3-7.電気治療
信じられないほどの覇気。
このまま心臓が止まりそうだ。
いや・・・よく考えたらダンジョンコアさんと比べれば大したことない。
どうということはない。
落ち着け。落ち着け。落ち着け。
ヒッ・ヒッ・フーヒッ・ヒッ・フーヒッ・ヒッ・フー
落ち着いた。
アンジェさんとレオノーラさんとマリアさんはむこうで何かやってる。
逃げやがったな。
ジークもイケメンエルフもこっち見てんじゃねえよ。
というか売りやがったなこいつら。
かくなるうえは。
「領主様より北の地を領地としていただきました。またこの都市からその領地まで堀と塀を繋いでいます。その内側は迷宮都市の領土。つまり領主様の直轄地になります。なのでその中での採取は領主様の許可がいるようになります」
ばあさんの顔色が赤くなりジークとイケメンエルフの顔色が青くなった。
「領地だと・・・。本当か?」
いつのまにかばあさんが持っている杖がイケメンエルフの頬にめり込んでいた。
早すぎて見えなかった。
「本当だ」
「おまえ正気なのか?どういう意味かわかってるんだろうな」
「分かっている」
杖はいつのまにか消えていた。
幻覚だったのかこの杖。
「そうか・・・ならいい。領地か・・・そうか」
すこしばかりの沈黙の後ばあさんが切り出した。
「あの丘にはここらへんではあそこにしかない薬草やキノコがあるんだが採取は出来ないということになるのかい」
「わたし的にはいいのですが・・・採取し放題の領地というのはあり得ないとは思いますので条件をつけましょうか」
「条件?」
「採取は計画的かつ部分的に行うこと。これは必須です。それと・・・そうですね。お金とかはいらないのでダンジョン1層の癒し草を根っこに土つけた状態で持ってきてもらうというのはどうでしょうか?」
「根っこごとというのはどういう意味だい?」
「ダンジョン外で植えてみて癒し草がどうなるかを見てみようと思いまして」
「どうなる?」
「1つ目にダンジョン内の癒し草がダンジョン外で育つかどううか。2つ目は育つとしてそれから作るポーションの性能が変わるかどうか」
「なるほどな・・・おまえさんはどうなると思っているんだい」
「育つかどうかはよく分かりませんが育てば外の癒し草と同じになるのではないかと思っています」
「つまり・・・癒し草は同じだがダンジョン内ので育つと薬効が下がると」
そこでイケメンエルフが
「ダンジョン内では魔物の魔石の格があがって一定化する。癒し草の薬効が下がるのはあり得ないのでは」
魔石の格があがって一定化・・・知らなかったな。
まあダンジョン内の魔物は人工物だからな。
「ダンジョン内の魔物は魔石の格があがる。つまり強さの割に魔石の格がいいということです。癒し草の薬効は魔石のほうでなくて強さのほうに該当するのでは。まあここで議論してもあまり意味はありません」
「では・・・直轄地のほうの採取はどうなるね?」
・・・イケメンがこっちを見ている。
なんでやねん。・・・黙っていると全部こちらの責任にされかねないな。
ここでマリアさん、アンジェさんとレオノーラさんがお茶を持ってきて・・・そのまま去って行った。
その間は誰もしゃべらない。
「直轄領に関しては領主様しだいですが・・・もともと土地不足を解消するのが目的です。短期間的にはそのまま採取できるのでは」
「そのまま採取というのは直轄領なのに税金も何もなしという意味でいいんだね。それでいいのか?」
イケメンの頬にまた杖がめり込んでいる。これって脅迫になるのでは・・・知らんけど。
「ああそれでいい」
なんか弱みでも握られてるのかイケメン。
「ただ・・・それだと短期間は凌げるが開発が進むとかなりの遠征をしないといけなくなる。ポーションの供給量にも値段にも影響するぞい。どうする気だい?」
なるほど・・・ポーションの量と値段は冒険者の命を左右しかねない重大問題だな。
どうするつもりだ領主。
・・・イケメンがこっちを見ている。
やろう・・・黙ってると勝手に領地作ったと言い出しかねんなこいつ。
「それに関しては試案があります。現在癒し草の人工栽培について試験を行っています。これがうまくいけば癒し草の安定供給が可能になるとおもいます。それまでは今ある癒し草のコロニーの場所を開発しなければいいのかと」
「なるほど・・・一応いろいろ考えているわけだ。出来れば先に話を・・・ああそういうことかい」
ばあさんはなんか勝手に納得した。
まあこれでいいのか。
「ただダンジョンの癒し草採取は問題だね。根っこごと採取だと素人では無理だがダンジョンに薬師ギルドの人間を入れるわけにはいかない。野外の採取の護衛に冒険者を雇うこともあるし冒険者が野外の採取をすることもあるが逆はダメだ」
なんかそんな話はあったな。
薬師で冒険者はいないのか。
みなが私を見ている。・・・なにか考えればいいんでしょ。
ちくしょう。
「それでしたら・・・ダンジョンの入り口で雑用の依頼待ちしている子供たちを教育すればいいのでは。依頼もなく暇にしてるようですし」
イケメンが渋い顔をしている。
この話はまずかったのか。
「確かに雑用の依頼待ちはうまいこといっていないが・・・あれはあくまで冒険者の補助でダンジョンにはいることになる。彼らだけでははいれん。それに教育はどうするんだ。勝手に学べでは話にならんし。といってタダで教えるわけにもいかん」
「あの子たちはその日暮らしじゃよ。タダでも学びにはこんじゃろ」
イケメンにもばあさんにもダメだしされました。
