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第三十話 エリカ・ミルフォード

ついにランク別日刊第6位になりました。ありがとうございます。感謝です。


それと誤字脱字訂正を入れていただける方々、こちらもこの場でお礼させて頂きます。連投してると見落としがちになります。ですので、改めて感謝です!

 ゲーム『リアルファンタジー』の世界には、学園パートと言われる好感度でキャラのストーリーが変化するマルチエンディングが採用されている。今この世界はその『リアルファンタジー』の世界を模倣したかのような世界である。では誰のストーリーがメインなのと考えると、ここ2ヶ月余りで起きた出来事はセリアリスの紡ぐストーリーでもあり、隠しキャラ、ジークフリートの紡ぐストーリーでもあるかのような気がする。まだどのキャラが紡ぐものなのか決まっていないとも思えるし、何とも言えないというのが、正直なところだ。


 私ことエリカ・ミルフォードは前世の記憶を持つ人間だ。その記憶に目覚めたのは10年前。その当時の流行り病で、高熱を発し、3日3晩熱にうなされたという。その時、私は前世の記憶に目覚めた。その前世の私はというと、何処にでもいる女子高生。ゲームは兄の影響で一緒にやっており、このリアルファンタジーもその兄の所持していたものを一緒になってやっていた。ただなぜその記憶が、今の私に蘇ったのかはわからない。その前世の自分の結末は曖昧であり、良く思い出せないからだ。


 一般的に前世というくらいだから、何かしらの理由で死んでしまったのかもしれない。ただその事を気にしていても仕方がない。私は私、エリカ・ミルフォードとして生きているのだから。それよりもむしろ、この前世の記憶が、今自分が置かれている状況に大きなアドバンテージを与えてくれているのではないかと、楽しみさえあるのだ。実際に学院パートのイベントは、100%一致している訳ではないが、類似した形で推移している。エリカは前世で、隠しキャラジークを含む全キャラを攻略。イベントもほぼ網羅している。勿論、ゲームとこちらの現実世界では、差異が生じるのも仕方がないところなので、まあ許容範囲なのかもしれない。


 ちなみにエリカはというと攻略キャラではない。確か設定はあったかと思うが、名前すらでてきていない所謂、モブ以下のキャラである。これがエリカにとって目下一番の懸念材料で、ただのこの世界の住人として一生を終えるのか、それともこれから続くストーリーに関われるのか、非常に気になるところだった。


『まあこのエリカ自身、かなりのスペックを持っているので、チャンスはあると思いますが』


 エリカの自己評価は、そこそこ高い。神殿の職位についていないのにも関わらず、聖魔法が使える点、学力や魔術も侯爵家としての教育の賜物で、水準以上にある。魔力に至っては、恐らく最高水準だろう。豊満な体に魅力的な容姿は、男性の目線を集めるのに十分なものだし、養子とは言え、侯爵家の令嬢だ。元々、侯爵家の出の母が、神官職の貴族に嫁いだことから、嫡子になれない娘を兄のところに養子に出したのが、キッカケだ。血筋も元々侯爵家のそれなので、養子とはいえ卑下するものでもない。


 そう考えるとエリカに足らないのは、ゲーム設定におけるストーリーだけであり、それは誰かの物語を踏襲するか、新たなストーリーを自身で切り開くのかに掛かっていた。


『まあタイプ的には、ユーリの物語が一番近いのよね。後は加護さえ授かれば』


 境遇もスペックもユーリとエリカは近しい。ただ彼女は既に聖女であり、慈母神の加護持ちという裏付けがある。逆にエリカにはその裏付けがない。その裏付けさえ得られれば、自身が聖女と名乗りを上げる事も可能なのだ。ただこればかりは授かりもの。元々モブ以下の自分にそう都合よくその加護が舞い降りるなど、考えてもいない。


