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第三十一話 交流会開幕

ジャンル別日刊ランキング、ついに待望1桁、5位にランクイン!!


素直に嬉しいし、有難い限りです!引き続き、是非多くの方が評価頂けると嬉しいです!


応援よろしくお願いします!!

 レイはその日、何故か王城内にある来賓用の迎賓館の中にいた。まあなぜかと言ったら、優秀生徒なるメンバーにDクラスの代表の一人として選ばれたからだ。Dクラスより選抜されたのは、レイとジーク、メルテ、フラガ、それに平民出のアンナが選ばれている。


 アンナは寮にある食堂のおばちゃんの娘で、幼少の頃より学院内で、先生たちに可愛がられていたらしく、非常に優秀だ。やや引っ込み思案で人見知りのきらいはあるが、特に座学に優れ、将来は薬学を収めて薬師を目指すそうだ。レイとはその薬草の部分で色々話をする。クロイツェル領は海にいくつかの島を所領としており、その島々では、珍しい薬草も取得できるのだ。そんな話をアンナにすると、普段の彼女からは、想像もつかないほど、目をキラキラさせて、興奮気味に話をしてくれる。


 そして、このアンナはメルテと実は仲が良い。厳密には、メルテの世話を一生懸命しているのが、アンナなのだ。きっかけはひょんな事からで、メルテが寮の食堂のおばちゃんに料理を教わっているらしく、その関係で、仲良くなったとの事。メルテの食に対するこだわりは、非常に貪欲だ。そう言った意味で料理が縁というのは、ある意味妥当なのだが、メルテの常識のなさは壊滅的なので、上手くおばちゃんへの弟子入りをとりなしたのが、アンナだったりする。


 そしてレイ達は、Dクラスの生徒だけでなく、A~Cまでのクラスの優秀者とまとまって、この迎賓館にいる。一応会の目的は交流会。同じクラスだけでなく、他のクラスの優秀者と接する機会は余りない。そういう意味では有意義な会なのだろうが、なぜ王城内の迎賓館?と疑問符を付けたくなる。理由は主催が、生徒会であり、その生徒会には第一王子を始め、上位貴族が名を連ねているのが理由だ。実質第一王子の主催なので、その威光を同学年の優秀者へ見せつけるのが目的なのだろう。


「ジークはここには来たことあるのか?」


「毎年、兄上の誕生パーティーの開催場所がここだ。まあ俺は最初だけ出て、引き籠る事が多かったがな」


「ああ、なら生徒会メンバーも慣れたものか」


「うん、そういう事だ。まあ下級貴族や平民の子にしてみれば、中々足を踏み入れる機会のない場所だろう。そういう意味では、貴重な体験というやつだな」


「いや、明らかに委縮しちゃってるだろう」


 レイは傍らにいるアンナや、他クラスの生徒の青ざめた顔を見て、思わず苦笑する。そもそも王城内に入る機会さえ、滅多にないのだろう。それが、この煌びやかな装飾や貴重品の立ち並ぶ部屋に正装しているのだ。緊張するなという方が、無理だろう。


「ほら、アンナ。そんなに緊張しても意味ないよ。別にとって食われるわけではないんだから」


「うう~、レイ君。そうは言っても~」


「ほら、メルテを見てごらんよ。既に料理以外、目に入っていない。あれ位図太くならないと」


 メルテは一見、静かに佇んでいるように見える。ただその実、その視線は一点に集中している。一応今回のパーティーは立食形式だ。食事は一か所に立ち並んでおり、メルテの目は片時もそこから離れない。アンナはそんなメルテを見て、保護欲が掻き立てられたのか、早速世話を焼き始める。


「ああー、メルテちゃん、ほら、ドレスのここ皺になっちゃってる。えっ、気にしない?駄目、折角妖精みたいに可愛いんだから、ほらこっちきて、直すから」


 アンナは先ほどまでの緊張はどこかに行って、すっかり通常モードに入る。レイはそんなアンナを面白く思いながら、再び、ジークに話しかける。


「そう言えば、ジーク。あれから表立った動きはないの?」


「ああ、残念ながらな。結局、犯人も判らずじまいだし、背後関係も不明だ。まあ俺にしたらいつもの事だから、気にするだけ無駄だがな」


 レイが確認したのは、先日のジーク暗殺未遂の件だ。犯人はマーキングしているので、割り出そうと思えば可能なのだが、末端を捕まえても意味がない。一応、遠巻きに所在を確認した時には、王城外のスラムにいたみたいだが、それ以上の詮索はしていなかった。


