13.新階層
階段を下りると石積みの通路だ。
そのまま進むと右に曲がり左に曲がる。
そこには先ほどミノタウロスと戦ったような部屋があった。
壁に一定間隔で松明が燃えている。
いや・・・先ほどの部屋に比べたらかなり大きい。
が・・・そこにいる魔物が問題だ。
両手用メイスを持ったスケルトンジェネラルが8。
大剣に大盾を持ったリビングアーマーが4。
ラージゴーレムが1。
これはWBであったイベントのラストボスの構成だ。
サービス開始何周年かクリスマスか何かであった時間限定のダンジョンアタックイベントでネタ4人衆と私のパーティが撃破したボスだ。
攻略ギルドも途中の階層で力尽きボスエリアに到達すらしなかったので話が大きくなった。
実際は攻略ギルドがボスに到達できなかったのは戦闘力でなく補給の問題だった。
店では回復ポーションと回復スクロールは等外と初級しか売っていない。
その回復量は初心者なら十分だが攻略ギルドの連中には全く足らない。
ポーションはクールタイムがあるうえ連続使用すると効果がなくなる。
中毒と呼ばれる現象だ。
回復スクロールはクールタイムも中毒もないが重ね掛けができない。
そのため初級では数分かけてHP、MPが数十回復になるため高レベルキャラでは全回復に数時間とかになる。
時間限定のイベントでは使い物にならない。
MP回復ポーションは店売りしていない。
そのため敵からドロップする初級の中や上のポーションを使うしかないがそのストックが尽きたら魔法での回復しかなくなりMPが尽きてしまうのだ。
連続戦闘を行った攻略ギルドはMP切れで撤退した。
彼らはいつもの癖で戦闘を回避しなかったため限度を超えた。
戦闘特化なので戦闘を回避する能力が低いのかもしれない。
廃人連中のなかにはMPが尽きてもむりやり進み壊滅したのもいたらしい。
わたしたちは戦闘最小で進んだ。
逆に私たちの癖だ。
ダンジョンでは素材回収を優先だ。
いい素材が取れない魔物とは戦闘しない。
戦闘の消耗分は中級回復ポーションと初級MP回復ポーション、回復スクロールで補った。
もちろん薬師のわたしが作ったものだ。
このイベントはポーション持ち&荷物持ち&資源回収役で参加していた。
後で知ったが攻略ギルドも薬師は育てていた。
採取する人材も別で育てていた。
だがそのときは初級ポーションしか作れなかったらしい。
これにはからくりがあって採取のレベルを上げないと採取した素材の状態が分からないためポーションの作成がうまくいかない。
素材の状態が違うことを考慮できないのだから当然だ。
これは作成全般で同じだ。
私は全部一人でやっていたため逆にそのことに気がつかなかった。
実はスクロールも作れることをみんなが知らないのを知ったのもかなり後のことだ。
そのボス戦の映像が公開され激震が走った。らしい。
イベントはすべての映像が公開される可能性がある、そういう規約だった。
職業やスキルを絞るのが主流だったのが変わるきっかけになったとかならなかったとか。
まあ実際には解析厨の新解釈が広まったというのが真実だろう。
ハイエルフがひとりでタゲを取り敵を殴り回す。
竜人が魔法のジャベリンを巨大な弓で連射。
弓技能で矢の数が激増して敵に降り注ぐ。
大盾と大杖を持った小人族が上級魔法を連射。
ドワーフ忍者がクリティカルで敵を瞬殺。
狐人格闘家が気功で敵を滅殺。
実際はそんなかっこいいものではなかった。
リザードマンから進化した竜人のボスの指示だった。
「エルフ。お前真ん中でタゲとれや」
わたしも弓か魔法で攻撃がしたかった。
「弓も魔法も中級上級覚えてるだけで鍛えてないから役に立たない。ちょうど盾士やってるからいいだろ」
と却下。
たしかに大盾+大杖の魔法使いをやるためにたまたま盾士鍛えていたが盾は持っていなかった。
「特別に裏ワザ教えてやる。この間教えたガーディアンプロテクションを唱えろ。」
ガーディアンプロテクションはパーティの防御力を上げて自分の防御力が下がる。
殺す気なのかと思っていると
「そこで防御を分け与える味方を指定しないでいると味方の上昇分が全部帰ってくる。これでかなり防御があがる。バグだなたぶん」
知っていてバグを使うとやばいのではと震えた。
その後仕様ということになった。
「それとプロテクションアップと盾士のディフェンスアップは重ね掛けが効く。それと気功術の金剛を使えば短期間なら耐えられるだろ」
盾士のディフェンスアップと気功術の金剛は防御力は上がるが攻撃力が下がる。
わたしがそれを言う前に
「大丈夫だ。攻撃力は足りてる」
ハイエルフがひとりでタゲを取り敵を殴り回すように見えた。
が与えたダメージはほぼない。
実際はタコ殴りにあっていただけだったのだ。
デコイというか撒き餌だな。
ボス戦の映像が公開されネタ4人衆は解析厨と弟子志願者に追い回され山に籠ったらしい。
外見と装備がとがりすぎているのですぐに見つかるのだ。
私はソフトレザーに弓装備で出歩いたため何事もなく過ごせた。
公開の映像はキャラクター名は非公開だった。
「映像すごかったですねー私も魔弓目指してますー」
といってすごした。嘘ではない。
それを4人衆に見つかって当然ボコらた。
さて逃避はここまでだな。
結論をいうと絶対に勝てない。
わたしはそのまま通路を戻り階段を上った。
前の階層に戻り地図を全部埋めよう。
困ったときは安全地帯でレベルアップが鉄則だ。
ミノタウロスと戦った部屋の扉が閉まっていた。
閉めた覚えはないが・・・
たしか向こう側から押して開けたはずだが・・・引いても押しても開かない。
かなり粘ったが開かない・・・下の階層の奴らには勝てない。
なので戻る必要があるが扉が閉まっている。
詰んだ・・・
階段の途中にある白い部屋で冷静になって考えてみよう。
白い部屋に戻り魔法陣の上に座ったところで異変が起きた。
白いワンピースを着た幼女が目の前に立っていたのだ。
前触れもなくいきなり現れた。
幽霊なのか?それともアンデッドなのか?
ここはやっぱり安全地帯やなかったんや・・・
セイクリッドアローしかない・・・
アンデッドでなく幽霊には効くのか・・・
と思った時に幼女がしゃべった。
「初めまして黒猫武蔵様。わたしは当ダンジョンを担当しているダンジョンコアです。お話よろしいでしょうか」
黒猫武蔵。
ああ・・・確かにキャラクターにそう名付けたな。
だれもそうは呼んでくれないが。
刀で二刀流キャラにしたかったのだ。すべったともいう。
ダンジョンコア・・・
そんな設定のゲームはやったことないのだが・・・
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