『まあ、今は、一にお義兄様、二にアレックス様、抑えでアレス様といったところかしら。ジーク様のストーリーなら、彼に近付くのもありですけど』


 そしてアレックスが企画した交流会は、ゲームのイベントにもあったもの。当然、内容は波乱含み。何が起こるかで、その後、どうなるのかが、少しずつ明るみに出てくる。


 エリカは、エリクと共に行動しながら、その事を楽しみに思うのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 寮へと戻る馬車の中で、ユーリは酷く困惑していた。養父に呼び出され、戻った自宅の屋敷で養父より伝えられた内容にだ。養父の話では、アレックス様と同じ生徒会になったメンバーの中で、ユーリの事だけ王妃が余り知らないという事で、一度話をしてみたいという。それ自体は、緊張こそすれ大した問題ではない。この国のいわば女性のTOPである王妃様にお会いでき、お話できる機会があるだけで、光栄な事だと思う。


 ただ養父の話は、それだけでは終わらない。どうやら裏の目的は、ユーリをアレックス様の側室候補として、見定める事らしい。勿論、この裏の目的は、正面から王妃に言われたわけではない。養父がそれとなく、そのようなニュアンスをほのめかされた程度の事らしい。ただ養父の認識は、恐らくその腹積もりがあるのだろうとの事だった。だからこそ困惑するのだ。


 勿論、養父は優しい笑顔で、もしそうなったとして、ユーリが余り前向きではないのであれば、断ってもいいと言われている。それは凄くありがたい話ではあるのだが、流石にユーリも貴族になって1年以上、その断るという意味も分かってきている。断るという事は、王家の顔に泥を塗る事に他ならない。これは、養父にしても、伯爵家にとっても非常に迷惑をかける事だ。


 仮にユーリに婚約者でもいれば、また話は違ったのだろう。これは明確に断る理由になる。勿論、それでも王家に対してしこりはできるだろうが、既に決まった縁組を王家の我儘で解消するのは、正直外聞が悪い。養父からもそんな相手はいないかと、遠回しに聞かれたが、正直、一人思い浮かべた人物はいたが、そもそも彼とは、そこまでの仲では現時点ではない。となると、最早その線は可能性がないので、もしその話が事実として進んだ場合、大いに悩むのだ。


『そもそもアレックス様に興味がないのよね・・・・・・』


 ユーリにしてみれば、アレックスはあくまで友人であるセリアリスの許嫁だ。異性として意識した事は無く、ましてや王族。自分には縁のない相手だと思っている。事実会話をしても、こちらに対して、あくまで臣下、部下と言った目線で接してくる以上、ユーリとしてもそれに応じた対応となってしまう。それにセリアリスとの関係を見ていると、余り魅力的には感じないのだ。良く言えば、お互い尊重し合っている、悪く言えば、距離があるのだ。ユーリにしてみれば、その距離のある関係よりかは、レイとの間のような距離を感じさせない関係の方が望ましい。


 そんな困惑を抱えながらも、馬車は学院に到着し、ユーリは自然とその足をセリアリスの部屋へと向ける。寮は、上級貴族と下級貴族、平民とでフロアが分れており、セリアリスの部屋はその上級貴族のフロアの最奥に位置する。ユーリがその部屋のドアをノックすると、セリアリスお付の侍女が、その扉を開ける。


「あっ、ロゼッタさん、少しセリーと話をしたいんですけど、いいかどうか聞いて貰ってもいいですか?」


 ロゼッタはセリアリスとユーリが友人関係になった事や、気兼ねない言葉遣いをお互いに了承している事を知っているので、ユーリは飾らない言葉で話しかける。


「はい、お嬢様、むしろユーリ様をお待ちしておりましたよ。さあ、どうぞ、お入り下さい」


「あ、はい、それでは失礼します」


ユーリが部屋に入ると、セリアリスが少し困ったような笑顔で近付いてきて、部屋の奥へと促す。


「ああ、ユーリ、待っていました。どうぞ、そちらに座って」


「あー、やっぱりセリー、お養父様のお話の中身知っていたのね」


 そんなどこか申し訳なさそうな顔のセリアリスを見て、ユーリはピンとくる。


「うっ、ごめんなさい。最初に王妃様から依頼されたのは、私だったの。勝手に連れ出すのは色々と憶測を立てるから、正式な依頼として、話を通してくれと断ったの。でもやっぱり、正式な依頼がきたという事よね」


