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11-5.とりあえず穴掘ればいい

「世界征服ー良い響きだね!」


そうでもないよ。まーちゃん。ちょっと落ち着こうよ。


「となると戦略は・・・世界征服に至る道を探す。つまり・・・その道を抉じ開けるために我々の持つ能力をすべてどう使うか考えろと言うことですね」


すけさんや・・・なんか戦略を理解してるようなしてないような。

というか抉じ開けるな。絶対だぞ。


「先ほどまで何を言ってるのかと思っていた私が恥ずかしいです。世界征服のためには我々には戦略戦術が必須と言うことですね!」


もんさん。覚えて欲しいとは思う。だが少し待て。


「ハッハッハー小賢しいのは無視でパワーでなぎ倒せばいいのですじゃ!」

「いやいや!そこは嵌めに嵌め倒してからぷちっと」

「効率よく殲滅するために頭を使えと言うことですね。まーちゃん良いこと言いますね」

「まあ・・・どうでもいいからぶっ飛ばしまずぞ」


駄目だこいつら。めっちゃ盛り上がってる。どうするー


おおお?なんかいきなり静かになったぞこいつら。


んん・・・


私とは目を合わさない。が・・・こちらをちらちら見ているような。

わたしの頭の上を見ているような・・・


ちら。


なんかあるな?


ボボヴォガ!


手を出した瞬間眉間に激痛が!

ちーちゃん!

ぴーちゃんやめてください。マジで死にます。


うぐぐぐぐ・・・・


誰も何も言わず沈黙が続く。


「申し訳ありません。調子に乗りました」


すけさんからの突然の謝罪!

何がどうしてどうなった?


まあいい。連中の世界征服と言う野望を根絶しておこう。


「いや・・・いい。だが聞きたいことがある」

「・・・」

「世界征服は目標か?」

「は?」

「どうしても世界征服したい!と言うのであれば世界征服は目標になりえる。だが・・・わたしは世界を征服をしたいとは思っていない」

「申し訳ありません」


あれ・・・思った以上に委縮しているな。これはまずい。


「そうでなくてだな・・・なにかの目標を達成するのに世界征服が必要ならそれは絶対にやらないといけない。ということだ。今のところそのような事案はないだろ?」


あれ・・・?返事が無い。


「世界征服は過程であって目標たりえないということですな」

「そういうことだ」


また沈黙が続く。


「であればクルーソー国の・・・領地はどうでもいいでしたね。我らの目標をお示し下され」


は!

・・・すべて氷解した。

今まで使い魔たちとほとんど向き合ってこなかった。

ずーと指示も出さず完全放置だった。

その結果がこれってことだ。

つまり私の目標が何か明確にしろってことだな。


「私は元居た世界・・・」


元居た世界に戻る。それが目標。そう思っていた。だが元の世界戻ってどうするんだ?


「私は元居た世界を観測する。もしくは移動するのが最終目的。かな?だがこれは最終的に達成できればいいという感じだ。そういう意味においては目標は生き残ることだな」

「生き残ること?」

「つまりだ・・・今の所領地的な野心はない。だが必要な場所がこの世にあるのなら取りに行く。絶対だ。だが・・・それ以外では不要な争いは必要ない」


あれ?なんか全く響いて無い。


「場所でなくても・・・必要なものがあれば取りに行く。それを妨害するすべてのものから身を守る能力が必要と言うことだ」

「つまり・・・相手がアルゴランであっても?」

「そうだ。例え誰であっても。アルゴランであろうが最高管理人であろうが誰であろうがそいつから身を守るってことだ。最終的にはすべてをぶちのめすまで行けばいい。がまずは自衛だ」


あれ・・・またしーんと。

ついでなので戦略の説明に絡めていくか。


「先ほど世界規模の老舗に瞬殺されない店舗経営の話をしたよね?」

「はい」

「まずは店舗の維持を目標にする。次にはその都市での勝利に目標を切り替える。その老舗に並び立つ商店になる。その老舗を超える。その老舗を潰す。というふうに目標を切り替えてもいい」

