6-2.魚網鴻離
この違和感ははいったい・・・
烈風が近づいてきた。後回しにしていくか・・・
いや、違うな。なんだか気になる・・・が分からない。
地図技能で確認。
おや・・・何かがいる。
何も見えない。地下に小動物でも・・・!
「ライトニングオーブ」
魔法発動<ライトニングオーブ>
悲鳴が上がった。
見えない何かがいるということだ。
領地南の農地で感じた違和感と同じと言うことであったと。
そこには娘が倒れていた。
ただ頭には角が生えていて腕には鱗状になっている。
角だけなら竜人族なんだが・・・鑑定は
<魔族>
魔族としか出ないな・・・むむむ。
違和感は消えた。ということはこいつが幻影使いなのか?
違うか。農地の幻影はかなりの時間残っていたようだしな。
まあ本人に聞いてみるか。魔族の娘は立ち上がった。
「おまえ・・・誘拐犯の仲間だな?」
「違う!私は捕まって・・・やらされていただけだ」
「やらされていた?何をだ?」
魔族は答えない。零式を抜く。
「幻影だ。私は幻影魔法が使える」
こいつが幻影使いと。
「さっきの違和感は幻影なのか?お前を攻撃したから幻影が解けたのか?」
「幻影は攻撃を受けたり誰かが触ったら解けるんだ」
思ったより使い勝手が悪いな。
「土壁を破壊したのもお前か?」
「違う」
さっき倒した連中かアルゴランが切った連中の中に土魔法使いがいたのか。
「捕まったといったな。幻影魔法があるならいつでも逃げられただろう?」
「逃げてどこに行けと・・・角があってこんな鱗があるやつが生きていける場所なんかない。ここにいるしかなかったんだ」
危機探知!
探知先は魔族の胸からだ。
何か仕掛けていたのか。
零式でそこを突く。
本来なら貫通するはずだが途中で止まった。危機探知が止まらない。
?
そう思った瞬間魔族の胸から何かが飛び出し刀と左手首を覆った。
瞬歩で後ろに下がったが間に合わなかった。
手首から腕に上がってきた。一体これは・・・
鑑定が通らない。二の腕にまで上がってきた。これはいかんな。
右手で剥ぎ取ろうと思ったがたぶん右手も同じ目にあうな。
マジックハンドを使って腕から剥ぎ取ろうとするが柔らかすぎでうまく行かない。
スライムみたいなものか。だとすると
魔法発動<着火>
着火魔法で炙るとスライムもどきは後ずさった。
着火魔法に魔力を込めて威力を上げて謎のスライムもどきを炙っていく。
ほぼガスバーナーのような火力なので自分の腕も痛いが仕方がない。
刀まで後退した瞬間スライムもどきは魔族の娘に向かって飛んだ。
武技発動<縮地>
武技発動<吶喊>
飛翔中のスライムもどきに零式を付き差すとまた私に取りつこうとする。
取りつかれる前に刀を地面に突き刺した。
無詠唱 (アイスバースト)*4
魔法発動<アイスバースト>*4
刀ごとスライムもどきにアイスバースト4連発。
動きは止まったが・・・これはいったい?零式から外そうとするが出来ない。
烈風が近くまで来ている。後回しにするか。
ふとアイテムボックスに入れようとしたら入った。と言うことは死んだということか。
経験値はなかったような。
魔族娘を見てみると・・・鱗がなくなっていた。
胸からは血が噴き出し口からも血を吐いている。なんか言っているな。
「死にたくない・・・死にたくないよう」
泣きながらこっちを見ている。くそう・・・その手には乗らない。こいつは誘拐犯の仲間。
・・・くそう
ヒーリングポーションをぶっかけた。傷がみるみるふさがって行く。
とはいえどうするか・・・このまま放置しても逃げられるだけなんだが。
ん・・・ステータスが死亡に変わった。傷は完全に塞がったんだが・・・
しょうがないのでアイテムボックスに入れようとしたら入らない。
あれ?
ステータスは死亡なので入るはずなんだが?というか死んでるよな?
ほかに調べる方法はなにかないかな。
「使い魔」
(名前を付けてください)
むむー死亡しているのにアイテムボックスに入らないうえ使い魔魔法が使えると。
謎だな。
は!
しまった。
また変なのを使い魔にしてしまった。使い魔はキャンセル出来ないんだった。
烈風が迎えに来た。後で考えよう。魔物娘をアイテムボックスに格納した。
旋回した烈風に飛びつき誘拐犯の帆船に向かって飛ぶ。
前にぴーちゃんが見つけたところから北上中のようだ。
雪風が川の中をすさまじい速度で移動しているのが分かる。
帆船に接触するのはほぼ同時か。
いた。
このまま突撃して甲板に飛び乗るとしよう。
急速に帆船との距離が詰まる。
烈風が急降下を始めた。船の手前で話してもらえばバッチリだな
どうやら船の上で大勢が何やらやっている。どうやらこっちに気付いているようだ。
巨大カタパルト、クロスボウ、魔法がこちらに放たれた。
それと同時に烈風が私を投下した。
おう・・・
何してくれてんの?このままだと敵の攻撃にわたしが突っ込んじゃうでしょ!
