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6-3.ハットトリック

下には牢屋がありその中にはいろんな種族、いろんな年齢の女の子がぎっしり詰まっていた。

大事なことなので2度言いました。


さて・・・冷静に考えろ。


孤児が全員誘拐された。それも計画的に。

幻影魔法で隠していたが壁をぶち抜いて西に逃げていた。

西は川なので船で逃げると予測して・・・見敵必殺。


でここにいたる。

牢屋があって・・・女の子・・・誘拐された子達ということか。

いつから誘拐犯がここだけで誘拐を行ったと認識した?

誘拐犯の傭兵が80人ほどで孤児が40人ほどなのでこの船で全員乗って逃げる気だと思っていた。

確かにこの船に120人はかなりきついと思われる。

先客がいるとなると乗り切れないのでは。

ああ・・・孤児だけ載せて傭兵はそのまま馬で逃げる気だったのかもしれないな・・・

牢屋に女の子がいるなんて思いもしなかったなー。

船は右に傾いて沈みつつある。

大変なことになってしまった。

逆に考えるんだ!

檻に女の子を入れている。つまり人攫いの船だ。

よく考えれば誘拐犯の船か確認しないで襲ってしまっていた。

普通の商人の船であった可能性もあったが・・・彼女たちの存在でそれが無くなったと。

女の子たちは何か言っているようだがこちらには聞こえない。

防音の魔法か何かがあるのか・・・


いて!


振り返るとゴーレムにローキックを喰らっていた。

いったいなに?

ボーとしていると脇にパンチを喰らった。レバーパンチですよ。だめですよ。


は!


指示を出せと言うことか。

突入して皆ぶちのめせ!違う。

船底ぶち抜いて沈めろ!違う。えーと・・なんと指示を・・・


うが!


脳天に手刀を喰らった。

おう・・・首に来た。殺意すら感じるな。


「全騎突入。武装しているやつはぶちのめせ。牢屋を破壊して中の女の子を甲板に移動させろ」


<雪風。船を下から押し上げろ。川岸に移動させて座礁させろ>

<烈風。マストを掴んで船を川岸に移動させろ>


掘削魔法で開けた穴に飛び込む。穴の回りには武装しているやつはいない。

降りたら女の子の悲鳴や泣き声が聞こえた。

私のひざ下まで浸水している。パニック状態だな。

檻を大剣で切断し破壊する。


「甲板に移動しろ」


檻を破壊して回る。これで最後。

後は・・・進水箇所を探す。

見つけた。

思ったよりでかい穴が開いている。

どうやって塞ぐか。魔法で水を凍らせるか。それだと私も凍るな。

閃いた。

アイテムボックスに船底に溜まっている水を入れその瞬間アイスバーストの魔法を掛ける。

よし。塞いだ。あれ・・・まだ進水しているぞ。

こっちにも穴が開いている・・・

アイテムボックスに水を回収してアイスバーストで凍らせる。

まだ穴が開いている。水を回収してアイスバースト。

さっきの穴の氷が外れて浸水が始まった。水を回収してアイスバースト。

すると違う穴から浸水が。水を回収してアイスバースト。

このままでは埒があかない。永久ループに陥っているがどうにもならん。

結構な時間が経ってから衝撃を感じた。どうやら座礁に成功したようだ。

船の中を確認して回るが誰もいない。

甲板に上がると女の子が30人程度ほどいた。

ゴーレムたちは円形で防御態勢を取っている。


「今から船を降りる。ゴーレム隊は手を貸してやれ。全員降りたら円陣で防御」


この船にいた誘拐犯はどうした?

見回すがいないな。川の上だからにげられないはずだが?

地図情報ではいない。川の下流を鷹の目で検索すると・・・見つけた。

水死体となって川を流れて行ってる。ゴーレムさんたち容赦ねえな。

烈風は北の森に戻らせる。雪風は自由行動。

だがこのままでは移動もままならない。どうするか・・・

お!