「まあジークがそれでいいなら、良いけどね。あっ、漸く主催者のお出ましだ」


 レイがホールへと続く階段に目をやると、今回の主催メンバーである生徒会メンバーが階上から現れる。


「さて、本日は皆の者、良く集まってくれた。私は生徒会会長を務めさせて貰っている、アレックス・フォン・エゼルバルトだ。まあ皆も知ってくれてると思うがな。今回このような会を開く目的は、ここにいる優秀者が、将来この国を支える1人となってくれると思っての事だ。その一人、一人がこの場で交友する事で、よりお互いを高め合えると思っている。とまあ、堅苦しいのはここまでとしよう。我らは年同じくする学友である。今宵は大いに楽しみ、友好を深めようではないか」


 アレックスの挨拶と共に皆グラスを片手に乾杯をする。この国の成人は15歳の為、全員グラスの中身はワインである。レイは周囲の人間と軽くグラスを鳴らして、挨拶をすると、その中身を一口、口に含む。流石に王城で出る酒である。濃厚ではあるが、口当たりの良いワインに思わず笑みを零す。


『まあ、今日はこのワインを飲めただけでも、来た価値があるか』


 と内心で唸る。元々レイは余りこの会に多くのものを期待はしていない。まあ、優秀者と言っても教師の推薦で、実際の実力は分からないし、逆に自分の力をひけらかす気もない。今回はユーリのパートナーという訳でもないので、気軽にのんびりを目標としていた。そんなレイに対し、一人の少女が声を掛けてくる。勝気というか、強さを感じる強い眼差しをした、赤毛の少女である。


「あっ、レイ君だよね、あっ、レイ様がいいのかな?私は、サラ、サラ・ブライトナー。ブライトナー士爵家の娘でBクラスよ。この前の剣術の授業で君を見て、是非話しかけたいと思ったんだ、よろしくね」


「ああ、俺はそのままレイだけでいいよ。同級生だし、所詮、まだ子爵じゃないしね。サラは、剣術の授業に出てるって事は、騎士志望なのかな?ちなみに話ってどんな事?」


 レイは、そう言って気取る事なく右手を差しだし、サラもそれに笑顔を交えて、握手で応える。


「うん、レイって、そんなに力が強そうには見えないのに、この前、剣で思いっきり盾を弾き飛ばしたでしょ?あの秘密を知りたくて」


 それはフラガの模擬戦でも実施したように、レイが良く使う手だ。別に難しい事でもないし、秘密にしているような事でもないので、あっさり答える。


「あれは風魔法で威力を上げているんだよ。詠唱無しで魔法行使して、風を使って速度とパワーを増してるの」


「えっ、それって凄い高等技術じゃない?魔法の部分付与を詠唱無しでやっちゃうなんて」


 確かに一般的には高等技術なのか。まあレイにしてみれば、シルフィが勝手に手伝ってくれているので、意識した事がないが。なので、そこはおきまりの文句で、逃げを打つ。


「ああ、俺は風の精霊の加護持ちなんだよ、それこそご先祖様から続くね。だから風魔法に関しては、色々細かい事が出来るんだよ」


「へー。レイなら騎士になったら、部隊長位直ぐに成れるんじゃない?」


「ハハッ、それは有難い評価だけど、これでも嫡男だからね、残念だけど、田舎の領地に帰らないといけない。ただもしサラが遊びに来てくれるなら、歓迎するよ。片道1ヶ月かかる長旅になるけどね」


 レイは茶目っ気たっぷりに言って、笑顔を見せる。サラもそれにつられるように笑顔を見せて、軽口を返す。


「あら、それくらいの距離ならいい修行になるわ。ちなみにレイの領地は何が有名なの?」


「有名?そうだな、まず海がある。だから海産物は王都より全然美味しい。あと海洋貿易の拠点でもあるから、人族以外の特産物とかも手に入りやすいかな。ああ、修行って言うなら、魔境もあるよ」


「ええっ、海?ってあそこ王族の領地じゃなかったの?しかもなんか、なんでもありじゃない。それに魔境って、あれ、そうなると未開地なの?なんか謎すぎるわ」


 確かにクロイツェルを簡単に説明すると、かなり謎な土地になる。海があり、物資も豊富で、未開地の魔境もある。まあ飽きないという意味では飽きない土地なのだろう。


「でも俺は自分の育った領地が好きだし、いいところだと思っているよ。ただサラが騎士様になったら、ご縁は無いかもだけどね」


「えっ、夏休みにって、行って帰ってで休み期間過ぎちゃうか。卒業後にって言っても、騎士になったらそれどころじゃないし。えー、一度は行ってみたいのに」


 まあ休み期間中にクロイツェルに戻る事は、レイも諦めている。仕方がないだろう。仮に間に合ったとしても現地滞在は1日2日になってしまう。だから不満げな顔を見せるサラに、レイは満面の笑みでいう。


