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ホムンクルスの箱庭 ~Seven deadly sins~ 第1話 Sloth Beast ~エピローグ~

かなり久しぶりの更新です( ;∀;)エピローグだけですが、よかったら読んでください。

 気付いた時には見覚えのある床に倒れていた。

 それはそうちゃんの中にある皆のおうち。

 ソフィがハッとしたように身体を起こして辺りを見回そうとすると。


「う、うーん、よく寝た。」


 大きな伸びをしながらアハトが同じように近くの床から起き上がる。


「お、どうしたソフィ。」


 そして、何事もなかったかのように声をかけてきた。


「どうしたじゃないわよ!!あなた大丈夫なの!?」


 ソフィは勢いよくアハトにのしかかると、その身体や顔にぺたぺたと触る。


「ふう・・・何ともないみたいね。」


 いつだったか自分がヌルに操られた時のように何かされているのではないかと心配したのだが、とりあえずは大丈夫そうだ。


「そ、そうか・・・ところでどいてくれると助かるんだが。」


 ごほん、と咳ばらいをしつつアハトは後ろに視線を送る。


「いや、僕たちのことは気にしないで続きをどうぞ。」


「へ・・・?」


 慌てて後ろを振り向くと苦笑しながらツヴァイがこちらを見ている。

 その隣では何を勘違いしているのか知らないが、きゃーきゃー言いながらフィーアが顔を赤くして続きを待っていた。


「ま、待って・・・!?何か勘違いしてない?言っておくけど私は・・・!」


「だ、大丈夫だよソフィ!ちゃんと後ろ向いてるから続きをしても!!」


「だから違うんだってば!」


 フィーアは思いこみが激しいところがあるので、この様子だといくら訂正しても信じてもらえなさそうだ。


 その上・・・


「紅音、後ろを向いているだけじゃだめだよ。

 とりあえず他の皆の様子も気になるから見に行ってみよう。」


 フィーアの手を引いてツヴァイがその場を去ろうとしたかと思うと。


「それじゃあ、ひと心地ついたら2人も移動してきてね。」


 肩越しに振り向いてにっこりと笑ってから部屋を出て行った。


「だ、だからあ・・・」


 何を言っても無駄と分かり、ソフィが大きなため息と共にうなだれる。


「やれやれだな。」


「ほんとにね、誰かさんが夢見心地で操られたりするからこういうことに・・・」


 アハトが全部悪いわけではないのだが、とりあえずソフィは彼をじと目で眺める。


「何を言っている、俺は夢なんか見ていないぞ。」


「本気で言ってるの?」


 あの世界でのアハトは夢に捕らわれて操られていたのではないのだろうか?


