10-1 戦い前日
「海軍の件ってどうなってるんでしたっけ?」
「海軍?」
「海賊船を修理して運用って話だったですよね?」
「水上軍のことか?それが?」
水上軍とかダサいネーミングになっている。ここは海軍で押し切らないと。
「兵士さんに船の動かし方を小さい船から勉強してもらうって話だったでしょう。漁村の人たちを兵士として海軍で雇ってしまえばいいんです」
「おい・・・それは問題があるぞ。彼らは漁民であって兵士ではない。海上での魔物との戦闘経験はあるかもしれんが・・・」
イケメンエルフが答える。
何言ってるんだこいつ?全てを解決する案を提案してるんだぞ?頭悪いのか?
「兵士として雇いたくなければ操船専門の兵士として雇えばいんですよ。船を操作するのと船の上で戦うのをを分業するってことですよ」
「・・・船を動かすのと戦う人員を分けるということか・・・実際戦闘になればそういうことは言ってられないぞ?」
くそ・・・こういうところこいつ常識人だな。
熱くなれよ!下っ端の損害は統計上の誤差と考えろよ。
「そうであれば・・・操船の教官ってことで雇えばいいんですよ。実戦に投入はしない。であればいいでしょう?」
「ああ・・・なるほどな。船の扱いだけをを教えてもらうということか・・・」
うんん?・・・専門技術を教える教官って考え方はこの世界にはないのか?
「海軍で雇えば海軍の一員ですからここにいても構わないということになりますよね」
「そういうことになる。そうだな・・・村長に提案してみるか・・・」
よし。華麗に問題をすり替えることに成功したぞ。後は脱出するのみ。
猫さんをおこさないようにそーと・・・
「それでは漁村はそれでいいな。でクルーソーや。革鎧はどうなってる。
ガッデム!逃げ切れなかった。
「もっか鋭意製作中です。今日の夕方までには完成するかと」
「そうか。それは結構。明日までの約束じゃったがどうなることかと思っておったんじゃが間に合いそうじゃな。では明日は予定通りにダンジョンに行くからな」
明日まで?そうだったっけな?なんか間違えてないか婆さん?
しまったな。明日にしとけばよかったのか・・・明日ダンジョン?
「明日ダンジョン?」
「あの子らを連れてダンジョンに行くんじゃ。言っておいただろう?」
え?そうだったっけ?
「鎧が出来ていきなりダンジョンは早いのでは?馴染む時間が・・・」
「また先延ばしにしようとするか!バカたれが。もう兵士の手配も済んでおる。明日じゃ」
「兵士の手配?」
「ダンジョンでの引率を頼んでおる。なので予定は変えられんぞ」
「むむむ・・・」
「まあ・・・一層でゴブリン相手だ。そう心配することはないだろう」
イケメンエルフが能天気なことを言っているぞ。
「初陣には事故がつきものというか・・・」
「周りがフォローすればいい。というかクルーソーさんががんばればいいんだ。わたしも行く」
「私が?」
「当たり前だろうが。もともと言い出したのはお前だろうが」
およよ・・・そうだったっけ?
まあ仕方がない。がんばって革鎧を作るとするか。
いったん農地の家に戻る。革鎧は錬金術で作っているのでたまに見るだけでいい。
今日は少し大目にパンを焼くとしよう。女の子たちを集めてパン生地をこねこね。
普通に出来ている気がする。ただ私がいないとパンの出来が異常に悪いようだ。
何故だろうか?生地には問題が無いと思われるので焼きの時の火力の調整なのか?
とはいえここの窯は魔道具なので火力は同じになるはず。生地の投入と取り出しのタイミングなのか?
明日はダンジョンで孤児の女の子たちの訓練を行うと。というか訓練ではないな。実戦デビュー。
何か携帯食でも準備するとするか。パンはあるのでサンドイッチでも・・・
そういえばサンドイッチって見ないな。その料理はなんだとつっこまれそうだな。
だいじょうだという気もするが・・・
その前に挟むのもがない。ハムやウィンナーもあるんだろうが手持ちがないし・・・
そう言えば先ほど飯マズたちがやらかした鍋がある。あれを再利用するとしよう。
鍋から具材を引き上げで小さく切り刻む。肉や魚も小さく切り刻んでいく。
そういえばミンチを作る機械ってあるよな。あれば便利のような気がする。
肉を炒めて濃いめに味を付ける。魚も同じように処理する。
炒めた肉と魚と小さく刻んだ具材を鍋に戻して煮詰めていく。
水分を飛ばして固形状になったところで火を止める。
これをパンにはさむ・・・のは流石に無理か。
パン生地は大目に作ってあるので実験してみよう。
パン生地に今作った餡を詰めてそのままパンを焼く。
むむむ・・・焼けたけどこれじゃない感が。試食してみるとおいしいんだがな。
肉まんのようにしたかったのだが・・・
パン生地の配合を変えないといけないということだな。
それは無理なのでこのまま焼くとしよう。手軽に食べられるようにひとつひとつを小さく作っておく。
む?後ろで女の子たちが興味ありそうな顔で見ている。
「それなんですか?」
見ててもあげないよ・・・じゃない。
「新作の・・・パンです」
試食してもらうか。
渡して食べてもらう。
一部の子だけに渡すのはよくないな。全員に配ってまわる。
「新作のパンを試作しました。忌憚のない意見をお聞かせ下さい」
皆美味しいと言って食べてはくれるが・・・まあ不味くても不味いとは言わないだろうな。
まあいい。明日の携帯食はこれでいい。味付けが強めなので塩はこれでとれるはず。
後は飲み物だがどうするか?水筒とかがあるはずだが魔法があるので持ってないんだよな。
水筒は後で探しておこう。鍋に井戸の水を入れて洗浄魔法で綺麗にしておく。
後はコップと一緒に魔法の鞄に入れて置こう。
これだとただの水だな。そのままではいかんのか?
