みなさんの後悔Ⅱ
・とある組織の部下
全く持って不愉快だ。
私は王都のダンジョン管理の役人ではあるが・・・あのデブ個人の部下ではない。
あのデブはそれを理解するだけの知性があるのか・・・
どう考えても今回の日程偽装にやつが関わったことは明白だが・・・まあいい。
これに関しては冒険者ギルドにババを引いてもらおう。
というか・・・やつは前任者から何も引き継いでないのか?まさかな。
いくら足を引っ張り合うのが最近の王国の貴族の習わしとはいえそれはないな。
それだとすると分かっていてやっているのか?
迷宮都市の高級宿は領主の影響下にあるのは間違いない。もしかしたら経営が領主かもしれない。
高級宿の数が多くて客室も多いのもわざとだと思われる。
今回のような場合に備えて採算を度外視している訳だ。
なので日程をゴマかしたところで高級宿が不足することはない。
しかし・・・今回の日程偽装もヤバイがそれ以上にいかんのは城壁の追加と北のお隣さんとやらだ。
迷宮都市に潜っているスパイどもは何をやっているんだ?
王国に提出する報告書を見ておくか・・・報告書には北の領地の話しかない。
おかしいな・・・かなり昔に来た時とは城壁の大きさが明らかに違う。
城壁の追加の報告書は見たことはないが・・・まさかして情報がこちらに回ってきていないのか。
誰かが情報を隠匿してる?・・・そんなことをして何の得が?
ん・・・デブの呼び出しか。
懇親会でクルーソーさんに接触してゴーレムついての情報の裏付けをとれか。
性急なことだが・・・確かに必要なことではあるが私がそれを行うと警戒されてしまい2度と情報収集が出来なくなるのだがその弊害については・・・考えてないのだろうな。
ゴーレムについてとはどういうことだ?報告書にはなんて書いてある?
北の領地とやらはゴーレムのみで作られている。
防御もゴーレムのみか。
珍しいが私が探りを入れるほどのことではない気がするが・・・
ゴーレムの戦闘能力は低く、魔法の使い手のクルーソーの戦闘能力はゴーレムより低いか。
・・・あまりにこちらに都合のいい報告だな。
誘導されているのでは。
子飼いの部下に裏を取らせるか。
北の領地の工事はダンジョンの異常を感知より後に開始したと思われるだと・・・確かに裏付けが必要だな。
報告書には期限の記載がなかったが・・・・たしかにこれは記載できない。
誤報告と判断されることは間違いない。
クルーソーとやらの評価は・・・戦闘能力でさえばらばらだな。
ただどれも否定するには情報源がしっかりしている。
一番確実な情報源は・・・戦闘能力が低いになっている。
だとすると戦闘能力は低いのだろうな。
それと使っていたスパイの中で一番の利き腕の斥候の冒険者の行方が分からない。
何者かの任務を受けて迷宮都市を出て行ったらしいか・・・迂闊だな。
裏稼業のバイトをしていたということか。
いや。こっちがバイトだった可能性もあるな。
やつが過去に報告した情報をすべて精査しなおさないといけない。
懇親会でクルーソーさんの様子を窺う。
なかなか入り込む隙がないぞ。
というかどんだけ飲み食いするんだ。
ドワーフと張り合うかふつう?
これに付き合うのは不可能だぞ。
どうする・・・チャンスが来た。いまだ。
「少しお話よろしいでか?」
「あ。はい」
「この都市の城壁の拡張にクルーソー様がかかわったと聞きました。ゴーレムを使われるとの噂は本当でしょうか?」
「はいそうです。正確には疑似ゴーレムですけどね」
肯定するのか。誤魔化と思ったが。
「ものすごい手際のよさだと噂になっています」
「そうなんですか?手際も相当悪かったですね。自分としてはいろいろと不満があってやり直したいぐらいですね」
嘘というか誤魔化したり隠したりする反応はない。魔道具の反応もない。
「ゴーレム使いは少ないのでよく分からないのですが・・・話を聞くにいいところばかりの気がしますが」
「料理おいしいですよ。牛も豚も。ゴーレムは命令に従いますので・・・うまいこと行く場合はいいですけどそうでない場合は致命的な事態になるんですよね」
「はい。いただきます。致命的とは何でしょう?」
「もし自分のイメージした動作以外をゴーレムがした場合は即修正しないとそのまま間違った行動を行動停止になるまで行います。目を離せないと言うことですね。それと魔力の消耗と釣り合うかどうかもですね。お金で考えるとダンジョンに潜って稼いで人を雇ったほうがいいかもですね」
「そういうものですか・・・」
だとすれば人を雇えばいいというか何故そうしないんだ?
