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第84話 魔王、大聖堂制圧

 ヴァレンシュタイン国王の洗脳を解き、魔界との戦争を終わらす約束を取ったヴォルトは、まず王都のオーテウス教団を取り押さえるために動き出した。


 ヴォルトは、ヴァレンシュタイン王城の兵士たちを率いて、オーテウス教大聖堂を取り囲む。

 異変に気付き出て来た司祭たちにヴォルトは、国王の命令によりオーテウス教の排除が決まったことを告げ、投降するよう要請する。

 話し合う機会を持つという約束で、次々と投降する司祭たち。

 中には抵抗をする者もいたが、反抗した者たちはヴォルトによって取り押さえられ、地下牢へと投獄された。

 こうしてヴァレンシュタイン王国のオーテウス教団の本拠地である大聖堂は、ヴォルトたちの迅速な動きにより、短期間で制圧されたのだった。


 だがヴォルトの敵である大司祭ザズーは戦場に近い北部の街へ向かっていたため、この場で捕える事はできなかった。

 それにザズーを追う前に、王都内にあるオーテウス教会にいる司祭たちも捕えなければならない。


 余計な血を流すなく大聖堂にいる司祭は全て捕えた後ヴォルトだったが、まだどこかに隠れていている者がいるかもしれない。

 そんな者が反乱を起こしてはいけないと思い、各部屋の捜索を行った。

 ≪周辺捜索レーダーサーチ≫の魔法によって大聖堂内にこれ以上の人間がいないことを確認はしてあるが、魔法検知を無効にさせる魔法が存在するかもしれない。

 そんなレベルの魔法使いがいたら、脅威になる可能性が高いため、一部屋ずつくまなく捜索を行う。

 実際にはその時点で大聖堂内にいた司祭は全て捕えられていたため、それは杞憂であったが、ヴォルトがある部屋へ入った時、その異変は起こった。


 その部屋は、大聖堂の奥にある薄暗い廊下の突き当りにあった。

 あまり開けられてないであろう扉は、開ける時に大きくきしむ音がした。


 部屋の中は異質で、部屋の中央に、石柱で囲まれた円形の台座が設置されていた。

 ヴォルトだからこそ感じられた、わずかに残る魔力の残滓に、油断しないように調査を始める。

 聖堂は別の部屋にあり、この片隅の小さな部屋は神を祀るためのものではなさそうだ。祀るための御神体のようなものも何もない。

 とりあえず部屋には他に誰もいないことを確認し、危険はないものだと判断しようとしていたその時であった。


 部屋の中央の台座が光り出す。

 床からあふれる光が、筒状となって天井まで照らした。

 ヴォルトは一瞬驚くが、何が起きても構わないよう身構える。

 光はすぐに消え、そこには紫色の派手な法衣を身に纏った老人が立っていた。


「おまえは誰だ?」


 ヴォルトは白いひげの老人に向かってそう呟く。


「わしの顔も知らんのか?わしは教皇イルマジェンダだ。ザズーはどこだ?」


「オレもそいつを探しているんだが、残念ながら今は外出中らしい」


「ならばエィス様は?」


「誰だそれは?」


「ん?」


「そうか、これは転移装置か……」


「そうだ、これはオーテウス教国と繋がっている転移装置だ。そんなことより、ここはおまえのような部外者が勝手に入って来て良い部屋ではないぞ!」


「残念ながら部外者ではない。今日この大聖堂は、オレが制圧した。お前の身柄も確保させてもらう」


 先ほどからヴォルトに対していらだちを感じていた教皇イルマジェンダは、事態の重さに気が付く。

 ヴァレンシュタイン王国のオーテウス教団が制圧された?

 この国は上手く王国に入り込んでいたはずだが、何が起きた?

 事態を把握するために、頭の中で様々な憶測が浮かぶが、それより先に目の前の外敵を排除する方が先だと気が付く。


「愚かな。我が教団に立てつこうなど、神を恐れぬ蛮勇だ。天罰を受けるがいい」


 イルマジェンダの目の色が変わる。その顔には明らかに怒りの表情が浮かんでいた。


「大人しく投降すれば痛い目にあわせずにいてやろう。もし逆らうようであれば、力づくで取り押えさせてもらう」


 他の司祭たちに対して取った行動と同じように、ヴォルトは目の前の老人に投降するよう問いかける。

 だが先ほどの言葉の勢いの通り、イルマジェンダにそんな気はないことは明確だった。

 イルマジェンダは片手を上げると同時に、ヴォルトに対し魔法を放った。


「≪束縛リストリクション≫!」


 身体の自由を奪う束縛の魔法は、ヴォルトの魔法耐性により無効化される。


「ふん、ただ者ではないということか。≪魔法陣マジックサークル≫!」


 呪文を唱えると、イルマジェンダの目の前に一瞬で光る魔法陣が現れる。


「じじいこそただ者ではないな。詳しい話を聞かせてもらおう」


 この期に及んで余裕を崩さないヴォルトに、イルマジェンダの召喚魔法が襲い掛かる。


「≪召喚泥人形サモンクレイドール≫!そいつを取り押さえろ!」


 魔法陣の中に、人間より一回り大きな泥人形が現れた。

 泥人形がヴォルトへと襲い掛かるよりも先に、ヴォルトの拳が泥人形の胴体に炸裂する。

 上半身が四散し、イルマジェンダを睨みつけるヴォルトに、イルマジェンダは不敵に笑い返す。

 次の瞬間、飛び散った泥人形の破片が集まり、再び人型を形成する。

 ヴォルトは、掴みかかってきた泥人形の手から逃げ、後方に一歩飛び下がる。


「ばかめ!泥人形はスライムと同じ不定形生物。物理攻撃は効かぬ。破壊するのは不可能だ」


 そう言って高笑いしたイルマジェンダの目の前にいた泥人形の背中が、突然真っ二つに斬れる。

 真っ二つとなった泥人形は、形を崩しながら床へと崩れ落ちる。

 ただの泥となったそれが、再び人型へと戻ることはなかった。


「な……に……?!」


 驚くイルマジェンダの視線の先では、神器『殲滅し尽くす聖剣エクスキューショナー』を振り下ろしたヴォルトの姿があった。


「拳がだめでも、魔法の剣なら、偽りの命も斬れるようだな」


「きさま……」

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