表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

プロローグ 趣味で魔王をやっています

初投稿ですが気楽に頑張ります

 勇者は彼の邪智暴虐の魔王を除かねばならぬと決意した。勇者は仲間を集めた。知に秀でた者、加護を与えし者。

 勇者はいざ、魔王討伐へと旅立った。


 これはそんな討伐される者の物語である。



 8月31日、京都、夜中の12時。正常な人間なら家で横になっているであろう時間に俺は夜の街を闊歩していた。色とりどりの電飾が目に眩しい。

  こう見えても俺は――どう見えてるのかは知らないが、それなりに優秀な大学で物理、現在は重力を専攻しているバリバリの理系だ。よく勘違いされるのだが理系であっても冷徹であったり浮世離れだったりと云う事は無い。普通に文学も嗜むし、女性にも経験は無いが興味はある。

  お気に入りのラノベの最新刊が発売されたので書店に買いに来ていたのであった。

  ――寒い。

  夏真っ盛りの8月なのに、その日は何故かとても寒かった。鳥肌が立っていた。それはまるで悲惨で凄惨な未来を予知するかのように――

  次の瞬間、俺の体を鈍い衝撃が襲った。

  即死であった。我ながら呆気無い最後だ。状況からして恐らく轢き逃げにあったのだろう。痛い、痛い。痛いのだが辛くは無い。不思議な感覚だ、まるで自分を客観視している様な...

  はぁ、ラノベの最新刊、読みたかったなあ。冴えない主人公がカマキリに転生する話。丁度良い所で終わっていたんだよなあ。

  下らない事を考えている内に、両親の姿が脳裏に浮かんだ、次に同性の幼馴染... そして、それで終わりだった。

  これが走馬灯ってヤツか。思ったより短かいのね。せめて幼馴染が女の子だったらなあ。

  同性の幼馴染って、需要あるのかそれ。毎朝起こしに来てくれる訳でも無く、夜にこっそり添い寝耳かきをしてくれる訳でも無いのに。

「―― 様!」

  もっとましな人生を歩みたかったものだ。普通に恋愛して、お友達も作って。

「――魔 様!」

  なんだ... 煩いなあ...

「魔王様! 勇者です! 勇者が襲ってきました!」

  俺は飛び起きた。前世で死亡しこの剣と魔法の世界に転生してもう20年。俺は、一応魔王をやっていた。特に成りたくて成った訳では無いが、一時の感情と流れに振り回されて、気付いたら魔王に成っていた。魔王なんて所詮勇者――魔物駆除業者のプロとも云う――に付け狙われるだけの損な存在だ。

  ちなみにこの隣で煩いエルフの女、俺の参謀であるが実は婚約をしている。今は俺を魔王様などと呼んでいるが普段は名前で呼んでくれる、仕事とプライベートは分けるタイプらしい。

  子供も授かっている。明日は式を挙げる予定だったのだ。

「...行ってくる」

「このエレナ、お供します! 共に散っていった同胞の仇を討ちましょう!」

  名をエレナと言う。紫のかかった長い金髪に深いエメラルド色の目、美しくもどこか幼さの残る顔立ちの女だ。ちなみにスタイルも良い、前世の単位で言うとBカップだろう。

  え? Bカップはスタイルが良いとは言わないって? 知るか!

  俺はエレナを見て首を横に振った。

「お腹の中の子を危険な目に合わせたくない。きっと帰ってくるから、待っていてくれ」

  恐らく俺を止めようとしたのだろう、なにか言いたげな顔をしたが目を瞑るエレナ。

「...この戦いが終わったら結婚式ですからね! ちゃんと無事に戻ってきて下さいよ...!」

  目尻に涙を浮かべ、押し潰されるような不安を感じつつも俺を信じて彼女と、

「ああ...。約束だ」

  守れる保証などどこにも無い約束を交わしてしまう。

  ついに結婚か...。感慨深いものがあった。

  エレナに口づけし、素面で彼女への愛を伝えて、俺は転移魔法を準備する。

  愛する者達との未来を掴むため覚悟を決める――前世でも現世でも人など殺した事の無い俺が、大切なものを守る為に他人を殺す覚悟。

  負ける気がしなかった。

空間湾曲(ディメンションウォーク)

インデントが上手く出来てなかった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