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第百十六話 ボス戦③

カロウトさん、レビュー有難う御座います!

ようやくボス戦終了で、明日は事後処理談の予定。展開は予定通りなのですが、表現はもっと精進せねばと思う今日この頃です……。

 レイの動き出しにアレックス部隊のメンバーも呼応する。近衛は盾を掲げ、魔法攻撃のメンバーを守りに入り、魔法攻撃のメンバーは、火力を少年へ集中させる。そんな中ユーリはアレックスに回復魔法を掛けて、回復を図る。


 一方の少年は先程までとは違い、攻防を同時に発現させ、後方へは攻撃、迫る魔法とレイに対しては防御障壁を張る。


『シルフィ飛んで』


 レイはあえて障壁を破ろうとはせずに、フワッとその障壁を飛び越えようとする。


「ずるはいけないよっ」


 少年は浮かび上がったレイを狙い撃つ様に光の剣で迎撃してくる。


ガガンッ


 咄嗟に張られたエリカの魔法障壁がその攻撃を食い止めるとレイは少年の元へと降下し、風の刃を纏った剣で、その手を弾き飛ばす。


ズバッ


 少年の右手が風の刃に吹き飛ばされ宙に舞う。ただそれでも少年は反対の手をかざし、レイを弾き飛ばす。


「うわっ」


 シルフィは不可視の攻撃の間に入り、レイは直撃を免れて後方へと着地する。見ると切り飛ばされた手は再び少年によりくっつけられて、一切のダメージを負っていない様だった。


「ああ、やっぱりそういう事か」


 レイはそれを見て、やはりと合点する。するとディーネがレイに話しかけてくる。


『主様、どうやらお気づきかも知れませんが、あれは傀儡ですわ。あれには攻撃しても意味が有りません』


 どうやらレイの考えとディーネの見立ては一致した。あれは傀儡、ゴーレムみたいなものだ。しかもゴーレムの様なコアがある訳ではなく、操る本体が存在するタイプのものだ。


「うん、やっぱり良い攻撃をしてくるね。それにどうやら気付いちゃったかな?」


「アハハ、どうやら正解みたいですね。とは言え、まだ半分しか正解を分かっていないんですが」


 少年が気前よくこちらの思惑を肯定してきたので、レイも素直にまだ半分しか分かっていないと認める。そうまだ答えは半分しか分かっていない。


「ならまだ僕の方が有利だね。答えの半分を見つけられる前に、終わらせるとしよう」


 すると少年はこれ迄の攻撃とは違い、自ら剣を持ち、立ち上がる。そしてレイが不味いと思った時にはその剣が振るわれようとしていた。


「クッ」


 レイは辛うじてその剣を受け止める。しかし少年の剣は二撃目、三撃目と迫ってくる。レイはそれもギリギリに躱しながら、大きく後方へと飛びのこうとした瞬間、その剣がレイの体を捉える。


「ガハッ」


 シルフィの風の防壁により直撃こそ避けるが、レイは後方へと飛ばされる。そしてそれを追いかける様に無数の光の剣が襲いかかる。


ザバァーン


 それを飲み込む水の奔流。レイは剣を杖代わりにしながら、なんとか立ち上がるとレイの前にエリカが魔法障壁を張り、少年との間に壁を作る。


「痛っ、あ、あぶなっ。ちょっ、いきなりは無いんじゃ無いですか?」


「君、本当凄いね。確実に殺しにかかったんだけど。しかも精霊が自由過ぎる、どんだけ精霊に愛されているんだい?」


 レイと少年、お互いが軽口を言い合うが、共に目は笑っていない。このままでいけば、間違いなくレイがやられる。何故なら傀儡を相手にしている限り、レイに勝ちは無いからだ。


『せめて本体が判れば……』


 レイは集中を切らさず、でも勝機を懸命に考える。するとレイの友人が場違いに楽しそうな声を出す。


『見ツケタ、見ツケタ、コア見ツケタッ』


『ええっ、本当?シルフィ、見つけたの!?』


 レイはその一瞬、集中が切れる。驚くなというのが無理なのだ。しかし少年にしてみれば、好機である。エリカの張った魔法障壁を切り裂いて、レイの元へと迫ってくる。


『しまったっ』


 慌てたレイは反応し切れていない。ただその剣撃がレイの元へと届くことはなかった。


ガキンッ


 その剣を防いだのはアレックス。アレックスはユーリの治療を受けた後、戦列に戻ってきたのだ。しかもやたらテンションが高い。相手を押し退け、高らかに宣言し出す。


「ハッハッハッ、ここから先は俺のターンだっ、近衛達も我に続けっ」


「「「おうっ」」」


 そしてアレックスと近衛達による少年との近接戦が始まる。レイは後ろに一旦飛び退き、状況を見守る。するとユーリとエリカがレイの元へとやってくる。


「リオ様お怪我は有りませんかっ?」


 そう言って慌てて治癒魔法を掛けようとするユーリを遮って、レイはユーリに聞く。


「ああ怪我は大丈夫、軽い打身だから。それよりアレどうしたの?」


「治療をして目を覚まされたら、何故か元気一杯で?私にも良く分からないのですが?」


 そうユーリはただ治療をしただけ。ただ床に寝転がしたままだと可哀想なので、膝枕で治療してあげただけだった。ただ目を開けた時、ユーリの可憐な顔がアレックスの目の前にあった。アレックスにしてみれば、特別に心配されて膝枕までしてくれていたのだと勘違いする。しかもヒロインの献身的な看護で復活してボスを倒す展開は、正に王道。テンションが上がらないわけがなかったのだ。


