12-3.ちょろい
もう意味が分からないよ。
車輛が人踏んだら運転手の注意義務違反だろ?
ゴーレムが人に危害加えたらいかんだろ?
ロボット3原則と言うのが有ってだな・・・
3つ・・・なんやったっけ?
「どうした?クルーソーさん?」
「ゴーレムが起因の損害に対する法的瑕疵ってどうなってるのかなーって思って」
「それはあれだな。馬や騎獣と同じだ」
「ほう」
「馬や騎獣にちょっかいを出して噛まれたり蹴られたりしたら・・・」
「自業自得」
「もしもちょっかいを出した後に馬が暴れて損害が出たら・・・」
「故意ならそいつの責任」
「まあそんなところだな」
むむむ・・・なんとなく分かったが納得いかん・・・
は!
逆に考えるんだ!この状況はゴーレム使いには好都合。つまり私に得。
でも納得いかん。
「おまえら!何言っとるんじゃ!重機と橋が落ち取るぞ!どうにかせんか!」
確かに橋が落ちて重機も落ちかかっている。
「おかしな話ですね・・・」
「なにが?」
「ここの橋はすべて同じ作りになってるですよね?あの重機ってどこから入って来たんでしょ?ここで橋落ちるのなら入る時に落ちますよね?」
「東の正門だろうが・・・あそこは橋の幅が広くないか?」
おおおお・・・確かに他の橋を二つ分繋げてたなあそこ。
「ド真ん中を移動したので重量が左右に分散したと。となると荷重限界は重機の重量以下だが半分以上」
「韜晦しとる場合ではないわ!」
脛にケリを入れられた。解せぬ・・・原因を明らかにしないと対策出来ないじゃないか。
北門の橋の所に移動する。
確かに橋が壊れていますな。重機は後部が橋が崩落した部分にはまり込んでいる。
後ろ側の脚は踏ん張っているだが橋が落ちているため意味が無い。
重機の前方の脚部分は橋が斜めになっていてそこにかろうじてしがみ付いている状態だ。
アイテムボックスに石のストックは・・・合った。地下道を作った時の残りか。
これで石壁をスポットで作って足場を作って行けばいい。
「クルーソーさんいっておくがアイテムボックスは使うなよ」
イケメンエルフが耳もとで小声で言った。
ぐぐぐ・・・災害復旧時はいいんじゃないの?
堀にいったん飛び込む。まずは重機のお尻ががはまり込んでいる真下に移動。
ここにアイテムボックスから石を出した瞬間石壁魔法で円形で石壁を作成。
その円形の石壁の上にアイテムボックスから石を出して石壁を追加。
足元から円形の石柱が伸びてくる。これでアイテムボックスの使用はばれない。
おが!
重機に脳天ぶつけましたがな。
いつもは床から壁を作っていたからこうなると。
私がうまいこと重機を避けて石壁を作成して重機まで石壁を作成。これでこれ以上は落ちないはず。
後は重機後ろ側の脚の真下に円柱を2本作成。
これで抜き出せるはず。
「これで後ろ脚で立てるはずだ。起こしてくれ」
ゴスのロリ婆ことルチアに向かって叫ぶ。
おや?
反応が無い。
重機の後ろ脚がゆっくりと動き重機が水平に・・・なんか前脚の床がミシミシと言ってる。
「ストップだ!動くなよ」
こういう場合はどうするのが正しい?
またもや堀の床に降り橋の下に潜る。
ちまちまやってるのが間違いなんだ。
崩れかかってる橋の下全域を石壁で埋めればいいのだよ。
ここなら死角になって見えまい・・・
やっぱりアイテムボックスから出しながら石壁で作業しよう。
石を取り出しながら石壁を作成し橋の下を石で埋めていく。
ぐ・・・
自分を生き埋めにするところだった。はっはっはーそうはいかん。
ばかめ。そこまで間抜けじゃないぞ。
これで重機は移動できるはず・・・
とっくの昔に移動していた。それも農地側に移動しやがった。
むむむ・・・
だがその前に橋を直しておこう。
アイテムボックは使用禁止なので一旦橋の上に轢いている木材は外す。
全木材をどかした後に木材の厚さ分下げた寸法で石の塊を石壁で作成。
ここに木材を並べる。これで上からの見た目は同じだ。
堀にいったん降りて逆Uの字に横から穴を開ける。これでOKじゃ・・・ねえ!
