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10-5.皆さんの嘆きⅢ

・とある都市の定例会


隊長のエイレン様に命令されて会議室にむかいます。

本来はオクタビア様を連れて行くはずなのですがリストに載ったとかで私になったとか。なんのこっちゃ。

会議室に到着するとアルゴラン様以外の皆さんはもう到着しているようですね。

椅子があるので座ります。向かい側には第一軍から第五軍までの団長と副団長。

こちらは騎士団の団長と副団長と救護団の団長と副団長と私たちです。

おっと。皆さんが一斉に立ち上がりました。どうした?おっと?皆が私を見ています。

ここは空気を読んで私も立つか?

戸が開いてアルゴラン様が入室なさいました。

おや・・・アルゴラン様が着席なさいましたが他の人たちは着席しませんね。

さすがにこの状況では私も座れません。皆さん座ればいいのに。

アルゴラン様の隣にはルーベルト様が立たれています。


「第一軍から報告を」


この報告会はルーベルト様が進行するのですね。

ルーベルト様は城内の見回りの責任者と聞いていたのですが?

軍内での人員の動員や移動。ダンジョン内での間引き状況などが各軍から報告されます。


「全軍の報告はこれで終わりだが・・・なにか別途報告することや質問はあるか?」


ちょうどよかったですね。


「質問があります!」

「え?」


え?隊長のエイレン様がえ?っと言ったような?


「いいぞ。質問を許可する」


アルゴラン様がそうおっしゃいましたが・・・質問は?と言われたのに許可するって?


「本来ここにいるのはオクタビア様です。リストやらに乗ったのでここには居ないということですが・・・リストってなんでしょうか?」

「いいだろう。これから説明する。リストに載っている連中にはダンジョン煉獄に武者修行に行って貰う」


修行?また急な話ですね?


「リストの選抜理由をお伺いしても?」

「この俺に足して不満を持って秘密裏に集会を繰り返している連中をピックアップしている」


およよ・・・空気がいきなりピリッとしましたね。


「この間孤児院が襲撃されたのは皆知っているな?」


それが何の関係が?


「街内に何らかの組織が潜伏しているということで調査してたら発見したということだな」


団長副団長の顔色が急激に悪くなっていきます。


「連中は俺が煉獄にクルーソーさんを名代で送り込んだのが不満と言うことらしい。オクタビアは違うようだがな」

「違う?」

「顔面に泥団子を喰らったので頭に来たんだろうな。確かにあれは見ものだったな」


ああ・・・なんか騒ぎになっていましたね。見もの?


「ご覧になっていたのですか?」

「ジークと一緒にな。仮に作った木造の階段の視察中に見たんだ」


む?仮?


「仮とは?全部の門に対して作っていると思いますが?」

「階段は城壁の中に作成する。完成するまでに時間が掛かるので仮だ」


聞いたのはそう言う話ではなかっような?


「新規の城壁は作りが根本になっていない。なので作り直すということでしたがそれが関係しているのですか?」

「それは石工たちの勘違いだな」


勘違い?


「クルーソーさんは最初土壁を作ってこれが完成だと言ったんだ。それを我々が石にしてくれと頼んだ。で・・・クルーソーさんは表面1mを堀部分は高さ20mで城壁の内側は高さ10m石に変更した。石工の見立てだと内側も高さ20mで石壁にしないといけないということだったんだが・・・」


確かに。外側が20mなら内側も20mでないと重さの問題があるでしょうね。


「だが実際はそんな甘いもんではなくだな・・・」


甘い?


「土壁部分は石のように固いという話だ。なのでつるはしで掘っている。石壁はタガネにハンマーぶち込んですこしずつ削っているそうだがタガネが負けるらしい。なのでいまはジークたちは鋼のタガネを多量に作って使い潰して凌いでいる。内側を20mに直すどころか通路すら作れない状況だ」

「初めて聞く話ですが・・・」


どうやら騎士団長たちも知らない話の様ですね。


「ジークの所の鍛冶の連中も順番で城壁工事に投入されているらしい。ジーク曰くドワーフは穴掘れてなんぼだそうだからな。いい訓練になるって言っていた」

「発言の許可を願います」


おっと。騎士団長が許可を求める?