地図に反応有り。これは迷宮都市の兵士だな。

連絡を取って迎えを寄越してもらおう。

反応の合った兵士の元に急ぐ。

およよ・・・

兵士たち騎乗しているが冒険者風の連中を縛って移動させている。

逃げだした誘拐犯たちがいたのか?

北から馬が走ってきている。乗っているのはイケメンエルフだな。

イエメンエルフが兵士たちの元に着くのに少し遅れて私も兵士の元に到着する。


「こいつらはいったいなんだ?」

「は!漁村を襲って略奪を行っていました。迷宮都市で見たものもいるので誘拐犯の仲間と判断し捕縛をおこないました」


船で孤児を回収するのを見られて通報されたらまずいので襲撃したというところか。


「我々は誘拐犯ではない。傭兵だ。軍事行動中であり捕縛される謂れはない」

「そうだ!不当逮捕だ」

「縛って引きずりやがった。捕虜虐待だ。未開人はそんなことも知らんのか」

「そうだ!捕虜虐待だ」


捕縛された傭兵たちがにやにやしながら喚きだした。

たしか・・・こういうときは喋る元気が無くなるまで棍棒でどつきまわすんだったっけ。


「屑どもが!」


アルゴランが傭兵の顔に蹴りを入れた。顔が破裂して消滅した。


「聞いたような」


連続2発蹴り。


「口をきくな!」


連続3発蹴り。


「ボケが!」


捕縛された傭兵がすべて首なし死体になった。

やる男だとは思っていたがここまでとは。怒らせないようにしよう。

兵士の皆さんも引いている。ドン引きだ。


「で・・・クルーソーさん。どうした?船は見つけたのか?」

「船は発見して強襲し鎮圧したんですが・・・」

「が?」

「船の中に檻があって女の子たちが30人ほどいまして」

「なるほどな。誘拐した子たちを運ぶ船だったということだな」

「まあそうかと。で移動する手段を回してほしいんですが」

「ああ。今の話は聞いたな、伝令に行ってくれ」


アルゴランが兵士に命令すると兵士が馬で北上していった。


「漁村の様子はどうなんだ?」

「は!けが人が多数いますが死人はいません。先ほど救護団に要請を出しました」

「そうか・・・クルーソーさん。そこの子たちの様子はどうなんだ?商品として扱われていたなら怪我とかはしていないと思うが」


おおお・・・全く見てなかったな。


「船をわざと座礁させて河辺に下りてもらっています。けが人はいなかったと思いますがたしかに衰弱はしているかもしれませんね。今から見に行きます」


爆走して船まで戻る。

女の子たちは船のところにそのままいた。全員座り込んでいるか倒れ込んでいる。

これは沈没しそうな船から逃げてきて疲労困憊なのかそれとも衰弱していたのか。

小さな女の子が近づいてきた。


「おみず・・・おみずください」


川の上にいた船なのに水を支給してないのか?解せぬ。

アイテムボックスからコップを取り出してクリエイトウォーターで水を作って渡す。

女の子が皆集まってきた。

錬金術でコップを解凍しクリエイトウォーターで水を入れて渡すを繰り返していく。

コップを奪って飲む者が現れた、いかんな・・・

コップを奪ったものに対して覇気を当てる。


「小さい子よわっているものが優先だ。今度そんな真似をしたら・・・ふかの餌にするぞ!」


がくがくと首を縦に振った。分かってもらえたようですな。

全員に行き渡るまでコップを錬金術で解凍し続ける。

大き目の鍋に水を入れ真ん中に置く。おかわりはセルフで。

迎えはすぐには来ないだろう。

といってこんな時に出す食べ物はない。肉焼くわけにもいかず・・・

最大の鍋を取り出す。昔釣って三枚におろしておいた魚を小さくほぐして鍋に入れる。

蟹の肉もほぐして追加で入れる。

そこに水と塩をいれヒートの魔法で加熱する。魔法を使えば料理も一瞬だな。

味見をすると・・・激ウマだ。アイシング魔法でいったんぬるくする。

皿とスプーンを錬金術で解凍しぬるくした魚介スープをふるまう。

女の子たちは無言でスープを飲んでいる。

暫くすると騎乗したアルゴランと兵たちがやってきた。


「人が悪いな。クルーソーさん。迎えは来てる様だぞ」


何を言ってるんだお前は?

