7-8.ただ惰性で流される
「ここから離れるな言われても困るんですが?」
「なにを言っとるにゃ?我が弟子。ここにいないでどうやって森を守るにゃ?」
「弟子?」
「おまえのことにゃ」
いつのまに弟子になった?というか何の弟子なんだ?・・・森を守る職人の弟子か。
「森と言うのは・・・この山脈全部ですよね?」
「そうにゃ」
「500kmは有りますよね?守るどころか私では見回りすら出来ないんですが?」
「走ればすぐにゃ?」
まったく常識が通じないな。というか猫だからな。いったいどうすればいいものか。
「というか・・・私がここにいなくても森の見回りは出来ますよ」
「どういうことにゃ?舐めたこと言ってるといてこますにゃ?」
そんな濃厚で明確な殺意を向けないでください。私のおでこに爪を立てないでください。
たしかここら辺のはず。埋めて置いた地下道の土をどけてゴーレムを地上に移動させる。
このままでは芸が無いというか鎧の形のゴーレムが森にいるのは不自然極まりないのでどうにかしないと。
どうするか・・・!猫型でいいのか。まず普通の猫の大きさで猫型ゴーレムを石から作成。
出来るもんだ。最初からいい感じの猫だ。
「これと同じものを10km置きで山のこちら側とあちら側で100機偵察用に配備します。後は戦闘用に中型を20機大型を5機配備すればいいかと」
猫さんが私の頭から飛び降り猫型ゴーレムの前に移動した。猫型ゴーレムが砕け散った。
「もろいにゃ。あっちで作れにゃ」
猫パンチで粉砕と言うことか。全く見えませんな。
あっち・・・鉄で作れと言うことか。鉄を取りに来た意味が・・・どうにか誤魔化さないと。
脛に猫パンチを喰らった。超激痛だ。心が読めるのか。
鉄で猫型ゴーレムを作成する。重さは40kg程度なので100機で4トンなのでまあどうにかなるか。
中空構造だと鉄の消費量は減るがその分込めることが出来る魔力も減る。
このゴーレムはこのまま作成するか・・・重過ぎて地面にめり込んでいる。5kgまで軽量すればほぼ猫と同じ重さになるので5kgで作ろう。これだと消費する鉄は500kgで済む。
出来上がった鉄製の猫型ゴーレムについて猫さんは何も言わない。このうちに猫型ゴーレムを量産する。
過去の事例と同じように回数を重ねると精度が上がり消費魔力が減って行く。
次は中型の猫ゴーレム。虎ぐらいの大きさでいいだろう。そのままで作ると1.6トンだがこれも200kgまで軽量化する。
大型ゴーレムは中型の倍にしよう。体積は8倍なので13トンほどだがこれも中空化して1.6トンで作成。
ただしこれには魔石を入れて性能を上げることにしよう。戦闘用だからな。
お・・・大型ゴーレムも思ったより機敏に動く模様だ。後はこれに命令を出すだけだな。
「さっきの魔石は全部にいれろにゃ」
「は?」
「いれろにゃ」
私のおでこで爪を研がないでください・デーモンの魔石を魔道具用に加工しゴーレムの中に入れるようにして再作成する。
「それと大きいのはたくさん入れるにゃ」
「え?」
「いれるにゃ」
中型の猫ゴーレムには4個、大型の猫ゴーレムは10個入れるまで許しが出なかった。
鉄は5kg*100体+200kg*20体+1.6トン*5で12.5トン。
デーモンの魔石は100個+4個*20体+10個*5体で230個。
鉄は今日掘ったうちの5分の1ほどしか使っていないがデーモンの魔石は一気に激減した。とほほだ・・・
「それで命令なんですが・・・森に立ち入るやつはぶちのめすでいいですか?」
「おまえひどいやつだにゃ。森の採取で生活しているやるらもいるのにゃ。木を切るやつ以外は無視でいいにゃ」
なんだと・・・木以外はいいのか?だったらなんで何時もわたしはボコられるんだ?
