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9-5 韋駄天

「どうしました?クルーソー様。顔色が悪いですよ?」


そりゃーな。血の気が引いてるからな。


「商品の納期が明日なんだ」

「それは・・・このような事態なので考慮してもらえるのではないでしょうか?」


お!この世界はそういう感じなのか?


「相手は薬師ギルドマスターの婆さんなんだ」

「おご?」


・・・フェルナンド?おご!ってなんだ?


「それはどうしようもないですね」


どうしようもないと。そうなんですね。

これは・・・ぴーちゃんに運んでもらうか。久しぶりの空の旅。

襲撃されるから控えていたが高高度を移動ならどうにかなるのでは・・・


は!


ぴーちゃん連れてきてないーじゃない!

こんなことになろうなろうとは・・・


となると走って帰るしかない。

が・・・どのくらい遠いのだろうか?煉獄より遠いとかだと夜逃げ一択になる。

お?

イルゼさんは迷宮都市に歩いて来たはず。方向さえ聞けば帰れる。はずだ。


「イルゼさんはどこ?どこ?」

「あちらにおられましたが?」


イルゼさんを発見。吶喊する。助けてイルゼ門


「この度はわれらの窮地をお救いいただき誠にありがとうございます」


ち・・・あいさつはいいんだよ。


「でですね!イルゼさん!イルゼさんてここから迷宮都市まで歩いて来たんですよね?」

「はあ。そうですね」

「どのくらいかかりますか?方向は?」

「私で急げば3日と言う所です。どうされたのですか?」

「緊急に帰る用があるので帰らないといけないんです!方向を教えてください!」

「ええっと・・・転移での移動が明後日に予定されています。そちらのほうが確実で早いですが?」

「用があるのは明日なんです!」

「道中は魔物も出ますし・・・おやめになったほうが」


止めてどうしろと言うんだ?それともお前があの婆さんを殺ってくれるとでもいうのか?


「大丈夫ですよ。イルゼさん。クルーソー様は普通は数か月かかる都市でも数日で移動できますし戦闘能力も問題ありません」

「ですが・・・」

「迷宮都市的には帰らざるを得ません」


そうだよな。フェルナンド。分かってるじゃん。


「そうですか・・・少々お待ちください」


少々だぞ!時は金なりなんだぞ!


「途中までお送りしましょう。見渡しのいい山頂がありますので。そこで移動する道順を説明いたします」


おお!話が分かる人は好きですよ。

イルゼさんに案内されてカモネージの城門をくぐる。


「この度本当にありがとうございました」

「いえ・・・こちらこそ無理言ってすいません」


一応私は礼儀作法も出来るんですよ。


「クルーソー様が労働階級の志願兵の治療を行って下さったおかげで労働者の被害が最少で済みました。これでわれらの氏族もそこまで勢力を落とさずに済みました。殿もお喜びもことでしょう」



「労働者の志願兵?」

「負傷した兵士の治療を行った際に隣の部屋に寝かされていた者たちのことです」


・・・お!そういえば装備もなく床に転がされていた連中がいたな。


「そういえばそうでしたね。何かあれば徴兵されるということなんですね」

「いいえ。これは我らの都市だけで行われていることです」

「ええと?」


農繁期以外の季節になると農民を徴集して戦争するってことじゃないの?


「クルーソー様は蟻人族の習慣については詳しくはないでしょう。時間があるのでお話しましょう」

「あ。はい」

「我々蟻人族には厳格な身分制度があります」


有りそうですよね。


「下から労働者階級、兵士階級、支配者階級・・・細かくはまだいろいろあります。全力で生きた、もしくは功績を残したものは来世で上の階級に生まれ変わる。最終的には将軍家と呼ばれる5家に生まれ変わりそこで功績を残せば神の座に達すると言われています」


来世かよ。今じゃないのかよ。


「親の所属している階級に自動で取り込まれる。いくら頑張っても階級が変わるのは来世。それだと不満が続出では?」

「ここからその話をしようと思ったのですが・・・」


すいません。先走りました。


「すいません。どうぞ」

「この制度が維持できるのには理由があります。蟻人族は前世の記憶を持つものが大多数なのです」


はお!


「なのでほとんどの者にとってこの身分制度は普通に受け入れられます」

「記憶があるのならばそうなりますね」

「記憶と言っても鮮明なものではないとのことですが・・・」


と言うことは


「お分かりでしょう?この記憶の継承には例外があります」

「人口が増加したらってことですよね?」

「そうです。もともと前世の記憶が無いものはたまにはいたと言うことです。急激な人口増加が起こったことにより前世を持たなないものが増えました」

「急激な人口増加の理由は聞いても?」

「刀です」


ほえ?