まあ確かに船の甲板への直撃コースではあるけど・・・
これは敵の攻撃をほめろと言うこと。
対空攻撃で爆弾を早期に落とした艦攻と言うことだ。
だが必中コースなのと私が落下を修正できるので必ず当たるんだが。
うお!
まずい。
カタパルトから発射された矢がかすめたぞ。韜晦してる場合じゃねえ。
魔法発動<シールド>*10
魔法や矢、ボルトが多量にシールドに命中した。何枚かシールドが破壊された。
だがこのままなら甲板にまっすぐだ。着地と同時にゴーレムを出して制圧だ。
その瞬間帆船が急激に右方向に回頭した。
帆船にではあり得ん機動だ。というかよく見ると帆を上げてない。
どうなっている?魔法なのか。
フライの魔法で落下方向を修正しようとした瞬間凄まじい風圧で水面に叩きつけられた。
ダウンバーストの魔法か。水面に落ちた衝撃でシールドがかなりとんだ。
私目掛けて魔法がまた飛んできた。
あばばばば!
水の中では電撃系は効きますな。よく分かっていますな。滅多打ちですな。
なんか水が塩味がするような気がする。
なんかドボンって音がしたような・・・
私の元まで来た雪風が華麗に急激なターンを決めた。これって・・・
ほべ!
凄まじい衝撃で宙に打ち上げられた。これって・・・爆雷か!
一瞬気を失ったが水面に浮いている私に銛や魔法が飛んできたので目が覚めた。
このままではいかん。
魔法発動<アクアブレス>
アクワプレスで全身に空気の層が出来る。
その層は体に固定されるわけでないので体は水に沈んでいき多量の泡が昇って行く。
フライを掛けているので水中を飛ぶように移動は出来る。
だがこのままでは船に取りつく前にフルボッコにされる。
<ぴーちゃん。烈風。上空から全力攻撃>
<雪風。船底に攻撃。沈めろ>
雪風が船底に取りついて鋏で攻撃をしている。
上ではぴーちゃんと烈風の連続攻撃が行われている。
この間に取りつくか・・?
雪風が急速潜航した・・・は!
おごっ!
またもや爆雷を喰らった。マジで痛い。全身バラバラになりそうだ。
装備をオリハルコン装備に変更する。被弾覚悟で空中に飛び出して乗り込むことにしよう。
船に向かって水中をフライで飛ぶ。
マジックハンドで船を掴んで甲板に飛び乗る。
剣で攻撃しようと私に近づいてくるのが数人いる。
どうやら急襲は成功のようだな。
その数人に叩き付けるように元リビングアーマーゴーレムを4体アイテムボックスからだす。
ゴーレムがこちらに向かって来ていた敵を跳ね飛ばして進んでいく。
これいい感じだな。
魔鉄ゴーレムも32体同じように周りにばら撒くように出して甲板の制圧に乗り出す。
「ライトニングオーブ」
魔法発動<ライトニングオーブ>
「ライトニングオーブ」
魔法発動<ライトニングオーブ>
魔法を2発撃ったところでやることが無くなった。
急に船の速度が遅くなった。
魔法使いが風魔法か水魔法を使って移動させていたが使い手がそれどころでなくなったと。
甲板には敵はいなくなった。船は右に傾いて少しづつ沈んでいるようだな。
甲板の下から音がするようだ。
敵が潜んでいるのか?それとも船員か?
地図技能によると・・・確かにいるな。
警告して武装解除するか。
拒否したらゴーレムを突入させて殲滅するしかないが・・・
敵が待ち構えているところに突撃はいやだな。
先ほど迷宮都市で仕入れた魔法を使うか。兵士が使っていた技能。
「伝令」
魔法発動<伝令>
どうやら風魔法だな。声の強弱も変えられるし対象も選べるようだ。
声を小さくして指定の人物に伝えることもできるということか。
船の甲板の下全体を対象にして声は大きくする。
「武装を解除して出てこい。40秒で出て来なければ命の保証はしない」
40秒待つが誰も出てこない。舐められたもんだ。
喫水線がどんどん上がっているのでこのまま出入り口を抑えていれば溺れるな・・・くくく。
まあ時間が惜しい。と言ってこのまま突入は危ない気が・・・
閃いた!
掘削魔法で甲板に穴を開けてそこから投入しよう。戦術的奇襲ってやつだな。
「掘削」
魔法発動<掘削>
甲板に掘削魔法で穴を開けた。やったことなかったが出来るもんだな。
中を見ると・・・
ん?
下には牢屋がありその中にはいろんな種族、いろんな年齢の女の子がぎっしり詰まっていた。
ナニコレ?




