9-1.救護団の問題
飛んだ先は標準器の前。これは・・・周りは塀で囲まれている。それと蟻人さんが一杯だな。
その蟻人さんたちは甲冑を付け槍や刀を装備している。・・・刀だと?
こっちに来てから刀は私かイケメンエルフしか持っているのを見たことが無いが普通にあるということだな。今後はガッツンガッツン刀を作ってもいいということだな。
「ここで少々お待ちください」
イルゼ氏がそう言って標準器の前に陣取っている小屋に歩いて行った。
おっと。こういう時にやっておこう。地図情報。
むむー・・・。どうやら飛んでくると別マップになってしまうようだな。
縮図を変えてもこの場所しか表示されない。
まあ・・・とんでもなく遠くに飛んできてもマップの縮図を数億倍にすれば表示される可能性もあるが。
その場合はすべての情報が点になるので意味がないのか?
「クルーソー様はよく落ち着いてますね」
魔導兵団?の団長が話しかけてきた。・・・名前は・・・何だっけ?
「えっと・・・まあ今すぐ死ぬような危険があるわけではないですからね・・・えっと・・・魔導兵団隊長さん」
「そうですか・・・蟻人族は人族とは距離を置く・・・というより排他的と聞きます。戦闘力も相当高いと聞きますから緊張します」
イルゼ氏が戻って来た。杖を持った蟻人族が数人ついて来ている。
「クルーソー様はこのまま目的地に私とともにお願いいます。エイレン様は基準器までお願いします」
団長ことエイレンさんは杖を持った蟻人族数人と基準器に歩いていく。
マーカーになるつまり標準器の座標を覚えるマーキングをおこなうということだ。
見学しておくか。
およ!
予告も無しに転移魔法をかけやがった。ガッデム。
またもや標準器の前に出た。ここが本国と言うことか?
地図情報を表示すると・・・また独立した地図になる。無駄だと思うが拡大してみるか。
おおお・・・なんか出て来た。
今目の前にある標準器の回りの地図が点状態になるくらいまで拡大したら東南に標準器が表示された。
標準器だけと言うことは東南に表示されているのが先ほどの標準器と言うことか。
これは後で分からなくなることが確実だな。表示機能とかないのかな。
お!なんか出た
<蟻人族 本国 標準器>
<蟻人族 標準器>
内容変更できないのか?・・・できないな。これは私が認識している地名が出ているということか?
この国の正式名称を聞いていないからこうなるということだろう。この本国も正式名称を聞けばその名前がはいるのか?
イルゼ氏の蟻人族の街名を知ればその名前がはいるのか?
まあいい。このまま限界まで拡大すれば迷宮都市が表示されるのではないだろうか?
限界まで拡大を・・・!
また転位しやがった。
「ここが目的地になります。少々お待ちください」
杖を持った蟻人さんとともに標準器の前に残される。
もう一度地図表示。標準器が1つ表示されている。
限界まで拡大・・・おや?他の標準器は写らない。
ここの標準器が<蟻人族 本国 標準器>となるということか?
先ほどのはいったん近くの標準器に移動したので地図機能の範囲内だったので表示されたということか?
むむむ・・・
「こちらにどうぞ。フェルナンド様一行は全員無事ということです。今は負傷者の治療にあたられておいでです」
地図を見て考えていたらいつのまにかイルゼ氏が戻ってきていた。
「フェルナンド?」
「・・・救護団の団長様です」
・・・任務終了ー。私の冒険はここまで。完。
蟻人族編が始まったばかりだが終わってしまった。
まあいいか・・・とぼとぼとついていく。
地面に大きな扉がありそれが見渡す限り多量にあるようだ。
地下都市と言うことなのか?まあ蟻だけに。
倉庫のような場所に入ったらなんとも言えない匂いが鼻についた。
床には簡易のベットの様なものがあり負傷している蟻人さんが多量に寝かされている。
その角っこにローブに杖装備の人族が固まって座っていた。
お・・・筋肉の塊のオッサン見っけ。
「おおお?クルーソー様?」
私が来ることの連絡はなかったようできょとんとしている。
「えっと・・・フェルナンドさん?迷宮都市からの援軍第一号で来ました。イルゼさんからは全員無事と聞きましたが念のため聞きますが全員そろっていますか?」
きょとん顔が治らない。おおお・・・イエメンエルフからの巻物を見せないといけないのか?
