10-3.皆さんの嘆き
・とあるえらい管理者の嘆き
今分かった。私がこの世界に落とされたのは彼女たちに出会うため。
今の私に不可能はない。
彼女たちのためなら・・・世界を滅ぼそう。
彼女たちのためなら最高管理人でもやれる。軽くやれる。
「てなこと言っとりますがな」
「どうされました?主様」
「ん?おう・・・力天使か・・・転移者監視のアラームが上がったんだ」
「どのようなアラームでしょうか?」
「こんな感じだよ」
「・・・これはあまりに無茶では?」
「いいや。なにを思ってもそれは個人の自由だよ。問題はそこじゃない」
「・・・」
「別に転移者の行動や思考を監視している訳じゃない。危険を察知したということだ」
「どういうことでしょう?」
「つまり・・・世界を滅ぼせるか・・・もしくは私を殺せると判断されたということだよ」
「それはあり得なくないですか?」
「そうなんだよ。それほどの能力は与えていないはずなんだよな」
さて・・・調査するか。・・・?
「なんかいろんな部署が多重に監視している?」
・・・・
「ああ・・・それはこちらで監視している対象ですね」
「なんの?」
「まず・・・科学技術もしくは魔法技術の著しい向上。それを目的とした組織の構築」
「ああ・・・魔導帝国の再来防止対策か・・・何をした?」
「この都市に魔法を使えるものが急に増えました。それが2回。それで調査をしたところ、この対象による指導の結果と判明しました。調査中にも短期間で魔法の習得を行わせていることが判明しています」
ん・・・・・これか。
ゲロゲロ。
「これは・・・私の植えた技能が原因なのか・・・」
「え?」
「彼女・・・元は彼なんだが彼に植えた技能はゲームの能力なんだ。その中に他のキャラクターから技能を教わるという機能がある。その機能が逆に作用している。つまり・・・クルーソーさんに教える意思があればその機能が自動的に発動する」
「つまり・・・何も考えずに能力を与えた主様のせいであると?」
「まあ・・・今回はそうなるね。時間がなかっだんだ。比喩的な意味でなくてね」
「転移者を捕まえる時には時間は止めますよね?」
「極限まで時間速度を加速するだけだ。いろいろ影響が出るので世界の境界では時間を止めることはしない。転移者を捕まえるのは特定のタイミングでしか出来ないんだが彼は勝手に飛び降りたんで再度捕まえることは出来なかったんだよ」
「毎回思うのですが・・・力を与えるのをお止めになってはどうなのですか?」
「それは出来ない」
「何故でしょうか?彼らをそのまま処分すればなにも問題は起きません」
「もし彼らが自分の意思でやってきたのであればもちろん処分するさ。そうでない限り一方的に処分は出来ない」
「転移は自然災害の様なものなのではないでしょうか?そうであれば運が悪かったとあきらめてもらうというのはどうでしょうか。実際この世界で起こる自然災害に対して我らが手を差し伸べることは有りません」
「もし転移が自然災害なら彼らを助ける必要はなくなる。すべて処分で構わないということになる」
「自然災害ではないと?」
「何者かの手によるものだという懸念が消えないんだ。でもね。ただの自然現象である可能性のあるんだよ」
「それでは力をお与えになる理由が分かりませんが?」
「言ってなかったっけ?」
「はい」
「転移者が莫大なエネルギーを持ってこの世界に落ちてくるのは分かるね?」
「距離に応じた位置エネルギーと言うことですね」
「例えとしてしてはその通りだが実際には違う。次元が違うから距離はないけどね。まあそう考えるのが簡単でいいのでそうしよう。で・・・もし転移者がそのまま落ちてきたらどうなると思う?」
「・・・主様の加護無しでこの地に降り立つのでは?」
「いや。間違いなく死ぬ」
「え?」
「位置エネルギーをもってこの世に来る例えだと・・・落下エネルギーをすべてその身に受ける。即死どころか原子レベルで分解されかねない」
「その人物には申し訳ないですがそれはそれでいいのではないでしょうか?」
「そうではないんだな・・・莫大な位置エネルギー。魔力でも力でもない・・・壮絶な因果とでもいうものがその地に留まってしまうのでとても人は済めない状態になる」
「転移者の数を考えれば大したことではないのでは?」
「まあ自然災害と思えば誤差と言うことだが・・・万が一生き残ったり・・・魂が滅しきれずアンテッド化すると大変なことになる」
「もしかすると・・・あの連中は?」
「そうだ。そういう連中があちらこちらこちらにいる。聖なる結界で封じ込めてはいるが・・・これ以上数は増やしたくはないし監視の手間も大概だろ。なので転移者はその持っているエネルギーをまず落下エネルギーの相殺で使用して、その後そのエネルギーを変換してスキルで与えたほうが得なんだ」
「そうでしたか・・・そうなるとこの対象がいろいろと異常な原因が分かりました」
「いろいろ?そういえばさっき まず と言ったね?他にもあるのかい?」
「銃器の使用。高性能ゴーレムの多量運用です」
「銃は・・・」
「そうです。主様の与えた技能です。いまのところ表立っては使ってはいないようですのでただの監視対象です。ですがゴーレムだけはいろいろと疑念が尽きません」
「んん。えーと高性能?」
「戦闘力は大したことないのですが・・・あまりに器用というのか」
どれだ・・・これか・・・
「確かに奇妙なことになっているな。これは・・・空洞?軽くしてるので俊敏になってるのか。その代わりにゴーレムの特色である打たれ強さと攻撃力を捨てている」
・・・?