 そんなアレックスの心情が分からないレイ達は首を傾げながらも、一旦、それは脇に置く。それよりも今は好機、アレックスが少年を押し留めているこの瞬間にコアを破壊すれば、レイ達の勝ちなのだ。


「ユーリ様、貴方の慈母神から授かった魔法って封印ですよね?あそこの祭壇を全部覆う様な規模でそれって使えますか?」


「えっ、ああ、はい、使えますけど?」


 レイはそれを聞いて満足そうに頷く。そして今度はエリカに目を向ける。


「エリカ様は滅する力と仰ってましたが、具体的にどんな魔法なんですか?」


「は、はい、えっと聖剣付与という魔法で、剣を聖なる力で覆って聖剣とするものなのですが」


「それってどんな剣でも有効なのかな?」


「本当は専用の剣がある様なのですが、普通の剣でも効果はあります。多少威力は落ちるみたいですが……」


 レイはそれを聞いて再び満足そうに頷く。そして彼女達と話し合う。チャンスはそう多くない。なので、ここで勝負を決めるつもりだった。


「じゃあ後は手筈通りお願いします」


 そしてレイは再び少年の方へと走り出した。



 まずレイが考えたのはメルテの魔法だ。レイはアレックス達が取り囲む少年の側まで行くと、後方のユーリに目配せをする。


「メルテさん、お願いします」


 メルテはユーリの合図と共に魔法を繰り出す。魔法はアレックス達を四方から取り囲む土の壁、と同時にユーリも魔法を繰り出す。


「サンクチュアリー」


 ユーリのかけた魔法は何故か祭壇全体を取り囲む様に淡い光を発する。そしてやはり同じタイミングでレイはその壁の周囲を走り出す。


 異変が起きたのは少年だった。その動きが鈍り、手数も減っている。最初近衛達は四方を壁に取り囲まれ殺す気かっと驚愕したが、緩慢な動きになった事で、俄然やる気をだす。それはアレックスも同様で今こそ好機とばかりに、声を張り上げる。


「今がチャンスだっ、ここで此奴を討ち果たすぞっ」


「「「おうっ」」」


 一方の少年は視界を遮られ、攻勢を受けて状況把握が出来ない。


『くっ、どういう事だっ、な、仮面の奴が居ない?ちっ、そういう事かっ』


 仮面の男は少年が傀儡であることを知っている。その彼がこの場にいないという事は、本体が何処にあるか分かったという事だ。そしてその向かう先もまた、本体の方に違いない。しかもこの動きの鈍り、先程の聖女が本体に封印の魔法をかけたに違いないのだ。


『ちっ、担がれた。人間にしてはやると思ったが』


 すると少年は反撃の手を止める。そしてその瞬間アレックスや近衛達の剣が少年へと突き刺さる。


ザクザクザクッ


 少年はそれを受け、ニヤリと笑みを浮かべ、そしてサラサラと砂の様にその場から消える。


「ウォーッ、階層主を打ち取ったぞーっ」


「「「ウォーッ」」」


 壁の中で歓喜の声が上がる。ここまで苦しめられた階層主を遂に打ち取ったと勘違いしたのだ。ただ壁の外では今まさに最終決戦を迎えていた。


 レイは祭壇近くまで来た時に背後の歓声と共にゾクリッと殺気を感じる。


ガキンッ


 そこにいたのは先程土壁の中で消え去った筈の少年である。彼は祭壇の一歩手前でレイに剣を振るい、その脚を止めていた。


「チッ、土壁の中でやられたんじゃ無いんですか?」


 レイは相手の剣をいなしながら、仮面の下で忌々しげな顔をする。


「クククッ危ない、危ない。危うく本命を攻撃される所だったよ」


「成る程、やはりこっちが正解でしたか。なら後は押し通るだけですね」


「勿論、それが出来ればの話だがね。だがそう簡単にはいかないよ」


 少年は先程と同じ様に近接戦をレイに仕掛ける。レイもそれに応じてその剣を迎撃する。しかし、ユーリの魔法が効いているのだろうか、先程よりも動きが鈍い。少年は少しづつレイに押され始め、忌々しげな顔をする。


