19.死の予感
「人物鑑定では 盾士30レベル と見えるということはほかの職は見えないのでしょうか?キャラクターが多数いるのはばれないでしょうか?」
「本来なら主様から与えられた能力は見えないのですが、黒猫武蔵様は技能であるキャラクターが丸出しなので見えます。現状だと(WE ハイエルフ)の 盾士30レベル が見えます。その他の職やキャラクターを見破られることはないでしょう。」
それならば鑑定されても問題はないか。
技能や魔法は初級しか使えないので逆に目立たないと。
後何か質問することはないかと考えていると話が進んでしまった。
「先ほどもありましたがダンジョン管理人をするということも希望されるなら可能です。お勧めしませんが。」
お勧めしません。
重要なことだから二度いうんですね。わかります。
「わたしは地球に戻る方法を探そうと思うのですがそれはダンジョン管理人では達成できませんよね?それならば私はこの世を旅しようと思うのですが」
「たしかにここにいても異世界を渡る方法は永遠にわかりませんね。それでは旅立ちですね。ここから400km南にダンジョンを資源として利用している都市がありますからそこを目指すのがいいでしょう。」
即出発なんですね。
のろまは嫌いなんですね。
・・・やばい・・・質問事項が多量に残っている。
ねじ込まないと。
「旅立ちの前に質問いいですか?」
「はい。」
「私は今お腹も空かないし疲労もすぐ消え眠くもなりません。これはハイエルフの特徴か何かでしょうか?」
「今から説明しようと思っておりましたがその状態はこの世界に体が順応するために作り替えられているためと思われます。作り替えが終われば正常な状態に戻ります。この世界にハイエルフという種族は本来はいません。ハイエルフがいる世界からハイエルフが落ちて来た場合はありえますが鑑定ではハイエルフとは出ないので問題はないでしょう。」
「ハイエルフと名乗るのはやめたほうがいいでしょう。種族として階層を上げ亜神になりつつある存在と間違われる場合があるかもしれません。」
ハイが付くと亜神の手前と。
こっちはゲームでただステータスがいいだけだけどな。
永久機関でないのは残念だが食事の楽しみはあったほうがいいか・・・
「私の使った技能で使うのは不自然だったりよくない技能や組み合わせはありますか?クリエイトゴーレム、魔物召喚とか?わたしは覚えていないのですがクリエイトアンデッドとかは?」
わたしの場合ソロでの活動が都合がいいだろう。
ゴーレムや召喚が使えないと難しくなる。
「ヒューマン族内部のことはくわしくありません。ダンジョンに来る冒険者やハンターと呼ばれる人たち限定の話になるかもしれませんがよろしいですが?」
「お願いします。」
「黒猫武蔵様が使われた技能、魔法は通常に使われているので問題ありません。ゴーレムを使役するものもたまにはいます。」
「クリエイトアンデッドを使うものは存在しますがダンジョンに挑むことはほぼありません。ヒューマン族で禁忌になっていると思われます。黒猫武蔵様も使うことがないようお願いします。」
「理由を聞いてもよろしいでしょうか?」
「アンデッドの存在が瘴気の増大を招きます。大規模にアンデッドが発生した場合は粛清されます。ダンジョンでアンデッドを作成しているのではとお思いでしょうがあれはアンデッドのような偽造品です。」
粛清されます。
誰が実行するかは言うまでもないと。
「召喚に関しては少し問題があります。この世界で召喚は魔石を使用してその魔石の元の魔物を使役するものがあります。黒猫武蔵様の持っておられる召喚とはかなりずれています。」
たしかにPPに召喚士があるがあれは精霊を呼び出して攻撃する魔法のようなものだ。
攻撃の瞬間だけしか現れないので使役とかはできない。
「それと精霊を召喚して攻撃という技能はのはこの世界では存在しません。もし人前で使用すると目立つこと間違いないでしょう。」
?召喚は精霊しかないはずだが?
