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第37話 名探偵魔王、推理の時間

「それでは、お前たちを暗殺しようとした犯人について、オレの推理を発表しよう。オレは実際に会って話せば、その者が嘘をついているか隠し事をしているのかなど、ある程度は分かるのだ。よほどの天才詐欺師とかであれば別だがな。なぜならオレは長い事、魔界の王をやってきた。その間たくさんの者と会ったり話したりした事で、目が肥えているからだ」


 ヴォルトが自信たっぷりに話し始めると、部屋にいる者たちの視線がヴォルトに集まる。

 だが話の腰を折るように第四王子が質問を浴びせて来た。


「ヴォルト殿……。先ほどから僕は話に付いてゆけないのですが、魔界の王とか勇者とかいうのはどういう事なのですか?」


「あれ?話してなかったっけ?」


 第二、第三王子にはユウから話したと聞き、第四王子にヴォルトが魔王である事、ユウが勇者であることなどを説明した。


「ひ、ひいい!魔王と知らず、これまで失礼な態度をすいませんでした!」


「いや、今はそういうのいいから!オレの推理の時間だから。オレの推理聞いて」


「こいつ段取り悪くていつも計画通り進まないんだぜ。魔王のくせに。ウケるだろ?」


 ヴォルトが第四王子と話していると、ユウが第二、第三王子にヴォルトの悪口を言っていた。

 そんなユウを横目でにらみながら、ヴォルトは何とか本題に戻そうとする。


「ゴホン!それでは改めてオレの推理を説明しよう。まずこの城にガーゴイルが現れたのは、間違いなく次期王位継承者たるお前たち王子の命を狙ってのことだ。先ほど言ったように、オレは最初はお前たち三人のうち誰かが犯人ではないかと考えていた。だが違ったようだ。今夜、お前たち三人がいる場所それぞれにガーゴイルは現れ、命を狙った。そして今のお前たちのガーゴイルに対する恐怖心などは本物のようだ。だとするとお前たち三人とも犯人ではないと、オレは思う。」


「では誰だと言うのですか?我ら全員死んで得をする人物がいるというのですか?」


「それは……第五王子しかいないだろう。第五王子の元へは、ガーゴイルは今まで一度も来たことがないと言っていたしな」


 第二王子の質問に、ヴォルトはずばり答える。

 だがそれを聞いて、第二王子は信じられないと言う顔をしていた。 


「ピエールはまだ八歳です!あの子が次期王位を狙うほどの欲を秘めているとは考えられません!」


「それについては、オレも同感だ」


「ではなぜ?」


「あくまで現時点の推測なのだが、犯人はおそらく第五王子の母親。第五王妃ではないだろうか?」


 ヴォルトの推理に、部屋にいた人間全員がざわつく。これまでヴォルトが王子たちに疑いの言葉を投げかける事はあっても、ここまではっきりと容疑者として名前を挙げた事がなかったからだ。


「五人の王妃にそれぞれ一人ずつ王子が生まれたのだそうだが、第五王妃だけ王女と王子の二人を産んでいる。先に生まれた王女だけで我慢すればいいのに、その後に王子まで生んでいるのは、第五王妃が国王の母となる事に執着していたからではないだろうか?それだけ権力欲が強いのではないかという気がする。この国では騎士団長スカーレットのように女性でも要職に就けるほど女性差別は少ないようだが、国王だけは男が継ぐという習慣が残っているようだしな。娘が王位を継げないのなら、もう一人男の子をと思ってもおかしくあるまい。だが念願の王子を身ごもったが、その上には四人の兄がおりやはり息子に王位を継がせるのは難しかった。そんな時、第五王子より王位継承権の高い兄たちの暗殺を考えてもおかしくあるまい?」


「まさか……そんな人には見えませんでしたが……」


 第二王子がショックを受けたような表情を見せるが、そんな第二王子に第四王子が話しかける。


「いや、第一王妃の態度が大きすぎたせいで、他の王妃たちは押さえつけられていました。彼女たちが何を考えていたかなど分かりませんよ?」


「確かにそうだな……」


 第四王子の言葉に第三王子も頷く。

 だんだん三人は、ヴォルトの推測を信じ始めた。


「第五王妃自体には、ガーゴイルを使役するほどの魔力は感じられなかった。だとすると裏社会の者に依頼した可能性が高いな。いずれにしても本人に会って事実を聞く必要がありそうだ。それでは今から第五王子のところへゆくとしよう。」


「あのー、すいません。もう一つ質問してもいいですか?」


 その言葉は第四王子だった。一応話を中断させないよう、最後まで聞いてから質問をしてきたようだ。


「なんだ?」


「僕はスカーレットとユウ様はジャット兄者の護衛をしているとずっと思っていたのですが、一番狙われてるジャット兄者の護衛は、今誰がしているのですか?」


「……」


 第二、第三王子も同じことを思っていたのだろう。不思議そうな顔をしていた。


「ああ、アレね。アレはオレに対してあまりにも失礼な態度を取ったので、こらしめてやった」


「「「え?」」」


 三人同時に驚きの顔をする。

 言いにくそうなヴォルトに代わって、ユウが三人の王子に説明をする。


「第一王子は、こいつの≪生命力吸収エナジードレイン≫の魔法で生命力を吸い取られて、老人になっちまったよ。そんでお前らの親父の国王が出てきて、悪いのは第一王子だと言ってそのまま地下牢に幽閉したらしいぜ?明日辺りに国王から詳しい説明あるんじゃないか?」


「「「えええ?」」」


「というわけで、アレの護衛は必要なくなったのだ。それじゃ第五王子のところへ行くぞ!」

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