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第二十七話 王妃教育

 レイは六神教の話が出たので、アデルにフォローも入れつつ、そっちの事も聞いてみる。


「御爺様、皆さんがクロイツェルに来ていただけるなら、喜んで、お迎えしますよ。実は、先般、無人島で古代遺跡が発見されたので、その管理含めて人材が足りないんですよ。アゼル叔父さんが来てくれたら、父がそっちに掛かりきりになれるって、大喜びしますよ。あ、あと六神教で思い出したのですが、御爺様はアナスタシア卿をご存知でしょうか?」


「まあわしは、可愛い孫と過ごせるのなら、吝かではないがの。それと、アナスタシア卿は良く知っておる。彼は、私の学生時代の級友での。今でも時折あっておるよ」


「そうでしたか、先日新入生歓迎パーティーの時にご挨拶をさせて頂きまして、その際にお爺様の話が出たものですから。実はアナスタシア卿のご令嬢と知人になりまして、そのご縁で挨拶をさせて頂きました」


 レイは、これも聞いておきたかった事なので、上手く話しの流れに乗ってデニスに確認する。それにしても学生時代の友人とは、随分と古い友人のようだ。


「娘?ほう、もしや聖女殿の事か?彼は孫みたいな娘を養女にしたと言っておったが、聖女と呼ばれて周囲に悪用されそうになってたのを助けたとか言っておっての。今では目の中に入れても痛くないほどかわいいと言っておったの」


「はは、確かにユーリ、その聖女様ですが、ユーリも良くしてもらっていると言ってました。本当に父の様に慕っていましたよ」


「ふむ、まあ彼のところも、息子がもう一人立ちしていて、いつ継がせてもいいくらいだし、相続云々で揉めるようなこともないだろうからの。ただ、やっかみも大分多い様だが」


 そう言ってデニスは少しだけ渋い表情を見せる。


「ああ、ユーリもそう言ってましたね。なんでも聖女を娘にした事で、次の大司教とも言われ出したとか。それをやっかむ輩がユーリに危害を加えているみたいですし」


「危害?その話をアイツは知っているか?」


「ああ、攫われそうになったところを偶々、俺が助けまして、事なきを得たので、アナスタシア卿を心配させるような事はしたくないと、今は内緒にしています」


 レイは事もなさげにそう話をする。ただこれにはデニスもアゼルもびっくりした表情を見せる。


「レ、レイ、お前は、その攫われそうなところを助けた?のか?」


「はい、助けました。王都の町は入り組んでいるので、屋根伝いに逃げました」


 デニスもアゼルもレイが、精霊の寵愛を受けている事を知っているはずだ。なので、さして驚かれないだろうと思ったが、屋根伝いと言われ、デニスもアゼルも空いた口が塞がらない。ただ何とか気持ちを持ち直し、そこはスルーし、話を元に戻す。


「まあ、とにかくそこもアナスタシア卿の対抗勢力のバックにロンスーシーが絡んでいると噂されている。まあ、ざっくり王都の情勢はこんなところだ」


 まあとにかく、ロンスーシー絡みで状況が芳しくないという事は判った。とすると、ジークの件もロンスーシー絡みなのかも知れない。どの道、今、ジークにはシルフィに頼んで、風の精を付けて貰っている。何かあれば、情報は入るだろう。


「有難うございました。直接俺自身に何か火の粉がかかる訳ではないのですが、友人たちに何かあれば、それはそれで困りますから、助かりました」


 するとそんな三人の近くにミリーゼがお茶をもってやってくる。


「もう難しいお話は終わったかしら、で、レイ君。学院でいい子は見つかった?私の伝手で社交界から情報引き出してあげるわよ」


「ミリーゼさん、噂好きのところ、うちの母に似てきましたね」


 レイはそう言って、ミリーゼにジト目を送る。良い子も何も、セリアリスやユーリ、メルテに絡まれてそれどころでは無かったりする。


「あら、それは褒め言葉よ。レイネシア御義姉様は、私にとって憧れの女性だもの。なんてったって、王太子殿下の求愛を袖にして、御義兄様に付いていってしまうくらいですもの。さあさあ、レイ君、逃がさないわよ、さっさと白状なさい!」


 レイは笑顔が引き攣るのを感じつつ、どうお茶を濁そうかと、真剣に頭を悩ませた。


「ミリーゼさん、そもそも学生の本分は学業だと思うのですが」


「あら、貴族にとって交友関係も立派な勉強よ。大体、クロイツェルだと出会いなんてないでしょう?なんなら私が見繕ってもいいわよ。実は最近私にレイ君の問合せが結構入るのよ。あなた何か最近目立つ事したでしょう?」