「これは特殊・・・いや・・・これはゴーレムではないね」
「どういことでしょうか?」
「ゴーレムを作る魔法を使っているようだが・・・ゴーレムに自己進化を追加して何にでも使える汎用性を持たせている」
「そのようなことが可能でしょうか?」
「使い魔魔法と言うのがあるだろ。あれは自分の魂を一部使い魔に与えるんだ。その機能を混ぜているんだろう。もしかしたら・・・無意識的にやっているのか」
「魂を与えているので器用と追うことですね。これで監視対象の異常行動の謎が一つ解けました」
「謎とは?」
「エルフは普通睡眠が短いですよね?なのにこの対象は睡眠時間が長いのです。魂の消耗を回復するためということですかね」
「それはどうなのかな・・・それよりもエルフ娘になったことによる影響が大きいんじゃないのかな」
「そうなのですか?」
「人間の男の魂がエルフ娘に入っているんだ。じわじわと軋みで変形していくんだ」
「・・・」
「まあそれはいいだろう。本人の望みだからな。魂を分け与えて賢いゴーレムを作っているということだな」
「何故そのようなことを?」
「戦術ゲームや戦略ゲームの影響だろうね」
「ゲーム?」
「彼らのいた世界は進んでいてね。戦争をする前にその状況を詳細に再現して結果を出すことが出来るんだ。そのゲームの能力を取り込んでいるので兵器はあるんだ。それを操る兵士はさすがに再現してないから・・・あああ・・・そういことか!」
「主様?」
「そういうことだな。前に来た転生者で奴隷を買って手を出そうとして犯罪者になって国から追われた奴がいたよな」
「はい。奴隷がいない国で闇で奴隷を手に入れようとしてその国を追われ、奴隷のある国に移動して奴隷に手を出そうとしてその国で罪人になり・・・兵士を多数殺害して討伐されています」
「奴隷は労働力と引き換えにして罪を償うか借金を肩代わりしてもらうという話だ。つまり国の制度であり物を購入するわけではない。まあそうでない場所もあるようだがな。その時の転移者が何を考えていたのかがなんとなくわかったよ」
「今回の件と同じということですか?」
「そうではないがな。クルソーさんは率いる軍の人員としてゴーレムを求めた。過去の彼は仲間を求めたということだろう」
「仲間ですか?それならば奴隷である必要はないのでは?ゴーレムである必要も」
「彼らは異世界から一人やってきた。親族も友達もいない。過去の彼は信頼できる仲間もしくは絶対に裏切らない部下として奴隷を求め、ついでに恋人も求めてしまったということだろう。クルーソーさんは信頼できる屈強な兵士としてゴーレムをと言うことだ。人脈が存在しないからな」
「使い魔とゴーレムを混ぜているというのは分かりました。それでは分からないことがあります。そうなるとただのゴーレム魔法よりかなり高度になりますがその割にはゴーレム作成の速度が異常に早いのですが?」
・・・速度・・・これか
「集団詠唱だ。この技法を取り入れているんだね・・・彼は植えつけたキャラクターを吸収しないでいる。11人で魔法を詠唱しているんだ」
「11人で集団詠唱と言うことですか・・・それだと単独で戦術級の魔法を使えるのでは?」
「そうなるね。まあ・・・それについてはあまり問題はないだろう。さすがにこれについては他人に教えられないからね」
初のケースとはいえいろいろ起こるな・・・まあそれより世界を滅ぼせるのはなんだ?
戦術級魔法が使える位ではそうはならない。
戦略級になると学ぶ機会すらないはずだから・・・!
ゲロゲーロ
「つまり・・・凍結している兵器ということか・・・」
検索開始・・・何を作ったっけ・・・これか。
「戦略級原潜搭載大陸弾道弾。空母搭載の航空機の巡航ミサイル。これに積んでる反応弾・・・確かにこれなら世界を滅ぼせるな。攻撃力だけでなく二次被害も甚大だ」
「やはり主様のせいなのですね」
「まあ原因が分かったんでいいとしよう。この兵器の解凍を始めた場合はアラームを出すように仕掛ければいい」
だが・・・これは回収が必要だが理由もなくこちらに引っ張り込むことはできないし・・・
「なんかこの都市いろいろすごいことになってない?というかこの間落ちて来た転移者が牢屋にいるぞ?」
「ダイゴですね。勇者になってクルーソーさんを殺しに来て返り討ちになったようです」
「何故そんなことに?」
「経緯は分かりませんが宗教団体に入った模様です。この都市で主様から与えられた武力で騒動を起こすという任務を与えられたようですが何故かクルーソー様に向かって行ったようです」
「んん・・・ダイゴさんの能力だとクルーソーさんには勝てるはずなんだがな、あれは近接戦闘特化だ。すべてのことが出来る能力をとったあげく取り込んでいないクルーソーさんとの差は明らかだが」
「どうやら過去に切られたことが無いようで・・・この世界でもありませんでした。切られて出血してパニックに陥った模様です」
「ああ。そういえば平和な世界で武装が禁止されるほどだと言っていたね」
同時期に同じ地球の日本から転移者が落ちて来た。偶然にしてはあまりに出来すぎているな。
やはり何らかの意思によるものなのか・・・
まあちょうどいいな。ダイゴがらみで何か起こったらそれを理由に介入しよう。
そのときに反応弾を回収する。
それだとあんまりだから希少金属や魔石、スクロールを入れて置くことにしよう。
反応弾はダメだからその代わりに入れてるんだと勝手に勘違いするだろう。




