメンバーもホスト役に徹しなければいけない場面のような気がするが、アレックスが率先してユーリを離さない状況。エリカあたりは、その辺察しても良いような気がするが、会話を盛り上げる合いの手こそ入れるが、指摘する雰囲気は無かった。


「ふむ、成る程な。慈母神の加護を授かった事で、聖魔法を使えるようになったと。正に聖女と謳われるだけの事はあるのだな」


「そうですね、アレックス。神の加護持ちは本当に貴重な存在です。主神オロネオスの加護を持つ神聖オロネス教国の総大司教様こそ有名ですが、今世だとその方とユーリ嬢くらいのものでしょう。我が国にとっても有益な人材かと思います」


 流石は博識というべきなのであろうか、エリクは神殿の秘事こそ知らないようだが、良く知っているとユーリは思う。


「いえ、私はまだまだ修行中の身です。今はまだ慈母神様のお力に頼り切っている状況。全然駄目なのです」


 これはユーリにしてみたら本音だ。彼女はまだまだ慈母神の加護の可能性を引き出せていない。勿論、それを十全に使いこなせるように、日々研鑚をしているつもりだが、もっとできるようにならないとと思わずにはいられない。


「ハハッ、謙虚だな。既に巷では聖女の再来とまで謳われているのだ。もっと自信を持つが良い」


 そう言って高笑いを決め込む、アレックス様。本人としては、その再来と言われる事も苦痛でしかないのだが、お構いなしだ。正直、もうこの空間には耐えられない。なので、ユーリは何度目かの離脱を試みる。


「有難うございます。アレックス様。そのお言葉を励みに、益々精進させて頂きます。それはそうと、長々、私の話などに皆様のお時間を取らせるのは、大変心ぐるしいので、そろそろ他の方々ともご歓談されたらいかがでしょうか?ほら、セリアリス様も楽しげにご談笑されているみたいですし」


「ふむ、まあ気にする事はない。とは言え、確かにセリアリスだけにホスト役を任せるわけにもいくまいか。ならエリクとエリカ、セリアリス同様、ホスト役を頼む」


「ああそうですね。ではエリカを伴って、他クラスの優秀者とやらを見てまいりましょう。エリカ、行こうか」


「承知しました、お兄様」


 2人はアレックスの指示に従い、素直にその場を離れる。ただこの流れだと、アレックスは動かない流れだ。それではユーリにとって意味は無い。すかさずユーリはアレックスに話しかける。


「では私も、他のクラスの方々とお話してこようかと思います。普段、中々お話のできない方々ばかり。私は、貴族になって日が浅いですから、交友関係も限られてますので、こういった機会に是非お話をしてみたいと存じます」


「ふむ、ならば私も共に行こう。女性をエスコートするのは、男性の務めだからな。アレスもついてこい」


「承知しました」


 アレックスは立ち上がると、その手をユーリの前に差し出す。貴族の男子としては、当然の振る舞いなのだが、今のユーリには有難くない。とは言え、流石に第一王子のその手を払いのける事は出来ず、表情は笑顔を取り繕いながら、内心渋々その手を取る。


「有難うございます。アレックス様にエスコート頂けるなんて光栄です。どうぞ、よろしくお願いします」


「うむ、その程度他愛もない。我らは生徒会の仲間だ。気にするな」


 そんなアレックスの言葉に、生徒会の仲間以前に、ホスト役である事を思い出して欲しいと切に願うユーリだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 レイはサラとのダンスを楽しんだ後、サラと共に軽く食事を摘まみつつ、周囲を見渡す。


 開始当初は、生徒会が余り機能せず、ややギクシャクとした雰囲気を醸し出していたが、セリアリスが最初に動き、その他の生徒会メンバーもホスト役として機能し始めたことで、少しずつだが会も活気を帯びてくる。


「ねえ、レイは婚約者とかはいないの?」


 サラもレイと打ち解けたことで、レイの異性の交流関係に興味が出てきたのだろう。レイは肩を竦めてそれに答える。


「残念ながら、今のところ相手はいないね。まあ所詮、田舎の子爵だから、興味のある人も少ないだろうしね」


「あら、そうかしら。同じ子爵でも宮廷貴族と領地持ちだと、財力が違うでしょ?正直、王都の子爵家だと、上位貴族の小間使い的な扱いだったりするけど、なんかレイを見てるとそんな感じしないしね。打算的に見れば、いい相手だと思うけど」


 サラのあまりにもサバサバとした物言いに、レイは思わず苦笑する。


「んー。確かにそうなのかも知れないけどね。なんならサラ、クロイツェルにくるかい?」


「私は駄目。家は子爵家だけど、子供が私しかいないから、私が婿を取らないといけないの。これでも代々の近衛騎士の家系だから、潰すわけにもいかないのよ。レイが婿にきてくれるなら、大歓迎よ」


「ほら、振られた。僕も婿にはいけないからね。まあ弟もいるけど、僕は加護持ちでちょっと特殊だから」


 レイは、長男である事と、精霊の寵愛を受ける身であることから、クロイツェルの名前を捨てるわけにはいかない。


 精霊の加護はその血と名に宿る為、その血と名を子孫に残す義務があるのだ。レイの弟妹で言えば、弟のケビンも風の加護を持っている。妹のリーシャは水の加護。共に一つしか加護を持っていないのは、それぞれの素養しかないからだとディーネは言っていた。