「ということは・・・最初からその老舗を潰す気だったと?それでも最初は目標を小さく持てと?」


うむむ。確かにそう言う話になってしまうな。


「目標を替えてはいかんと言うことはない。現状の自分の身の程に会わない目標でも別にかまわない。だがその場合は目標を段階的にしないといけないということだ」

「ああ・・・例えるなら世界征服の前に地域の制圧が先と言うことでな」


そこから離れたまえよ君。


「その前に防御だな」

「そうでしたな。ということはこの拠点の防御と言うことですな」


まあ間違ってはいない。


「いまのところここの拠点に防御するだけの価値はない」

「なんですと?それでは防御は必要ないと?」

「そうではない。さっきも目標は生き残ることだ。そのためには防御施設としての拠点がいる。安心して寝る家がいるというレベルであってこの拠点が必須と言うことではない」

「?」

「大規模侵攻を受けた場合は拠点の放棄もあり得るということだ」

「え!」

「なにを言われます。我らが死守して見せます」

「そうですぞ」

「それは許可しない」

「ですが!」

「この拠点にそこまでの価値はないんだ。敵に被害を与えながら撤退を行うことになる」

「みすみす敵に拠点を明け渡すと?」

「最終的に敵は殲滅して拠点は取り返す」

「なるほどですな」

「別に敵が来たらすぐに逃げろと言うことではない。撃退できるなら撃退すればいい。無理そうなら段階的に農地や外塀や内塀は明け渡してもいい。どうしようもないなら撤退だ。あくまで最終手段と言うことだな」

「しかし・・・」


あれ?なんか納得してないな。ここは説教でなく懇切丁寧に説明しないとな。


「結局・・・領地の防御施設を使って優位に戦い敵の死体を量産する。不利になったらそこは放棄で一段下がる。そうやって段階を経て敵を全滅させればいい。そのとき放棄するのがこの拠点であってもそこにこだわってはならない」

「縦深防御ということですな」

「そういうことだね」


よし。どうやらどうにかなった。


「しかし・・・この拠点以外に下がりうる拠点は有りませんぞ?」


なってなかった。


「まあ・・・そうなるんだが・・・ここを攻められるとなると事前に動きがあるはずだ。それから準備でもいいとは思ってる」

「それでは不用心がすぎますぞ」

「そもそもだ・・・ここに敵が攻めて来るってどういう理由でって感じじゃん?ぶっちゃけ森しかないし。攻めて来るには理由がいる。そう簡単には起きないと思うんだよね」

「まずひとつ。迷宮都市が攻撃を受ける時は?」


そっちか・・・むむむ


「その時は適切に処理しますとか・・・」

「どういう風に?」


く!逃げられなかった。


「迷宮都市で撃退可能かこちらが手を貸せば撃退できそうならここぞばかりに恩を売る。出来なければ連中が戦っている間に逃げる準備をする。いや・・・違うな。どの場合でも逃げる準備は必要だな」

「次に・・・ダンジョンのスタンピートの発生時は?」

「処理としては同じになる。だが・・・スタンピートはダンジョン経営がうまく行っていない結果になる。起きる前に潰す。もしくは起きる前にここから去ることになる」

「迷宮都市を支配下に置く選択肢は?」

「おおお・・・それもあるか。アルゴランが健在ならその選択肢はない。というかアルゴラン健在でダンジョン経営がうまくいかないならうちらの手におえない」

「クルーソー様を狙った暗殺者が来た場合は?」

「雑魚なら返り討ち。私より強かったらゴーレムをぶつけて逃げるしかないね」

「その時は我々が命をかけまして!」

「相性の問題で君らで対処できる可能性はある。が・・・私より強い敵に勝てる?」

「1秒でも時間を稼げれば!」

「あまり意味のある行動とは思えないね。その一秒で勝てるのなら別だけど。ま・・・ゴーレムを多数配置してるので奇襲を受けることはない。はず」

「次に・・・我らの存在がばれた場合・・・」


は!