「うん、だから仮にサラがおばあちゃんになったとしても、喜んで歓迎するから、安心して」


「ああ、私騎士になるのやめようかしら。なんか潤いのない人生になりそうで、落ち込んできたわ」


 サラは、がっくりと肩を落とし、項垂れるのであった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



『いいなぁ、レイ、なんか楽しそうで』


 ユーリが今見ているのは、赤毛の女の子と何やら楽しそうに話しているレイの姿。多分下級貴族の子だろう。身なりは華美ではないものの、キチンと纏められていて、清潔感のある装いだ。立ち姿も様になっており、その辺は平民の子とは違う印象を与える。レイはというと、いつも通りの気兼ねない笑顔。レイは上位下位に関係なく、人と接する事ができる人間だ。勿論、礼節、作法もしっかりしている。時と場合を上手く使い分けられる。今も相手に気後れさせる事なく、自然な振る舞い。だから相手も楽しそうに見える。


「ユーリ、じゃあそろそろ、良いかな」


 そう言ってユーリに話かけてきたのは、アレックス様。ユーリはこの交流会でのダンスパートナーの一番手にアレックスから指名されていた。交流会という事で、普段ならセリアリスと一番に踊るのだが、普段とは違うメンバーでとの事で、同じ生徒会内のユーリが指名されている。


「あっ、はい。大丈夫です。よろしくお願いします」


 少し注意力が散漫だったユーリは、内心軽く慌てるが、何とかそれを抑え込み、元気よく返事をする。それに対しアレックスはスッと自分の手を差し出して、ユーリが掴むのを待つ。ユーリは、その手を軽く掴んで、アレックスに並びかけて、笑顔を見せると、プイッとアレックスから目を背けられる。


『あれっ?』


 ユーリが違和感を少し感じているところで、アレックスが再び声を発する。


「今日は私がエスコートしてやる。安心するがいい」


「はい、よろしくお願いします」


 再び笑顔でアレックスの顔を見ようとするが、アレックスは正面を向いたままで、目を合わせようとはしてくれない。


『うーん?レイの時とは違う?』


 レイは基本、ダンス相手を良く見て、行動を先回りする。相手の表情にも敏感で、相手が楽しんでくれるように気遣いをしてくれる。アレックスはというと、何かどこか固いというか、無遠慮?マイペース?なんと言っていいかわからないが、相手に対する関心度が低い気がした。


 そしてホールの中央、まずはお手本とばかりに、生徒会メンバーでのダンス。今回ユーリがアレックスとダンスをするという事で、セリアリスの相手はアレス。エリクは前回同様にエリカが相手だった。音楽が始まり、それぞれが優雅にダンスを開始する。アレックスは基本通り、丁寧なダンス。前回セリアリスと踊っていた時は、もっとゆったりとした優雅なダンスのような気がしていたが、今回はしっかりと踊ってはいるが、どこか優雅さの足りないダンスだった。


 寧ろダンスとしては、エリク・エリカの義兄妹ペアの方が注目を集めている。この二人は、義兄妹となってから、度々こうしてパートナーとして踊っている間柄である。自然と相手がどう動くのか、動いたらどう魅せられるのかを理解している。単純に容姿という部分では、三者三様で、甲乙つけがたい美少女揃いだが、ことこのダンスに限って言えば、断然にエリカが輝いていた。


 そしてアレス、セリアリスペア。こちらのダンスもアレックスとユーリ達同様凡庸だ。まずアレス自体のダンスが、普通であり、決して目立つものではない。それに加えて、凡庸なくせに我を通す。アレックスとセリアリスのペアのダンスの場合、アレックスが凡庸でも、セリアリスのフォローのお蔭で、それなりに見える。アレックスが素直にセリアリスのフォローを受け入れるからだ。対するアレスは、それを受け入れない。必然、アレス主導のダンスとなり、凡庸に見えてしまう。


 結果、このダンスの勝者は間違いなく、エリク・エリカペアであり、気付けば会場に微妙な空気が流れるのであった。


面白い、これからに期待、頑張ってと言っていただける方は、是非ブックマーク並びに評価のほど、お願いします。それが作者のモチベーション!


よろしくお願いします!

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