板を外した時に渡るのが難しいようにしているんだった。
板を外すと平均台にのようになってそこを渡ろうとすると城壁から射殺されるようにって感じで。
と言うことで石壁を刳り抜いていく。強度が倍になるように。
強度が倍て?厚みが倍なら強度も倍なのか?とりあえずそうしておくか。
「とりあえずクルーソーや。重機を整備したいんでな屋根付きの車庫を作ってくれ」
ジークさん?なんて言いました?まだここに停めていいとは言ってねえずら?
「ついでだ。クルーソーさん。ルチアを君の所に泊めてやってくれ」
イケメンエルフ?何言ってる?
「どうした?ハトが豆鉄砲喰らったような顔して?」
「なにがなんだか?うち宿じゃねえし」
「前に女性ならいいと言っていただろ。ここに重機を留めたら当然君の所になる。それともルチアに野宿しろと?」
そもそもの前提が全く分からんが・・・私がおかしいのか?
「城壁の工事中なら重機ゴーレムはうちに泊めてもいいし彼女の宿もうちでいいが今回はそうもいかん」
ええと・・・迷宮都市の公共事業に従事していないので領主の舘に泊れないと。
「バンパイヤ族の言っている街道の整備を彼女には振る予定だ。だがトロール族とすり合わせが必要だし重機の整備も必要らしい。それまで君預かりでお願いする」
話がどんどん勝手に進んでますがな。というかトロール族?
「トロール族とのすり合わせって何?」
「石と言えばトロール族ってことでユリアが話を振ったらしい。そしたらどうせ輸送するのだから街道もって話になってな」
「街道もトロール族にやってもらえる?」
「それがな。今霊山の麓が揉めてるだろ?」
「霊山の麓?」
「フィオレンザの件だ」
霊山ってあの山か。
「現状あそこら辺の城壁都市は情勢が不安定だ。現状トロール族と竜人族はそこを通ってここに来ることになるのはわかるよな」
ここから東側にずーと移動するとあそこらにたどり着く。
で霊山とやらの周囲を回るように二本に街道が分かれる。
その北側を行くとトロール族。南側で竜人族。
「バンパイヤ族とここの街道でなく、それにトロール族を混ぜて街道を作る計画に変更中だ。で問題が持ち上がってな」
「選定した道筋を変更しろとトロール族がごねてるとか?」
「いや。そこはどうでいい。三叉路になる地点に休憩所をかねた砦を作ろうって話が持ちあがってな・・・」
「どこがケツ持つかなすりあいしてるとか?」
「逆だ。何処の持ち物なるかで揉めてる」
ほほーそうなるのか。面倒なだけだと思うがな。
「なるほどですねー」
まあこれで街道整備から逃れられるからOKだな。
「そう言うことで頼んだぞ」
「何を?」
「ルチアと重機だ」
うぐぐ・・・だからなんでそうなるんだよ。
「貸してただろ?」
うぐぐぐ・・・そう来たか。
「まあ・・・それ位ならいいでしょう」
「じゃあな」
そう言うとイケメンエルフは去って行った。
は!車庫を作れと言ってたな。
となるとこの重機を観察し放題。これを見てパクって作りました。で重機もどきを作ろう。
と言うことで車庫を作ろう。
ついでなので農地移動用の馬車の車庫も作ろう。
ジークとアルゴランの会話
「どうしてルチアをクルーソーさんに押し付けた?」
「言った通りだ。うちの仕事を受けていない以上便宜を図る訳にはいかん。それともジーク?君が面倒をみるか?」
「それそうじゃが・・・」
「まあというのは表向きだ。警護を考えればこれがベストだ」
「警護だと?」
「君らはどう思ってるのか知らんがあの重機はいろいろと注目を浴びている。クルーソーさんの農地には限られた人間しか入れんからこの都市にいるよりいい」
「そうなのか?すまんな。気付いとらんかった」
「そりゃそうだ。そうでなければ城壁工事に従事したからと言ってうちに泊めたりはせん。というか君が昔よしなにと言ったんだぞ?忘れたのか」
「そうだったか?」
「君が恩人の孫だと言った」
「そうだったな」
「実は君の隠し子なのかと疑っている」
「それは無い・・・昔ドワーフ王国に厄介になっていたことがあってな。その時の恩人の娘の娘だ」
「ほう?なんでここらにいるんだ?」
「その娘が駆け落ちしてな。もともと有力な貴族の娘だったからドワーフ王国には戻れん」
「なるほどな・・・というか娘なんだろ?駆け落ち?」