「いいぞ。質問を許可する」

「その件については気になる話が・・・」

「なんだ?」

「うちの隊にドワーフ族の者がいてジーク様のところの鍛冶と飲んだらしいのですが・・・どうやら若いドワーフの鍛冶の連中は今回の城壁工事に動員されることについて不満があるということです」

「どうしてだ?」

「鍛冶になるためにここにいるのであって穴掘るためではないということです。それにこのためかは分かりませんがどうやら大口の受注を断っているらしいのです」

「ジークは古いドワーフの文化をどうにかして継承したいんだろうが若い連中はそう思っていないということだな。まあよくある話だ」


よくある話ですましちゃうんですか。いろいろとヤバイ話のような・・・


「どうされるおつもりですか?」

「どうとは?」

「城壁の工事がうまいこといっていないのは問題では?そのために受注を断わっているのもどうかと」

「受注を断ったのは英断だ」

「どうしてでしょうか?」

「最初は中くらいの受注が複数来たらしい。不審に思って立て込んでいるので着手金を払ったところから作ると言ったところすべての顧客から割増しは受けるが着手金は払わないと回答があったとのことだ」

「?」

「たぶんだが注文者は同一で払う気が無い。もしくは払う金が無い。ということだな。この回答で間に入った商店が注文を取り消したので注文が消えたということだ。もし発注主が踏み倒せば商店が被害をこうむるからな」

「それだとジーク様の工房が金銭的に厳しいのでは?」

「その分はうちが武具を発注する予定だ。城壁拡張と修復用の予算が丸々浮いたからな」

「予定なのですか?今すぐ発注してはどうでしょうか?」

「いまは城壁改築を振っている。それのめどが着くまではだめだ」

「では・・・城壁の工事については?」

「城壁についてはジークに一任した。まあ・・・といっても実は入り口の一部だけはクルーソーさんに頼んで工事済みだ。その時魔法を使ったので魔導兵団にためしにやらせたがうまく行かなかった」


初耳ですね・・・いや・・そういえばなんかやってましたね。


「魔法での掘削はうまく行きませんでした。壁を魔法で強化してる様子もありません。我らの知らない魔法で壁の作成も加工も行われいるのではと推測されます」


隊長のエイレン様が報告します。まあ土魔法で土木を行う隊員は魔導兵団にはいませんからね。


「それであればクルーソー様に城壁の工事を行って貰ってジーク様には武具の制作に取り掛かってもらったほうがよろしいのでは?」

「俺はジークに一任した。これをどうするかはジークが判断する。それはジークの仕事だ。俺でもなけれな貴様でもない」

「申し訳ありません。配慮が足りませんでした」


なんだかピリピリしていますね。いつもこんななのでしょうか報告会?


「おっと・・・話はなんだったかな・・・煉獄への遠征の件だな。とりあえずメンバーは200人位か。連中には煉獄にてデーモンを300匹狩って来てもらう」


ざわざわしていますね。


「300匹ですか?」

「そうだ。複数の情報を総合するとクルーソーさんは短期間でデーモンを300匹狩ったらしいからな。連中の不満は自分たちを差し置いてクルーソーさんを名代として送り込んだってことだろ?であるならその資格があることを実証してもらう」

「300匹は信じられません。煉獄サイドから出た人員の能力と言うことでは?」

「煉獄はその時隣の都市との戦争状態でクルーソーさんはソロで潜ったそうだ。俺でも出来ると言いたいが敵にはディメンションカウンターがあるはずだからからな・・・ゴーレムを使っ立ってことだからありうる話ではあるがな」

「それだと他の問題があります」

「ん?なんだ?」

「クルーソー様の領地には多数のゴーレムが配置されています。隊員のほとんどは土木ゴーレムであるので気にしていないものがほとんどです。ですが一部にはゴーレムの戦闘能力について危惧する声が・・・」

「孤児院の子たちが攫われた時に見たアイアンゴーレムのことだろう?それについてはルーベルトが調査済みだ。結論から言うとアイアンゴーレムは見せ戦力だな。気にしなくていい」

「え?」

「クルーソーさんのアイアンゴーレムは軽いんだ。50k程度と言うことだからなかはスカスカだな。スピードがあるように見えるのはこのためだということだ。なので実際の主力はストーンゴーレムで300k程度のものだが・・・こちらも中を抜いているのか軽いものが存在している」

「それはどうやって調べたのですか?」

「足跡を見るとその人物のスキルや職業が分かる者がいるんだ。それで発覚した。ゴーレムの長所は高い耐久性だ。それを捨ててスピードを増しているということだ。相手が装甲を抜けない雑魚であればそのスピードもあって逃げることすら出来ないだろう。うちの兵ならストーンゴーレムの方が厄介と言うことになるが所詮石だからな」

「ということは危惧は気のせいであるということですね」

「そうとも言えんのがなんともな・・・」

「何故でしょう?」

「ゴーレムの戦闘能力と数を考えればもしゴーレムが全部こちらに攻めてきても撃退できる。こちらが攻めても落とせるだろう。だがその場合こちらの被害は甚大になるだろう。そうなるように数を調整していると思われる」


