14-13.まったりと茶をしばく
・ダークロードとセンチネルレッサーデーモン
「死ぬことになる?」
それは骨ごときが私を殺せるという意味?
「まあ・・・そうは言っても信じないじゃろう。付いてくるがいい」
骨が荒れ地の上を歩いていく。比喩ではない。宙を歩いている。
ん・・・通路が宙に浮いているのか・・・
「これはいったい何なのです?」
「アイテムボックスの中?」
「大きな口を叩いておいて分からないのですか?」
「見つけたのは儂じゃないからな」
「え。え・・・なんですと?誰が?」
「消去法で分かるじゃろうて」
「クルーソー様が?」
「クルーソー様がアイテムボックス内に入られたことはない。自身では入れないと言っておられましたな」
「では?誰もないわよ?」
「まーちゃん殿ですな」
「まーちゃん?」
「前に鎧を賞与されましたな。あれを使っている時に発見したのですよ」
「鎧?」
「アイテムボックスから直接鎧を装備しろというやつですな」
「装備変更ね」
「まーちゃん殿がどうしてもできなくてですな。幻影魔法を使ってどうにかしようと思った訳ですな」
「ほうほう?」
「まーちゃん殿の幻影魔法が空間魔法であることが判明しましてな」
「はう?」
「前から思っていたのですよ」
「なにを?」
「まーちゃん殿は幻影魔法を物に掛けます」
「そうね」
「幻影ならば相手に掛けるのが普通なのです」
そうなのか?ここらは全く分からない。
「相手に幻覚を見せる。まあ精神系魔法ということですな。それを物に掛ける。となると・・・」
「なると?」
「幻影を実在させている」
「何言ってるんだか?」
「見えている光景とは物体が光を反射している訳ですな」
「・・・」
「物は実在しないが光だけを反射して物があるように見えている訳で・・・」
「だから空間魔法と・・・」
「そう言うことですな。実は幻影でなく光を反射する魔的な何かを作っている。その光の反射具合を調整して質感まで表現しておるわけですな」
よく分からないけど・・・すごいことなのか?
「で?」
「空間魔法の一種だと判明したら・・・アイテムボックスの魔法もすぐ出来たのですな」
「光を反射し質感まで再現する空間魔法を使えると思えば簡単に出来たと」
「そうです。で・・・その時にちょうどクルーソー様のアイテムボックス内にいましてな」
「この空間に気が付いたと?」
「そう言うことですな」
「発見の経緯はいいわ・・って私をはぶったわね?」
「モンサン殿ならすぐに気付くとおもいましてな」
ち・・・
「で・・・これはいったい何なの?」
「凍結されていると言われる兵器群。でしょうな。クルーソー様の作られたリストの物ですから」
「あれはクルーソー様が解凍するまで実在しない。実際我らには見ることすら出来ない」
「ここに凍結されおるじゃろ?」
「そうではなくて・・・それよりここはどこなのです?」
スケサンが立ち止まり顎を掴み首をひねった。
「うむ?・・・ここはどこかと来たか・・・」
「知らないのですか?」
「予想はつく」
・・・
「で?」
「言っても信じないだろうから先に説明をする」
そうきましたか
「まずはこれじゃ」
前に巨大が砲が3本装備の砲塔が2つある。これは戦艦と言うやつか。スケサンの後をついて行く。
「これが大和改の艦橋じゃ。触るなよ」
「ん?」
「死ぬことになる」
「何を言っているのやら?骨でうろうろしているあなたと違い私は精神体。死ぬことは有りません」
「見ても信じないと・・・であれば触れてみるがいい。ただし指先でそっとな。ただ言っておく。どうなっても知らんぞ」
ふ・・・何を馬鹿げたことを。
指先で艦橋の壁に触れてみる。
は!
なに?
指先は壁に張り付き離れない。
指先から凍って行く?
「エアスラッシュ」
魔法発動<エアスラッシュ>
スケサンが魔法を唱え壁に張り付いた私の指先を壁から切って引きはがした。
一瞬にして肩まで凍った。
首まで凍ったらヤバかった。
ん・・・は?
今精神体で存在しているはずだ。首まで凍ったらヤバいとかいう制約はないはずだ。
だが・・・今肩まで凍っており腕では動かない。
精神体なのに人型の制約を受けている?