「ここからは誰にも言えん話だが・・・」
「ああいいだろう。誰にも洩らさない」
「その一族は特殊な魔法が使えるんだ。ゴーレム化の魔法だ。ルチアの母親はその才能が一族でも抜き出ていた。当然跡を継ぐと思われとった」
「ゴーレム化?どう特殊なんだ?クリエイトゴーレムと何が違う?」
「クルーソーとかが使うのはクリエイトゴーレム。土や石をゴーレムにする。これが初級の魔法になるはずじゃ。詳しくは知らん。ルチアのこれを使えるは知っておるな」
「ああ」
「ゴーレム化は機械化されたものをゴーレムにする」
「差が分からんが?」
「土をゴーレムにするとゴーレムの形状を保つのにかなりの魔力が使われる。人のように動くゴーレムの筐体を作成してゴーレム化するとすべての魔力が動作のみに使われる」
「形状を保たなくていいのでその分得だということか。だがそれだけで?」
「先ほどの重機が有っただろう?あれもゴーレム化したものだ。まあ中心部分だけだがな」
「なるほど・・・人型とか言う制限なくなんでもゴーレムに出来るのか。それも一部分だけでもいけると」
「それだけでなくてな・・・動力もゴーレム化できる」
「どういうことだ?」
「あの重機は全機構が油圧で動作する。油圧ポンプがあってそれを内燃機関のエンジンで回す。だがあのゴーレムには油圧ポンプしかない」
「内燃機関とは?というか油圧ポンプしかないとは?意味が分からんぞ?それだと動かんだろ?」
「内燃機関は…蒸気機関は分かるか?」
「ああ」
「あの蒸気を外部からじゃなくエンジンの内側で作る」
「そうか」
「分かるのか?」
「なんとなくな」
「そうか。でじゃ・・・まあ普通はエンジンをゴーレム化する。すると魔石で動くゴーレムになる。じゃがなんか間違ったらしく油圧ポンプをゴーレム化したら動力無しでも回るってことに気が付いたんじゃ」
「ということはあの重機のそうだが・・・ドロップした機械は最初からゴーレムだったわけではない?」
「そうじゃな。さっきも言ったとおりこいつもダンジョンから出たんだと思うがそこは分からん」
「分からない?なら何故ダンジョンから出たとなる?」
「持ってるものは少ないが物の鑑定と言うのがある。それに製作者が出なけれなダンジョン産なんじゃ」
「製作者か・・・そう言えば王都にある鑑定ギルドの結果には製作者が出るって話だな」
「そうじゃ。それじゃ」
「一族で一番の能力を持っていながら駆け落ち。そりゃ戻れんな。そっちは分かった。でジーク。それだとなんで君はここにいる?」
「どういうことだ?」
「君は周辺のドワーフを集めて鍛冶を始めいろいろ仕込んでいる。目的はドワーフの文化と伝統を残すためだろう?それならドワーフ王国でやればいいだろう」
「ドワーフ王国に行く前は儂もそう思っておった。だがあそこはな・・・なれの果てなんじゃ」
「?」
「ドワーフ王国は技術力で世界一だった。だけなんじゃ。今はダンジョンから出るドロップ品で食うだけのただのダンジョンがある都市じゃ」
「今でもドワーフ王国の武器防具は超一流だが?」
「その超一流はダンジョンから出ておる。それを元にいろいろ作っておるから製品の質はいいように見えるが鍛冶の技術はそこまでない。鉱石の質が良いので何とか持っているだけじゃ」
「自分の方が上だと?」
「そうは言わんが・・・ダンジョンから出るドロップ品を再現しようとする気合いすら失くしておるんじゃあそこは」
「なまじドロップするからということか」
「そうともいえる。昔は首都奪還でダンジョンに挑んでおった。今はドロップを漁るだけに終始しておる。そのうえ貴族同士で技術や情報を隠匿し合って足を引っ張り合っている。ダンジョンが拡大するのを押さえることすら出来んじゃあそこは」
「ダンジョンの拡大?」
「ドワーフ王国はドワーフが掘った都市がダンジョン化した。深くなるのではなく周辺に広がって行く」
「それは・・・スタンピートよりも厄介だな」
「土地を奪われておるわけだな。いま王国にいる連中の一部ははそれでもかまわないと思っておるんじゃ。ドロップするものが増えるからな」
「そう言う意味ではルチアの一族は危険だな」
「そうだ。鍛冶も機械の作成も衰えておる。だがゴーレム化はあくまで魔法。それを先祖代々受け継いでおったわけじゃからな」