なるほど・・・まあこうやって議題に上がること自体で抑止力としては役に立ってますね。


「ゴーレムの持っている武器が魔鉄であるとも言われていますが?」

「それについてはジークから報告があった。実際には黒魔鉄だそうだ」

「黒魔鉄!」

「ああ・・・ゴーレム用の装備を見せてもらう機会があったそうでそこで分かったそうだ。魔鉄を鋼にすると黒魔鉄とか言っていたな」

「ジーク様でも黒魔鉄の武具は作っておられないはずですが・・・」

「その後ジークの所で魔鉄を鋼にするのには実験して成功したそうだ。それによるとクルーソーさんの黒魔鉄は魔鉄の製錬も鋼の処理も甘いという話だったが・・・数売りなら十分売り物にはなると言っていた。まあ黒魔鉄の数売りってなんだってことだがな。そういう意味ではジークの所の鍛冶が穴掘りに不満を持つのは当然だな。黒魔鉄の武器を作りたいと思っているだろう」


なんかとんでもないこといってますね。正規兵に鉄の装備を配備できない貴族も多いというのに。


「リストの件はそういう所だ。物資と馬車の手配が済み次第連中には出発してもらう。まあここの兵士を辞める連中もおおいだろうがな。他に何かないか?」

「発言の許可を願います」


救護団のフェルナンド様が発言を求めた。


「いいぞ」

「現在救護団では兵団から元冒険者の治癒魔法持ちの方々に教えを請うています。これをさらに進めてうちの団員をダンジョンへの間引き部隊に参加させようと思っています。検討をお願いします」


魔導兵団と救護団は間引きには現状参加していません。救護団はダンジョン入り口にローテーションで詰めていて治療にあたる。魔導兵団はたまに研修で入りますがあってもたまにです。


「ダンジョンでの間引き・・・というか魔物との戦いは不要と言うのが救護団の団員の考えのはずだが?」

「ほとんどの団員がそうであることは確かです。ですがこの度蟻人族での治療活動とアンテッド退治に当りましたがわれらの無力を思い知りました。我らには鍛錬が必要です」

「ほう・・・何があった?」

「我らのほとんどは負傷者の治療中に力尽きました。それに比べクルーソー様は我らの担当しなかったより重傷な負傷者の治療を短期間で単独で行われました。団員がクルーソー様に教えを乞うたのですが・・・」

「で・・・どうなった?」

「治療に必要なスキルは持っているので教えることはないと言われました。それでも食い下がったところ・・・戦闘中なら軽傷者から治療して戦力の維持に励め。その後中傷者の治療。その後救えそうな重傷者を治療する。それ以外は見捨てろと」


・・・


「ほう?」

「治癒能力を負傷者が超えるのであればそうするしかない。それがいやなら治癒能力つまり治療スキルをあげるしかない。一番早いのは魔物をぶち殺してレベルをあげてMP量を増やして治癒魔法を1回でも多く唱えることだと言われました」

「ああ・・・その光景が目に浮かんだ。でどうする?そもそも魔物をとは戦いたくない連中を救護団に配備しているんだろ?」


確か治療魔法を持っているが冒険者になりたくない。

といって宗教団体に入るのも嫌だという人たちが救護団にいるという話でしたね。

下手な田舎だと治癒魔法持ちはいろんな意味で危ないからですね。


「これは今回派遣された団員の一部が希望していることです。まずは希望者だけということです」

「了解した。そちらに出している団員とともにダンジョンに入るようにローテションを組む様に手配しよう」

「ありがとうございます」


その後は何事もなく定例会は終わりました。

会議室の帰りにエイレン様から話しかけられました。


「いきなり質問するとは・・・心臓が止まりそうでした」

「会議に参加するからには積極的に意見を出すべきだと思ったのですが・・・申し訳ありません」

「そうなのね・・・普通ここでは最低限のこと以上の発言はしないから」

「そうなのですか?そういえば進行はルーベルト様なのですね?」

「そうよ。情報を収集管理しているのはルーベルト様ですから」

「城内の見回りの責任者ときいているのですが?」

「それも任務の一部と言うことね。実際は情報収集の責任者よ」

「次回からは控えます」

「いや。次回からもこの調子で頼みます」

「?」

「アルゴラン様は・・・明らかに機嫌が良かった。こういう会議を望んでおられると私は感じました」


よく分からない話ですね。ならばいままでどうしてこうだった?


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