4-18.上下水
目が覚めるとレオノーラさんに抱きついて寝ていた。
あわわわわ・・・何が起きた。と言うか何をやらかした。
落ち着け。落ち着け。あわわわわ・・・
こちらは服は脱いでいて民族衣装のような下着。
そうだった。わたしはエルフ娘だった。
間違いは起きなかった。
昨日は何があったっけ?
懇親会に出て美味しいものをたらふく食べた。
レオノーラに連れられて迷宮都市にある家に帰った。
寝室に来てドレスを脱いでベットに入っている。
むむー。
なんでレオノーラさんに抱き着いているのだろうか。
「おはよう」
レオノーラさんがこっちを見ていた。
「おはようございます」
レオノーラさんがハードレザーに着替える。
至福の時が流れるが・・・なんで私はエルフ娘なんだ。
「飯食えそうか?」
「はい。全く持って大丈夫です」
「んじゃ出かけるか」
レオノーラさんが部屋を出て行く。
ドレスをアイテムボックスに格納し水竜の革鎧に装備変換しわたしも部屋を出る。
アンジェさんが部屋から出て来た。
「おはようございます」
返事がない。
シカとされた?
あれ?
そのまま元定宿に歩いていく。
宿の食堂で朝の定食を食べるがアンジェさんは口をきいてくれない。
なんなんだこれは。
宿から家に戻る時には3人とも無言だ。
一体これは・・・
家に着くと兵士が家の前に立っていた。
どうやら3人とも領主の館に来いと言うことだ。
天気があまりよくない。
いまにも雨が降りそうだ。
領主の館の間もアンジェさんは口をきいてくれない。
いったいなにこれ。
なんかムカついてきた。
館に着いたらアンジェさんとレオノーラさんは孤児院の教育がどうのこうのといってどこかに行った。
私は領主が話があるということだ。
部屋に通されるとジークさんとイケメンエルフがいた。
薬師ギルドの婆さんもいた。
生活用水を忘れていたな。
そういえば農業用水をコントロールする装置を作るのを忘れていた。
うまいこと誤魔化さないと・・・焦げてしまう。
「やっと交流会も終わったんで止まっていた案件を進めようと思っている」
イエメンエルフが発言したが生活用水以外にはないはずだ。
「そろそろ生活用水をどうにかせんかのう?」
婆さんの先制パンチだが・・・こればかりはどこに出すか決めて貰わんと。
「生活用水の件だが・・・下水施設との絡みがあるんでどうしようかと思ってな」
イケメンエルフがなんか言ってる。どういう意味だ?・・・
「・・・ああ・・・地下に下水道と上水道が入り乱れるとどうにもならんということね」
「下水を引く場所と深さを決めてからでないと生活用水は引き込めないと注意を受けている」
領主に注意?
「注意?誰からだ?」
「今下水の管理と工事を行っているやつからだ」
ああ・・・なんか言っていたな。
土魔法の使い手か。
では下水工事の後に上水工事だな。
「では下水の工事を新規に追加した土地に行ってから生活用水をどう引くか考えましょう」
「それなんだが・・・こちらの下水の工事を行う余裕はないと言われてな。こっちの下水道の工事をクルーソーさんにやってもらえないと思ってな」
なんですと・・・
「なんでも言えばやるとでも?なんでも丸投げだめ上司だな」
・・・イケメンエルフといいアンジェさんといいエルフはムカつく・・・ああ・・・私もエルフか。
まあいい。たいした手間でもないか。
「下水道の基本工事は出来ないことはないですが・・・建物を建てた後に下水に繋ぐ工事までは出来ません。それと最終的にどこに繋ぐか指定してもらわないといけません」
「下水に繋ぐのは建物を工事するやつにやらせる。ここから先は秘密になるのだが・・・。昔下水はダンジョン手前の地下施設で処理をしていたのだが処理できなくなってな。今はその施設からダンジョン入り口の地下にある空洞に捨てている」