「魔物を召喚する技能は持っていないはずなのですが?」
「魔物召喚技能ではないのですね?見てもらったほうが早いですかね」
そういうとダンジョンコアさんは右手を挙げた。
すると空中に数多くの魔物、過去の英雄の画像が表示された。
これはLBで末期の少し前に実装された「戦闘精霊」だ。
魔物を倒すと稀にドロップするアイテムを召喚士に依頼して戦闘精霊として自分にインプットする。
戦闘精霊ごとに一日に一回三分だけ呼び出せてキャラクターとともに戦い経験を得て成長する。
運営が召喚士を実装しようとしたがサービスが終わるので全キャラクターが使えるようにしたというバランスも何も考えない技能だった。
100種ほどあったが80種ほど集めてレベルと忠誠値はマックスにした。
持っている技能をランダムで使うのみという仕様だったので格下の敵のときしか呼び出せないとというとんでもないシロモノでレベル上げは苦労した。
「この世界で召喚は魔石を使用します。召喚された魔物は使用者の魔力で行動しますがそれでは足りず魔石が消耗していきます。黒猫武蔵様の場合魔石なしで魔力消耗なしで一日経てば再召喚可能なのでその技能を持つものの前で使用すれば違う技能ということになるかもしれません。」
戦闘精霊が使えるとは思っていなかった。
人前で使わなければいいのか。いや・・・封印しとくか。
「これに関しては召喚魔法のスクロールをお渡ししましょう。こちらの召喚魔法が使えるならなんとかごまかせるかもしれません。」
おおおお・・・ダンジョンコアさんが親切だ。
「どうかしましたか?」
まずい。顔にでたか。どうにかしないと。
「スクロールで技能が身に付くということですか?」
「そこからですね・・・さきほど魔法は意思による魔力変換でいろいろな現象を引き起こすと説明しました。魔力があれば誰にでも使えるということになりますがそれに反しヒューマン族で魔法を使えるものは少数になります。意思で魔法を変換するということを効率的に他者に伝えること能力が低いということですね。そのためいろんな流派や派閥があるもようです。」
確かにありそうな話だがそれとスクロールの関係はなんだろう。
「その習得の問題をスクロールで解決できることがあります。スクロールを使用すればその魔法が発動されることはお分かりですよね?」
「回復のスクロールしか使用したことがありません。回復の陣が発動しますが回復の陣は魔法なのですか?」
「回復のスクロールは少し特殊ですが回復の陣も魔法です。ただし自身の魔力を消費して自身の魔力を回復するのは無駄なのでスクロール以外で使うことはないです。スクロールを使用するときはスクロールの魔力を消費します。」
「スクロールを使用し魔法が発動される時に使用者が魔法を覚えることがあります。これは実際に発動しているのだから感覚としてわかるということです。他人からの説明との差異や思い込みなどで確率は変わりますが座学で学ぶより早く覚えられます。ダンジョンでは各種魔法技能のスクロールが宝箱等から出現します。冒険者やハンターに魔法が使える人物が多いのはこれが理由でしょう。ヒューマン族の技術でスクロールは作成できますが流通はあまりしていないようです。」
だから召喚魔法のスクロールを渡すと。
こちらの召喚魔法を習得できると。
ついでなので魔法について聞いておくか。
「詠唱省略や無詠唱はよくある技能でしょうか?」
「意思による魔力変換なので詠唱も魔法名もなくても発動できます。ただし思い込みによるものと思われますが詠唱無しや魔法名無しだと発動に失敗する可能性が上がるようです。魔力を変換する時間も普通はかかるので詠唱省略や無詠唱は少ないですがいないわけではありません。状況によって使い分けてるのでしょう。」
繰り返し訓練して身に付いた魔法ならその繰り返しと同じことをすることで発動がしやすいのだろう。
戦場では精神状態の問題もあるので同じことをすることで意思での変換をやりやすくすると。
話を戻そう。
魔石で召喚技能はいまいち使い勝手が悪い。
「できればその時だけ召喚するのではなく成長する魔物を使役するというような技能はないでしょうか?」
「その条件なら 使い魔 の魔法があります。MPの上限が減る。使い魔の魔力を使用者が補う。単独で対象の魔物を半殺しにしないといけない。などの欠点がありますが黒猫武蔵様だと使い勝手がいいでしょう。」
使い勝手がいい?
「黒猫武蔵様はアイテムボックスの魔法を覚えておいでです。その空間に使い魔を収納できます。収納時はMPの上限が減少しません。」
普通ならMPの上限減少と引き換えに数を増やすがアイテムボックス持ちなら気にすることなく使い魔に出来ると。
「使い魔は最初の魔物に限り強化されます。そのため最初の使い魔は戦闘用でなく偵察や支援用で運用するのがセオリーのようです。使い魔は死ぬと復活しませんがその点でも黒猫武蔵様は有利です。死ぬ前に空間に収納すればどんな状態でも死に至ることはありません。」
聞き流すところだった。
アイテムボックスに生き物は入らないはず。
それにこのダンジョンで倒した魔物全部入ってるのは容量的におかしい。
アイテムボックスの魔法はWEのみだ。
ほかのゲームは魔法の鞄システムだ。
「アイテムボックスに生物は入らないのでは?それとアイテムボックスにここで倒した魔物が全部入ったのですが容量がおかしいのでは?」
「生き物は入りませんが使い魔はアイテムボックスに入ります。容量は全キャラクター分を統合したことと、中に入っていたアイテムが錬金術で実体化しないといけない状況になって空になっているからでしょう」
全キャラクター?
アイテムボックスの魔法はWEのみだが・・・
それに出し入れが簡単なだけで容量はそこまで大きくないはず。
魔法の鞄に自動で移動できるので便利だから使っていた。
悩んでいるわたしの前でダンジョンコアさんは右手を挙げた。
すると空中に全キャラクターと保有していたアイテムが表示された。
そこには アイテムボックス 魔法の鞄 冒険者の家の保管箱 クランの保管箱 ギルドの保管スペース が全部映っていた。
LBの場合 冒険者の家の保管箱 クランの保管箱 ギルドの保管スペース は6キャラクターで共通のはずだが各キャラクターごとにあった。
これは・・・壮絶に間違っているのでは。
特にLBのギルドの保管スペースは24*16が25個だ。
通常は1個だが限界まで課金で増やした。
これは一度購入すると時間制限がないのでお得だったのだ。
「お分かりいただけましたか?」
「理解しました。すいません」
アイテムボックスはとりあえずいい。
使い魔だ。
ここは猫・・・でなく鳥だろうな。
出来れば戦闘能力も高い・・・イーグルとか。
「イーグルとかここらへんにいますかね?」
「バトルイーグルがこのダンジョン周辺にいます。黒猫武蔵様がやる気なのでこのまま地上にいきましょう。黒猫武蔵様の技能構成で習得していないと不自然な技能のスクロールもその後でお出しします。」
は!・・・
ダンジョンコアさんが親切!
これは・・・処分する気か!
最後の最後だから優しいのか!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
本文と前書きを入れ替え無断転載対策を実施しています
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※