「では・・・森で木の伐採を行うものの排除を行う。小型ゴーレムは山脈の外周に10kmに1機ずつ配置で偵察と妨害行動を行う。中型4機と大型1機で100kmずつエリアを受け持ち小型ゴーレムの妨害で木の伐採を止めないものの強制排除を行う。これでいいですね?」
「そうにゃ。あとこの森は火気厳禁にゃ」
「では木の伐採と火を使用するものを排除するということで」
地図技能で山脈での配置位置を設定し、命令を出してゴーレムたちを移動させる。後は定期的に見に来るしかない。後は10km離れたゴーレムが情報の共有が出来るかどうかだ。出来る前提で猫型ゴーレムを作ったが・・・出来るよね?
むむむ・・・どの距離ならデータリンクが出来るかを調べてもし10km未満なら小型ゴーレムを増やさないといけないが猫さんの前でそんなことは出来ない。
「どうしたにゃ?」
いかん・・・ばれたら消される。だがこのまま放置もまずいな。
「大型1機に中型を4機付けていますので・・・小型ゴーレムにも4機ストーンゴーレムを付けようかな・・・と思いまして」
「あの脆いやつにゃ?役にたつのにゃ?」
「偵察の補助にはなるかと」
猫さんの反論はない。今のうちに作ってしまえ。小型の猫ゴーレムを石で400体追加で作って配備する。
「儂は眠いから寝るにゃ。この体の世話は任したにゃ」
よっしゃ。どうやらいろいろ誤魔化すことに成功した。人智の勝利だ。猫には負けませんよ。
一瞬子猫が寝たと思った瞬間子猫が飛び起き私の首元に飛んできた。そのまま胸当ての隙間に潜りこみ胸の谷間に入り込んだ。何やってるんだこいつ?
・・・は!しまった!この子猫の面倒を見ることが確定してしまった。
このままここに放置したら・・・地の果てまで追いかけられて頭を噛み砕かれる気がするな。
さて・・・だいぶ時間を食った。早く帰らねば。
猫型ゴーレムにしなかったアイアンゴーレムが56体をいるのでアイテムボックスに収納する。
残りのストーンゴーレムをアイテムボックスに収納するがあと少しが入りきらない。
入りきらないゴーレムは自力で移動させるか。となると河川敷を移動させるしかないが今はそこで海賊船の調査と修復が行われている。
おのれ海賊船・・・夜中に事故で燃えてもらうか・・・いやいやいや。そうじゃない。船は悪くない。
お!川底を移動すればいいじゃない!
川底を移動させるのならば重い方がいいだろう。収納したアイアンゴーレムをすべて出してストーンゴーレムを収納する。
アイテムボックスにはまだ入るがまあいいだろう。アイアンゴーレムはまっすぐ川にむかいその後川の中を北上。北の領地の北側より領地に入って家の周りで待機させる。明日の午前中には到着するだろう。
私も川方向に全力で移動する。川に着いたら来た時と同じように川底を・・・
アクアブレスは胸の谷間にいる子猫にはどう働くのだろうか?むむむ・・・
実験するわけには行けないのでいったん川を渡って対岸の森の中を移動することにしよう。これなら迷宮都市の見張りに見つかることもないだろう。
川を渡るのはフライとフローティングコントロールで・・・
それでは面白くない。この前に<浮遊><水流><風流>を試した石板を取り出す。
石板に浮遊と風流と水流の魔法を掛けてそれに乗り川を渡る。ゲームでないのだから川の向こう側も実在しそこを移動できはずだ。
出来なかったりしてな・・・当然川の向こう側に渡ることが出来た。
山の中に一旦入って北上する。これで迷宮都市からは発見されないはず。南の山で鉱石を採取していることを教えてやる必要はないからな。
こちらの山には採集をしている形跡はない。採取し放題だ。いや、まて。今日はまっすぐ帰ろう。
山の中を北上し北の領地の対岸に出る。先ほどのように石板に魔法を掛けて川を渡る。
そう言えば前回は水流の魔法を川で使ったら魔物が襲ってきたが今回は襲ってこない。この石板の大きさだとそこまでの影響がないということか。
領地の北から侵入し領地を通り抜けて農地の家に直行する。
農地の家ではパン焼きの最中だった。むむむ・・・おや。
食べるのに支障はないレベルだがパンの出来が非常に悪い。子供たちだけでパンを焼くのはまだ早かったか。昨日の感じではいけると思ったのだが。
明日からは焼くときに立ち会うようにするか。
まだ早いが夕食の準備を行い後は肉と魚を焼くだけの状態にしておく。
よし・・・後は夕方まで部屋でストーンゴーレムを元に戻して希少金属の抽出を行か・・・ん?
