15-11.ピンチと言ってる間はピンチじゃない
「それヤバいじゃん!俺様ピンチ!」
なんてこったい。
このままではガラス製造会社を開業しないといけなくなる。
「ちょっと待て・・・それはなんだ?」
ん?婆さんが指差す先にあるのはうちの馬車。
「漁村の金策で魚を売り込もうと思いまして」
「そっちじゃない。その魚を入れてる容器だ」
んん・・・は!
水槽のことか。
「デモンストレーションのためには良く見たほうがいいと思いまして」
「ということは・・・これはお主が作ったのか?」
「もちろですが」
「どうやって?」
質問の意味が分からんな?
「型枠に入れてパカーンって感じで。ポーションの瓶と原理は一緒です」
「ほほー・・・確かに瓶も作るとは言っておったの・・・」
「ぼが!」
脳天に激痛が!
気が付いたら婆さんに脳天撃ち抜かれていたでござる。
「いったいなんで・・・」
「話は済んでない。やるなら後にしてくれ」
何言ってるねん?イケメンエルフ?そのヤルは殺るじゃねえよな。
「おっと。すまんな。ドヤ顔がムカついてついな」
ついって?
「ということはガラス板・・・・ああ。いるんなら少量作るといったな」
はて?どういう意味?
「そもそもなぜにガラス窓を作った?」
「ジークさんに聞いたら超高くて小さいのしかないってことだったんで」
「無ければ作ってしまえと・・・あの長屋にガラス窓付けたときにはびっくりしたが最初から温室を立てるつもりだったのか」
「長屋にガラス窓でびっくり?」
「あのようなみすぼらしい家にガラス窓を付けるやつはおぬしくらいじゃ」
みすぼらしい?まあ飾りとかはないが普通に木造の家なんだが?
「ん?最初は買うつもりだったということか。よく作れたな」
「言われればそうですね」
「は?」
確かにゲームでも作ったことはなかったな。
「まあ・・・ポーションの瓶は作ったことあるんで出来るかなーと思って。やったらできました」
「まあ0からでないなら可能なのか・・・まあそれはいい。よくはないがいまさらじゃ」
?
「後はアルゴラン。おぬしがどうするかじゃ」
なんか話がずれてるような?
あれ・・・アルゴランが鬼のような顔してる?
「えーとだな・・・ガラス窓はどこからか仕入れたのでなくクルーソーさんが作った。それでいいのか?」
うむ?やはりずれてるきがす。
「実際そうなんで」
「ガラスで商売をする気はないんだろ?」
「まあそうですね」
「でも少量なら提供すると」
「そーですね」
・・・あれ返事が無い。
「なんかまずいっすかね?」
「全部不味い」
おや・・・
「いまここは君の農地だ。後ろの北門・・・君にとっては南門だな。この門は基本的に薬師ギルドの依頼を受けた人物か孤児院関係者しか通れない。それは分かっているな?」
「うい」
「君がこちら側に絶対来ないのなら問題は無い。まあ私の舘までならいいだろう。その先は護衛無しでは進むことすら出なくなるぞ」
あが!
「そんなに!いやいやいや・・・盛り過ぎやろ」
「君は商人を舐めてるな」
「は?」
「生き馬の目を抜くを言う言葉がある。儲け話を無視する連中ではない」
む・・・その格言日本語に有りますな。
・・・翻訳さんの問題か?同じ意味の言葉に訳しているのか?
「ええと・・・仕入れたんじゃなく作った。がまずいってことですかね?」
「理解してないのなら説明してやろう」
「おう」
「もし仕入れたとするのであれば少しはましだ。なかには仕入れ先を教えろというやつも出てくるだろうがそう言うのは三流だろうからな」
「え?」
「え?」
「まさか理解できんか?」
「存在しない仕入れ先を教えろと言われるとマジ困るんですけど」
「仕入れ先を教えろと言われたとしよう。教える必要はないと回答すればいい。実際そうだからな」
「ほう」
「もしくは実在しない商人の名を上げればいい」
「それはあんまりでは?ていうかばれそうなんやけど」
「確認しようがないだろ?」
「訪ねて行けば露見するし?」
「簡単に確認できない所にすればいい。もしくは存在しない国でもいい」
おう・・・そう来たか。
「なら仕入れたと言い張ったほうがいい?」
「そうだと言いたいが・・・」
「が?」
「お礼をはずむから仕入れてくれと言われるだろ」
「まあそうですけど・・・仕入れ値を思いっきり上げて公表すれば購入希望者もいなくなるかと」
「どのくらいの値段で?」
「・・・1枚1金貨とか?」
「過労死する羽目になるぞ」
「はい?」
「超格安ってことで世界中から商人が列をなす」
なんだと!・・・では思い切ってガラス屋をやるか?ぼろもうけやん。
いやいやいや・・・金は要らんのやった。
・・・あれ?対処法なくね?ヤバくね?