「うん、お養父様の話では、生徒会を口実とした顔合わせって話だけど、裏の目的は、アレックス様の側室候補じゃないかって」


「やはり、アナスタシア卿も気付いていましたか。一応王妃様からは、正式に話を通したら一度、私と一緒に連れてきなさいと言ってました。まあ、明日にでもという訳ではありません。今度アレックス様の企画される交流会の準備もありますので、その後でいいと思いますので、一度王妃様のところへ、一緒に行きましょう」


 セリアリスの説明を聞いて、ユーリは深々と溜息をもらす。


「はぁ、正直、行きたくないなぁ。そもそもどうして、私がそんなものに選ばれるのか、意味が分からないし、アレックス様ともほとんど会話した事すらないのに」


「まあ、色々な思惑があっての事だと思いますが、王妃にしてみれば、アレックス様にアクセサリーを与えるような感覚なのかもしれませんね」


「ええーっ、アクセサリー・・・・・・」


 アクセサリーと聞いて嫌がるユーリに対し、セリアリスは諭すように話を始める。


「まずユーリ、貴方はあなたの価値をもう少し理解しないといけません。貴方は稀有な慈母神様の加護持ち。しかも、平民出ながら貴族にもなり、それでいて平民出として、貴賤なく人々と接する事の出来る聖女です。まあ何より民衆に対する影響力は絶大です。これは一つ、王家という人気商売にとっては、重要な魅力です。国は民衆あっての国です。その民衆に対し、影響力を行使できる存在は、非常に重要で、大抵はその役割を六神教に委ねられます。勿論、ユーリ自身も六神教の職位を持つ身なので神殿の影響下ともいえるのですが、どちらかというと、個人でその枠すらも凌駕します。もし、あなたが学院に入らず、世間に喧伝されたとすれば、民衆の多くはあなたに跪くでしょう。だからこそ、そのあなたが、王子の側室となれば、王子の人気は盤石なものとなるのです。まあ王妃様の思惑はそんなところでしょう」


 まあセリアリスのいう事は分かる。ユーリは一度、その崇拝の対象になりかけたからだ。そしてそれを救ってくれたのが、養父である。そしてまた、今度はその養父を窮地に追いやってしまうのかもしれないと思うと、忸怩たる思いが、湧いてくる。


「うう・・・・・・、セリー、私はどうしたらいい?」


 セリアリスはそこで、思い悩む。これに対しては、まだセリアリス自身もいい解決策を思いついているわけではなかった。


「もしユーリがアレックス様をお慕いしているというのであれば、問題はすべて解決するのですが。そしたら私とユーリ、二人で後宮を切り盛りする事になります。私にしてみれば、直ぐ近くに味方がいるのは嬉しい。でもその線は無いのでしょう?」


「正直、分からない。そもそもそういう相手として見たことがないので、そういう気になるかもわからない」


「なら少し知っていく事から、始めましょうか?その程度であれば、私が取り持つ事も出来ます」


セリアリスはそう言って、ユーリを慰めるような表情を見せる。


「うん、それはありがたいけど・・・・・・、セリーはいいの?アレックス様との事?」


「はは・・・・・・、まあ私は立場的に恋愛だけではいられないから、気にしなくていいよ」


 セリアリスは少しだけ寂しそうな笑みを見せると、そっと小指に目をやる。そこには先日レイに貰った護身用の指輪が付いている。確かにセリアリスには恋愛を自由に謳えるような、環境にはない。でも信頼できるものを見つける事は出来たし、それは彼女の拠り所になる。だからこそセリアリスは、目線を上げた時、強く凛としたセリアリスらしい表情を見せる事が出来た。


ポイント増えればモチベーションという事で、是非是非、ブクマ、評価をお願いします!

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