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003 戦場の堕天使

003 戦争犯罪 CLASS:レッド


アウザー・リリブル 享年78歳 脳卒中

生年月日:1195年 12月 8日 血液型:O型


異名:戦場の堕天使、才色兼備の天使


04世界線

総被害者数:370人以上


1195年 003誕生

1216年 003看護師になる

1218年 ハルマタ戦争勃発 備考:戦死者は93200人程

1234年 ハルマタ戦争収束

1235年 ハプラ野戦病院廃院

1238年 ディミイラ包囲戦勃発 備考:行方不明者・戦死者は88300人程

1246年 ディミイラ包囲戦収束 

1252年 アルイ戦争勃発 備考:戦死者は103700人程

1261年 003戦地から逃亡

1265年 アルイ戦争終結 


【両性具有の美を求める】

003は幼少期のころから両親が入信していた宗教、エイテル教の神を信仰していました。その宗教の唯一神は男性と女性の両方の性別を持つ神であり、男と女は二人合わさることで完璧な天人になることができると考えられていました。現代でいうニューハーフや女装男装がその時代においては珍しく地位が高く扱われていた宗教だったために、003はそういった信者たちによく接触し、両性具有というものに抵抗を持たず、いずれは自分も完ぺきな天人になることを夢見ていたと語っていたそうです。


【看護師としての道】

003は戦争の多い時代であるため戦場の天使と言われていた看護師になりたかったそうです。元々賢かった003は独学で脳外科医になれるほどの実力を身につけて、当時女性しかなれなかった看護師にそのずば抜けた成績を見せつけ、更には宗教で培った話術も使い、戦場病院を取り締まっていた看護婦長を言い負かしました。ただ看護婦長が発した「男性は看護師にふさわしくない容姿である」という言葉に反抗してか、003はその年から女装に磨きをかけ、患者である兵士に求婚されるほど美しくなったといわれています。


【天使への到達、堕天の前触れ】

自身の美貌を保つために美容薬品の研究開発を野戦病院でひそかに行い、その成果もあってその美は死に際の78歳でも変わらず生娘のように咲いていたと言います。しかしその絶大な美の完成の裏には何人もの魂がささげられていたのでした。しかしその裏では臨床試験のために何人もの患者に回復薬として投与し、その内3名は試作品の副作用により死亡したような記録が残っています。しかし、毎日人が死ぬ野戦病院では大した問題としてあがらず、003はのびのびとほかの新薬の研究にも手を出すようになりました。


【戦場から戦場へ】

003が勤務していた野戦病院は16年間続いたハルマタ戦争の終止符として両国間にて和解条約が結ばれたことで役目を終えることになりました。003が40歳になる年に最後の患者が退院してその野戦病院は廃院となりました。しかしその時点で100人ほどの犠牲者が出たと思われます。この時点で003が多くの犠牲で作った新薬は感染症によく効くということで後にその新薬に関する論文を出した年に国で行われる表彰式に参加したという記録が残っています。

その後、003はまたしても自分の実験場となる戦場に行き、衛生兵兼看護師として他国の戦場の救護テントで【美と純潔の天使】としても名をはせることとなりました。そこでもまた120人ほどを臨床試験のために殺害したと思われます。


【三つの戦場を渡り、宿を営む】

003が戦争を三つほど渡り歩くころには300人もの死者が出たと思われます。それは新薬のテストだけが原因ではなく、治療と称した拷問も行われてたからでした。連れてこられた重症の兵士の腕や足を麻酔なしで切断したり、わざと意味のない開腹手術も行ったりしました。これはアルイ戦争が終結するまで行われていたわけではなく、9年目にして新人の看護師で偉人ともなるフランテチェス・ナイターテールに摘発され、003はついに45年の看護師人生に終止符を打つこととなり、戦争犯罪人として追われることとなりました。

アルイ戦争終結時には敗戦したフレンテの田舎町にて旅館【シクスヒリング】の看板娘として働くようになります。この時の003の美貌は20代からまったく変わっておらず、発表された年齢が70歳だったため誰も疑うことはありませんでした。その旅館の一室に住み込みその地下に003専用の秘密の拷問部屋を増築しました。この旅館にても誰にも気づかれることなく殺人を何度も繰り返し、最期の時に至るまでのべ62人が殺されたと確認されています。


【最期とその後】

003の最期は夜に突然脳卒中を引き起こし、眠ったまま息を引き取りました。

003が死んだことは村でもかなりの騒ぎになりましたが、それよりも遺体に化粧をする際、003の顔をタオルで拭くと顔が一気に老けたという話がありました。それは美容薬品の効果だけでは若さを保てなかったため、仮面ともいえるほどの厚化粧を003は自分の顔に施していたのです。

この看板娘の死体が一気に老けたという伝承はその村周辺で老いる死体という怪談で長らく語られることになります。

003の犯罪が全て露見したのはその噂に興味を示したアルイ戦争に参加し、偶然003の野戦病院に担ぎ込まれたことのある元兵士が003の死体を見たときでした。老けてはいるものの美人な顔つきはまさに似ていたので、その元兵士は気づくことができました。


003の身元はあらゆる検査にかけられたことにより死後28日で特定されました。

戦犯としての素質もさることながら、隠ぺいしていた数々の新薬のデータや非人道的研究の結果は各学会、メディア、国民の注目の的となりました。生前と死後の変わりすぎた死体の様子なども003の異常性とみられ、大きな衝撃を世界に与えました。


【追記】

現在の02世界線の医学に彼(彼女)の非人道的な実験が役に立ってしまったことはある意味必然ともいえましょう。彼(彼女)がこれらの実験をやらなかったとて、医学の発展と称して現在も先のない患者に新薬を投与することはあります。それがいかなる激痛、苦痛があったとして、それでその患者が死んだとしいて、それは致し方なかったで済まされてしまったことでしょう。

ですが、彼(彼女)の行為のおかげで医療現場のコラテラルダメージを01基底世界線よりも厳重に監視する風潮ができました。死にゆくものだから、と人を人として見ない行為を減らすことができたのは皮肉にも野戦病院で暗躍していた戦争犯罪人のおかげでした。




報告書作成者:宮永 風雷






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