2-12.検証結果
「マリア。彼から報告を受けたかい?」
「いいえ」
「ならば同時に聞こうか」
影が出てきた。最近は気を緩めると探知できなくなる。マリアは何事もないようにしている。
「アンジェから聞いたが裏付けがほしい。最初から報告してくれ」
紙を取り出し広げた。詳細はもう纏めてあるようだ。
「初日の行動ですが ハンターギルドカードで街に入り・・・魔石屋でレッドキャップの魔石を売却後換金屋で換金を行いました。
宿は定宿をに泊まれずグランドホテルに1泊しています」
「何か変わったことは?というかいきなりグランドか・・・普通はもめるぞ・・・あの値段」
「グランドでは何もなかったようですが・・・」
「が?」
「宿泊の前で魔石の買取値段で揉めていたようです。アンジェリカ様が「ぼられれている」と言ったところ「「君の問題ではない。取引は成立だ。私はあの店を使うことはない」」と返していました」
・・・やっかいだな。金より重要なものがあると。
「次の日は?」
「アンジェリカ様が冒険者ギルドに行っている間にダンジョンに移動を開始しましたがチンピラ3人組につけられていました。裏通りで襲撃を受けましたが素手で全員を半殺しにしてゴミ捨て場に放り込みました。追跡に気付いて誘ったのかと思われます」
荒事にも慣れてるということか・・・
「その時チンピラが使ったのがこれです」
短剣を机に置いた。外見は安物に見えるが・・・業物だな。
「貫通特化か・・・殺す気だったのか」
「麻痺毒が塗ってあったようです。「当たったはずだぞ?なぜ麻痺しない?」と言っていましたので。実際当っていました」
「これなら金属鎧でも貫通するぞ。となると麻痺毒が弱かったのか」
「その後チンピラに突き刺して効果を確認していました。昏睡していたのでかなりの麻痺毒だったと思われます。監視対象は脇から胴にかけて短剣を金属製の鞘付きで鎧に装着しているようです。たぶんそれでうまいこと弾かれたのかと。この短剣はまずいので回収しました。チンピラは後で部下に確認させましたがいなくなっていたようです」
一人で同時に監視は出来ないからな・・・暗部を増やしたいがこればかりはな。
「その後検問に止めらているところでアンジェリカ様と合流しました。ダンジョン入り口前で買い物をしましたが・・・帰還石を買って標準器からはすぐ離れろと注意を受けていました。かの発明家氏の屋台でゴーレムの元という商品を買いゴーレムの可能性について語っていました」
発明家か・・・やつか。
「ダンジョン1層では3匹ゴブリンを倒しました。初心者エリアでの解体について注意を受けていました。薬草の採取を行った後1区に入りましたが1区内での監視は行っていません」
そういって報告書を手渡してきた。監視していない?
「何故監視していない?」
「監視対象に探知されいる可能性が高いと判断し1区内では距離を置きました」
「・・・探知されていると判断した理由は?それと監視対象ではなく名前で呼んでくれ」
「報告書にも書いていますがクルーソー様は周りの冒険者から距離を置いて出会わないように移動していました。わたしも探知していると思われる移動をされていました」
報告書を速読する。
「「これも魔法の詠唱済みで発動前の状態にしてるんだな」に対して発明家が「なんだい・・・同業者なのかい?ネタを」と言っていたとあるがどういう意味だと思う」
「魔道具作成のノウハウを知る同業・・・ネタをばらすのはルール違反だと言いたかったのでは。もしくはゴーレム使いの同業者かもしれません」
わたしの鑑定で見えた 職人 とは理屈が合うが・・・正体がますますわからんな。
「1区内の戦闘は見ていないということだがチンピラ相手とゴブリン相手ではどうだった?」
「歩いているときは全く一般人に見えます。戦闘中の動きは何らかの訓練に裏打ちされた無駄のない動きです。たまによく分からない動きを混ぜていました。ただ・・・まったく強者としてのオーラが感じられません。あれは異常です」
「気配遮断や魔力遮断を持っているということではなくて?あり得ない話ではないわ」
マリアは直で見ていないからな・・・
「確かに普通の一般人に見えたな・・・初心者なら納得できるレベルだった」
さて・・・こういう時はどうしたものか。