そう言うとイルゼさんは少し短めの刀を見せて来た。脇差ってところか?というか刀持ってたんだ。


「誰が伝えたかは知られていませんが・・・刀と刀術がもたらされたことにより蟻人族の戦闘能力はすさまじく向上したということです」

「その結果戦闘での死亡率が下がる。生存圏の拡大による生産力向上で人口が増えた」

「そう言うことです。その結果蟻人族の支配地域は数倍になったと言います。ですがいいことばかりではありません」


想像はつくが・・・聞くことにしよう。ドヤ顔で予測を発表する雰囲気でもない。


「前世の記憶がないものが爆発的に増えました。昔は人数も少ないこともあって問題にならなかったらしいのですが・・・」

「人数が少なくても問題なのでは?前世を覚えているのが前提の制度ですよね?」

「昔は身分制度に文句があるのであれば自主的に出て行けとと言うことで処理をしていた」


表向きそういうことと言う意味かな。出て行ったことにして埋めるとか。


「想像の通り実際には死刑と言うことになります。魔物が跋扈する山や森に放逐されるのですから」


そっちか。そうだった・・・ここは魔物がいるよな。放逐されたら死ぬ。


「でも数が増えたらそうもいきません。いろいろと問題が続出しました。ですがある時に決定的な事件が起きました」


反乱が起きるか、鎮圧と言う大虐殺とかというコースだな。


「ある教えが広まったのです」


教え?


「蟻人族に都合のいいことを行うと来世で身分階層が上がるなどは存在しない。もし最終的に神になるのであればそれは誰にでも起きる。だがそれは自力で成すものではなくその神の存在自体に引き上げてもらうというものです」


どこかで聞いたような・・・

というかこれは仏教じやね?

それも悪人正機。

悪人は悪いことをする犯罪者でなくて自力で成仏できない人と言う意味でそれを救うという意味だった。

大学の授業でたしか聞いたような。

あの授業は面白かった。

初期仏教はみんなでわきあいあいとやっていた。それが原始仏教・・・だったか?

そのあと急激に変化する。

ブッタは唯我独尊になってしまうし、解脱するのは六道をとてつもない回数輪廻しないといけないし。

でその後修行しなくても成仏させてもらうに変わっていく。だったはず。


なんというか・・・刀や刀術、仏教とこれらは転移者が持ち込んだんじゃね?

刀はともかく宗教はまずい。宗教は取り入れるなら全部取りこまないといけない。

そうしないとその宗教は暴走する。

それはそうだ。宗教にとって教えは習慣や法律よりも重視すべき存在になるから。

なので新興宗教は問題を起こす。

あちらこちらの宗教のいいところをつまみ食いすると本来その宗教がもっているセーブ機能が働かなくなる。

無駄だと思われる戒律にも意味があるのだ。と授業で言ってた。


「この教えは前世の記憶を持たない者に急速に広まりました。このままでは武力鎮圧される寸前までになりました」


まあそうなる。


「それを救ってくれたのが我が殿になります」



「我が殿は元は将軍家の跡継ぎでした。ですが自分に前世の記憶が無いこととこの教えの信者であることを公表されたのです」


おう・・・ヤル男だったと


「最終的には殿の一族と新しい教えを信じる者は殿とともにこの地に移動することになりました。ここは蟻人族に追ってはすべての条件が生存に適さない死地でした。我らは殿の下で力を合わせて生き延びて来たのです」


徳川に睨まれた真田信之が上田領に飛ばされたようなもんか。


「ここでの生活は厳しくもし兵士や労働者にこれ以上の被害が出れば我らの氏族は滅んでいたかもしれん。そういうことです」


なるほど・・・今回の件は被害が出ることが前提で押し付けられたと。


「ここでいいですね。ここからよく見えます」


いきなり話が変わった。


「ここから南東に移動します。途中で川があるのでこれを降ったほうが早いでしょう。滝がありますのでそこからまた南東に移動します。そうすると迷宮都市です」


そうっだた。最速で帰るんだった。


「クルーソー様。この度は本当にありがとうございました。何かあればこのイルゼをお呼びください。この度の恩に報いるためこの命をかけましょう」


なんかヤバいこといいだしたな。


「その忠誠はあなたの殿様に捧げるべきでしょう」

「それはそうです。その次にと言うことです」


あれ・・・まあそうね。


「それではありがとうございました。急ぎますんでここで」


イルゼさんに礼をして南東に爆走する。とっとと帰らないと。

加速の魔法を使って爆走する。

最初は荒れ地だったのが段々と林になってきたが馬では移動速度が下がってしまう地形だ。

走るしかない。


おっと。川があった。これを降れと言っていたな。

昔魔道具の試験をするために使った石板を出す。

一気に川の上を降ることにしよう。魔物を呼び出すかもしれんがあえて無視だ。

浮遊に水流に風流の魔法を使ってすさまじい速度で川を下って行く。


ふおおお・・・


なんかいきなり空を飛んだ。

強引に川に着水しその先を急ぐ。


あれ?


なんか海が近くなってね?

海に出る前に迷宮都市があるのでは?というかあの鉱石が取れる山が川の東にないといけないはず。

・・・は!


「「ここから南東に移動します。途中で川があるのでこれを降ったほうが早いでしょう。滝がありますのでそこからまた南東に移動します。そうすると迷宮都市です」」


先程空を飛んだのが滝と言うことか!

むむむ・・・

滝まで戻ってから南東に移動するのはだいぶタイムロスだ。

ここから東に森だがまっすぐ東に移動すればいける気がする。

森の中を爆走する。


ほんが!


何かにぶつかった?なんだこれ・・・

白い糸に私がくっついて私が宙に浮いている。これは蜘蛛の糸か?

周りには白い塊がぽつぽつとある。

おのれ・・・時間が無いというのに。

こんなところで遊んではいられない。早急に移動させてもらう。


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