4-7.戦術技能と戦略技能
まず移動だが・・・農地用の巡回馬車でいいか。
「では移動は巡回馬車でいいですか?」
巡回馬車を呼んでこようとしたら馬車が向こうからやってきた。
前までは命じないと動作しなかったような気もするが・・・そういえば馬ゴーレムは目の前のゴーレムに命じたら遠い果てのゴーレムも移動していたな。
「これはいったい?」
「農地と私の領地に移動する巡回バ・・・馬車です。立ち乗りですがすぐ着きますので」
「いや・・・こちらで馬車を準備しよう」
イケメンエルフに否定された。まあ・・・そうなるのか。
「わしらはこれでもいいぞ」
「うちもこれで構わない」
竜人もトロールも気にしないようだ。
乗り込んでもらい御台に座り手綱を持とうとしたらストーンゴーレムがそのまま発進した。
椅子は1人分なので御者の隣に一人立つことになった。
指示していないがどんどん加速していく。前回の全速を超えている気がする。
それより気になるのが振動だ。どうやら道がでこぼこになっているようだ。
何故だろうか・・見てみると蹄で地面がへこんでいるようだ。
たしかに・・・この馬ゴーレムの重さは・・・2.6トンか。
馬ゴーレムもすべて中空にしないといけないな。そうなるとまた石が余るのか。
とりあえず巡回馬車の馬ゴーレムだけ中空にして様子を見るか。
そんなことを思っていると領地の入り口に緩やかに減速して到着した。
振り返ると皆さんなんとなく顔色が悪い。道が傷んでいて揺れたから仕方がないか。
そういうわたしも気分が悪い。吐きそうだ。
とりあえず説明するか。
「まず設備的には外堀が幅10m深さ10mその内側に高さ2mで幅10m土壁になります。内側は堀が幅20m深さ10mで壁は高さ2m幅10mです。内壁は塹壕を作ってありゴーレムを配置しています。土壁の土側には掩蔽壕を作成してゴーレムを5600騎配置しています」
「壁の高さが低いのはなぜじゃ?」
竜人族のシャーリヒト族長の突っ込みだが・・・正確に言えばその当時城壁外に有った領主の防御が2mだったからなんだがそれは言えんな。
「このエリアは薬草、野草、コケ、キノコなどの試験的栽培が主目的になっていますの日当たりを考え壁を低くしています。重要設備もありませんし私以外は住んでいないので現状はこれでいいかと」
「内側にも堀と壁があるので外側は高くてもいいんじゃないのか?それとも内側の堀と外側の壁の間も試験栽培とやらを行うのか?」
言われればそうだな・・・・
「たしかにそうですね。外側の土壁を高くして石積にすれば重要エリアと誤認させることが出来るかもしれませんね」
「誤認とは?」
「何者かが進行してきたときに先にこちらを取り囲んだのであれば、こちらで全力で迎撃し敵が消耗したところで迷宮都市側から追撃すれば楽に倒せるでしょう」
「もし同時に囲まれた場合は?迷宮都市側だけが囲まれる可能性もあるぞ」
「状況によりますね。援軍が望めるのかと援軍無しでは対応できないかどうかで」
「具体的には?」
「援軍無しで対応可能の場合で・・・迷宮都市だけが囲まれた場合はこちらから総員出撃して逆包囲後殲滅します。もしくは敵の指揮系統もしくは主力に突撃することになるでしょう。
同時に囲まれた場合は敵の兵力も分散しているということなのでこちらを囲む敵を片づけて総員出撃と言うことになるでしょう。状況によっては包囲を強行突破して出撃もありうるかもしれません。
援軍が望める場合は陣地を敵に渡しながら敵の数を減らして時間を稼げばいいでしょう。そういう意味ではここを強化するのはいいのかもしれませんね」
「援軍は望めるが・・・援軍が来ても対応不可能な場合は?」
「その場合は援軍に来ないでいただきたい」
「なぜじゃ?」
「被害最少です。無駄に被害を大きくすることはないでしょう」
「・・・では・・・ここはどうするのじゃ?」
「一発逆転で敵の中枢に吶喊するしかないでしょう」
竜人族のシャーリヒト族長と話しているとイケメンエルフが割り込んできた。
「われらの目的はあくまでスタンピートの対策だ。敵性の軍隊と戦い方は今回関係ない」
「おお・・・そうであったな。続けてくれ」
敵国の戦い方も考慮すべきだと思うがな。
「では・・・まず掩蔽壕に配置のゴーレムがこれです」
馬ゴーレム1体とストーンゴーレム3体、土ゴーレムを5体掩蔽壕から出撃させた。
「これが1騎となります。後内側エリアにアイアンゴーレムの100体騎乗状態で待機しています。実際にはこれが主力となります。将来的には全ゴーレムをアイアンゴーレムに変更する予定です」
100体のアイアンゴーレムもこちらに移動させた。
「それと輸送部隊として馬ゴーレムを内側エリアに待機させています。後ストーンゴーレムも予備として待機しています」
馬ゴーレムも一部こちらに移動させた。
「これらはどのくらいの戦闘能力なんじゃ?」
今度はトロール族の族長の質問だ。ここはあくまで運用と数の暴力で押し切ることを強調しないといかん。
「土ゴーレムは冒険者の初心者レベルでしょう。ストーンゴーレムは冒険者の初級者と同じくらいの強さでしょう。アイアンゴーレムはそれより強いとは思いますがどちらにしても単独戦闘はしません。囲んで袋にします。土ゴーレムは戦うというよりもその状況を作るために使います」
「実際に見せて貰わんとなんともいえんな」
トロール族の族長がそういうとすかさず息子が発言した。
「俺と戦わしてくれ」
ど阿呆めが・・・ゴーレムが破壊させて終わりだろうが。
「それはだめです」
「なぜだ?」
「壊されると作り直すのがめんどくさいんです。私がゴーレムと立ち会いますのでそれで判断してください」
トロール族の族長がうなずく。
六角の石棒装備の3体のストーンゴーレムを呼ぶ。
「全力で攻撃してこい。試合始め」
ごん!