デーモンにアンデットに魔族!オンパレードやな。


「確かに・・・もんさんやまーちゃんは見つかっただけだと問題にはならないだろう。デーモン状態は駄目だけどな。でも鑑定されたら終わりか・・・すけさんは完全にあかん」


完全に忘れていた。彼らはいつもその恐怖と戦っていたんやな。


「人目に触れる可能性が時は前回渡した鎧を着てもらうようにしてもらしかないが・・・」

「鎧?」

「前渡したよね?」

「受け取ってないよ?」

「私は受け取りましたな」


そういうとすけさんの姿が変わった。ゴーレムと同じデザインの鎧を着ている。


「私の分ともんさんとまーちゃんの分も作ったはず・・・あった」


アイテムボックスの中に有った。と言うことは渡していなんだったか。


「もんさんは使えるはずよね・・・・まーちゃんはアイテムボックスは使える?」

「使えないよ」


むむーどうするか。魔法の鞄を取り出しまーちゃんの鎧を入れる。なんとか入った。


「ならばこれを渡しておく。アイテムボックスと瞬間装備変更のスキルが生えるように頑張ってみて」

「スキル?」

「出かけるたびに鎧を着る訳にはいかないでしょ?まあ重くていいならそれでもいいけど。魔法の鞄から出した瞬間鎧を着るということを繰り返せば瞬間装備変更のスキルが身に付くはず。すけさんがそうだったから。アイテムボックスもどうにかなる気がする」

「そうなの!がんばる」

「ばれるのを極力防ぐ。それと・・・攻められたときの対策が必要ってことだね」

「われらの正体がばれた場合は我らだけがどこかに身を隠すという手もありますぞ」


いわれてみればそうかも。


「私のアイテムボックスに逃げ込めば追尾できない気もするが・・・それでもいったんは逃げないといけないね」

「われらがクルーソー様の使い魔とばれていなければ。ですな」


それごと全部ばれる可能性もあると・・・そう考えると危ない橋を渡ってた。


「となれば・・・この地下からトンネルを掘って行ってまずは農地の家と繋げるとしよう。どちらが攻められたとしても密かに逃げたり援軍送り込んだりできるようになる」


おっと。逃げる前提になってるがその時間を稼ぐためにも防御施設の拡充は必要だな。

そもそも防御力が高ければ撃退できる。


「今拠点の塀には掩体壕を作ってゴーレムを配備してるがそこをすべて地下道で繋ぐとしよう。外からは分からずに兵力の集中も分散も出来る。下手すると奇襲も可能かもしれない」

「すべて繋げるとなりますと・・・どこかが陥落するとすべてとなりますぞ」

「陣地を明け渡しながら後退しそこは敵の死体の山で埋める。というトラップを仕掛けていく」

「ただの通路ではないということですな」

「移動通路兼防御施設だな。ただ・・・敵が利用できないように工夫は要るね」

「先ほどの話に戻りますが・・・」


く・・・また世界征服に戻るのか・・・


「銃は・・・弾の補充で無理という話でしたな・・・であれば戦車とかいうのはどうですか?」


むう・・・銃に戻った。というか戦車ですか。


「戦車ね・・・」

「役に立ちませんか?」

「銃と同じで戦車も役に立たないということはない。ただ・・・使える状況はより減る」

「どうしてでしょうか?」

「先ほど言った銃と同じなんだよね。いろんな状況と戦術が相まって銃は出てきた。最初は銃を持った兵士が横一列で行進して銃を撃ち合った後に銃剣突撃をおこなった。だが銃の性能向上でそんなことをしたら被害が甚大になる。なので塹壕を掘って撃ち合うようになった。そこに銃の進化形の機関銃が出てきた。機関銃を配備した塹壕は甚大な被害を出しても突破できない。そこを突破するため開発された兵器が戦車になる」

「そのような状況はこちらではないので役に立たないと?」

「んん・・・簡単には破壊されない防御力とものによるけど馬を超える機動力。陣地や対人なら通用するであろう攻撃力・・・」


あれ・・・使えてしまうって流れになってるやん。


「使えるだろが銃と同じというかそれ以上に問題が出てくる。弾の補充に追加して燃料の確保が付いて回る」

「燃料・・・ああ。あの燃える液体ですな」

「そうそう。それ。まあそっちは蒸気機関で誤魔化す手もあるんだが・・・」

「蒸気機関。ドワーフ族の秘儀ですな」


おおお?あるんだ。となれば開発してもOKだな。


「同じかどうかは知らないけど蒸気の力を動力を得る。これなら木材でもいけるからね」

「木材?」

「熱源がいるじゃん?」

「魔道具でいけますぞ?」


・・・・!