まじですか。
「そこって・・・ダンジョンじゃないですよね?」
「ダンジョン構造物に穴を開けたら自動修復するはずだ。だからダンジョンではないはずだ」
なるほどね。
「では・・・その地下施設に繋げればいいですか?」
「いや。その地下空洞に直接でいい。今は地下施設もなにもしないで地下空洞に捨てている」
「了解です。まず下水道を作成する。後は生活用水を引き込む場所を決めて貰えば下水道から離して生活用水の用水路を作成します」
「生活用水を引き込む場所なんだが・・・どういう風にすればいいと思う?」
くくく・・・
「脳筋だと・・・考えることは出来ないんだな・・・」
・・・ん?さっきからジークさんが青い顔をしている。
二日酔いかな?まあ昨日の飲みっぷりならしょうがない。
婆さんは静かだ。焦がされないうちに話を進めるか。
「今は魔道具で水を作ってますよね?つまり生活用水は貧乏と言うか初心者エリアに住んでいるような人が対象と言うことです。それなら先にダンジョン入り口周りに壁を作るかどうかを決めないといけません。金持ちが住む高級住宅街には生活用水は要らないでしょう?・・・職人が住むエリアにはあったほうがいいのかもしれませんね」
「ダンジョン入り口の回りの壁?」
「今回追加したエリアはダンジョン周りの初心者エリアと同じ危険度になります。ダンジョンを囲む円形城壁の外でかつ迷宮都市の旧城壁の外なんで。案としては・・・旧城壁の西側を南方向に新城壁まで延長する。西側の旧城門と新城門を結ぶ道路の南側に城壁を作る。これでダンジョン入り口エリアとそれ以外に分けることが出来ます。後はこの追加の城壁の高さでそのエリアに生活用水がいるかどうか決まります」
「壁の高さで生活用水?」
イケメンエルフよー。
「脳筋が過ぎるんじゃね?」
よく領主やってられるな。まあいいか。さすがに詳しく説明しないと分からないか。
「追加の城壁を今の城壁と同じ高さにするとダンジョン入り口の回り以外の追加エリアは旧城壁内と同じくらい安全と言うことになります。追加エリアは旧城壁内と土地の価値は同じ。つまり住む人のランクも同じになる。そうなると生活用水はダンジョン周りの初心者が住むエリアにしかいらないことになりますね」
「・・・つまり今言ったように城壁を作ったほうがいいと?」
おう・・・
「世界の脳筋さんすいません」
こいつはそれ以上でした。
少しは行間読めや。
これも説明がいるのか。
「それでは追加エリアに移動する人はいないのでは?それとも建物はすべて領主持ちで賃貸にしてるんですかね?」
「いや。ほとんどの場合は土地を貸して地代として税金を納めさせている」
「それならば・・・ダンジョンエリアの回りの追加城壁は低くないといけません」
「理由は?」
「旧城壁内はより安全だという格付けです。それにより今城壁内に住んで人たちに不満が出ません。追加エリアの税金を初心者エリアより高いが城壁内より低くすることで人や店舗の移動を誘導できます。まあ・・・まだあるけどそんなもんやろ」
「・・・なるほどな。わざと安全度で差をつけてそれを理由に地代を段階的にする。商売や収入を理由に移動してもらうということか」
おお・・・教えればわかるんだな。
「やれば出来る子」
「おお・・・いや・・・内部に追加で作る壁の話が出たんであれば壁の追加工事の話も検討してくれ。それと照明、暖房設備とかの魔道具もいるぞい」
「追加工事?施設の追加でなくて」
「石壁が厚さ1mで土壁が厚さ8mなのであれば壁としては広すぎじゃ・・・土壁内部に通路と部屋を作ればいいじゃろ。それなら土地が広く使える」
なんですと。ジークさんからの爆弾発言だ。
「おめーが幅10mって言ったんだろうが!」
「反対なのか?」
「反対です。あくまで壁は耐久度を重視すべきです。利便性や土地の有効活用などくそ喰らえです」