「うが」
べし!
「ぼげ」
がん!
「あが」
縦に並んで高速移動からの顎、脛、膝に強烈な打撃を喰らった。元リビングアーマーより攻撃が鋭くね?
バランスを崩した瞬間滅多打ちにあう。滅多打ち。滅多打ち。滅多打ち。これはいかん。
「やめ」
ゴーレムは攻撃を止めた。だめだ・・・気分が悪い。
えれえれえれ・・・
口からスタミナポーションが逆流して出てきた。紫色で泡立っている。というか煙出てるぞ。どういうことだ。
クリエイトウォーターで水をかけると煙は消えた。
「大丈夫か?クルーソーさん。というか煙でてるぞ?」
「もうしわけありません。どうやら疲れが抜けていないようで。薬師ギルドのば・・・ギルドマスターに試作のスタミナポーションを貰ったのですが体に合わなかったようです」
「飲んだのか?」
「は?」
「試作のスタミナポーションを飲んだのか?」
「そうですか」
「薬師ギルドの連中は試作の薬品の飲み過ぎで対毒耐性があるんだ。なのでギルド以外の連中に飲ませる。絶対飲んだらいけない」
そんなばかな・・・
トロール族の族長が発言した。
「ゴーレムの動きは見せてもらった。うちはもういい」
竜人族のシャーリヒト族長も発言した。
「まだ設営中ということは分かった。体調が悪いのであればもう戻ったほうがいいじゃろう」
「本当に申し訳ありません」
「いや。ダンジョンの偵察から帰ってきたばかりだ、しかたがない」
巡回馬車に乗って領主の館に移動する。またもや勝手に発進した。これは反乱なのか。
先ほどよりも飛ばしている。高速で覆面パトに捕まるより早いぞ。
農地エリアの南端がすぐそこだ。ヤバくね。
そう思った瞬間急制動と同時に馬ゴーレムが右に移動した。
は?
馬車が左に4輪ドリフトしている。御者の隣に立っているので掴むところがない。
ゴーレムを掴もうとした瞬間ゴーレムの肩が私の腰を押した。
は??
そのまま馬車から転げ落ちた。踏ん張って倒れないように地面の上を滑る。
にゃ!
馬車の車輪に撥ねとばされそのまま壁に激突した。
馬車は何事もなく停車していた。トロール族の3人はそのまま移動していった。
竜人族はイケメンエルフとジークさんと何か話している。
近づくとイケメンエルフが
「今日は懇談会に参加してもらおうと思っていたやめた。ゆっくり休んでくれ。明日館まで来てくれ」
ある意味助かったな。吐いたら気分はすっかりよくなったんだが黙っとこう。
竜人族のライラ令嬢がこちらを見て言った・
「おぬし戦術技能と戦略技能を両方もっておるな。めずらしいというか初めて見たぞ」
・・・なんだそれ。ゲームのキャラの技能にそんなものはないが。
「ライラ。技能を許可もなく人前で言ってはいかん」
「・・・すまぬ、クルーソー殿。つい興奮してもうた」
「いいですよ。たいしたことではありません」
そのまま挨拶をして馬ゴーレムに乗って北上する。
技能が見えるということは高レベルの人物鑑定を持っているということか。
ギルドカードで技能は見れないかな?
・・・反応はない。
まあそんな技能があることが分かったということでOKだ。
防御力不足で突っ込まれると思ったがなんとか防衛力の構築中で凌げた。
今から・・・家に戻って馬車の改良プランでも練るか。
・ある親子の会話
「迷宮都市の冒険者の初級とやらはあんなに強いのか!すげえな」
「そんわけない」
・ある親子の会話
「で・・・戦術技能と戦略技能は本当か?レベルは分かるか?」
「本当じゃ。レベルは見えんかった」
「そうか・・・戦術技能と戦略技能を持ってゴーレムを使役・・・団体戦ではすさまじい効果になるだろうな。で明確に敵国・・・人族との戦闘を考慮に入れとる。まあ・・・味方なのでいいんじゃが」