3-13.交渉
館の斜め前にテントが張られている。
テーブルに城塞都市周辺のの地図が載っていてなにやら書き込みがしてある。
「来てもらったのはほかでもでもない。なんというか・・・少々まずい事態が発生してな」
ぬけぬけとイケメンエルフが言い放つが・・・来たわけではない。
「少々ではないだろうが!」
ドワーフのジークさんが青筋を立てている。いったいなんだろう?
・・・説明がない。
ジークさんがイケメンエルフの脇にパンチを入れた。
「実は・・・迷宮都市の交流会というのが定期的に開催されるのだが・・・急遽20日後にうちでやることになったんだ」
交流会・・・いいんじゃないですかね・・・それがどうした?
・・・説明がない。
再度ジークさんがイケメンエルフの脇にパンチを入れた。
「でだ・・・君の領地は水堀になっていて石積になっていると聞いた。今囲んでいる空堀も石積で水堀にして土壁も石積にしてくれないかなーと思ってな」
!・・・なんでそうなる!
「それでは話が通じんじゃろ!もおいい。わしが説明する」
ジークさんがいつになく切れている。
「こやつが緊急会議を徴集したらしいのでここでやるのは確定だ。全く迷惑な話だ。20日後に交流会があるのであれば王国側の代表は2,3日前に来るじゃろう。その部下たちはその数日前に前乗する。その前までに今回追加した防御設備を完成させねばならん」
それが何故に石積になるんだ?出入り口はともかく堀と土壁としては完成しているんだが。聞いてみるか。
「出入り口は未着手ですし防御拠点も作ってませんが・・・土壁と堀に関してはあれが完成形ですが?」
「戦いの設備としての堀、土壁の性能に不満があるわけではない。見た目の問題だ。付け込まれるのは確実だ」
つけこまれる?見た目?
「あの土壁が十分な強度があっても土壁だ。戦時中ならともかく平時なら工事中とみなされるだろう。工事を手伝おうと言って来るかもしれん。工事に参入しようとして来るかもしれん。いろんな連中が入り込んでくるのも避けたいし貸しを作ったと思われるのも避けたい。実際前回いろいろあった」
迷宮都市が防御施設をちんたら作っていた場合「地域の脅威になる」と突っ込まれたら手伝いや参入を断れないってことか・・・
「とりあえず正門の回りだけでいい。門の追加はいる。出来ないのであれば正門周りの堀と土壁をいったん埋めるしかない」
それはさすがにもったいないな。
「門の部分はさすがにどうしようもないのですが?」
「門自体は予備の材料があるのでどうにかなる。追加城門をどうするか今から早急に決めないといかんがな。橋もかけて堀を繋げるのもある」
となると・・・問題は石の確保だな。
ストーンゴーレムは入水用トンネルと排水用トンネルを塞ぐ石を移動させるためと入り口の橋を落とすために沈めてあるのと家の護衛用しか残っていない。
莫大な量の石を持ってこないといけない。
「問題は石の確保になります。うちの領地の水堀の石は防水用であって防御用ではありません。超薄いです。ただし土壁や堀に同じ処理であったとしてもかなりの量が要ります。厚さを確保するなら莫大な量の石が要ります」
「薄い?防水?」
見てもらったほうが早いか。前回河原で作った石壁を出す。
ベットに使ったあと忘れていたな。
「こんな感じで厚さは3cmです」
「・・・ストーンウォールがそのまま固定されているのか・・・まさか一面これなのか?」
「基本的にそうなります。材料の量と魔法の範囲で継ぎ目はできます。密着度を下げれば石の素材感を残すことも出ますがどうしても石がくっついているのは分かると思います」
「これでは城壁としては異様だな」
イケメンエルフがつぶやく。
たしかに石を密着させて一枚板状にしているのだがら奇妙な物体なのだがなんだかむかつく。
「継ぎ目が出来ると言ったな。切り出した石を隙間なく積んだようにできないか?」
なにを言っているんだお前は?という感じだな・・・まあ挑んでみるか。
10cm正方で溝作って継ぎ目風。20cm正方。30cm正方。出来るもんだな。
溝をすこし丸くすると四角い石を積んだようにも見える。
化粧合板みたいなもんだな。
堀の拠点側とその上の土壁は・・・10cmにしてそれ以外の場所は3cmで誤魔化すしかないな。
「ああ。それならなんとかごまかせるじゃろう。後は石の確保じゃが・・・水堀の分の石はどうしたんじゃ?」
何気にジークさんが飛ばしてるな。
なんとかごまかせるとかでいいのか。
「河原の石をゴーレム化して自力で移動させました」
「ならそれでやってもらうしかないな。それで門じゃが門自体は同じものが作れるがどうするかじゃな。ほかが2mなのに門のところだけ10mになるのはな・・・」
確かにそれは不気味だな。
城壁から500m離れたところに高さ10mの壁があるがその両側は2mしかないと。