「おう!クルーソーさん!」
トロール族の族長の息子に割り込まれた。
すこし質問が直球すぎたか。・・・これは交流会からの警告と言うことだろうな。
ここは引いておこう。
情報としてはこれで裏が取れる。
ゴーレム使いであることは間違いない。
運用が難しくて魔力やお金を考えると微妙であると本人は思っている。
報告書の裏はとれるが・・・
私が個人的に集めた情報を考えると・・・報告できないが出来れば裏を取っておきたかったんだがな。
ただ・・・この程度の裏どりを私に何故させた?
そちらの方に裏があるのか?
・・・報告書に私が裏を取った情報だと記載したいということか?
それと個人で集めた情報は報告するなと釘を刺したいのか。
無駄なことで目立ってしまったな。
理由をつけて断ればよかったな。
距離を置きそれとなく監視を続ける。・・・ゲテモノコーナーで爆喰いしている・・・
あぶなかった。
この状態で話しかけたらあれを食わないといけなくなるからな。
トロール族の上を行っている・・・ばかな・・・
む。竜人族と話をするぞ。
「そう言えば先ほどゴーレムについて語っていたようじゃが?」
「ゴーレムに興味があるんですかね。工事のお金や工期の納期や作業に関わる職人の事故防止にはいいのかもしれません。知識の蓄積や地域経済を考えると完全にマイナスになります」
「知識?経済?」
「ゴーレムで行った工事で得たノウハウは・・・ゴーレムに蓄積されません。わたしにゴーレムを指揮するノウハウははいりますね。私の魔力のみで工事できると考えれば金銭的にはいいのでしょう。ただし・・・ゴーレムは食事も休憩も必要としません。食堂がにぎわうこともありません。宿屋も飲み屋街にもお金は落ちません。そういう意味では職人を使って工事するのがいいのでしょうね。お金は世の中回ってこそのお金です」
なんだと・・・さっきと話のトーンが違うぞ。
誤魔化す気はないと思ったのだが明確に相手によって話す内容を変えているが・・・
だが嘘やごまかしの反応はない
そんなばかな・・・私の能力を超えた技能持ちなのか?
まさかな。
息をするように嘘をつく上級貴族どもでも私の目はごまかせない。
ということは・・・私に対する発言も竜人対する発言も本音ということか。
クルーソーさんと目が合った!
私を見てにこやかに笑った。!
くそ・・・背筋が凍ったぞ。
本能で分かる。
不用意にやばい領域に踏み込んでしまった。
いままで矢面に立たないように立ち回っていたのにこんなところでこんなことになるとは。
目を付けられてしまったか・・・だが一番の問題は報告書には書けないが報告しないわけにはいかない。
誰にどうやって報告するか・・・それとどうやって裏をとればいいんだ。
こういうときに使っていた一番の腕利きがいないのが痛い。
・とある商人
北に砦と農地が出現したそうです。
その主人はクルーソーさんというエルフの女性だそうです。
噂ではアルゴラン様の親族か娘とか言われているようですが・・・さすがにそれを確かめるわけにはいきません。
どうにかしてこの懇親会で繋ぎを作っておかないと。
ジーク様と張り合って肉を食べ酒の飲んでおられます。
ありえない・・・いま行ってあれにつきあうのはちょっと・・・
いまだ。
しまった。
王国の代表に入りこまれた。
トロール族にゲテコーナーに連れて行かれてしまった。
さすがにあそこで飲み食いはちょっと・・・
竜人族まで入ってきた。
しまった。懇親会が終わってしまった。
我慢してゲテを食べるべきだったか。
いや・・・ジーク様がいたときに行けばよかった。
結局今回の懇親会は商売の話が一切できなかった。
とほほ。