たしかに!木なんかいらないじゃん!


「確かに。だが重大な欠点があるんだよね」

「?」

「銃は隠れて使っている。なんでかと言うと目立ちたくないからだ」

「ほう」

「よく分からない兵器を使っていると・・・危険人物と思われるかもしれないし、それ売れやとか寄越せやという輩に絡まれるかもしれない」

「そう言う連中は私たちが排除して見せましょう」

「まあもんさん・・・それでもいいのかもしれないが・・・」

「そうですな。貴族連中に目を付けられるといろいろとやっかいですな」


そうなるんだよな。


「まあそういうわけで銃は隠れて使用で戦車は解凍すらしていない。がどうにかしたいとは思っている」

「どうしてでしょうか?」

「単純に持ったいないじゃん。といってなにも考えずには出せないんだよね」

「銃と同じということですな」

「そういうこと。まずは工事用車両として世に出して様子を見ようかとも思ったが薮蛇になりそうだからね」

「工事用車両?」

「戦闘車両でない動力付きの工事用の車両を世に出して反応を見てみようと一瞬思った。ゴーレム馬車があるって話だったからいけるかと思ったけど危険だよね」

「妙なものがあるなと噂になりそうですな」

「たぶんコストが合わないから道楽ですみそうな気もするけどね・・・なんとも」

「まあどちらにしても目立つということですな。であれば地下のトンネルで運用したらどうですか?」


地下で戦車を運用?薬でもやってるのか?


「おおお?地下を戦車が走れるように・・・確かに出来ないことはないけど。だけど現状戦車だと解凍できないんだよね」

「解凍?」

「凍結されている兵器は魔力を使って取り出さないといけない。単純に私の魔力が足らない」

「そうですか。であれば集団詠唱でどうにでもなりますぞ」

「集団詠唱て・・・魔法使いが多数で上級魔法を使うってやつよね」

「そうですじゃ」

「となれば・・・すけさんは使える?」

「ん?単純に魔力を連結するだけですぞ」

「となれば人数分は足せるわけね。すけさんともんさんはいけそうね」

「魔力を使えれば誰でもいけますのでまーちゃんもいけますな」

「なるほど。であれば4人分にはなる・・・」


もし私の魔力量が普通なら4倍。もし壮大なら役に立たない。


「いえ。共鳴効果がありますから相当な魔力になります」

「共鳴?」

「魔力には・・・そうですな。いうなれば個性があります。ですが4人ともが持つ魔力があれば・・・共鳴して増幅します。その量は4の4乗になります」


ええっと・・・4の4乗ってなんだったっけ?


「16倍ってこと?」

「いえ。4の4乗です」


おちつけ・・・つまり・・・4*4*4*4か?


「256倍!」


なっかすごくないこれ!


「ちなみに4人とも持つ魔力ってどの位?」

「千分の一か万分の一でしょうな」


千だとしたら25%。万なら後の範囲。期待してがっかりでござる。


「ですが・・・4人中3人で共鳴する場合増える魔力は3の3乗でそのパターンは4つ。4人中2人なら2の2乗で6パターンです」

「共鳴するのは4人の魔力全ての組み合わせで人数が少ない組み合わせはもっと共鳴するであろう魔力が多いと」

「そうなりますな」

「これは世の中に良く知られていること?」

「集団詠唱はよく知られております。倍率等についてはどの程度知られてるかは分かりかねます。所詮理論ですからな。正確に魔力量を測る方法はないですからな」

「なるほど。でも4人の魔力よりかは大きいのは間違いないね」

「大きくなるのは間違いありませんな」

「それってどの準備がいる?」

「儂が出来ますので今すぐにでも出来ますぞ」


マジ!

キタ!これでなんでもイケる!勝ったでござる。

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