「いま街道から南北に100mずつ堀も土壁も無になっています。この200mの幅で壁と堀を城壁方向に作っていく案はどうでしょう?門と橋の追加は無しで」
「それはだめじゃな・・・それだと壁を10mにしてもらわんといかん」
正門方向だけだとしても2km+500m+500m+2kmを高さ10mか。・・・それは厳しいな。
「幅200mの回廊にして正門を追加。高さはすべて10mで歩廊有り。門の両脇は城塔。今の壁も歩廊有りで高さ1.5mの壁を外側に足す。だな」
イケメンエルフがぬけぬけと言い放つ。
ジークさんが青筋立てて殺意を発している。
これはいかんな。
そう言えば薬師ギルドの婆さんは何故ここにいるのだろう。話をまぎらわせるか。
「薬師ギルドは城壁は関係ないですよね?」
「関係ない・・・と言いたいが問題は同じじゃ。北側のエリアを全部農地だったことにしようとこやつが言い出してな・・・さすがに作物はそんな短期間じゃ育たん。本来は水堀があるって話だったんで水路を引いてもらおうと来たんじゃがな」
「水路?」
「いまは水が足りてるように見えるが農業を始めたら土が乾燥する。それに生活用水が常に不足しとるのもすこしは解決するじゃろ。それと北エリアの移動手段をどうにかしてもらわんとな」
「それもクルーソーさんにどうにかしてもらおうかと思ってな」
イケメンエルフが遠い目をして何か言っている。
こいつめ・・・
「農業用水なら単純に水路でいいんですが・・・生活用水となると地下にトンネルを引くしかないので設備がいろいろいりますね」
「どうしてそうなる?」
「水路だと・・・土やゴミとかいろいろなものが簡単に混入します。トンネルにして必要な分だけ水を供給する設備が・・・いや。農業用は水路。生活用水は地下のトンネルでいいですね」
「それはやってもらえるってことでいいのかの?」
ばあさんが聞いてくるが・・・よく考えると・・・このばあさんは何故に領主の提案に乗るのだろうか?
薬師ギルドに得はない気がする。
「長期的には作業可能と思います。今回は堀を埋める方向しかないと思いますが」
「今までの作業速度なら可能と思うのだが・・・報酬は払うぞ」
現状金はインゴット作るだけなんでいらないんだよな。
私が黙っていると
「魔道具や武具でもいいぞ」
魔道具・・・ピンときた。
「魔法のスクロールでもいいですか?」
「スクロール・・・?ああいいぞ」
きたきたきたー。
「では・・・話をつめましょう。正門は北と南に100m地点に街道沿いに500mで高さ10mの表面は石。門は補修用の材料でどうにかする。門の両側は城塔。壁の上は歩廊有りで高さ1.5mの壁にする。今ある土壁も街道に面している箇所は表面を石にする。城塔の形状をどうするかと橋をどうするかを決めてください」
「城塔の形状は簡単に出来るならとりあえずどうでもいい。後で作り直す手もある。橋もそうじゃ。そちらが作ったという橋と同じでいい」
ジークさんがなんか適当なことを言っている。
まあ・・・体裁だけでいいならこうなるのか。
「こちらの橋は幅が10mで有事の際には堀に落とすか領内にひきずりこむ運用になっています。同じ作りにして2本作りましょう。そして門の設置は橋を引きずり込める分10m城壁側にしましょう。なので門を設置する壁は幅20mにします。左右に城塔でなくて200m*20mの城塔で。それと橋の上は木貼りにするのでその分の材木は準備してください」
「とりあえずはそれでいい。まずいことが有ったら交流会の後でやり直す。で門と橋の上の木はどの時点でいる?」
「堀と壁の作業は夜にやるしかありません。まずは石の運搬からですので数日間はいらないですね。逆にそちらが準備できてから教えてもらったほうがいいでしょう。現物合わせで一気に嵌め込みます」
さて・・・まず石の運搬だな。
出発するか。
「まて・・・農地はどうする?」
忘れていたな。
「・・・日が暮れるまで農地の作業をします。その後・・・一度正門の前の回廊部の両脇をいったん高さ2mで作ります。それで昼間にその陰で準備が出来るようになりますね」
領主の屋敷の北側エリアに移動する。
アイテムボックス内でアイアンゴーレムを材料にして鋤を作る。
ゴーレムが引いて左右から土を寄せて畝を作れる形状にする。
2本作ってからサンドゴーレムを12体作る。
4体で鋤を引き2体で押さえる。
畝を作る場所は地図にてマーキングする。
木と薬草が生えている場所は除いて1m間隔で引くように設定する。
西と東で1セットずつ作業させる。
うまいこと動いてる模様だ。
日も暮れてきたので正門前に移動しよう。
正門から南に100mと北に100mのところに目隠し用の土壁を作ったら戻ってきてゴーレムたちの様子をみよう。
それで正常に動いていれば後は放置で全面農地化出来るだろう。
こんなことで魔法のスクロールが手に入るとは・・・ちょろいな。
やったね。
魔法が増えるよ。