というかここでの食事もただの水しか出してない。
なんかいい感じのハーブはないものか?
鍋にいろんなハーブや野草を入れて煮込む。まあまあの味のものはすぐに作れる。
だがこれではない感がスゴイ。
ハーブの組み合わせと味をメモっていく。
お・・・いい感じの味のが出来た。だが違う。もっとだ。味だけでなくバフが付くとかそういう感じで・・・野草を多くすればどうにかならないか。
おおおお・・・来たー。SP回復効果が少しだが入ったハーブ茶が出来た。
かなり不味いが出来たぞ。
何の効果もない飲み物や食品など何の意味もない。薬効があってこそ意味があるのだ。
これが薬膳ってやつだな・・・
あれ・・・違う。そうじゃない。
それなら最初からポーションを飲めばいい。
その前に完成させたいい感じの味がするハーブ茶を再度作成する。
もういろいろ飲み過ぎて味が分からない。
これも女の子たちに飲んでもらって評価を聞いていくことにしよう。
よし・・・これで明日持って行く具入りパンとハーブ茶は出来た。一見落着。
何かを忘れているような?そうだった。革鎧だった。
アイテムボックスを見るとほぼ出来ているようだ。
これを持って行って試着してもらって最終確認をしよう。
おや・・・よく見ると手袋作ってないな。
これに関しては私の使用している手袋を完全コピーしよう。材料は五眼猿でいい。
孤児の女の子たちは・・・今は領主の舘にいるんだったな。
お!裏庭で飯マズ二人組の訓練を受けていた。
6人を呼び出して革鎧を着てもらう。
「着替えてきます」
「いや・・・服の上から着れるように作ってある」
成長しても着れるように少し大きめに作ってある。
次からはサイズ調整機能を付けよう。エンチャントも付けるとしよう。
おし。大体ぴったし。これでよさげだな。
6人の女の子がこっちを見ている。なんだ?
「クルーソー。武器はどうした?」
は?武器も私だったっけ?
「武器も私だったですっけ?」
「当然そうじゃね?」
言われてみればそのような気もするな。
「武器はなにがいい?」
「大剣」
「長剣と盾」
「槍と盾」
「短剣2本」
「長剣と短剣」
「槍」
ぐ・・・
前回ダンジョン煉獄がある街に来た連中から回収した武器が多量にある。
これから見繕うか・・・
ん?女の子たちは木製の武器で訓練している。普通の武器だとデカすぎるな。
ゴーレム用の黒魔鉄の長剣をアイテムボックスから出す。
「これはどう?」
「グリップが短いよ」
ぼくっ娘に全否定された。確かにな・・・前に私が作った魔鉄とミスリルのバスターソードを出す。
いや・・・それはまずいか。全く同じ大きさになるようにゴーレム用の大剣を錬金術で加工。
魔力を多量に込めてもなかなか削れない。ディメンションソードを使用。おお。いい感じで削れた。
「これでどう?」
ぼくっ娘は素振りを始めた。とりあえずはこれでいい。
次は長剣と盾。ゴーレム用の長剣を同じように錬金術で加工して小さくする。
盾は小さめの物をいくつか取り出して選んでもらう。
次は飛ばして長剣と短剣3本。これもゴーレム用の長剣を錬金術で加工する。
よし・・・後は片手槍と両手槍。
これはアイテムボックスの中にある木材を練習で使っていた木の槍と同じくらいの大きさに切りだし先ほど削った魔鉄を加工して槍先と石突きを作成して装着。
なんとかなった。魔力はかなり危なかった。同じものを作るのはいいが加工をすると魔力の消費が激しい。
後はグリップを削ったり革を捲き付けたりして調整を繰り返す。
武器と鎧の調節が終わった時には日が暮れかかっていた。
夕食を作らねばいかん。まあいろいろあったが間に合ったからすべてOKだ。
農地の家に帰って夕食を作る。
今日からは飲み物がハーブ茶になると。
皆で夕食をいただく。なんか飽きて来たのでメニューを増やないといけないな。
さて・・・これで宿題はすべて済んだはず。明日からはなにをするか?
おっと。孤児の女の子たちの初陣に付き合わねばならないのだったな。
明日はそれで一日は潰れないとは思うが他の予定はいれるのは止めておこう。
何をすればいいのか・・・
こういう時のための黒板だった。
ゴーレム強化案
黒魔鉄ゴーレム 大盾+大剣 短槍(投擲用)を試作
拠点防御用黒魔鉄ゴーレム 長剣+槍 盾を試作 鞘とベルトを試作
拠点防御用ストーンゴーレム 槍 大盾(木製)を試作
黒魔鉄ゴーレム 追加 仕様を考える
やるべきこと
水車での揚水機構試作 ちんたらやる
畑に植えなおした癒し草でポーション作成
スタミナ、MPポーションの作成
魔法のポシェット ウサギ 牛
宿題がまだまだあった。ちくしょう。
は!その前にゴーレムは修理しないといけないのだった。
錬金術で修復を開始・・・じゃない。
とりあえず魔力が無いので錬金術は無しの方向で。
ゴーレムを強化と言うかブーストするための魔石をセットする機構を作るのだった。
まずは魔石をセットする案をいくつか作って試作しよう。
まずは・・・でなくて。魔力が無いから試作は出来ない。ここは素直に寝よう。
その前にバラバラになっているゴーレムの部品を組み合わせ出来るように分別しておこう。
これは・・・ここの部品かな?これと組み合わせれば・・・あれ違う。
難しいな。うむむ・・・というか眠い。なんだか眠いんだ・・・ぐうう。