見てみると・・・は?

騎乗した鋼ゴーレムが10騎を先頭に農地巡回用馬車3台と騎乗したストーンゴーレム60騎と馬ゴーレム40騎がこちらに爆走していた。

もんさんが手配して廻してくれたのか・・・むむむ。

確かに移動手段を依頼するまでもなく自分で呼べばよかったのか。

衰弱している子を馬車に寝かせて後は小さい子を座らせる。

乗り切らない子は馬ゴーレムに乗せてゴーレムに補助させて移動を開始する。

元リビングアーマーゴーレム4体と魔鉄ゴーレム32体も何事もなかったように騎乗させて移動する。

良く考えればヤバかった。

私一人で南下したはずなのに現地にはゴーレム36体はまずかった。

なんとかごまかせないかな・・・


「なあ。クルーソーさんいいかな?」

「はひ」


やばい!声が裏返った。


「この女の子の件なんだが・・・」


おお・・・そっちですね。助かった。


「いったんうちの舘で引き取って治療と聞き取りを行うが・・・その後はクルーソーさんに引き取ってもらうことになる」


はぬ?なんですと。


「なぜに?」

「迷宮都市は迷宮に挑む者しか住めない。今回は特別に入れるということだ」

「孤児はここに集まるんじゃなかったですけ?」

「私宛に孤児が送られてくるということだ。そうなるとその子の保護者は私になるからな。今回の場合だと保護者は君になる、それと他の問題もある」

「助け出したのが私だから保護者は私と・・・他の問題とは?」

「この都市では奴隷は禁止になっている、だがそうでない地域もある。もし・・・あの子たちが奴隷で正当な所有者が現れると厄介だ」

「ここで禁止ならそれでいいのでは?」

「万が一正当な持ち主が現れたら・・・奪われた財産を返却してくれといわれると対処に困るということだ。そういう場合は・・・犯罪者集団と戦って正当に得た奴隷だと言い張ればどうにかなる。所有権を主張されたらおなじ論理でやりかえすということさ」


むむーそんなものか。誘拐された子30人か・・・こまったな。


「ではとりあえずその方針で。聞き取りをおこなうのですよね?近くの子ならどうにかして故郷に送り返しましょう」

「一人ひとり連れていくのかい?」

「いいえ。その地域に行く商人に依頼して連れて行ってもらうか・・・近くなら冒険者ギルドとかに依頼するかですね」

「莫大な予算が発生するんだが・・・」

「この分に関しては私が負担しますよ。それとお願いなんですが彼女たちには兵士の監視を付けてください」

「監視?護衛でなくてか?」

「監視です。考えすぎかもしれませんが・・・もしかすると彼女たちのなかに誘拐犯の仲間がいるかもしれません」

「どういうことだ?」

「私が強襲した特に誘拐された側にもぐりこんだ。かも。もしくは暴動を抑えるため彼女たちをおとなしくさせるために最初から配置されていた。かも。それと・・・誘拐される前の問題もあります」

「誘拐前?」

「たしかに誘拐された。だからといって普通の善良な一般市民だったとは限りません。犯罪組織の一味だったかも」


たしか・・・いろいろなコミックや小説でネタになるのはこういう感じだよな。警戒しとかないと。

そんなこといいながら迷宮都市に戻りいろんなことの処理を終えたのはもう日がすっかり暮れてからだった。

つかれた。拠点に戻って寝よう。


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