「ああ、俺はグレネードの実験さえできれば夢だろうが現実だろうが一緒だからな。」


「じゃあ、あの時に意識があったわけ?」


「いや、まったく!」


「やっぱり操られてるんじゃないの!!」


 アハトが夢を見ていたか見ていないかはよく分からなかったが、どうやら操られていたことに変わりはないらしい。


「そういうソフィこそ夢を見せられたんじゃないのか?」


「え・・・そ、そーね。」


 そう言われて思わずソフィは視線を逸らす。


「どんな夢を見せられたんだ。」


「あー、うん。あんまり人に言いたくない夢かしらね。」


 あんまりどころか絶対に知られたくないので、今後あの夢に関して口にすることはあるまいと思いながらもそう答える。


「そうかそうか、ところでソフィ俺の記憶に違いがなければ。」


「ん?」


「おまえ、あの世界で俺を止めた時、ずいぶんと身体が大きくなかったか?」


 それを聞いたソフィはふふふ・・・と笑いながら俯くと。


「いいから忘れなさい!!」


 全力でそう叫んだのだった。





「紅音、ずいぶんと元気がないみたいだけど・・・」


「え?そ、そんなことないよ?」


 部屋から出るとツヴァイはすぐにフィーアに話しかけた。

 フィーアがごまかすように首を横に振ると、ツヴァイはそっとその背を廊下の壁際に押し付けて顔を寄せる。


「そ、蒼ちゃん・・・?」


 真っ赤になりながら上目づかいに見つめるとツヴァイはくすっと笑って。


「紅音のことは、僕は何でもお見通しなんだよ?」


「あう・・・」


 しょんぼりと俯いたフィーアの額にツヴァイはそっと唇を押し当てた。


「責めてるわけじゃないんだ。ただ、悩みがあるなら相談してほしい。

 僕は君の全てが知りたいんだ。」


「蒼ちゃん・・・私たちは家族を守るためなら何をしてもいいのかな?」


 その言葉にツヴァイはきょとんとしたように見つめてくる。


 そして・・・


「そうだな・・・少なくとも僕は、紅音を守るためなら何でもするよ。」


「たとえそれが誰かを傷つけることになっても?」


「紅音を守るために誰かを傷つけなければならない。

 そういう状況になったとするなら僕はそうする。」


「そっか・・・」


 その答えにフィーアはどこか悲しげに目を伏せる。


「あの黒猫と何かあったのかい?」


「もし・・・もしね?敵にも同じように大切な人がいてそのために戦っていたとしたら・・・」


「紅音。」


 皆まで言わさずにツヴァイは人差し指をそっとフィーアの唇に押し当てた。


「君がそれで心を痛める必要はない。

 それにたとえそうなった場合でも僕は相手を倒す。

 そのことを君が教えてくれようがくれまいが、結果は変わらない。」


「蒼ちゃん・・・」


「だから、紅音。そんな悲しい顔をしないで?」


 ツヴァイ自身もほんの少し悲しそうに微笑むと、泣きそうになるフィーアの唇にそっと自分の唇を押し当てた。





「アルバートおじさん!大丈夫かい!?」


「おじちゃん!生きてる!?」


 同時に駆け込んできたアインとドライを見て、アルバートは笑顔で答えた。


「悪の幹部はこんなことでやられたりしないものだよ。」


「さすが我がライバル!」


 アインがビッと親指を立てるとアルバートもにやり、と笑いながら指を立てる。


「銀牙こそさすがだな、あの猫が犯人であることに気付いたか。」


「ああ、正義の味方は最終的には黒幕を見つけ出すものだからね!

 なにより、ドライが助けてくれたんだ。」


「任せなさい!私の悪意にかかればあんなのちょちょいのちょいよ!」


 アインに褒められてうれしいのかドライは得意げに胸を張った。


「ところであの猫、いったいなんだったのかしらね?」


 結局のところあの猫がなぜ自分たちを襲ってきたのかは分からずじまいだったのだが。


「組織の刺客で間違いないだろう。

 どうやら、のんびりとことを構えている場合ではなさそうだ。

 紅牙とも相談しなければならないな。」


「あ、そういえば、兄さんはどこにいったんだろう?」


 目を覚まして真っ先に紅牙の様子を見に行ったのだが彼はいなかった。


「キッチンも探してみたけどいなかったんだよね。」


 彼のことだ、おなかが減ってキッチンを漁っているのかとも思ったのだが。


「そうか・・・紅牙のことだ、すぐに戻ってくるだろう。」


「そっか!じゃあ僕は母さんと子供たちの安否を確認してくるよ!」


「じゃあ私は紅音たちの様子を見てくるわ!」


「ああ、頼んだぞ2人とも。」


 アインとドライが部屋を出て行ったのを見てからアルバートは何か考えるしぐさをする。

 それから窓の外に視線を送って。


「どうやら、ひと波乱ありそうだ。」


 何かを誓うように胸の前で片手を握った。





「ひどいめに遭ったにゃん・・・」


 街の路地裏に1匹の黒猫がいた。

 猫はにゃあ・・・と鳴いてその場に座り込む。


「ダメだにゃん、休んでないで逃げないとにゃん・・・矛盾してるにゃん、僕は怠惰な猫なのに。」


 よろよろとした足取りで、それでも猫はどこかに向かって歩き出そうとする。


 だが・・・

 

「逃がすと思っているのか?」


 路地裏に声が響いた。

 猫がそちらに視線を送る間もなく。


「みぎゃあ!?」


 建物の上から降ってきた巨大な白い獅子が猫を前足で押しつぶす。


「おまえは俺の家族を傷つけた。俺にとってそれは許しがたい行為だ。」


 前足でぐぐっと地面に押し付けると、さすがの黒猫も諦めたのかその場にぐったりとしてしまう。


「僕をどうするにゃん?」


「そうだな、俺なりの方法で処分させてもらおう。」


「・・・僕がなんだか分かってるにゃん?」


 その問いかけに獅子は低く唸り声を上げて。


「分かっているさ・・・おまえ、俺たちと同じ賢者の石持ちだろう?」


 その言葉に猫はにゃあと小さく一声だけ鳴いた。


「そうでなければ、俺をあんなにもやすやすと自分の世界に取り込めるわけがないからな。」


「そうだにゃん・・・僕は怠惰の賢者の石を持つ者。

 組織に言われておまえたちを始末しに来たにゃん。」


「そうか・・・ならばここで死ね。」


 獅子は迷わずに黒猫をくわえそして・・・ぐしゃっと噛み砕く。


「・・・ああ、痛いと思うのもめんどくさいにゃん。」


 半身に牙を喰い込まされた状態でだらりと猫が力を抜くと。


 ちりん・・・


 首につけてあった鈴が外れて地面に転がった。

 それを見て猫がぴくっと反応する。

 そして最後の抵抗のようにこう言った。


「・・・僕を食べる代償は大きいにゃん。覚悟するといいにゃん。」


 何も答えないまま獅子は猫を丸のみして言葉を紡ぐ。


「覚悟?そんなものはもうずっと前に出来ている。

 俺は家族のためなら何でもする。

 そのために代償を負おうとも何を背負うことになろうともな。」


 血で汚れた口元をぬぐうこともなく純白の獅子は悠然とその場を立ち去った。


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