団長に巻物を渡すと団長の顔色が変わった。団長は巻物を開かずに返してきた。
「中は見なくていいんですか?」
「不要です。報告いたします。団員は全員無事です。がしかし蟻人族シリル殿の要請をうけ私の判断でアンテッド駆除に参戦し団員を危険にさらしました。私の責任です」
どうしてこの人たちはこんななんだろう?すぐ責任がどうのこのと言うよね。よく分からんな?
「その件はアルゴランの指示と説明を受けてるんで構わないです。わたしは救護団全員の救助を命じられただけなんで。で・・・ここで何座ってるんですか?」
「負傷者の治療を行っていたのですが・・・アンテッド退治で魔法を使いすぎたのもあり魔力が尽きました。魔力の回復のため休憩をしています」
「ポーションを持って来ていますよね?」
「ポーションはすべて蟻人族に渡しております」
なるほど・・・治癒能力を負傷者が上回ったということね。
「では・・・ポーションはこれ。魔力回復ポーションはこれ。使ってください。あ・・・空瓶は返してくださいね」
ポーションとMP回復ポーションをアイテムボックスから取り出す。
「わたしも負傷者の治療にあたりましょう。まずあなたたちは魔力回復ポーションを使ってください」
ん・・・蟻人さんの救護兵らしき人たちがざわざわしている。
「どうぞ?使ってもいいですよ」
ん・・・誰も手を出さない。
「我らは迷宮都市の援軍です。われわれの物資に手を出すことは出来ないということでしょう」
私が良いと言っているのにか?げせぬ。
「それに・・・蟻人族はポーションを飲んでから効くまでに時間が掛かるようです。なので傷口にかけるしかないのですが・・・」
傷口にかけても効くがポーションが多量にいることになるからな。
「では・・・魔力回復ポーションで魔力が回復するまでの間ポーションを傷口にかけて回ってください。惜しまずかけていいです。そっちは軽傷者からでいいでしょう。私は重傷者を見ます」
団員がMP回復ポーションを飲みポーションを持って移動する。
「で・・・重傷者はどに寝かしてる?」
「?」
話がつうじてないような?お!もしかしてトリアージが無い?
「負傷の程度でランク分けとかしてない?」
「ええ・・・たぶん」
くそう・・・どうする。これだと軽症者を治療中に重傷者が死んでしまうがな。
!
ここで地図機能だな。
地図を出して蟻人の負傷者のみを表示。ヤバいのを真っ赤。中くらいを黄色。軽傷を青。
およよ・・・この部屋には黄色と青で隣の部屋が赤がいっぱいと黄色が少し。
隣の部屋に移動する。
こっちはベットもなく床に転がされているだけだ。看護兵もいないな。
「こちらは助からないと判断された者たちが収容されています」
後ろに立つなと・・・と言うか誰だ?
イルゼさんなのか?よく分からんな。
ん・・・よく見ると先ほどの部屋の連中は負傷していない場所以外は鎧を着てたがここの蟻人は鎧を着ていないな。
そこはどうでもいい。治療していくか。
「お待ちを。助かるのもから治療を行ったほうがよろしいかと」
・・・まあそうだけどな。
「それは私が判断する」
結構ひどい怪我だな。急いでいこう。
まず
「ピュリファイ」
魔法発動<ピュリファイ>
ここまで傷が深いと破傷風対策がいるだろう。
ん・・・すぐにヒールをかけようと思ったがピュリファイが作用している最中はヒールをしないほうがいいみたいだな。
「ピュリファイ」
魔法発動<ピュリファイ>
「ピュリファイ」
魔法発動<ピュリファイ>
「ピュリファイ」
魔法発動<ピュリファイ>
まずピュリファイを掛けて回る。
ピュリファイが終わった後に
「ヒール」
魔法発動<ヒール>
「ヒール」
魔法発動<ヒール>
「ヒール」
魔法発動<ヒール>
お・・・地図反応で赤色から青色になった。傷自体は治ったんだが青は消えないのか?