 レイはその二つのさらに加護ではなく寵愛を受けている。婿になると名が継がれ無い為、その子孫には受け継がれない。あくまでクロイツェルでないと駄目なのだ。


「あら、見方によっては私が振られたのよ。残念だけど貴族の結婚って、そういうところが面倒臭いわよね」


「まったく」


 お互いが振られた者同士、なんとなく顔を見合わせた瞬間、笑いあう。そんな2人に生徒会のメンバーが声を掛けてくる。


「どうやら楽しんでいただいているようですね」


 レイ達の傍に来たのは、エリクとエリカのミルフォード義兄妹だった。レイとサラは、すかさず貴族の礼をとる。


「お声掛け頂き、有難うございます。私は、クロイツェル子爵の嫡男で、レイ・クロイツェルと申します。彼女はブライトナー子爵家のサラ・ブライトナー。会はお蔭様で、彼女がいる事で、楽しませていただいております」


「ああ、ここは学生だけの交流の場です。そう畏まらなくても大丈夫です。知ってると思いますが、私は、エリク・ミルフォード、これは、妹のエリカ。ええと、レイ君と呼ばせていただくけど、君は随分とダンスが上手だね。前の時もユーリ嬢を上手くリードしていたでしょう」


 レイは、ダンスで顔を覚えられたので、声を掛けられたのかと、内心で思いつつ、笑顔でそれに応じる。


「いえ、前回は、ユーリ様の、今回はこのサラさんの腕前ですよ。私は踊る機会が何回か有っただけで、慣れてるだけですから」


「フフフッ、ご謙遜ですね。さっきのユーリ様のダンスを見れば、リードが良かったのだとすぐに判りますわ」


「いえいえ、アレックス様とユーリ様のダンスも素晴らしかったと思いますよ。私なんてまだまだですから」


 ちょっと考えるとかなり際どいやり取りだ。下手をしたら、アレックスへの不敬だと言われかねない。ただそれもレイは笑顔でやり過ごす。そんなレイを見て、エリクは目を細め、フムフムと頷く。


「成程、やはり君はかなり優秀なようだね。まぐれでフラガを打ち負かしたわけでは無い様だ。勿論、ただダンスが上手いだけの人間ではない事もね」


「過分なご評価、有難うございます。ですが、エリク様こそ、アレックス様の右腕として、優秀でいらっしゃるとお聞きしております。少なくとも、学力でエリク様に勝てるとは、微塵も思いませんから」


「勿論、魔法や武術でも負けまいとは思っているけどね。うん、でもそっちは君の得意分野なのかな」


 エリクはそう言って、探る様な視線をレイに送る。なんとなくだが、ダンスで顔を覚えられたというより、そもそも知ってて探りを入れられているのかなとレイは考えを修正する。なので、余り目立ちたくないレイは、凡庸で有る事を強調する。


「ハハッ、それこそ武術ならアレス様に、魔法ならアレックス様やユーリ様、セリアリス様にも遠く及びません。私の所属するDクラスであれば、大魔導の弟子であるメルテ・スザリンもいます。ただ力不足を思い知るばかりですよ」


「ほほう、やはりメルテ・スザリンは凄いのかい?」


 レイは自分が大したことのない人物であることをアピールする為に、有名なメルテの名を出すことで、より信憑性を持たせようとしたのだが、エリクはその出した名前に食いつきを見せる。レイは内心ほくそ笑みながら、苦笑して答える。


「ええ、魔法の能力は凄いです。ただ物凄い変人ですが」


「あら、凄い変人ですか?」


 すると今度はエリカの方が、違う言葉に食いつきを見せる。なのでレイは面白い話題を提供するかの様に、楽しげに会話する。


「ああ、勿論、性格が悪いとかそう言う意味の変人では無くて、本当に変わり者なんです。魔法と料理が大好きで、他のものには、本当に無頓着。ただ本人には悪気がないので、その変わっている部分を鷹揚に見て頂けると、仲良くなれると思います」


「フフフッ、確かに、セリアリス様のお隣に座って、先ほどから料理をおいしそうに頂いておりますものね。普通、セリアリス様の隣にいたら、あんな風に料理を食べれませんもの」


「そうですね、でもあれは、セリアリス様が寛容だからだと思いますよ。メルテのその姿を微笑ましそうに見ていますし、メルテも分かっているから、気兼ねなく食事をしているんだと思います」


 そう言って、レイはセリアリスとメルテ、二人の姿に目を細める。エリカはそんなレイを興味深そうに眺めたあと、その隣にいるサラが少し気まずそうにいるのに気が付き、何やら思い悩んでいる義兄に声をかける。


「あら、お義兄様、余りお二人の邪魔をされては、ご迷惑ですわ。レイ様、サラ様、楽しいお話有難うございます。今日はどうぞお楽しみになって下さい」


「あっ、うん、そうだな。また機会が有れば、メルテ・スザリンの事を聞かせて欲しい」


「こちらこそ、またご機会あれば、是非お話させて下さい」


レイは、そう言ってお辞儀をするとサラも同様に礼をする。エリカも義兄のエリクを促し、その場を去っていく。二人の去った後、サラがボソリと呟く。


「レイって、凄いわね。緊張するって事、知らないの?私全然しゃべれなかったわ」


「だって向こうも最初に同じ学生って言ってたでしょ?緊張しても無駄さ」


レイは茶目っ気たっぷりに、サラに向かってウインクをした。


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― 新着の感想 ―
[一言] >「私は駄目。家は子爵家だけど… 数話前?にサラが自己紹介で士爵の娘だって言っていたはずだけど…? 子爵(Viscount) 士爵=騎士爵(Knight) どっち?
[一言] ふむーこの転生王子まだゲームのことだと思ってる脳内お花畑な人だったか今いるのは現実だって事に気づかなければ大変な事になると思うけど例えば廃嫡なるとか?
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