「そうはいってもじゃ。明らかに強度は十分じゃ。壁の中に通路と施設を作るが運用的も一番じゃ」
・・・まあ本人たちがそれでいいのならそれでもいいのか。
イケメンエルフがボーと私たちのやり取りを聞いている。
「こーゆーときには責任者が決めるんだろ。ボーとしてんじゃねえぞ」
沈黙が続いた後ジークさんが口を開いた。
「工事にはまだ手をつけられん。施設と追加の壁については複数案を作って再度提案する」
おや・・・ジークさんが急に方針転換だ。
「では・・・魔道具だが。照明、暖房設備の魔道具は使いまわしでいいのではないのか?予算的に厳しいぞ」
確かにあれ高いからな。
「それにもし魔道具を追加すると魔導具用の魔石の予算も半端でないぞ」
「そういえば職人だったのう。魔導具はどうにかならんのか?」
いきなりの婆さんの突っ込みだが・・・わたしに言ってるんだよなたぶん。
「0からは作れませんが実物があれば劣化版のバッタものはできます。ただし魔法陣の書き換えは出来ないので出力は変えられません」
「出来るのか?劣化版と言うのはどういうことじゃ?」
「魔法陣を内蔵していているタイプなら魔法陣を引きずり出せば作れるかと」
この間引きずり出した魔法陣を取り出して見せてみる。
「これはどうやって出したんじゃ?魔道具を普通をばらしても取り出せんのじゃが」
「慎重に切って行くしかないですね。こちらが魔石側の受け取り用魔法陣です」
受け取り側の魔法陣も出す。
「受け取り用とはどういうことじゃ?」
「魔道具用の魔石で動かすためにはこれが要ります。出力をこれで制限していると思われます」
「ああ・・・これがないと動かないということか」
「いいえ。これがなければ普通の魔石でそのまま動きます」
「本当か?だったらそっちの方がいいじゃないか?」
「魔石の質や量を自己責任で調節しないといけません。水がどどあふれたり・・・鍋が超高熱で溶けたり・・・もしくは魔道具が壊れるかもしれません」
実際にやって見せる。
実行側と受け取り側の魔法陣を繋げて魔道具用の魔石を置いて水を作成。
実行側魔法陣にゴブリンの魔石を多量に乗せて水作成。
実行側魔法陣にミノタウロスの魔石を近づけて水作成。
「あとは・・・もしかすると魔道具用の魔石は時間劣化を抑えているのでは?」
「ああそうだ。だが・・・照明や暖房とかであれば・・・ゴブリンクラスの魔石を数個ずつ使うと言ったやり方でいけるのではないのか?」
「小さくて質の低い魔石であれば数を少しづつ増やしていくやり方はありかもしれませんね」
「では・・・通常の魔石で動く水作成、照明、暖房を作ってくれんか?」
簡単にいうのーこやつら。
ただ・・・魔道具をタダで手に入れるチャンスだな。
「オリジナルの魔道具を提供してもらえるなら。ただし完全に破壊するので失敗しても返却は出来ません。それと材料も提供してもらわないといけません」
「了解した。作ってほしい魔道具は早急に準備する。そうだな。今日の夕方までに準備する」
さて・・・ダンジョン手前の地下にある空洞でも調べに行くか。
「どこに行くんだ?クルーソーさん?」
「ダンジョン前にある空洞を調査に行きます」
「調査?どうやって?」
「鉱石を探査する技能がありますんで」
「ああ・・・そうなのか・・・」
「では。夕方また来ます」
とりあえず空洞調査・・・ついでにダンジョンで雑魚をぶっ殺してストレスを解消だ。
・とある3人の会話
「なんか・・・めちゃくちゃじゃなかったか?クルーソーさん」
「ああ・・・尋常じゃなく機嫌が悪いようじゃたのう」
「というか・・・まだ酔っぱらってるんじゃないのか?あれ」
「ああ・・・なるほどな。それは有りうるな」
「だとすると・・・あれが本当に思っていることと言うことか・・・」