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第43話 魔王、シャンダライズ王家相続を見守る

 そして遂に、ガーゴイルを操った王子たちの暗殺未遂について、王女カーラへの罰が国王より下された。


「第一王女カーラについては、王子たちの命を狙った罰として、今後王位継承権の一切をはく奪する。以上だ」


 部屋の中に沈黙が訪れる。あまりにも軽い処罰内容に、皆、国王の言っている事の意味が分からなかった。

 カーラは驚いた顔で国王を見つめている。

 我慢できずに第二王子が国王に問いかけた。


「陛下。カーラは女性のため、元より王位継承権がありませんが……?」


「うむ。だから今後もカーラに王位継承権を与えないという意味だ。だからカーラよ。今後王子たちが死のうとも、お前が王位継承することはない。心に留めておけ」


「は、はい!でも、それだけでは……。私は弟にまで怪我をさせてしまったのです……」


「今回の件は、魔石によってお前の心がたぶらかされたものであり、お前に必要以上の罪はないと思っている。それに被害者であるピエールも、お前に罪を問うつもりはないようだしな」


 もう一人の被害者第一王子ジャットバイゼンについては、敢えて誰も触れることがなかった。

 国王は言葉を続ける。


「カーラが王位に就く事はなくなったわけだが、将来的にはワシは女性が国王となることがあっても良いと思っている。いつになるか分からんがな。これは公的な発言として、議長、記録しておくように」


「はっ」


「それではカーラ。今回の件についてはこれでよいな?今後も現在の職務を引き続きがんばってもらいたい」


「はい。ありがとうございます陛下。今後も、私の命に代えましても、国のために職務にまっとうしてゆきたいと思います」


 国王は満足そうにうなずく。

 室内に集まった王族たちも、ガーゴイル襲撃が収まったこと、カーラへの処罰も軽く済んだことに、皆ほっと胸をなでおろしていた。


「それではそろそろ本題に入らせてもらう。本日皆に集まってもらったのは、ジャットバイゼンがいなくなった後の、王位継承についての話だ」


 今まで先延ばしし続けて来た、王位継承問題。第一王子の失脚に伴い、遂に国王の口からそれが発せられる事となった。

 人格に問題のあった第一王子が王位を継ぐことがなくなったことは良かったが、では代わりに誰が王位を継ぐのかという問題は未だ残っていた。

 それはこの場にいる全員がそう思っていた。


 第一王子が失脚したことで、王位継承権一位となる第二王子は、人格にも優れ政務の能力もあり、その性格は非常に適任であると言える。だが第二王子は、生まれつき体が弱すぎるため些細なことですぐに体を壊してしまう。体力的にまず無理だと言わざるを得ない。

 まじめで誠実な性格、武勇の才のある第三王子は、頭脳労働が苦手だ。母親が平民出であることもあり王位を継ぐべきではないと自身が判断し、既に王位継承権を放棄している。

 何事も要領よくこなせる器用な第四王子は、横着なところがあり何事も人任せにしてしまうため、人の上に立つ器ではないと言われている。

 もう一人第五王子がいるが、上の王子たちとは年が離れており、まだ八歳と幼くどんな大人になるか想像もできない。


 王位継承権があるのは、以上の四人の王子なのだが、いずれも適格と思える人物がいないというのが現状だ。

 もしこの弟たちの中に、王位に適格と思える人物がいたのならば、もっと早くその王子が王位を継承していただろう。だがいずれも問題があり、この国の次期王の座は決まらずに、この問題はだらだらと長引いてきたのである。


「これまで次期王について、誰がなるかはっきりと明言してこなかったため、混乱を招いてきたことも謝罪したい。そしてこの問題について、今ワシの結論を言おう」


 そんな長く続いてきたシャンダライズ王家次期王位について、ついに国王自ら結論を言う時が来た。

 一同が息をのんで次の言葉を見守る。


「次期王には、第二王子であるオズワルド・マイン・シャンダライズを指名する。オズワルドよ。健康上の問題などで無理だと言うのであれば、今この場で言ってくれ」


 この場にいる全員が知っていた。オズワルドが国王になれば、この国の将来も安泰だろう。だが体力的に国王としての仕事がほとんど務まらないであろうことに対し、それを一番よく知っているオズワルド自身が自分が国王になることについて後ろ向きだということも公然の事実だった。

 だが第二王子オズワルドの返事は、一同の想像とは違っていた。


「陛下。私は、次期王位について、謹んでお受けしたいと思います」


「おおお!」


 歓喜の声が部屋の中に響く。

 だがオズワルドの返事はそこで終わらなかった。


「ですが、一つ注文を付けさせていただきたいと思います。皆さんご存知の通り、私はあまり身体が丈夫ではありません。そのため父上と同じ量の仕事をこなしてゆくことはできないと思います。そこで弟のテディ、マキシミリアンの二人にも力を貸してもらい、三人で力を合わせてこの国を守ってゆきたいと思います」


「ふむ。お前の代で、国王の役割を少し変えたいというのだな。良いだろう。ストーンコールド元老院議長よ。オズワルドと話し合い、王位継承までに役割についてどうしてゆくか、具体的な草案を作っておくように」


「畏まりました」


 元老院議長が、国王の言葉に頷く。


「テディもマキシミリアンもそれで良いか?」


「はい!兄者を支えてゆきたいと思います」


「ばい、右に同じく」


 二人の弟にも異論はないようで、笑顔で答えた。


「それでは、正式な王位継承の儀は、来年の春を目途に行いたいとする。本日は以上だ。皆の者、ありがとう」


 こうして、長年シャンダライズ王家を悩ませていた次期王位問題は、唐突に、そしてあっけなく解決をしたのだった。

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