4-22.世知辛い
そうまで言われたら貰った家に帰るしかないが・・・レオノーラさんと家に帰る。
「えーと・・・なんででしょうか?」
「アンジェが朝から機嫌が悪いのは分かっていた。あんたのも分かってた。関与するつもりはなかったが・・・皆がどうにかしてくれと頼むんでな」
アンジェさんが機嫌が悪い・・・確かに悪かったな。
わたしのは・・・アンジェさんのがうつったというか無視されたからで。
で・・・?
「皆と言うのは?」
「孤児院の院長。アルゴラン様。ジークさん。薬師の婆さん。その他もろもろだ」
何故に私を呼ぶのだろう?
「で・・・何故私が呼ばれるんでしょう?」
「おまえ・・・覚えてないのか?アンジェさんに「「食べたこともないのにゲテモノと言う。頭の固さに全世界が失笑」」と言ったんだろう?ジークさんが言ってた」
・・・およ・・・思ったのは覚えてるが・・・口に出して言ったっけ?
家に帰りリビングに入るとアンジェさんが座っていた。
修羅場だな。すぐさま土下座がいいのか・・・
「クルーソーさん。お話があります」
あばば・・・スライディング土下座するべきだろうか。
「ジークさんに聞きました。私がゲテモノと呼んだのはトロール族と竜人族の名物であったと。私はクルーソーさんにただ悪口を言われたと思っていました。私が間違っていました。ごめんなさい」
おおお・・・なにか誤認しているが助かったような・・・。レオノーラさんもほっとしている。
この流れに乗るか・・・違うな。
相手の誤解に付け込むのはよくない。
「あなたは誤解をしています」
「えっ?」「えっ?」
アンジェさんとレオノーラさんがはもった。仲が良いことで。
「私は本心でアンジェさんの悪口を言いました。トロール族や竜人族の矜持を考えたのでもなく・・・わたしがゲテモノを食っていると言われたことが原因ではありません。アンジェさん。あなたが自分の食べないものをゲテと呼んだことに対してです。なので「頭の固さに全世界が失笑」なのです」
二人とも無言だ。少ししてから
「そうですか。わかりました」
そういうとアンジェさんはリビングから出て行った。
いきなり胸倉を掴まれた。
「丸く収まりそうだったのに・・・何やってるんだよ!おまえ」
今度はレオノーラさんが怒った。というより通り過ぎた。激怒だ。
「いやあ・・・誤解は解いておかないとよくないなーと思いまして」
顔がめちゃくちゃ近い。
「そういうことを言ってる場合じゃねえだろ!」
レオノーラさんは青筋出ていますな。怒っても美人だなーと。
「でめえ・・・なにへらへらしてんるんだ?」
「レオノーラさん。怒った顔も綺麗ですよ」
胸倉を掴んでいた圧力が消えた。
と思った瞬間顎を撃ち抜かれた。
なかなかのパンチの速さですが見失うほどではないですな。
まあ避けられる速度ではないが。そこで意識を失った。
目が覚めるとレオノーラさんに抱きついて寝ていた。
あわわわわ・・・何が起きた。と言うか何をやらかした。
落ち着け。落ち着け。あわわわわ・・・
こちらは水竜のハードレザーを着ている。
あちらもハードレザーだ。
そうか。顎を撃ち抜かれて気絶したのか。
というか何故に抱きついているんだ?
「おはよう」
「おはようございます。これはいったい?」
「これはいったいじゃねえよ!お前が掴んで離さなかったんだよ」
なるほど・・・。
抱き枕派ではないんだが・・・。
リビングに移動するとアンジェさんがいた。
「おはよう」
「おはようございます」
「おはようございます」
アンジェさんは思いのほか普通だ。あれ・・・
元定宿に移動して朝食を食べる。
「相談があるんですよ。今孤児院で子供たちに戦闘訓練を行っているんですけどうまく行かないんですよ。どうすればいいですかね?」
アンジェさんは何事無かったようには話し始めた。
まあいいか。というか孤児院で戦闘訓練?
「孤児院の教育って戦闘訓練なんですか?てっきり読み書きや数学とかなのかと」
「ええっと。この戦闘訓練はクルーソーさんの発案と聞きましたが?」
むむむ?それはダンジョンの1層にいた冒険者ギルドの準会員の話か?孤児院?
「戦闘訓練とは・・・冒険者ギルドの準会員のことですかね?孤児院ですよね?」
「そうです。もと準会員の子たちですよ。準会員はほぼで今回の農地事業に応募しました。その子たちは今孤児院に寝泊まりしています。もと孤児院にいた子たちは領主様の屋敷に移動しています」
「なるほど・・・そうなっているんですね。孤児院と聞いたんで子供に勉強をさせているのかと思いました」
「?ん?もし孤児院の子供に教えるとしても戦闘訓練になるぜ?」
レオノーラさんが答えてくれたが・・・およよ・・・この世界では勉強はすべて戦闘訓練なのか?
「それは・・・適正とか考えたらいろいろ教えたほうがいいのでは?」
「よそではそうなるかもしないがここではそうはならない。ああ・・・もしかして知らないのか?」
「ええと?なんのことでしょう?」
まじでなんのことだ?
「迷宮都市は基本的に冒険者以外は居住出来ないんだ。なので戦闘訓練以外はあまり意味がない」
そうなんですね。・・・って・・・え?
「どういう意味ですかね?」
「そういう意味だ。・・・ああ・・・あんたはハンターギルドだな。ダンジョンに挑むものイコール冒険者って意味だ。ダンジョンに潜る物はこの都市に入れるし住むことが出来る。それ以外だと条件がかなり厳しい。孤児の子たちは・・・いろいろとやっかいなんだ」
「ええっと・・・。商人とかもダンジョンに潜るんですかね?というか家族は??」
「商人は一時滞在になります。店舗を持っている商人は居住を許可されていますが・・・厳しい監査があった上に一定期限で更新があります。冒険者はギルドの推薦があれば家族と住めますが・・・ギルド内での条件があります。例外は兵隊さんですね。兵士になれば家族と住めますし一定期間勤め上げれば永住できます」
アンジェさんが答えてくれたが・・・それならば孤児って?
「その条件だと・・・孤児はいないのでは?というかここで生まれた子供は?」
「王国と・・・この都市では奴隷は禁止されている。で王国は人間の国なんで・・・人間以外の孤児は暗黙のルールでここに送られてくる。この都市で生まれた子で親が死ねば当然孤児になる。子供は成人するまでにどこかの店舗に雇ってもらうか・・・冒険者になるか・・・この都市から出て行くかだ」
「そうですか・・・宿とか小売りの商店も商人扱いということですか?」
「商人扱いの場合もありますし・・・永住権を持った元冒険者や元兵士の場合もあります。冒険者や兵士の家族が務めていたりもします」
「まあ・・・基本的に冒険者の目的は兵士に志願して採用されることだ。兵士になったら家族を呼べるからな」
「それだと・・・冒険者ギルドと揉めませんか?」
「だから志願制だ。突き抜けてS級を目指そうとする連中とか兵士勤めが合わないとかもいるから全員が志願するわけじゃない」
「だから戦闘訓練と・・・。薬師ギルドや鍛冶を目指すとかでもいいんじゃないですかね?」
「薬師や鍛冶は人気だ。下積みが長いとか給料の問題があるが・・・ダンジョンで死ななくて済むからな。コネでもなければ入れない」
孤児にそんなコネはないと・・・知りたくない話を聞いてしまった。
飯がまずい。うむむ・・・