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第百一話 メルテ 対 セリアリス

100話おめでとうコメントありがとうございます!話はまだまだ続きますが、応援よろしくお願いします!

 クラス別対抗戦決勝、よもや1年生のクラス同士の戦いになるとは誰も思っておらず、会場はいやが応にも盛り上がりを見せる。特に前評判が低かったDクラスが決勝に残った事は周囲にとって驚きであり、盛り上がりに拍車をかける要因にもなっていた。しかも更に盛り上げているのは2人の王子の存在である。これまで両者とも表舞台に立っておらず、憶測だけが独り歩きしているので勝手な想像が話をヒートアップさせていた。


「いやだから、アレックス様の方が強そうだろ?なんてったって生徒会長で成績も実技も優秀。それに王道の光属性だしな」


「いやいや第二王子のジークフリード様だって、如何にも能ある鷹は爪を隠す感じじゃないか、闇属性っていうのも隠してる感じだし」


 他にもアレスやメルテのどっちが強いか論争なども盛り上がっているが、その対戦表が発表された時に、会場はまた響めきが起こる。


 第一試合 メルテ 対 セリアリス


 第二試合 レイ 対 アレス


 第三試合 ジークフリード 対 アレックス


 これまで両クラスとも順番を固定して来たのだが、ここでAクラスがセリアリスとアレスの順番を入れ替えてきたのだ。メルテとアレスの無敗対決を期待していた観衆も多かったが、逆にそれぞれが勝ち星を計算して大将戦に繋げると捉える者も多く、勝敗予想は一気に盛り上がりを見せる。


 ただ戦う当事者は予めこの結果を知っており、動揺はない。セリアリスがレイを通じてメルテに対して挑戦を申し出ていたからだ。その為、レイもメルテに意向を確認した上でDクラスは順番を変更しない旨を伝えていた為、予定通りの結果となっている。


「フッフッフッ、セリアリスが逃げずに挑んできた。ならば私は全力で迎え撃つだけ」


 メルテは嬉しそうに目を細める。メルテはセリアリスの挑戦を好意的に捉えていた。元より人として好きな相手であり、夏にも戦った事のある相手である。相手にとって不足なしなのである。


「メルテ、あまり油断しない方が良いよ。セリアリス様はきっとメルテ対策をバッチリ取っているから。力はメルテが上だけど勝敗はそれだけじゃ無いからね」


 レイは楽しげな表情を見せるメルテに対し、一応そう注意を入れておく。メルテは一度縦に首を振り、それを素直に受け入れる。


「わかっている。セリアリスは弱くない。スザリンもそう言っていた。油断はしない」


「なら大丈夫かな。応援してるよ」


 レイもメルテの言葉を聞いて心配は杞憂かなと微笑む。そして程なくして決勝戦開幕の合図があり、メルテは会場へと足を踏み入れた。



 セリアリスは会場に足を踏み入れた時、周囲の喧騒に対して、冷静に耳を傾けていた。周囲の声は圧倒的にメルテが有利。セリアリスに関しては何分持つかと噂するものが多い。そして昨日の憶測。こればっかりは興味本位の嫌らしい醜聞なので気持ちの良いものでは無い。ただ知らない人に何を言われても気にしない。あくまで信じて欲しい人達が信じてくれていれば良いのだ。ちなみに目の前の対戦相手はその事に関心すら示さず、自分との対戦にのみ興味を示してくれる。これもまたセリアリスには嬉しい事で、変に同情される事もなく、互いに全力で戦える事を意味していた。


「メルテ、今日は全力で勝ちに行きます」


「セリアリス、力の差を見せる、手加減はしない」


 2人は互いにニヤリと笑いながら体勢を整える。セリアリスはレイの格好に近く、胸当てなどは付けているが軽武装、機動力を損なわずそれでいて最低限、急所には守りがある格好である。一方のメルテはローブ姿。典型的な魔法使いのそれで、その右手には棒杖(ワンド)を掲げている。


「それでは、始め」


審判から告げられる開始の合図と共にセリアリスの魔法が発動する。


「サンダーッ」


 バリッと効果音が発した所には既にメルテは居らず、メルテは開始と同時にサイドステップでその攻撃を避けていた。


 そして少し遅れてメルテは土の壁を防壁として自身の前に置き、次の魔法の準備にかかる。セリアリスのサンダーは相手を視認する必要がある為、土壁に隠れたメルテに放つ事が出来ない。ただ相手がこちらを視認出来ないという事でもあるので、セリアリスはその距離を詰める選択をする。


 そして土壁近くまで近付いた所で、足元のその罠に気付く。


『設置型!?』


 セリアリスが一歩踏み入れた地面から土壁を囲むように火柱が立ち昇る。メルテが仕掛けた罠であり指定領域に足を踏み入れると火柱が上がる罠だった。ただセリアリスは寸前その意図に気付き、下がらずに踏み込む選択をする。長引けばジリ貧、それだけの力の差はある。なのでセリアリスは切り札を切る事にする。この対メルテ戦の為の切り札だ。


『精霊様、お願いしますっ』


 これが成功するかは全く未知数だ。だから藁にもすがる気持ちで精霊にお願いする。セリアリスは加護持ちでも何でもない。その声もその存在も感じる事など出来ないのだが、その瞬間、精霊が嬉しそうにした気がする。セリアリスは風魔法を足元に展開し、その風を踏み締めて思いっきり上へ跳躍する。セリアリスはその瞬間土壁を乗り越えメルテの不意をついたかに見えた。