「まず現象ありきだ。事実をまず積み上げる。
街に入る前に厄介者が探知魔法のソナーを打った際に鑑定した結果は 盾士 だ。これは私も確認した」
「アルゴルン様…厄介者というのはちょっと・・・」
「マリア・・・君もそう思ってるんだろ?目視できる相手にソナーを打って鑑定。やばいやつを厄介払いってやつだ」
「・・・・・・」
「入り口でハンターギルドカードを出した。判定石に触れて異常なしなので本物ってことだ。
魔石屋のくだりからすると街での生活の情報をほとんど持っていないのでハンターギルド会員は間違いない」
「魔石屋でぼられた話でしょうか?それが本当ならば指導が必要な事態では?」
「ああ・・・マリア・・・君もアンジェと同じか・・・冒険者ギルドは魔物で魔石のランクを決めて買い取るんだが 魔石屋は魔石を直接ランク付けするんだ」
「?」
「冒険者ギルド会員はダンジョンの魔石はギルドに売らなければならない。ダンジョンでは魔石のランクはほぼ一定化されるので魔物で買取値段が決まるんだ。ダンジョン外での魔物の魔石ランクは個体差があるんだ。なのでぼられたんじゃなく倒したレッドキャップの魔石のランクがダンジョンより低かっただけなんだ。アンジェはそれを知らなかったってことだ。クルーソーさんは逆にダンジョン産の魔石の買取ルールを知らないんだろう」
「申し訳ありません。知りませんでした」
「いや・・・この街でダンジョン産でない魔石を売ることはない。よそのほうが高くで売れるからな。そこら辺の売り買いは君はやらないから知らなくてもおかしくはない」
秘書に代官のまねごとをやらしてるのがそもそも間違いだしな。
「次は素手でチンピラを半殺しに出来る。まあこれはそこまで問題ではないな。次は 魔道具作成のノウハウを知る同業 もしくはゴーレム使いか・・・これは検証不可能だから無視だな。戦闘に関しては 訓練に裏打ちされた無駄のない動き をする。アンジェいわく 宣言なしで武器技能の連続動作をする」
「宣言なしの連続動作はいくらなんでも無理と判断します」
影が珍しく自分の意見をいう。まあそうだろうな。
「宣言なしで連続動作が出来る でなければ 武器技能無しで迷宮油虫の外殻を切断できる となる」
「・・・」
「前者だと私を超える技能の持ち主の可能性がある。後者でもかなりの武器レベルだ。この街の冒険者でもそうはいないレベルじゃないのかな」
「前者はあり得ないでしょう。大剣の達人というとこですね」
わたしを絶対視しすぎて思考を止めている。わたしを超える技能の持ち主がいないとはかぎらんのにな。
「魔法の 魔法のタメが全く感じられないくらい速いく発動の魔力もほぼ感じられない マジックアローを一本撃った マジックアローが大きくて速さも早かった気がする も検証不可能だな・・・監視中に魔法は使ってないのかい?」
「監視中に魔法の発動は検知されませんでした。・・・マジックアローでなくてマジックジャベリンなら辻褄は合うのでは」
「それだとすると 一本撃った は辻褄があうわ。ただしそれだと 魔法のタメが全く感じられないくらい速いく発動の魔力もほぼ感じられない が説明できなくなるわ」
「そうなんだよな・・・アロー1本は初心者だしな。これほどの大剣使いなら実戦では使わないだろう。
まあ次行くか・・・斥候技能は持っている。チンピラを裏道に誘えるレベルで・・・君を探知した可能性がある」
「・・・」
「結論としてはよく分からんということだな。まあハンターギルドだしな」
「監視はどうなさいますか?継続しますか?」
「いや放置でいい。それよりもこの短剣を持っていた連中を追ってくれ。ただの物取りじゃないだろう?気になる」
影はそのまま消えた。どうやら気になっていたようだ。あの短剣は通常の流通品ではない。裏の組織が秘密裏に作って持ち込んだのだろう。そうでなければ外見を安物にはしないからな。
「よろしいのですか?あまりにあやしいですよ?」
「実力あるからという理由でダンジョン潜りに来たのを全員監視は出来ん。まあそれになにかあればアンジェから情報が上がるだろう」
「チームを組んだらというのはうそですか?」
「いや本気だよ。どちらもね」
マリアがなにか云いたそうにしている。立っているのは親でも使えという。人材不足がどうにもならん。




