13-12.ハンググライダーでいいんじゃね?
思わず右に旋回してしまった。
こっちだと峰を避けて谷を飛ばないといけない。
川の上であれば山も谷も木もない。水は低きに流れるからな。
て言うか操縦桿を引きっぱなしだが機体は少しずつしか上昇しない。
これはいかん。このままではいつか森に突っ込む。
高度を徐々に上げながら谷に沿って旋回を繰り返す。
おおお?
なんかいい感じの谷を見つけた。開けた谷が直線で続いている。
ここを飛んで高度を稼ぐ。
ほ?
なんでこんなに直線の谷がある?不自然だな?
・・・
これって今日作った街道だ。
ということは後100km以上この状態のはず。これで激突の危険性がかなり下がった。
ここを直線で飛んでいけばさすがにどうにかなるでしょう。
冷静に周りを見渡す。月は出ていないが景色はなんとなく見える。今更だがすさまじいなこの森。
太さが5mオーバーで高さが100m近い木がわらわらと立っている。
というか速度は相当出ている気がするな。間違いなく自力で走ったりゴーレム馬で爆走よりかは早い。
どの位速度が出てるのか?だいたいなら分かりそうだ。地図情報を出して距離を表示。
1分で5km位。ということは時速300km。
プロペラ機の零戦とかが500kmの前半から後半。降下時で600kmから700km位のはず。
音速が1200km位だからマッハ0.25。
ジャンボジェットがマッハ0.85のはずだから相当遅い。
・・・あれ?
十数分飛んだが高度はそこまで上がらない。
だが・・・確か街道はもうそろそろ終わりやん?
私が下処理した街道は200km位は有ったはずなんだがな?
もし時速300kmならそんなものか。
谷に沿って左に旋回。
ちょっとヤバイか・・・いや。ぎりぎり超えることが出来た。
越えた先の左手に川が見える。まっすぐ行けば川を上ってしまう。だがここは左に旋回して行きたい。
無理矢理左に機体を傾けていく。ある角度を越えた瞬間高度が急に下がった。
ヤバイと思ったがエレベーターは限界まで引いている。
思わずラダーを右に切ると機首が右上に向く。
飛行機の挙動はこれで合ってるんだっけ?
というか機首が森側の右に向くのはまずい。ラダーを元に戻す。
機体を斜めに横滑りしながら川の対岸の木をぎりぎり避けながら川面に降下していく。
川の上に来た時にエルロンを元に戻す。
本当に川面にぎりぎりだ。
助かった。森に突っ込むのたいがいだがこの速度で水面に突っ込んでも機体は持たないだろう。
は!
もしかしたらフロート付けとけば良かったんじゃね?
であれば水面を滑走路に使える。
目的に川か湖があれば・・・波が穏やかな海であれば滑走路として使える。
・・・今回は無理か。
竜人族の街の回りのそう言う所があるとは限らんというか確認しないといけない。
ということはフロートを作って取り付けできるようにすればいいってことだな。
おう!
急に高度が上がった。違った。川が小さな滝になっていた。その分川面からの距離は広がった。
後は南下しながら少しずつ高度を稼ぐのみ。
というかエルロンとラダーは想像以上に効いている。エレベーターだけが効きが悪い気がする。
これはこんなものなのか・・・そんな訳ない。
飛行機って離陸時にとんでもない角度で上昇していくはず。
もしかしてなんか作りがおかしいのか?それともエレベーターの面積が普通に足らないのか?
一度エレベーターのダウンを打って試してみるか。
操縦桿をど真ん中に戻す。そのまま水平に飛んでいるようだ。
ということは操縦桿を全開に引いても機体の機首はあまり持ちあがらないということだな。
少しだけ操縦桿を押して!
うひょー
一気に機首が下がる。
操縦桿全開で引く。だが間に合わん。
「マジックハンド!」
全力でマジックハンドを出し地面を叩く。が下は川だ。マジックハンドは水面を叩く。
あれ?
ダメもとでマジックハンドで水面叩いたが何故か機体が水平になった。
もしかして上手いことマジックハンドが水面を切る様に叩いたから機体が浮き上がったのか?