明らかに実体の身体に引っ張られている。
「絶対零度じゃ」
「は?」
「熱が完全にない状態じゃ」
「ん?」
「もしかしたら・・・冷却系の魔法を掛け続けたらいくらでも冷たくなると思っておるのか?」
「ええ。実際そうでしょう?」
「儂もそう思っておった」
「え?」
「ついでじゃ。科学とやらの話をしよう」
「は?」
「温度が高い低いは分かるか?」
「分かるに決まっているでしょう」
「感じるか?」
「感じるに決まっています」
「そりゃ良かったの。でじゃ・・・水を熱くすると沸騰。つまり気体になる。冷やすと氷になる。それは知っておるな」
「・・・」
「この沸騰するのを100度。氷になるのを0度と言うそうじゃ」
「そう言うことにしておこうということでは?0と100で区切りがいいですもんね」
「そこらは知らん」
「その0度とやらが絶対零度だと?」
「いや・・・氷になる温度を0度で沸騰が100度とした時にー273度だそうだ」
「ふーん・・・思ったより低くないですね」
「そうじゃな」
「つまりこれ以上は温度は下がらない?」
「そうなる。物質からエネルギーがなくなった状態じゃな」
「物が持つ熱がエネルギーとすれば熱がまったくない状態はありうるということですね」
「ほう・・・この短期間でよく理解しましたな」
「精神体の私が凍ったということは・・・熱はエネルギーであるということ。凍らされたことはなかったけどそう考えると理解できる」
「そうか・・・わしは理解はしておるが納得できんな・・・」
「あんたがそれを言うか?」
「まあそうじゃな。だが問題はそこじゃない」
「ほ?」
「正確に温度とやらを測ることが出来るということじゃ」
「で?」
「なんと。これがどれだけすごいことか分からんのか?」
「どうでもいいでしょう。でここが絶対零度と言うのはどういうことです?測ったとでも?」
「まあそれはここがどこかと言うことに関係する」
「話が回りくどいですよ」
「じじいは話が長いんじゃ。がまあいいじゃろう。教えてやろう。ここは地獄の最下層。凍結地獄じゃ」
・・・
「とうとうボケた?」
「確証が有って言っておる」
「聞いてあげるけど」
「まず1つ。先ほどおぬしは凍った。であればその分この艦橋は温かくなるはずだな?」
「そうなるわね」
「だがそうはならん」
「ありえなくない?」
「見せてやろう」
「は?」
「地獄円舞劫火」
魔法発動<地獄円舞劫火>
空中に魔法陣が現れ艦橋に張り付き炎を上げた。
だがすぐにその炎を小さくなり消えた。
「何をするのです?クルーソー様の船ですよ」
「大丈夫じゃ。よく見てみよ」
「?」
「傷は無いようね」
「温度が全く上がっていないじゃろ?」
「そんなもの分からないわよ」
「夜に物を見るときおぬしはどうやってる?」
「暗視を・・・ああ。獲物の体温を感じるようにすればいいのね」
あれは見ると言うよりもそう言う機能なので。
「確かに温度は上がってはいないわね。でもおかしくない?この船冷たく見えないんだけど」
「そこからか・・・この船自体は見た目普通の温度じゃな」
「絶対零度と言ったわよね?」
「常温に見えたから触ったのではないのか?」
何も考えてなかったとは言えない。
「触れば凍るが見た目には常温じゃ。となると考えられることは2つ」
「?」
「実は常温に見えるだけですべて絶対零度。だがこれは無いと思う」
「何故?」
「熱を与えれば普通温度が上がる。でもここでは温度は上がらない。つまり熱を遮る何かが有るのじゃ。それにここにある兵器たちは絶対零度には耐えられんじゃろ」
良く分からない理由ね。
「所詮冷たくなるだけでしょ?」
「あそこにある飛行機や車にはタイヤが付いておる」
「そうね」
「あれらは中に空気が入っておる。空気も絶対零度では固体になるんじゃ」
「タイヤが普通であるから絶対零度ではないと」
「そうじゃ。それに金属は低温で縮んでいく。これらの船の大きさでは結合面が持つかどうか」
「ふーん・・・それと?」
「この凍結地獄の空間を切り取ってここに置かれているだけ。なので中身の温度は常温」
「であれば触っても凍らないのでは?」
「クルーソー様のアイテムボックスから出た瞬間そこは凍結地獄で凍るというになる」
なにいってるんだか?まあどっちでもいい。
「でも・・・クルーソー様は解凍するとおっしゃってるわよ?」
「クルーソー様がやっておられるのは・・・まずこの通路を作っておられる」
「通路?」
「今儂らがいる通路は過去にクルーソー様が解凍作業を行ったものが有った場所すべてに作られておるんじゃ」
「クルーソー様はここには入らないわよね?」
「物を出すのにいるのじゃろ。で次にこの絶対零度の壁を突破する」
「ん・・・まあそれはいいとしましょう。それだとここが凍結地獄である理由には遠いわよ」
「それは見てもらうしかない」
「何を?」
「ここからだと右じゃな」
なだらかな平地が続くだけだ。遠くに山脈が視る気がしないでもない。
「ちょうどいいな」
「はい?」
「降りてきている」
「なにが?」
「山から下りてきているのが見えるじゃろ?」
スケサンは指差すが・・・なんのこっちゃ?
「もしかして見えんのか?あの山の中腹じゃ」
「どれだけあると思っているのです」
「しょうがないのう」
「拡大」
魔法発動<拡大>
「拡大」
魔法発動<拡大>
「拡大」
魔法発動<拡大>
スケサンが何やら魔法を唱えた。
「これで見えるじゃろ。ここに立ってみろ」
おおお!