「魔法を教えてくだしゃい」
小さい女の子が近寄ってきた。さすがやる気の塊の集団だな。昨日はマジックトーチを覚えたので今日は・・・
「そうですね・・・今日は・・・ライトにしますか」
みんなを教室に集める。
「昨日はマジックトーチを思えましたよね。練習しましたか?やってみてください」
みなマジックトーチの魔法を使った。問題はないようだな。
「では今日はライトの魔法を・・・」
そう言えばライトは白魔法なので生活魔法からと言うことでマジックトーチからにしたんだった。
「今日はライトにいようと思ったのですがセラフィーナさんはどう思いますか?」
「昨日マジックトーチを覚えたので順番ではライトですが・・・普通はかなりの期間をおいてマジックトーチで練習を行うと思います」
むむむ・・・どうしたものか。
「では…洗浄にしますか。これは生活魔法ですよね?」
「はい・・・洗浄魔法は生活魔法ですが・・・」
む?歯切れが悪いな。
「が?」
「洗浄の魔法は習得が難しいのです」
「なぜに?」
「わかりません。ただ何が起こっているのかイメージするのが難しいからだと思います」
なるほど・・・私のイメージを説明してやって見せるしかない。タライを準備して水を張る。
「今日は洗浄を行います。洗浄とは・・・汚れを対象物から取る魔法です」
汚れた何かががあればいいのだろうが・・・まあいいか。
「例えばここに水が有ります。この水で手を洗えば手に付いている汚れが落ちます」
実際に水で手を洗ってみる。
「この手を洗うという行為が洗浄になります」
「洗浄」
魔法発動<洗浄>
「今は水の中で行いました。もしこれを服を着たままの体にかけると汚れが身体から服に移動することになります」
実際に私の体全身で掛けてみる。
「服にかければ服から汚れが取れます。その汚れは服から取れますが周りににつきますね。そういう意味でも服を水の中に入れてから洗浄の魔法を掛けるべきでしょう。今回は関係ないですが怪我に治癒魔法を掛ける前に洗浄を行います。傷口をきれいにすることによって怪我の治りが良くなりますし破傷風などの病気も防ぐことが出来ます」
「本当なのか?」
はむ?・・・気が付くとレオノーラさんがいた。その後ろにはアンジェさんがいる。
「確かそのはずですが・・・レオノーラさん的には違うんですか?」
「そんなことを言ってるやつもいたなーて感じだな」
「アンジェさんは?」
「確かに治癒魔法の前には洗浄をかけろと教わりましたが皆さんやってないと思いますね」
むむむ・・・・そうなのか。
「そういえばダンジョン入り口にいり教会の連中はそうやってるな」
そうだった。もともとそこを見てそうだと思ったのだったな。もしかして怪我に洗浄は要らないのか?
「セラフィーナさんは何か知ってますか?」
「怪我には洗浄をかける。出来ればピュリファイをかけると言われた気がします。そうしないと破傷風になってしますと」
むむむ・・・どういうことだろうか。白魔法の使い手が二人ともやっていないと言っているが実際には居るのか?というかやはり洗浄とピュリファイは違う魔法なのだな。
「まあそこら辺は流派の違いとかがあるのでしょう。余裕があればかければいいということでしょうね」
洗浄を連発で女の子たちにかけていく。マジックトーチで本人にかけられる魔法は本人にかけたほうが習得が早いことは分かっている。
全員覚えたが時間はマジックトーチよりも掛かった。遅くなったので夕食にするか。
夕食を準備して夕食をみんなで食べていると胸の谷間でごそごそしているやつが居る。
子猫がお腹をすかせて起きたということか。忘れていたな。
いったん自分の部屋に移動して子猫を胸の谷間から出す。皿に水と前回よりも多い量の魚とカニをほぐしたスープを入れて食べさせる。
この猫は北の領地で育てるべきかもしれんが今は私の部屋でいいだろう。
食堂に戻って食事のかたずけを行い自室に戻る。子猫は前回よりもお腹がパンパンになって寝ていた。
木の蔓で編んだ買い物籠にタオルをいれて子猫をその中に入れる。今日からこの籠は猫専用にしよう。
アイテムボックス内でストーンゴーレムから希少金属の抽出を行う。いろいろ考えないといけないことが発生したが・・・明日考えよう。今日は寝よう。