何か知らんが助かった。このまま少しずつ高度を稼いでいく。
そろそろ領地の北側だ。
このまま着陸・・・じゃねえな。着陸も風上に向かって行うのやった。
だが180度旋回するには高度が足らん。
いったん領地を通過して南下して高度を稼いでから旋回すれば・・・
それやと迷宮都市の上を低空で降下することになる。
夜中だから見つからねえからいいか・・・
いや。間違いなくばれてかちこまれる。実害はないのでそれはそれでいいが・・・いやいやいや。
いまイケメンエルフの機嫌を損ねるのはまずい。竜人族の祠とやらに紹介してもらうのだから今は駄目だ。
ということでまずは緩く左旋回。その後に緩く右旋回。
よし!良い感じに領地の北側に作った街道の上を飛んでいる。
後は着陸するだけ。と言いたいが
着陸ってどうするんやったっけ?
失速限界近くまで速度を落とせばいい・・・ん?
速度を落とす・・・・
お!
出力を落とす。つまり魔道具に流し込む魔力をカットすればいい。
と言うことで魔道具に行く魔力をカット。
今ドーンと言いました。
機体がな。
確かに高度は低かった。それは速度にしてはということだ。
この結構な速度で高度は10m位だったがそのままストーンと地面に激突した。
そのまま機体は地面に打ち付けられて宙に浮く。
だがそのまま地面に打ち付けられた。
とんでもない速度のまま街道を滑っていく。
だが・・・上手いこと地面を滑って行く。
うんん・・・なんかうまいこと街道を南下してるじゃん。
まあ街道の上をバヨンバヨンとバウンドしてるけど。
これって実機はどう止まるんだ?このためのエアブレーキってことだな。
それにタイヤにもブレーキを付けろと。
バウンドは収まったがすごい勢いで街道を南下していく。
上手いことラダーを使って街道から外れないように操縦する。
だが・・・もうちょっと速度が落ちたらラダー効かないよね?
そのためにオリジナルには前脚が付いてるってことだ。前脚のタイヤを左右に振って行き先を変えるのか。
あ!やべ。
このままでは領地の北の堀に落ちるがな。
もうラダーはあまり効かなくなってる。
!ドア開けて下りて自力でブレーキかければいいじゃない!
ドアを開けてそこから飛び出て靴の裏でブレーキをかけながら背中で機体を押す。
ここで気を付けるのは機体の下敷きにならないこと。
巻き込まれたり撥ねられたりしないようにいないといかん。毎回踏まれるわけにはいかんのや。
よし・・・なんだかんだでうまいこと止まった。
さて・・・まずは操縦桿のチェックやな。
「本当に飛ぶことが出来るのですな。感動しましたぞ」
俺の後ろに立つなと何度言ったら・・・腰が抜けそうだ。
ちょうどいい。すけさんに手伝ってもらおう。
「思ったより速度が遅い。それに操縦性に問題がある」
「そうなのですか?そうは見えませんでいたが?」
「速度は今の3倍は欲しいかな・・・スケサン操縦席に乗ってくれ」
操縦桿を根元から外すまでもなくスケサンが操縦席に乗り込んだ。
まあそうですね。何処にでも現れるからね。
「操縦桿をど真ん中に固定してくれ」
スケサンに操縦桿とラダーの仕組みを教えてど真ん中に固定させる。
そうやって各舵を見てみる。
エルロンとラダーは心なしか下がっているような気がする。これが上昇しない原因かも。舵が下向きってことは揚力が増すが尾翼の揚力が増せば機首は下がるからな。
「操縦桿を右に倒して」
右エルロンが上向きで左エルロンが下向きに動く。何となく上への動きの角度が小さい。
「操縦桿を左に倒して」
さっきとは逆に動くがやはり上向きの角度が小さい。
「いったん中立に戻して前に倒して」
これでエルロンは元に戻る。やはり両方とも下に少し下がってる。まあ揚力的にはこれでもいいのだ
が・・・むむむ。
エレベーターは下向きに動く。
これで飛行中ならエレベーターが揚力を増すのでケツが上がり機首が下がる。
「操縦桿を後ろに引いて」
エレベーターは上向きになる。
これで飛行中はケツが下がるので機首が上がる。やはり角度が下向きに対して小さい。
そういう風に作ったわけではないのだが。
凍結されている実物を見てみる。
あれ・・・実物って水平尾翼が全部動くタイプじゃね?