空間が切り取られている。いや・・・遠くの風景が切り取られているのか。
見えた。
腕が十本以上で架をに多数の目。下半身は人型。
奇怪な・・・
「ティターンかと思えばヘカトンケイルですな」
「けったいなのがいるわね」
「は?」
「は?」
山を下りてきたヘカトンケイルは急に立ち止まった。
苦しみだした?
「窒息ですな」
「空気も個体になるのです。息なぞ出来ません」
膝をついたと思ったら動かなくなった。
「凍りましたな」
・・・周りにある岩のようなもはもしかしてこういう者たちの末路?
「で?」
「ティターンやヘカトンケイルは地獄の奥に追いやられたものたちですな」
「だからここが地獄だと」
「そうですな」
「大したことなかったわね」
「あれがもし地上に出てきたら文明が滅ぶレベルですぞ」
「そうは見えなかったけど?」
「先ほどのは身長57mですぞ」
「げ!」
「それにここまで来れるということは大したものですぞ。ここはともかくその手前も生物が存在できる環境ではない筈ですからな」
そうか・・・生物だから・・・
ん・・・・
「おかしくない?」
「なにがてすかな?」
「この兵器群は・・・最高管理人を名乗る最高神がクルーソー様に与えたものよね」
「そうですな」
「であれば何故ここ・・・地獄にある?」
「それについては左ですな」
今度は左と。なんかうまくできてるわね。
こちらも平らな地面が続いていているが若干窪地になっている。
山が有りその手前に人形?
いや・・・これは鎧だ。それも見たことがあるような。
「これはキリングドールですか?それにしては形状が?」
大きさが違うものもある?こんなに多量に?
「キリングドールではありませんがまあそれに関連したシリーズでしょうな」
「関連とは?」
「あれのベースになった兵士を強化する鎧ですな。大きさが違うのもいろいろありますなー」
「知っているの?」
「本で見たことは有りますな。測定するに小さいもので2.5m大きなもので9m程度ですな」
「数が凄い・・・千は超えている?」
「見えるだけで万は超えますな。だが重要なのはそこでなくてですな・・・」
どういうこと?
「その後ろですよ」
後ろ後ろ・・・
「山に見えるでしょう?」
はが!
「もしかして・・・横たわっているの?あれは?」
「全長は1キロこえるでしょう。魔導帝国が聖地の神龍に挑むために作り上げた魔導兵器」
「なにそれ?」
「この世界中に伝説として残っている魔導帝国と言う名前。聞いたことはあるでしょう?」
「ええ。あるけど」
「でも実際なんという名前だったかすら分からない。実際には無かったのではないか?作り話のなかのことだという者の多くいます」
・・・
「ありとあらゆる国や地方の資料や伝記を調べてもうっすらと出てくる。でも詳細は全く分からない」
「どこにあったとかいつ頃だったとかも?」
「人類・・・いやすべての知的生物には情報が途絶えている時代、暗黒時代があります。その前だったというしかないですな」
・・・
「で?」
・・・
「ここで止まるな!」
「はっはっはー」
うっきー。おとなしく聞いてやればこれか。
「生前禁書と呼ばれるものにも手を出して調べておりました。秘密結社を名乗る連中ともつなぎを取ったこともあります」
「で?どうだったの?」
「まあ・・・ただの偽書や詐欺師と言う連中ばかりでしたがの・・・」
「そうなの」
「でも・・・確信しておりました。魔導帝国は存在し神に挑んで滅んだのだと・・・」
・・・
「でもなぜここにその魔導帝国の遺産が保存されているの?辻褄が合わないわよ」
「簡単ですな。凍結地獄は・・・いや地獄は最高管理人、つまり最高神が作った。ここにいろいろと都合が悪くて表に出せない物を封印している。兵器も魔物も」
「聖地と対を成すと言われる地獄も実は最高神が管理していると?」
「辻褄はあいますな」
「なんで?」
「本当にこの世を管理しているのなら・・・この世のすべてを管理していないとおかしい。最高神であるならば管理できない土地や反逆者など存在しえない」
「でもそれはあなたの推理に過ぎないわよね?」
「そうですな。だが・・・この兵器群がここにあり・・・魔導帝国の遺産もあるのは事実です」
まあ・・・どうでもいいわね。確認しようがない。
ん?
「あれ・・・これっておかしくない?」
「なにがでしょうかのう?」
「同じ船が多量にあるわよ?」
「これが大和改。となりが大和(最終時)。その先が大和(新造時)。その先は武蔵改。武蔵(レイテ沖海戦)。信濃(戦艦)。超大和型戦艦」
「クルーソー様のリストと合わないわよ?」
「どうやらクルーソー様の分類だとこれらは同じものになっているようですな」
「リストには数が無いけど実際には複数あると」
「そうですな・・・もしこれらをすべて世に出すことが出来たなら・・・」
「出来たら?」
「世界征服も夢ではあるまい・・・いや・・・滅ぼすことも・・・燃やし尽くすことも・・」
「なるほど・・・」
それならどうにかしないと・・・




