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4-12.鋼

「俺に魔法を教えて欲しいんだ。頼む」


魔法で華麗に決めたのは確かだが・・・何故に私なんだ?


「トロール族にも魔法使いの方はいらっしゃいますよね?」

「トロール族の男は戦士であることが至上なんだ。魔法を使うのは邪道と言うか・・・そんなのを使う暇があったらぶん殴れ・・なんだ。俺もそう思っていた。だからトロール族には教えを請えない。

魔法使いで知ってるのはクルーソーさんだけなんだ」


これは困ったな。

教えるにしても・・・理論を知っているわけでもなく訓練をしたわけでもない。だが・・・


「通常魔法を覚えるのは・・・師匠の元について座学から入りかなりの時間学ぶ必要があります」

「そうなのか・・・」

「ですが・・・魔法に興味があるというのにそういうことを言うのも興ざめですね。移動しましょうか」


裏庭に移動する。


「マジックスクロールを使われたことは有りますか?」

「ある。が?」

「マジックスクロールは発動に自身の魔力を使います。で・・・実はあの魔法は自身が発動しています」

「そうなのか?初めて聞いた」

「たぶんそうではないかと思っています。意思のある人物でなければスクロールは使えませんよね」

「なるほどな。魔力があって発動なら人が<使う>必要はないな」


思ったより頭はいいな。


「ですので・・・マジックスクロールを使う際に自身が魔法を使っている感覚を感知できれば・・・」

「出来れば?」

「その魔法が使える可能性があります。

ということでここに着火とクリエイトウォーターのスクロールが有ります。試してみましょう」


着火のスクロールを渡して使わせる。当然普通に発動した。


「今の感覚を感じてください。で・・・着火と唱えてください」

「・・・着火」


発動せず。


「ジャンジャンいっちゃいましょう」


次のスクロールを渡した。発動からの詠唱を繰り返す。

十回以上繰り返したが・・・出来ないのか・・・むむむ・・・どうするかな。


「着火」


おおお・・・発動した。族長の息子は驚いている。自分のほうも超びっくりした。


「着火が出来れば黒魔法は出来るはずです。では次行っちゃいましょう。クリエイトウォーターが出来れば白魔法の適正があるはずです」


クリエイトウォーターのスクロールを渡し発動からの詠唱を繰り返す。

十回程度で急に膝をついた。・・・魔力切れか?早くね?

・・・誰か隠れてるな。・・・族長か。過保護かよ!