ミニイーグルはラダーと同じく翼を取り付けた後に後ろの一部だけを駆動するようにしていた。
と言うことは今少し下に垂れているのも原因だがそもそも面積が足りんのか?
とはいえエレベータ全体を動くようにするのはあまりにも大改造になり難易度が高い。
機体に取りついてる翼部分を小さくして駆動翼部分を大きく・・・
それだと結局全部直しになるから駆動翼だけを大きくしよう。
と言うことで修正開始。
あれ・・・このエレベーターの駆動翼触ったら動くぞ?
「スケサン。操縦桿を中央に固定」
やはりそうだな。エレベーターとエルロンの駆動翼は手で押すと動く。
「ラダーも固定してくれ」
ラダーの方はほとんど動かない。作りは同じのはずなんだが。
今度は逆でやって見よう。
スケサンをエレベーターの所に移動させる。
機体の出入り口側からから操縦桿を動かす。これは普通に動く。
すけさんにエレベータを持ってもらった状態で操縦桿を前後に動かす。
ほええええ・・・・
先程操縦桿の根元を取り外しできるようにしたところが動いてますやん。
なるほど・・・
飛んでる最中は風圧で舵は抑え付けられるのでこっちが動くと・・・
さてどうしようか。
先程取り外しできるようにした操縦桿の根元部分を再度固定する。
操縦はワイヤーというかピアノ線で行っているがこのピアノ線を太いものに変えていく。
またこのワイヤを通す箇所をすべてパイプ状にしていく。
定期的に交換していけばたぶんこのピアノ線は切れないと思う・・・
が駆動翼側にバネをいれておいて何かあったらニュートラルに戻る様にしておこう。
むむむ・・・なんか不安。
ということでピアノ線を二重に配線しよう。これでどっちかが切れても操縦は出来る。
それだと操縦桿が邪魔で操縦席に入れない問題が再燃。
操縦桿を取り外し式にしよう。棒状の操縦桿を途中で切断し中空に加工する。
そこに嵌るような棒を作って差し込んんで切断した操縦桿を接続。
これでOKだな。
スケサンに操縦席に座ってもらい操縦桿を操作してもらう。
きちんとエレベータ―も上下に動くようだ。エルロンも垂れているようなことはない。
む・・・
これはもしかしたらまずいのかもしれん。
エルロンが少し下がっていることでフラップのような効果があって飛ぶことが出来ていたのかもしれん。
逆にそれでそのせいで速度が遅かったのかもしれん。
ここは微調整できるようにしよう。
エルロンは操縦桿を左右に振った分だけの動作をピアノ線に伝えていてそれを途中で2つに分けて左右に分けて上下を入れ替えている。
ということでここに繋がっているピアノ線をずらすと・・・エルロンの左右は逆に動く。
微調整できんがな。
途中で分岐するのを止めて最初から2系統を根元に繋げれば調整自体は出来る。
だが飛んでる最中に簡単に微調と言うのはムズい。
だが操縦桿の根元で調整できるようにはしておこう。
後は途中でワイヤーを分岐しているのを止めて最初から左右に分けて繋ぐ。
二重配線なので操縦桿の根元に4本のワイヤーを繋ぐことになる。
これで左右の駆動が別々に繋がっていることになるのでここのワイヤーをずらせば左右を別個に調整できる。今回はこれでいいだろう。
もう一度飛んで見るとしよう。
「少しお聞きしていいですかな?」
少しだぞ。
「これで竜人族の元に向かうのでしたな」
「せやけど」
「・・・この物体についてどう説明されるつもりで?」
「へ?・・・というかF15とF22を混ぜたものってっ感じ?」
「そう言う訳でなく・・・この世界にはこういう形の乗り物は存在しませんぞ」
「お!空飛ぶ乗り物はないということね」
「いえ・・・飛行艇と言うものは有ったと思いますが一般的ではないですな」
「飛行艇?」
「浮遊のと風流の魔法で飛ぶ船が存在するはずです。ただ私も実際には見たことは有りません」
「うむむむ・・・では・・・ハヤブサを真似して作りました。てきな?」
「ハヤブサ?」
「世界最速の鳥のはずなんだよね」
「なるほど・・・ですが・・・」
「ですが?」
「どう見ても鳥には見えませんな」
「・・・・は!そうかも」
うむむ・・・
重機は向こうからやってきたのですんなり作ることが出来た。
そう言う意味ではこいつはもっと鳥の様な形でないと不味いのか。
「となると・・・全体的に簡略化しましたで誤魔化すしかないが・・・」
「この縦の翼が不自然でしょうな」
ぐぐぐぐ・・・
いまさら言うかね。
「であれば垂直尾翼を外側に横に角度をつけて倒す。角度は45度・・・が限界やな」
垂直尾翼を45度倒す。
ほよほよーほよほよー
となるとバランスがめっちゃ悪い。
水平尾翼を下に倒すか。こっちも45度・・・と言いたいがそれだと離着陸時に地面を叩きそうだ。
と言うことであれば30度くらいにしておこう。
これはまずいかな。
角度が付いているということはその角度分エレベーターもラダーも効きが悪くなるってことになる。
お!