お・・・イルゼさんが後ろにいる。私の行動が気に入らないのか?
おや・・・私に深々と頭を下げた。?なぞの人物だな。
ヒールは普通に効いて重傷でなくなるのは確認した。
まくっていこう。
「ピュリファイ」
魔法発動<ピュリファイ>
「ピュリファイ」
魔法発動<ピュリファイ>
「ピュリファイ」
魔法発動<ピュリファイ>
「ヒール」
魔法発動<ヒール>
「ヒール」
魔法発動<ヒール>
「ヒール」
魔法発動<ヒール>
・・・
結構な時間が掛かったが全員の治療が終わった。全員地図反応が青なのを確認して先ほどの部屋に戻る。
こっちはまだ治療中だった。なにちんたらやってるねん。
地図反応が黄色の負傷者の所に移動しピュリファイとヒールのコンボ。
黄色反応は消えた模様だな。
お・・・ガチの鎧を着た蟻人がこちらにやってきた。
「フェルナンド殿よろしいだろうか?」
「どうぞ」
団長に話があると。
「いまから取り残された負傷者の救出にむかう。申し訳ないがご同行お願いしたい」
?なんでこっち見るフェルナンド。・・・お。今は指揮権は私が持っているのか。
「良いでしょう。私が行きましょう。フェルナンドさん。同行させる兵を選んでください」
「分かりました」
フェルナンドさんが答えた瞬間その後ろの女性が叫んだ。
「なにを言っているのです。無理です」
無理ってなに?
「命令だ副長。魔力の余裕がある者だけで行く」
「あまりに危険です。明日の朝まで休憩すべきです。それになぜ我々が命令されなければならないのです?ここでの最高指揮官はフェルナンド様です」
「今はクルーソー様が指揮権を持っておられる」
「バカな!信じられません」
まあそうだな。普通はそうだよな。
指揮権の巻物?を取り出しす。
副長がそれを受け取ろうとしたら団長がその手を掴んだ。
「止めよ」
「どうしてですか?団長!信じられません!」
「信じられない?でどうするつもりだ?」
「この巻物が本物かどうかを」
「封を説いて確認するとでも?」
「そうです」
「意味を分かって言ってるのか?」
「え・・・」
「この軍権は本物だ。私が確認した」
どうやって?と少し思った。
「この軍権を疑い封をといたとしよう。本物ならば明確にアルゴラン様への反逆となる。我らは腹を切らねばならん。逆にもしこの軍権が偽物なら我らはクルーソーさんを殺してでも捉えなくてはならない」
・・・まったくどういう理論か分からんな。
「申し訳ありません。クルーソー様」
フェルナンドさんが謝ってきたが・・・この話のからくりを・・・聞くのはダメなんだろうな。
「かまわないです。私を疑うことに関してはですね。それはいい。だが・・・明日の朝まで休憩の提案はいただけません」
「え?」
「明日の朝まで休憩して万全の態勢で行こうとする。一見正しいように見える。私たちにはね」
何不思議そうな顔してるのだろうこいつら?
「取り残された負傷者の救出ならば今すぐでなければならない。負傷者はもういないかもしれないしもう間に合わないかもしれない。それでもいま行かなければならない。それとも・・・あなたの体調が万全なら死者が生き返らせますか?」
「われわれは魔力も尽きています。ポーションで補うのも限界があります。同行の要求は我々の能力をこえています。不可能です」
「今回のミッションを行う能力があなたがたには無い。それで?」
「は?」
「それはあなたがたの実力が有りないということですよね?だからなんだというのです?」
「・・・」
「実力不足。それはあなたたちの問題であって私の問題ではない。まあ・・・あなたたちを選抜した団長の責任・・・というかここにあなたたちを送り込んだアルゴランの責任と言うことですね。だから?」
無言だな。・・・魔導兵団も救護団もなんかおかしな連中が多いな。
「クルーソー様。兵の選別完了しました」
フェルナンドさんが3人のローブの男を連れて立っている。
「そうですか。それでは行きますか」
アンテッド退治アンド負傷者回収にな。ここからが本番だ。
今までは茶番と言うか余技と言うことなんだよね。