「彼らを雇って野外の採取を行えばいいでしょう。そこで採取の基礎を教える。覚えた子にはダンジョン内の採取を依頼する」
「依頼する冒険者はどうするんだ?」
「それは領主からもしくは薬師ギルドから冒険者に依頼する。という形になります」
「どうしてそうなるんじゃ?」
「領地云々を公表したくなければ私の名前を出さないほうがいいでしょう。癒し草の件は薬師ギルドと領主様の共同事業が都合がいいのでは」
みんなだまった。
やはりなにかまずいのか。
「それだとあんたの取り分がないよ?まあ金も出さないってことにもなるけどね」
「初期出資するのは構いません。まあ無駄に暇してるより仕事があったほうがいいでしょう。皆さんもそう思っているでしょう?」
またみんなだまった。
なにか私がしらない事情があるのか。
「それならついでに農業も出来ないか?住宅地もすぐにはうまくいかないだろうし。小麦とか植えればここの食料まかなえないか?」
イケメンが爆弾を放り込んだ。みなだまってる。これはまずいのでは。
「あんた本気で言ってるのかい?」
「ああ。どうせ土地が余るんだからもったいないだろう」
・・・これは分かってないのか。
それともぼけているのか。
ここは中世ヨーロッパと同じような世界のはずだ。
農業も同じくらいのレベルのだとすると小麦だと何もしなけば収穫量が捲いた種の2~5倍だ。
農業レベルが現在レベルなら20倍をかるく超える。
どうなってるのかは全く分からない。
「この土地だと・・・小麦だと1ヘクタールつまり100m*100mに100kgまいて200~300kg程度とれるかな。まあ1ヘクタール当たり一人は食って行けるね」
ヨーロッパの中世とほぼ一緒か。
小麦は産業革命に連動した農業革命が来るまで主食ではなかったからな。
大麦、ライムギが主力だったはず。
というかもうすこし農業革命が遅ければヨーロッパはもっとジャガイモだらけになってたんじゃないのか。
「え・・・そんなに取れないもんなのかい。ビスロもそんなもんなのかい?」
ビスロ?
「あそこはここらへん最大の穀倉地帯だね。いろんなノウハウもあるだろうし土壌もいいんだろう。それになんで小麦なんだい?」
イケメンは黙った。
本当に何も考えてないのかこいつ。
まさかな。
「いつも小麦のパン食ってるからとかじゃないよな?普通の奴らはライムギのパンだよ。それと魔石を売ってそれ以外を買うという周りとの力関係も変わるがそれも考えてるよな」
イケメンの頬にまた杖がめり込んでいるが無言だ。何も考えてないのか。らしくていいな。
「こいつはこんなんだがあんたらはどう思うんだい?」
ジークさんは無言だ。・・・
「農業いいんじゃないんですか」
「お前話聞いてたのか?」
「小麦は・・・最終目標ということでいいでしょう。最初は野菜や豆、イモから始めればいいんじゃないですか?宿屋や食堂を回ればすぐに手に入るし小麦や大麦より問題にならないでしょう」
「・・・人員はどうするんだい?」
・・・みな私を見ている。
イケメン・・・農業に関しては君が言い始めたんじゃないのか?
「それも雑用の依頼待ちの子たちでいいのでは?主体は薬師ギルドでいいのでは」
わたしがそういうといきなりジークさんが割り込んだ。
「それはいかんな。彼らは冒険者ギルドの所属になっとる。そうねじこんだからな。明らかに農作業や土木工事は依頼できん」
出来ないのか。
冒険者としての矜持か?
それともほかのギルドのからみか?
「・・・ではこうしましょうか。採取の依頼に混ぜ込む・・・のは無理がありますね。初心者以下の彼らに戦闘訓練を付けてやる代わりに農業作業と新領地の整備土木をさせる。賃金を少し払って食事をふるまえばいいのでは?ギルドへの依頼にしなければぎりぎりOKでは?」
「それもうちらで・・・薬師ギルドと領主の共同事業にしろと?」
「はい。失業者対策というのか・・・公共事業ってやつですね」
「・・・失業者?」
「技能や能力がないため稼げる定職がない。わけですね。彼らをどうにかしたいから準会員という制度を作ったのでしょう?冒険者の戦闘能力の底上げと公共事業を組み合わせるのはいいと思いますよ。タダで教育を出来ないというのは分かりますがあのやり方はどうかと。実際効果はないんでしょう?」
すこしばかり沈黙が続いたがばあさんが立ち上がった。
「こちらはその案で動くよ。詳細のすり合わせに副マスターを後で送る。あんたはそれでいいのかいアルゴランよ?」
「ああ。それでいい」
いきなり杖が私の頬にめり込んだ。
ジークさんとイケメンエルフが視野内から消えた。
「クルーソーとやら。人を道具のように扱いおって。この若造が」
魔法発動<ライトニングボルト>
あぼぼぼぼぼ
信じられん。
杖を頬に差してからの雷魔法。
そのままばあさんは何事もなかったように歩いていく。
まじで信じられん。
ピクピクのたうっているとイケメンエルフに助け起こされた。
たしかに勝手に話を進め過ぎたな一応あやまっとくか。
「勝手に話を進めてすいませんでした」
「いやいい。みんなも問題だと思ってはいたからな。ばあさんのことも気にしなくていい。あれは喜んでいるんだよ」
・・・なんですと!
「あれで喜んでいる!・・・まじであたまおかしいのか!」
イケメンエルフが瞬歩を使った。
瞬歩覚えたいな・・・何故に瞬歩?
魔法発動<ライトニングオーブ>
おぼぼぼぼぼぼぼぼ
「聞こえてるぞバカたれが!」
遠くにばあさんが杖を振り回してるのが見えた。
ものすごい笑顔だ。
こっちは気絶しそうだ。