互いに補正し合えばいいじゃない。
エレベータが上下するのに合わせてラダーも上下すればいい。
つまりエレベータが上の時はラダーは互いに内側に倒す。
エレバーターが下の時はラダーは互いに外に倒す。
で・・・
ラダーを右に倒した時にはエレベータの左をダウンで右をアップ。
これでラダーとエレベータは複合して元の動きになるはず。
後はワイヤーの配線を修正するのみ。
こいつは難しいな。どう配線すればいいんだ?
いったんエレベーターとラダーの配線を一か所にまとめてる。
そこで上下左右の動作にいったんまとめる。
そこからその上下左右の動きを各舵に割り振る。
ラダーは45度なので上下と左右を同じ割合で割り振る。
エレベータは下向きに30度なので上下の動きに足して左右は半分でいい。
これでいい。
思うにこいつらにエルロンの動きを混ぜ込めばエルロン要らなくね?
であればエルロンをフラップとして使える・・・
まてまてまて。これ以上事態を複雑にするんじゃない。
このまま再度飛行テストと行こう。
今回はすこし工夫しよう。
街道に土壁の魔法を掛けてなるべく平らになる様にしていう。これで滑走路としてつかるようになるはず。
よし・・・これでいい。
「私も同乗して良いですかな?」
そんなスペースは無い。
「こうすればいいですぞ」
・・・胸の上に骸骨が!
もう何も言うまい。
操縦席に乗り込み魔道具に魔力を流し込む。
「クルーソー様。魔石を使うというのはどうでしょうか?」
「なぜに?」
「どの程度魔石を使うのか試しておけば後々役立つかと」
魔石が勿体無いじゃん。よく考えれば魔石って魔力を流し込めば復活したっけ。
であれば・・・魔石をセットする金具を取り付ける。
そこにデーモンの魔石を突っ込む。
機体が少し浮きあがり加速していく。
地面を平らにしているのでスムーズに機体は走って行くが浮き上がる所まで行かない。
時速は100kmは超えてるはずなんだが。
だんだん森がせまって来ている。そろそろ離陸しないと森を越えられない。
魔石だけでは離陸できないことが判明と言うことでいいだろう。
「自分の魔力でブーストする」
魔石の上から魔力を送り込む。
徐々に加速していき機体が浮き出した。
先ほどと同じように操縦桿を引くとすうっと機首が浮き上がった。
このまま機首を上げれば・・・お?
機首を30度以上にすると速度が低下するようだ。このままだと失速ってことだな。
30度以上にならないように調整する。本来なら45度とか60度で上昇できるはず。
違った。たしか推力が質量を越えてるんで垂直に飛べるだったっけ。
まあどっちにしても今回の機体は推力がたらない。
ただ先ほどと違い谷を這わなくても森を越えていくことは出来る。
高度が1000mほどになったので機体を水平にする。
そして魔力の供給を止めて魔石だけにしてみる。
エレベータ―を調整し水平を保つようにする。
速度が徐々に低下するがどうやら魔石だけでも高度を保てるようだ。
ということは離陸さえできれば飛行することは出来るということか。
あれ?それはおかしいのか?
飛べるだけの推力があれば離陸できそうな気がする。
うむむ・・・
は!
朝日が上がって来てるんじゃね?
ヤバイ。
早く戻って朝食を作らないといけない。