「セリアリス、予想通り攻めてきたっ」


 メルテは油断などしていなかった。普段なら此処で広範囲攻撃で力押しをしたりするのだが、セリアリスが罠すら乗り越えてくると思い、即時攻撃できるファイアアローを発動し上方と左右を警戒していたのだ。そして放たれるファイアアロー、観衆もメルテもその勝利を確信した瞬間、セリアリスの姿が霧散した。


「えっ、フェイク!?」


 メルテは霧散した瞬間再び周囲を警戒しようとした所でその耳にセリアリスの呪文詠唱の声が届く。


「サンダーッ」


「キャーーーッ」


 セリアリスの魔法がメルテに直撃しメルテは思わず悲鳴を上げる。そしてサンダーの効果で体が麻痺し動けなくなった所で、セリアリスがその剣を首筋に当てて、ニッコリと笑う。


「この勝負、今回は私の勝ちね、メルテ」


「むーっ、悔しい。でも今回は負け。次は絶対勝つっ」


 メルテはそう言って剥れた表情を見せる。僅か数分の攻防、結果としては呆気ない幕切れである。ただメルテは試合自体には満足したのか、痺れが治ると立ち上がってセリアリスと握手を求める。セリアリスもそれに応じて歓声はセリアリス称賛の声へと変わる。


「すげーっ、最後のアレ一体何だったんだ?」


「おいおいあんなに強いメルテが負けちゃったよ」


「セリアリス様、やっぱ格好良いです。強くて美しくて、本当に素敵ですわ」


 セリアリスはその声に応えて周囲の声援に笑顔で応える。今では開始前までの嫌らしい空気は無く、ジャイアントキリングを果たした凛々しい少女に惜しみない拍手が送られていた。



「おいレイ、お前最後のセリアリス嬢の魔法知っていたのか?」


 試合を脇で見ていたジークから質問され、レイは苦笑を交えて答える。


「勿論、知ってたよ。教えたのは俺だし。まさか此処でこんな使い方をするとは思わなかったけどね」


「成る程、風と水、それに雷と多彩な手札に何より強い心と聡明な頭脳。力押しに頼りがちなメルテには分が悪い相手だったか」


 ジークはそう言って今の戦いを分析する。しかしレイはその意見には反対で、違う意見を言う。


「ジーク、それは違うよ。手数と戦術に長けたセリアリスの土俵に上がるのでは無く、その土俵ごと壊せば良かったのさ。圧倒的火力でね。メルテにはそれが出来るし、セリアリスもそれが1番困ると思うよ」


「ふむ、成る程な。確かにメルテの火力なら小細工の余地を無くすのは有りかもしれないな」


 とは言えそれは結果論だ。どんなに力量差が有ったとしても、負けた方が弱いのだ。勝敗は時の運だが、今回はメルテが弱かったという事だ。そしてDクラスは1敗をしてしまったので、これでレイが負ければDクラスの優勝の芽が無くなってしまう。


「そう言えばジーク、まだ一回も戦っていないけど、一回くらいは戦いたいよね」


「いや、全く戦いたくないな」


「そうか、そうか、ぜひ戦いたいか。なら俺が勝たないといけないな」


 レイはそう言ってジークの言葉を無視して、ニヤリと意地悪な顔をする。ジークは腕を組み忌々しくレイを見ながら、聞いてくる。


「チッ、そこまで言うなら俺も準備をしておく。ただ相手はアレス、簡単な相手でもあるまい。因みにやはり相手の土俵を避けて戦うのか?」


「いや、思いっ切り相手の土俵で戦う。ちょっと俺も思う所があるからね」


「ほう、それは珍しいな。まあ細かくは聞かんが、準備が必要なのは間違いないようだ」


 ジークはそう言って肩を竦める。レイはそこで対戦チーム側を見詰める。そこにはやはり此方を見詰めるアレスの姿が見える。如何やら此方に対して思う所があるらしい。


 ただそれはレイにしても同じだ。今回のセリアリスの件は非常にきな臭い。そしてそれにアレスが関与している気がしてならない。どうせ問い詰めた所でしらを切られるのに決まっているので問い詰める事は無意味だ。なら如何すれば良いか。簡単だ、その傲慢さを断ち切れば良い。レイはそう思うと心の奥で熱いものが湧き上がるのを感じていた。


 その一方でアレスも同様に仄暗い炎を胸の内で燃やしていた。セリアリスの排除は半ば為された。アレス自身はまだ知らなかったが、婚約破棄は目前である。フラガの馬鹿がセリアリスを既に汚していれば、事はもっと簡単に済んだが、ここまで来れば排除は確実である。ならば後邪魔なのは次の対戦相手のレイ・クロイツェルだけだ。こいつさえいなければ、ユーリが頼るべき相手は自分かアレックスだけになる。アレックスに関しては、ユーリ以外の誰かをあてがう必要があるが、同じ聖女であるエリカの方が家格的にも合うはずだ。ならユーリに関しては、アレスに譲って貰うのも充分可能だろうと思っていた。何故ならアレックスにとってアレスは必要な駒だからだ。


『此処からは俺の舞台だ。悪いが端役は此処で退場して貰う』


 そして第二試合、レイ対アレスの一戦の火蓋が今切って下される。


面白い、これからに期待、頑張ってと言っていただける方は、是非ブックマーク並びに評価のほど、お願いします。それが作者のモチベーション!


よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「アレスが関与している気がしてならない。」ってだけ?
[一言] 文章力が話にならない。[少なくても]? [少なくとも]だ。バカちんが! 精進しなさい!
[気になる点] 細かいですが。 火蓋は切るもので、切って落とすのも切って下ろす?のも本来は誤用とされております。 ご注意下さい。 ちなみに、切って落とすのは幕ですね。
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