「もしかして気分が悪くなったとかですか?」

「ああ・・・なんだか急にな」

「魔力切れかもしれません。ここまでしときますか。・・・それと・・・族長さんも試してみますか?」


族長さんが陰から出てきた。


「どうやら我が息子が迷惑をかけているようだな。まだ名乗ってなかった。わが名はケブック。トロール族の族長をやらしてもらっている」

「俺の名はアグスト」


息子はどうもばつが悪そうだ。族長に着火のスクロールを差し出した。


「これは着火のスクロールかね?」

「そうです」


族長はスクロールをうけとらず詠唱を行い着火の魔法を見せた。


「おやじ!魔法が使えたのか!」


いきなり族長が息子の頭をぶん殴った。


「族長を呼べと言っているだろう」


魔力切れに今のパンチ。わたしなら気絶してもおかしくない。


「今のお前と同じだ。腕力のみで進んで魔法に屈する。で魔法を学ぼうとする。誰もが通る道だな」

「おやじがか」


再度ぶん殴られた。学習機能は極めて低いと思われる。


「まあ・・・弟と違って儂は着火でやめた。こんな方法があるとはな。そっちを試させてくれ」


クリエイトウォーターのスクロールを渡すと・・・発動からの一発目で詠唱出来た。


「もう一度やらしてくれ。もう一回だけ」


クリエイトウォーターのスクロールを渡し発動からの詠唱は・・・出来なかった。

無言でスクロールを渡す。

発動からの詠唱で・・・出来た。


「出来た・・・」


息子はそういうと力なく座り込んだ。魔力が尽きるとああなるな。

くくく・・・あれ苦しんだよね。


「とりあえず覚えた魔法を繰り返し使って練習してください。師匠について学ぶことをお勧めしますがね」

「世話になったなクルーソーさん。スクロールの代金はいかほどになる?」

[お気遣いなく。余っていたのを使っただけなので。それと実はスクロールで魔法を覚えるのかどうかは確証がなかったので・・・実験につきあってもらったということで」

「正直だな。だが交流会では貸し借りは無しだ。迷惑料と指導料として受け取ってくれ」


そういって袋を差し出してきた。


「これだと貰いすぎなんですが」


族長は差し出した袋を渡しに押し付けた。むむむ・・・


「では・・・ありがたくちょうだいします」

「ああ。世話になったな」


族長は息子をワシ掴みにして引きずって行った。ワイルドだなーと。


あのパワーで魔法を使いだすと手が付けられないぐらい強くなる。

あれ・・・まずかったっけ・・・まあいいか。


さて・・・木か。ぶわーと切っちゃうのはいいが運搬をどうするかだな。

実際にはアイテムボックスを使うにしても馬車で運んだ体はいるな。

それと迷宮都市内に運ぶ時には馬車で運ぶしかない。

車輪の直径が1mの馬車を回収して改良するつもりだったのでこれを使うか。

木材運搬車に転職だ。

そのまま屋敷を出て行こうとしてアンジェさんとレオノーラさんに捕まった。

そういえば夕飯食べに行く約束していた。

忘れていたのではないですよ。うぶぶ。


元定宿で夕食を食べながら明日の予定を決めることになったが・・・明日は木を切りに・・・違うか。

詳細を詰めに行かないといけなかった。

明日も買い物をしよう。

その後に材木の話だ。

領主からもらった家に泊まりに行く。

そういえば初めて泊る。


風呂にでも入って寝るか。風呂はホテルと同じ魔道具がついていた。

たまたま通ったレオノーラさんに領地に置いてきたと嘘をつき魔道具用の魔石を借りた。

自然に借りれた。これで魔道具の研究が出来る。

まず魔道具用の魔石を観察する。

ただの魔石のような気がする。

風呂の魔石用の突起に乗せるとお湯が出てきた。

魔道具用魔石を普通の魔石に変えると・・・お湯は出ない。

ただ観察しても差は分からない・・・どうするか。

突起に手で魔力を送り込んでシャワーを浴びる。

借りた魔道具用の魔石をアイテムボックスに入れて錬金術で同じものを作成する。

魔石が材料であれば出来るはずだ。

シャワーを浴びている間に作成しないといけないので魔量は最大で作成だ。

それらしきものが出来た。

コピーした魔道具用魔石を突起に乗せたらお湯が出てきた。成功だな。


後はシャワー側だな・・・観察してみるが・・・さすがに分からんな。

だがどうやら魔石置きの突起とシャワーが出る部分は壁の中で一体化している。

これは自宅用と言うことにして買うか。

そしてばらすか。

そういえば炊き出しで魔石用のコンロを使っていた。

あれも買ってばらすか。


「あんた裸で何やってるんだ?」


壁によじ登ってシャワーを調べているところをレオノーラさん見つかった。

これはどう説明するか・・・


「あれ・・・魔石が2つあるぞ?」


話を紛らわすチャンス。


「忘れたと思ってたらもってたんですよ」


借りていた魔石を返す。