「クッ、用意周到というわけか。でもこんな手なら君には防げまい」


 少年はそういうと、攻撃を仕掛けながらも上空に剣を浮かばせる。しかしその剣はレイに向いておらず、その矛先は後方のユーリに向いていた。


 ただそれをみてニヤリとしたのはレイだ。無数の剣がユーリに向けて襲いかかる。レイはこの瞬間を待っていた。ただでさえユーリの封印で力が抑制されている中、更に別の力を浪費したのだ。当然少年自身の能力も落ちる。レイは風の力で最速を叩き出す。少年は脇をすり抜けるレイに反応すら出来ない。


「クッ、でも聖女さえ倒せばっ」


 しかし少年の思惑は簡単に潰える。


「土壁っ」


 メルテが繰り出す防壁魔法。土壁に勢い良く剣が当たるが、それを打ち破る事はできない。


「なっ」


 驚愕の表情を見せる少年。そして先程通り過ぎた仮面の男を見ると、その男は高々と舞い上がっている。


「エリカ様っ」


 その掛け声に呼応する様に仮面の男の剣が聖なる光に包まれる。そして仮面の男は真っ直ぐ祭壇の上に降下するとその勢いでその剣を地面に突き刺した。


ゴゴゴゴゴゴッ


 大音響と共に地面から眩い光が立ち昇る。そして祭壇には亀裂が入り、剣が突き立てられた真っ黒い宝玉が浮かび上がる。レイは剣を手放し、その場から飛び退くと、黒い宝玉は上空へと浮かび上がり眩い光を発しながら、砕け散る。


ガシャンッ


 ただ砕け散った破片は落ちる事なく、そのまま上空に浮かんだまま。そしてクルクルと回転し出し、そのまま壁をすり抜け、四方へと四散する。ただその破片の1つだけが舞い戻り、少年の手元へと戻ってくる。レイはそこで少年に近寄って話しかける。


「今回は俺の勝ちって事で良いんだよな?」


 確かな手応えがレイにはあった。ただその後の出来事が全く理解できないので、思わず元凶に聞いてしまう。


「ハハハッ、うん、今回は君の勝ちだね。まさか聖女への攻撃も計算ずくだとは思わなかったよ」


 少年はサバサバとした表情で、そう答える。レイもそこでホッと一息をついて、疑問に思った事を聞く。


「それでそのカケラはなんなんだ?」


「んー、そうだね。簡単に言えば、とある神の魂のカケラかな。彼は厄災とも言われた存在でね。アネマあたりは毛嫌いしているんじゃないかな。彼には善性と悪性があってね、常にその二つが鬩ぎ合っているんだ。今僕が持つカケラは善性。善性は一握りで悪性が大半なのさ。飛び散ったカケラが悪性。粉々になったから力が小さくなって、神の作った結界からすり抜けて外に逃げたんだ。神の結界は強力な分、目が荒いからね」


「はあ?」


 随分と他人事の様にいう少年にレイは呆れた声を上げる。待て待て、なら壊さなかった方が良かったんじゃないかと思い始めた時に、少年がニヤリとする。


「ああ、安心して良いよ。粉々にしなかったら、本体が力を持って完全体で復活してたから。正直この遺跡の封印もそろそろ限界だったんだよ。多分聖女が生まれたのも、君らがここに来たのもある意味必然だから。ああそうそう、飛び散ったカケラが集まると悪性だけで復活しちゃうから、早く集めた方が良いよ。でないと、この世界に厄災が降りかかるからね」


 レイは余りにも軽い口調でとんでもない事を言われ、言葉が出ない。すると少年は淡い光に包まれ始める。


「えっ、いや待ってくれ。もしかして貴方は消えてしまうのか?」


「うん、ほら僕は元々傀儡だし。後の事は君たちこの世界の住人に任せるよ。ああ僕のカケラは持ってた方が良いよ。他のカケラの所在が分かるから。ああ、あの聖女の子とかが相性良いかもね。彼女、デメルテの愛子でしょ。彼女は優しいから……」


 そしてカケラに光が収束され、カランッカランッと床に落ちる。


「ええーっ」


 言いたい事だけ言った後、少年は居なくなる。レイは再び途方に暮れる。壁の中では相変わらず、歓喜の雄叫びが響いている。レイはその声を聞きながら、カケラを拾い、トボトボとユーリ達の元へと歩き出した。


面白い、これからに期待、頑張ってと言っていただける方は、是非ブックマーク並びに評価のほど、お願いします。それが作者のモチベーション!


よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] うーん……。話が進むにつれて、主人公以外のキャラクターが無能になっていってるのがなぁ……。何でもかんでも主人公上げをするのはどうかと思う。しかも、周囲を無理やり下げさせての相対的な主人公上げ…
[気になる点] 珍しく強敵だったので戦闘描写が長めだったのですが、効果音や一言で臨場感を出そうとするのは感心しないです。ちゃちな感じになってますね。
[一言] これはおそらく最終アレックスに ゆゆうたで、「ねぇ今どんな気持ち」 を叩きつけるパターンだと思うんです(違います)
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