・・・
「どうすればいいですかね?」
「どうにもならん」
なんですと・・・役立たずどもめが。
「まあ確かにな。だがそうもいくまい。儂が手を貸してやろう」
お!婆さん役に立つな。イケメンエルフと違ってな。
「まず・・・このガラス窓はクルーソーおぬしが作った。そう公表する」
む?それ不味くね?
「板ガラスの販売権はアルゴランにあると公表する」
にゅ?
「おいおい・・・婆さん。それだとこっちが困るだろ」
「まあ聞け。クルーソーは領主の舘とグランドの分のガラスをタダもしくは格安で納入する」
「なるほどな・・・ただそれだと・・・」
それだと?
「クルーソー。お主がいいかどうかだ?」
どうしてそうなる?
「それで何故に問題解決なのかが分からんのですが?」
「販売権がアルゴランにあるとする。そうなると商談はすべてアルゴランに持ち込まれる」
「なるほど!私に絡んでくるやつは消える・・・ん?直で来るやつはいるような?」
「少なくともこの都市にはいない」
「何故に?」
「領主が販売権を持つと明言した後におぬしの所に行く。それは領主に喧嘩を売る行為になる」
「おおお・・・そう言うやつが居たらぶちのめして兵士さんに引き渡していいと」
「そうだな」
そうなのか。
言って見るもんだな。
ある程度のガラスを引き渡す必要があるが厄介ごとはすべてむこうで引き取ってもらえる。
「それならそれでお願いします」
「それで・・・婆さんはどうするんだ?」
「どういうことじゃ?」
「それだと婆さんに一切得は無いだろう?」
「それについてはじゃ・・・ガラスを入れ替える訳だから今のが要らなくなるよな?」
「ああそっちか」
「そっちを儂らに譲ってくれ。こっちの建物をそれで入れ替える」
ところてん方式でガラス窓が廻って行くと。
「それだと他のガラス製品をという輩がでてことになる。瓶や食器は薬師ギルドに販売権でいいんじゃないか」
「はあ?儂は要らんぞ」
「板ガラスはうち。それ以外は薬師ギルド。それでどうだクルーソーさん?」
「そうですね。ただどっちにしても多量に納品しろと言われても困りますけど」
「それはそうだな・・・上限を決めればいい。月に10枚とかな。後は納期を長くとるとかな。それでいいか婆さん?」
「・・・まあいいじゃろ」
「そっちも多量にポーション瓶を納入しろとかは困りますけど」
「こっちはこっちで専門業者がおる。そいつらの仕事を奪う気はない。ただ緊急事態には頼むかもしれん」
「ではそれでお願いします」
よし・・・すべて解決した。
・・・・
「で上水の件じゃが・・・」
ぐ!忘れていた。
・・・
何故皆無言?
あ!イケメンエルフめが!だんまり決めやがった。
「そもそも汚染てなんじゃ?」
「ええとですね・・・いま上水は領主の舘に井戸として有りますよね?」
「そうじゃな」
「簡単に済ますならあれと同じものをあちらこちらに作ればいいんですが・・・」
「儂もそう思っておった」
「その方式だとどこかの井戸に誰かが毒物を投げ込んだ場合全部の井戸がダメになります」
「そんなことは起きんじゃろ?」
「たぶん」
私的にはそれでいい。
「警備上はそうはいかん」
「そういうことですね。そんな奴いないだろうって対策をしないともし起きたときに被害がデカくなります」
「ん?」
「井戸の水がダメだと情報が出回るまでに汲まれた水でどれだけの被害者が出るか。それに井戸に慣れてしまったら生活が不便になりますよね」
「そういことじゃったの。で・・・どうする積りだったんじゃ?」
・・・は!
まただんまりだと?ボールはイケメンエルフおめえがもってるはずだっただろう。
「井戸方式でやる。それで24時間監視する」
「それは駄目だ。兵士の負担が増える」
「兵士がつめて居る所やいつも居る所に井戸を作るという手もありますが・・・」
「それなら負担は増えんな」
「兵舎って街に万遍なくある訳ではないでしょう。後は門の横と言う手もありますが・・・」
「門番はいつもいるからな」
「それもだめだ」
「ただでさえ交通が多いところに人が集まるとよろしくないな」
うむむむ・・・
「そうなるとじゃなにならない所に噴水のように水を供給となります」
「ん?噴水」
「水が常時出ているのであればそこに毒を蒔かれても他所に行くことが無いです」
「被害はそこだけで済むな」
「常時水が流れるので毒も流れていきます」
「結論は出ておるじゃないか。何故実行せん?」
「圧力が足らんとです」
「圧力?」
「噴水と言うか給水場を複数作ると水が揚がって行く限界高さがどんどん下がって行くだろう予想されます。なのでどこかに施設を作って水を汲みあげて圧を高めないと・・・」
お!なんか降りてきた。
「地下設備にしますか」
「は?」
「地面を掘ってそこに給水するのであればいるらでも数増やせます」
「そりゃ困るな」
「え?」
「つまり・・・例えば薬師ギルドの地下に部屋を作らないといかんということじゃろ?」
「ええと・・・各建物に給水するんですか?」
「は?」
まさかして各家庭というか各建物に給水なの?
えええええ?