 心あたりでいうと新入生歓迎パーティーだ。実際に直接レイに対して、好意を示すような女性も最近増えている。基本、傍にジークがいるのでその時は近寄ってこないのだが、一人でいると、声を掛けられる。


「ま、まあ、多少は目立ちましたが。まだ学生生活も始まったばかりですので、今しばらくは勘弁頂けると・・・・・・」


「しょうがないわね。まあ、あんまりのんびりしているようだったら、私が積極的に動くから、楽しみにしてらっしゃい」


 ミリーゼは楽しそうな顔をして微笑むと、レイはがっくり肩を落とした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 後宮へと続く道にカツンカツンとヒールの音が響く。セリアリスは今、後宮にある王妃のいる一室へと向かっている。定期的に行なわれている王妃教育の為だ。


 王妃教育の教育内容は様々だ。王家の歴史に始まり、他国との関係、礼儀作法、国の行事に関わるしきたり等、大小様々な事が教えられる。


 勿論、第一王子アレックスの許婚である以上、こういった知識は必要になるのは仕方がない。セリアリス自身が直接政治に関わる訳ではないが、知らない訳にはいかないのだ。


 夫になるアレックスのサポートや生まれた子供に対する教育、直轄地に対する経営など、やる事は様々だ。勿論、社交の場では主役、主賓としての振る舞いが求められるし、海外要人に対しては、ファーストレディとして国の顔役を求められる。セリアリスには年の離れた兄もいるが、その兄が国王の外戚として、権勢を振るえるよう、配慮もしなければならない。


『全く億劫なものよね』


 セリアリスの自己評価は、あまり物陰から支えるようなサポートに徹するような性格ではないと思っている。むしろ、先頭に立って仕切りたいタイプの人間だ。


『お母様もそういうタイプですから、やっぱ似ちゃうのよね』


 母であるカエラも自分で行動するタイプだ。父も軍部の事にかかり切りで、領内の多くのことは、カエラに任せている。そこには信頼関係があるので、夫婦仲も良好だが、セリアリスも羨ましく思うものだ。


『アレックス様との間にも同じような信頼関係が築けると良いのだけど』


 正直今は、上手くいっているとは言い難い。せめてもう少しコミュニケーションが取れればいいのだが、どうしても表面上のものになってしまう。これがレイであれば、と思考を巡らせたところで、目的地へと着く。


 セリアリスは内心の憂鬱を心の奥深くに閉じ込め、その部屋へと足を踏み入れる。


「セリアリス・フォン・ノンフォークです。本日はどうぞ、宜しくお願いします」


踏み入れた先には、現王妃であるヴィクトリア様が優雅な笑顔でセリアリスを出迎える。現元老院の議長でもあるロンスーシー家の出身で、アレックスの生みの親でもある。鮮やかな金色の髪をした美しいご婦人。アレックスの下にも娘を一人もうけ、二児の母とはとても思えない程の若さと美しさを誇っている。


 ヴィクトリア様は、セリアリスを眺めながら親しげな表情を浮かべて、話しかけてくる。


「ようこそ、お待ちしておりました。先日の新入生歓迎パーティーでも素晴らしいダンスを披露したと聞きました事、嬉しく思っております。流石は、ノンフォークご令嬢ですね」


「あっはい、アレックス様が上手くリードして下さいましたので、実力以上のダンスが披露出来ただけで、そのように言って頂けると大変恐縮です」


セリアリスはそういうと恭しく頭を下げる。のっけからそんな話題に触れられるとは思っていなかった。


「あらあら、ご謙遜を。我が子ながら、あの子のダンスは人並み。武芸、学問ならいざ知らず、ダンスに関してはあまり熱心ではありません。やはり貴方の技量を誇るべきよ。っと、立ち話もあれですね、どうぞ其方にお掛けなさい」


「過分なご評価、ありがとう御座います。引き続き精進してまいります」


セリアリスは反応に困る話題に恐縮しつつ、勧められた席へと着く。


「では今日は王妃教育の時間として、先日のお話の続きから始めましょうか」


 ヴィクトリアもまた反対の席につくと、先程の会話は気にも止めずに、会話を進める。ヴィクトリアは時折こうして、セリアリスを困らせるような話をしてくる。それがどんな意図でされるのかは判らないが、だからこそセリアリスも気を引き締める必要があり、ボロを出さないように注意して、話し始めた。


面白い、これからに期待、頑張ってと言っていただける方は、是非ブックマーク並びに評価のほど、お願いします。それが作者のモチベーション!


よろしくお願いします!

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