「で・・・なに壁に張り付いていたんだ?」


誤魔化せなかったか・・・


「北の領地にある家にもつけようかと思いまして。自力で備え付け出来るかなーと思って見ていたんですよ」


女性に裸を見られるのははずかしいが・・・よく考えるとこっちはエルフ娘だ。

身体を拭いて服を着る。

最近はこの過程を錬金術で行っているのでまごつく。

胸がじゃまでお尻が邪魔だ。


「明日それもさがせばいんじゃないか。私は・・・武器を新調したいな」


と言うことは普通に売っているってことか。まあそうだよな。

なんとか誤魔化せた。このまま寝る。おやすみなさい。


朝起きて元定宿で朝御飯を食べてからショッピングを開始する。

魔導具のシャワーは見つけることが出来たが部品での販売は拒否された。

備え付け込みでの料金だそうだが・・まあなにか世に出せないノウハウがあるのだろうな。


魔石で動くコンロと魔石で水を作るやかんらしきものをは手に入れた。

魔道具用の魔石の値段を見てみたが魔物の魔石と比べると大きさ的に100倍近く高い。

この2つの魔道具をコピーできれば・・・・シャワーも作れるな。


後はレオノーラさんの武器だが・・・なかなかいいのがないようだ。

まあ私が見てもいいのもはない。

ある一画でレオノーラさんが真剣に武器を探し出した。

ここは鉄の武器を置いているが値段がかなり高い。

デザイン自体はほかのところと変わらない気がする。

むむむ・・・。確かに何かが違う気がする。

なんだ・・・手に取って見てみると・・・


「鋼なのか」


思わず声が出た。


「よく分かったのう」


振り向くとジークさんがいた。なぜにジークさん?


「?知らんで来たのか?ここは儂の商品を並べとる。大口注文の余りだがな」

「店やられてるんですか?」

「本職は鍛冶だ。鋼の武具は儂のというか迷宮都市の名産品になる」

「ああ・・・だから森に木が無いんですね」


ジークさんに腕を掴まれ裏に引きずり込まれる。顔が青いが?


「おまえ・・・分かってて言ってるのか?」

「どのことでしょう?・・・鉄を木炭を燃やして熔かすと条件によっては鋼になる。木を多量に消費して森が消える。・・・もしかして極秘だったとかですかね?」

「・・・知っておるのか・・・極秘になっとる。秘密で頼む」

「了解です」

「というのか鍛冶もするのか?そういえばアイアンゴーレムもいたから当然か・・・知ってるなら何故鋼にしない?」

「硬くなりすぎて脆くなると拙いので。ちょうどいい条件を探すのが時間がかかりすぎますし」

「そうじゃよな。知っていたからと言って作れる訳ではないよな」


なにか安心しているようだが・・・

自作の武器は魔鉄とミスリルで作っているので鋼を忘れていたとは気が付くまい。

だがアイアンゴーレムの乗っている武器はすぐにでも鋼にしよう。

アイアンゴーレムも鋼にしよう。

ただし作り直すのではなく今のままで鋼に変える方法を考えないといけない。


「魔鉄やミスリルの武器はないんですか?」

「あるぞ。数が少なくて値段が張るだけじゃ。・・・ああ・・・そういうことか。あくまで鉄から鋼を作っておるから意味があるんじゃ。おぬしのようにミスリルで固めておるのであれば鋼は意味がないか」

「冒険者の間では魔鉄やミスリルは普通に使われているんじゃないですかね?」

「そんなのはほんの一部分の中の一部分じゃ。ミスリル装備なぞ貴族の家宝レベルじゃ」

「そうなんですか?アンジェさんの装備はミスリルが混ざっているような?」

「分かっておったのか・・・それも秘密で頼む。騎士団をやめる時に使っていたお古を譲ったことになっておるが・・・もともと特注品じゃ」


なんかよく分からんが・・・謎おおいなアンジェさん。


結局レオノーラさんはいろいろな長さの短剣をけっこうな本数買っていた。

本人いわく投げることもあるし折れることもあるし刺さった敵が逃げることもあると。

消耗品であるという感覚か。


そこでついでなのでジークさんと木材について詰めておこう。


「木材についてですが・・・。もしかして木炭のために多量の木がいるってことじゃないですよね?あくまで建材ですよね」

「それについては大丈夫だ。鉄の熔解は魔導溶解炉を使っておる。木炭は材木を加工した端材を利用して極秘に作っておる」

「それでは・・・明日に材木を切りに行こうと思っているのですが今私が持っている材木はどうしますか?先に運びますか?」

「いや。こちらも大工の手配がある。今やっているのが終わらんといかん。それに何をどこに作るかがまだきまっとらん」

「了解です」


なにをするのも段取りが大事だからそうなると。

そういえば無駄な工事を何重にもやってしまった私が言うことではないな。

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